「全国全世界のガイアプロレスファンの皆さん、こんにちは。関西ガイアプロレスの大阪城ホール公演、半年に一回の
「解説のくそみそニキこと阿部です」
「DDS-net有料配信で視聴してる人たちには、会場の熱気が伝わってるかな~? 今回は覆面剝ぎマッチとロイヤルランブルの豪華二本立て!」
「関西ガイアプロレスは決して巨大な組織とは言えませんが、これはかなり豪華なメンツですよ」
「ええ、事前情報では詳細が伏せられていたロイヤルランブル、まさか当日のパンフレットで『ドキッ! 黒札だらけのロイヤルランブル、ポロリもあるよ』なんて頭の悪い
「パンフレットがお手元にない視聴者には分かりづらいかも知れないが、ロイヤルランブルは出場者の順番がランダムでサプライズを楽しむ要素も大きいので、事前の説明はしない。そこはご了承ください」
ガイアプロレスの実況解説も三回目となると慣れたもの、霊山同盟支部のコンビが前説トークを繰り広げていると、出場者のテーマソングが流れて花道奥にスポットライトが当たる。
「
「りあむは野次を浴びせる観客に中指立てて返してますね、行儀が悪い」
「彼女は『そういう』芸人枠なので大目に見てあげましょう」
「ああ、りあむはポロリ枠として採用されたのかな、それなら納得」
「くそみそニキ、いつになく手厳しい」
「だって、りあむだし」
「こらーっ、実況解説、聞こえてんぞーっっ!!」
放送席に向けて怒鳴るりあむと彼女を宥めるあかあきコンビ、それを見てどっと湧く観衆たち。
三人娘がリングに上がった時点で、次の出場者が花道に登場する。
「シマウマ柄の全身タイツに馬を象った覆面! ゼブラマンレディー? ゼブラウーマン? どちらかはっきりしません!」
「あの肉付きの良い身体はガイア連合むちむち部だね。多分ゼブラマンレディー」
ゼブラマンレディー(推定)は観客への愛想をあまり振りまかず、さっさとリングに上がる。そして彼女は、もう義理は果たしたとばかりに自ら覆面を脱いだ。
「おおっと、ゼブラマンレディー、その正体は?! 瀬戸内ヒノエ島のまどかネキです!」
「どうやってまどかネキ呼んでこれた?」
そのとき、くそみそニキは花道奥の仕切り幕から顔を出して全身タイツのまどかを凝視しているほむらネキを見つけた。ほむらネキの情欲に塗れただらしない顔を見てしまった彼は武士の情けとばかりに、誰がまどかネキをこの場に連れ込んだのかの心当たりを口に出さず押し黙った。
一方そのころ、リング上ではあかりとあきらが左右からりあむの腕をがっちり捕まえ、まどかネキの前に引っ張りだした。
「まどかサン、りあむの胸に水平チョップ一発お願いします!」
「りあむちゃん、胸張って豊かな脂肪の塊で受けるんご!」
「ぎゃーっ、何だよそれぇ?!」
「まどかさんのチョップで胸元のシャツが破れて乳首ポロリのノルマ達成したらボーナスですよ? 前から短時間で楽して稼ぎたいって言ってたじゃないですか、実働10分でうはうはの収入ですけど」
「楽して稼ぎたいと痛い目に会いたいは違うよっ! 黒札のフルスイングチョップを受けたら、服がはじけ飛ぶだけじゃなく、ビーチクも物理的にぽろり取れちゃう!」
半泣きになって抗議するりあむの言い分を聞いて、それもそうかと思い直すあかあきコンビ。
「じゃあすいません、乳首ぽろりでなく乳輪ちらりくらいに手加減して貰えますか?」
「チョップしないって選択肢はないのかよ?!」
「はいはい、三人まとめていくわよ」
茶番に付き合いきれないまどかネキは、横に並んでいる三人娘へパシンパシンと水平チョップを連続で順番に入れる。
ちなみにまどかネキがチョップを当てるとき、もう片方の空いている手で自分の太ももをタイミングよく叩いて音を出し、チョップの威力があるように見せかけている。そんな手加減されたチョップだが、雑魚霊能者であるりあむには骨の芯まで響く強烈な一撃だった。
あかり・あきらがそこまで痛そうにしていないのに対し、七転八倒して苦悶に泣き叫ぶりあむは、リアクション芸人としての評価を高めるのであった。
まどかが、そんなに強く叩いたつもりないんだけどなー? とばかりに困惑していると、次なる出場者がリングに上がる。
ロイヤルランブルはおよそ2分ごとに次々と参加者が登場するバトルロイヤル形式なので、基本的に時間が経過するほどリング上に参加者が溜まっていく仕組みである。その対策として、トップロープ越しにリング外へ放り出されたらリングアウト負けという特殊ルールがあり、複数人が結託すれば実力者でも負けるときはあっさり負ける、番狂わせを起こしやすい試合である。
「へっへっへ、百合の間に挟まるおじさんだぞー」
