年内はこれが最後の更新です。皆様良いお年を。
関西ガイアプロレスの大阪城ホール公演、残るはメイン試合の
赤コーナーは関西ガイアプロレスの絶対的エース、レスラーニキ。青コーナーは今シーズンの興行を大いに荒らしまわった謎の覆面男、ゼブラマン。敗者は覆面を脱いで正体を現す、または髪を切って屈辱の丸坊主になるという、両者の意地とレスラー生命を掛けた大一番。
実況と解説は、引き続きウサミミネキとくそみそニキが務めている。
「ゼブラマンのセコンドには、全身タイツ&馬を象った覆面というお揃いのコスチュームであるゼブラウーマンがいますが…… 今日の第一試合ロイヤルランブルで出てきたゼブラウーマンと中の人が違っていませんか?」
「うん、違うねぇ。ロイヤルランブルのときのゼブラウーマンはほむらネキだったけど、体型も髪型も全然違う」
「これは何かのギミックでしょうか? ゼブラマンは極悪ヒールとして今シーズンは悪逆非道の行いを尽くしていますが、このシングルマッチは今までの悪行三昧の清算マッチでもあります。
「さて、ゼブラマンの心づもりはどうなっているのか、我々放送席でも注意深く見守っていきたいと思います」
レスラーニキとゼブラマンがお互いにリングに上がり、試合開始のゴングが鳴るのを待つばかりとなったところで、リングの下に引っ込むはずのゼブラウーマンがすすすっとレスラーニキに近づいた。
「おっと、ゼブラウーマン、何か話しかけるんでしょうか── ああっ、毒霧噴射! 試合開始前の不意打ちに、レスラーニキはモロに喰らった!」
「レスラーニキはダウンした後すぐに転がってリング外にエスケープしたね。今まで何度も毒霧を喰らってきたから、喰らった後の対処方法については学習している」
「試合開始前ということで、レフリーが毅然とした態度でゼブラマン陣営に対応しています。なし崩し的に試合開始してペースを握ろうと考えていたゼブラマンは、当てが外れたというところでしょうか」
「リング下でペットボトルの水とタオルを受け取ったレスラーニキ、毒霧を洗い流して再びのリングイン! 仕切りなおして、今度こそ、試合開始のゴング!」
事前の卑劣な反則攻撃に怒り心頭かと思われたレスラーニキだが、冷静に歩を進めると片腕を伸ばした。
ゼブラマンもペースを握れなかったことに慌てもせず、こちらもリング中央へと慎重に歩を進める。
「両者、リング中央でがっちりロックアップ! 気合いの籠った声を上げながら、
まずはゼブラマンが組み合ったまま、自身の重心を少し下にずらしてすっと右腕を相手の左脇に差し込み、相撲の寄り切りを連想させる動きで、ぐいぐいと前に出る。レスラーニキは自身の右足を軸に円運動でその勢いをいなし、ゼブラマンの左手首を取ってねじり上げる。
「リストロック! ベーシックなプロレスの動きですが、わちゃわちゃしたロイヤルランブルの後ですと逆に新鮮です」
「ここで痛がってねじられた方向に逆らわず楽な方へ身体を動かすと、背中を見せてしまい結局ハンマーロックで極められてしまうのですが、ゼブラマンも心得たもの。空いている右腕で相手の左手首を下から押し上げてロックを外し、そのまま左手首をねじり返します」
「レスラーニキも同じやり方で切り返す! ここでいったん互いに距離を取って、仕切り直しです」
ゼブラマンとレスラーニキは、再びロックアップで組み合う。すると今度はレスラーニキが相手の左肘あたりを右腕で下から押し上げ、そのままがら空きになった相手の左腋に飛び込むようにして背後を取る。バックを取られたゼブラマンは、自身の腹に回された相手の腕をクラッチされないよう防ごうとし、それを読んだレスラーニキが足首を取って額で背中を押し、ゼブラマンが前のめりに倒れたところでレスラーニキが上からがぶりつく。
「玄人好みの渋いレスリングが続きます」
「黒札のガイアプロレスは異能バトルに偏ることも多々ありますが、こういう異能抜きで、常人が磨き上げた力と技で競い合うのもまた乙なものですねぇ」
グラウンドで腕を取り合い密着しながら体勢を二転三転させる二人の姿を見て、くそみそニキはご満悦。