新たな登場者ドクオニキが、両手をわきわきさせながらりあむを威嚇(?)する。その大根役者っぷりにまどかとあかあきコンビは失笑を堪えるのに必死だが、当のりあむはというと、まどかから多大な肉体ダメージを受けた直後の精神攻撃で、大いに取り乱す。
「ぎゃーーっ! た、助けてあかりんごーっ! あきらちゃーんっ! 不審者に犯されるぅぅぅ! 乳首ぽろりどころか、公開レイプだよこれっ!」
腰を抜かしたのか、尻もちをついたまま後ざすろうとして膝をがくがく揺らすりあむ。まともに動けない割りに口先だけはよく回る彼女の、リアクション芸人としての評価がさらに上がる。
「ゲーヒャッヒャッ! りあむ、お前は(ぽろり要員として)売られたんだ」
「そんな…… あかりんご、あきらちゃん、嘘だよね?!」
ドクオの安い追い打ちにビビりまくって必死の形相で振り返るりあむと、傍から見た彼女の滑稽さに耐えられずつい視線を逸らしてしまうあかり・あきら。
視線を逸らされたことで、りあむはあかあきコンビから裏切られたと勘違いし、絶望の表情を浮かべる。
「そんな、そんなのって、ないよ…… うわぁぁぁぁん!!」
半狂乱になってガチ泣きするりあむを見て、流石にこれはマズくね? という雰囲気が流れる。
あかあきコンビは幼児退行してじたばた駄々をこねているりあむを抱えてリング下に降り、二人がかりでハグして必死に慰める。
「りあむちゃん、しっかり!」
「心と言う器はひとたび、ひとたびヒビが入れば二度とは、二度とは……」
「漫画の台詞をパクって言えるなら大丈夫っぽいね」
「ひどっ! 二人とも、もっとボクに優しくしてよ!」
三人娘がいちゃいちゃしているのをリング上から見下ろしていたまどか・ドクオも、なんとかなりそうだとホッと一息。
「あのりあむって娘、メンタルが弱いんだか図太いんだか」
実況のウサミミネキとまどかネキの言葉が期せずして重なったところで、次の出場者が姿を現す。
「新たなチャレンジャーは富豪ニキ! ちひろネキを秘書役に従えての登場です」
富豪ニキはリングに上がると、ちひろさんに持たせていたジェラルミンケースの蓋を開ける。ケースの中には日本円の札束がずらりと並んでおり、どうやらライバルを買収する作戦のようだ。
「けっ、万札の束なんて、終末後のこのご時世じゃ、ケツを拭く紙にもなりゃしねぇってのによぉ! ガイア連合自販機で使える千円札ならともかく!*1」
ドクオニキがジュラルミンケースをひったくるとそのままひっくり返し、紙幣を周囲にまき散らす。
「これは北斗の拳ごっこですね」
「やられているはずの富豪ニキもどこか嬉しそうです」
調子に乗ったドクオは、富豪ニキに続いてちひろネキもターゲットにし、彼女をびしりと指差した。
「お前のようなババアがいるか!」
その瞬間、ちひろネキの顔がびしりと凍りつく。
「おおっと、ドクオニキ痛恨のミスプレイ! ちひろさんを怒らせるとマズいですよ!」
「北斗の拳の迷シーンを連発する気概は買いますが、相手が悪いですねぇ」
「じゃあまどかネキにBBAと言えるかというと、これも言えませんけどね」
放送席で他人事とばかりにのほほんとしているウサミミネキ&くそみそニキのコンビ、それに比べてどんどん圧が強まっていくリング上。
さきほどのりあむギャン泣きよりも悪化している雰囲気の中、ドクオがスライディング土下座でちひろさんの前に跪く。
「土下座したドクオニキの頭をちひろネキが踏んでいます!」
「会場はちひろコールの大合唱に混じって『羨ましい俺に代われ』という野次も混じってますね」
「DDS-net配信のコメント欄も『ドクオニキにはご褒美』とかM男系のコメントで溢れています」
ちひろさんが観衆の声援に背を押される形でドクオの頭から足をどけ、とりあえず和解の流れになりかけたところで、新しいチャレンジャーが出てきて強制的に雰囲気が切り替わる。
「今度はゼブラマンの覆面を被った男三人組の登場です! 服は全身タイツでないので、その場のノリでマスク被ってみたという感じでしょうか」
「んー、あれはアニキ・安慈・義勇のトリオですかねぇ」
「マスクマンの正体に言及しちゃっていいんですか?」
「彼らがマスクマンとして活動を続けていくならともかく、一日限りのお祭りですから」
そんなこんなで新しい登場者がくるたびに
「なんというか、こう、みんな真面目にプロレスしませんね」
「お祭り騒ぎの悪い面が出ましたね。でも大丈夫です、こういう中弛みした盤面をピリッと〆る、いわゆる『掃除屋』が盤面に投入される頃合いですから」
解説陣がだらけた空気を指摘すると、ちょうど新しい出場者が花道に登場する。
「あれは製造班の少佐ニキ! カツカツの納期に悩まされながらもリフレッシュ休暇を忘れない少佐ニキ! 今回も製造から離れられるならと深く考えずにオファーを受けたのでしょうか?」
「ガイア連合天使部だけあって天使を引き連れていますが…… おおっと、大天使ヴィクターではなく、大天使カマエル! これは一体どういうことだ?!」
「カマエル、旧約聖書において聖人ヤコブとレスリングした天使ですね。確かにプロレス会場には相応しい存在ですが……」
少佐ニキは野次を気にせず堂々と花道を進むと、彼の指示を受けたカマエルがリングに上がり、ごちゃっとした黒札連中をちぎっては投げちぎっては投げ、トップロープ越しにリング下へと放り捨てて次々と失格に追い込んでいく。
「ふふん。この地にヤコブと並ぶ猛者はいないようだな」
「いるさっ! ここに一人な!」
会場からブーイングが降り注ぐ中、リング上で堂々と啖呵を切るカマエル。
するとカマエルの傲慢な宣言を受けて立つ男が一人。
「あれは! 覆面をしているのでゼブラマン4号としておきますか、でもあの特徴的な白饅頭シルエット、正体はバレバレです!」
「やる夫さぁぁぁぁん?! 何やってるのぉぉぉっ?! 貴方は前衛に立っちゃいけないでしょぉぉぉ!!!」
放送席で絶叫するウサミミネキを尻目に、ゼブラマン4号(仮)はリングに上がり、マッチョポーズを取って天使カマエルを威嚇する。カマエルは彼の貧弱ボディを鼻で笑うと、挨拶代わりに彼の腿へローキックを一発お見舞いし、当然やる夫は痛みにのたうち回る。
「あーあ、無茶しやがって」
「でも彼はガッツ系スキルを複数持ってますからね、痛みを堪えてカマエルにしがみつきます」
カマエルは必須でしがみつくやる夫を引き剥がそうとするが、ド根性を見せるやる夫は離れようとしない。見方によってはやる夫が絞め技でカマエルを攻めていると強弁できなくもない、といった塩梅だ。
「分かった、分かった。私の負けでいい、もう勘弁してくれ」
先に根負けしたのはカマエルだった。
「ああっと、カマエルがギブアップ宣言! え、やる夫さんが勝っちゃった?! マジで?!」
「カマエルに勝ったのは、聖人ヤコブと聖人モーゼと言われています。ゼブラマン4号は立川のロン毛に並ぶ聖人ですから、ある意味で当然ですね」
「そういえば、カマエルとヤコブの格闘も、天使がヤコブの足を蹴って動けなくしてから天使側のギブアップ宣言でしたね。ということは、これは一神教の聖典に書かれた逸話の再現になるわけですか。うわー、これ、全世界に向けて放映していい内容ですか?」
「彼は元からガイア連合の重要人物ですから、今更メシア教過激派が彼の身柄を狙ったところで、護りを突破できるとは思えませんけどね。それに一応ですが覆面して正体を隠してますから」
天使カマエルを下してリングに一人残りとなったやる夫が勝ち名乗りをあげようとしたところで、序盤にリタイアしたはずのりあむ達ユニクス三人娘が滑り込むようにリングに上がり込んだ。
「天使に勝つなんて流石です!」
「そうれ、わっしょい、わっしょい!」
三人娘はやる夫を胴上げし、白饅頭ボディが二度三度と宙に舞う。勝利を祝われたやる夫がまんざらでもない笑みを浮かべたところで、三人娘はやる夫をトップロープ越しに放り捨てて彼を失格にする。
「へへん、楽してズルして頂きってね!」
序盤にリタイアしたと見せかけたりあむたちは、トップロープ越しにリングから落ちたわけではないので、実は失格になっていなかったというカラクリだ。
「ロイヤルランブル、けっちゃぁぁく!! 優勝はユニクス! ぽろり要員の色物枠がまさかの勝利!」
「優勝者には、今後一年以内であればいつでも、一回だけチャンピオンに挑戦できる権利が与えられます」
まんまと勝利を掠め取って鼻高々のりあむだったが、解説陣から賞品を聞かれて目を真ん丸に見開いて驚く。
「えっ、賞品はガイアポイントとかじゃないの?!」
「チャンピオンに挑戦できる権利だけです」
「その、副賞とかで何か貰えたりは……」
「ないです」
「なんだよそれ?! これじゃ痛い思いしてただ働きじゃん?! ねぇねぇ、富豪ニキ! 勝者の権利を買わない?」
実利がないと分かって権利の転売を試みるりあむだが、当然ながら富豪ニキはその申し出を拒絶する。
「優勝おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」
口々に祝いの言葉を述べるロイヤルランブル参加者たち。
「父にありがとう、母にさようなら。そして全ての参加者たちに、おめでとう」
「って、TV版エヴァのエンディングっぽく〆るなーっ! ボクの頑張りを無に帰さないでーっ!」
「あえて言うなら、りあむちゃんのリアクション芸人としての価値が高くなったよ!」
「そんなの嬉しくなーいっ!!」
こうして関西ガイアプロレスによるロイヤルランブルという試みは、一応の成功をもって終了となった。