「信越巡業のときは、ゼブラマンはレスリングテクニックでレスラーニキに翻弄されていましたが、今は五分に渡り合ってます」
「メタなことを言うと、ゼブラマンはスキルポイントを格闘技系にかなり注ぎ込みましたね」
「ゼブラマンの中の人、本業レスラーではないですよね? 贅沢な使い方というか、勿体ないというか」
「まあ、デビルシフター系の人は格闘技を学んでおくと変身後のパンチ・キックに
そんなクラシカルなレスリングがしばらく続いていたが、10分経過のアナウンスが流れると、二人とも試合スタイルをがらっと切り替える。
二人はグラウンドでの組み合いを止め、リング中央で打撃を応酬する。
「パチーンと快音! レスラーニキの逆水平チョップがゼブラマンの胸板にぶっ刺さります!」
「全日本の天龍か小橋を見ているようだね」
「一発貰ったゼブラマン、雄叫びを上げて仁王立ち! そして逆水平チョップのお返し! しかしレスラーニキは余裕の表情です!」
「んー、チョップについてはゼブラマンはまだ追いつけていないね」
「それはスキルポイントが足りていないという意味でしょうか」
「ぶっちゃけ、そう」
チョップの打ち合いでは不利と悟ったゼブラマンは、自らロープに走ってドロップキックをお見舞いする。これには流石のレスラーニキも余裕とは言えず、たたらを踏んでから尻もちをつく。
「ゼブラマン、ドロップキックが有効と見るや、連発の姿勢に入ります! ロープワークからの、飛んだっ! しかし、レスラーニキがダブルラリアットでこれを迎撃!」
「ダブルラリアット出かかりの上半身無敵を上手く使いましたね」
「ゼブラマン、諦めずにもう一回ダッシュしてからの、あーっと、上半身を狙うと見せかけて膝を狙った低空ドロップキック! ダブルラリアットの無防備な足に突き刺さる!」
「格ゲーでいうなら、しゃがみガード不可の通常ドロップキックと、立ちガード不可の低空ドロップキックの二択を押しつけてます」
「ゼブラマン、三度ロープに走って、どっちだ?! 上か下か?! レスラーニキはダブルラリアットで迎撃の構え! 低空ドロップキックぅー! しかしなぜかすり抜けぇ?!」
「あれはハイスピードダブルラリアット*1! ダブルラリアットと同じモーションだが動作時間が短く下半身無敵! 低空ドロップキックが来ると読んだレスラーニキの読み勝ち!」
「低空ドロップキックをすかしたレスラーニキ、必殺のスクリューパイルドライバーの体勢に入った!」
レスラーニキはゼブラマンの胴に両腕を回してがっちりクラッチし、そのまま回転を加えて宙を舞う。リングの上に
「数多の挑戦者たちを沈めてきた必殺技が決まったーっ! ゼブラマン、リング上で大の字に伸びています!」
レスラーニキがフォールしようと近づいたところで、それまでじっとしていたゼブラウーマンがフォールを阻止すべくリングに乱入する。
「ゼブラウーマン、毒霧噴射! しかしレスラーニキは顔を手で覆ってブロックしている!」
「試合開始前にゼブラウーマンは毒霧を見せちゃってるから、対策されたね」
レスラーニキはゼブラウーマンの顎を両手でがっしり鷲掴みにし、毒霧を吹き終えたばかりの彼女にディープキスをお見舞いする。
「あれは男色ディーノの
強引に唇を奪われたゼブラウーマンはそのまま失神し、その場に崩れ落ちる。
「ゼブラウーマン渾身の乱入により、ゼブラマンがぎりぎり息を吹き返した! さあ、どうする!」
レスラーニキはのしのしとゼブラマンの真正面に歩み寄り、彼の顔面に毒霧を噴射した。
「ああーっ! レスラーニキがまさかの! 掟破りの逆・毒霧! 予想外の一撃をゼブラマンはモロに食らいました!」
「なるほど、ゼブラウーマンの唇を奪ったのは、毒霧を吸いだすためでもあったのか」
リング上で仲良く倒れているゼブラマンとゼブラウーマンを、レスラーニキは二人まとめてフォールする。
「レフリーがカウント、ワン、ツー、スリー! 決まったぁぁぁ! 勝者、レスラーニキ!!」
「外敵をはねのけて関西ガイアプロレスの秩序は保たれました」
「後は敗者覆面剥ぎの儀式だけですね。ゼブラマン、貴方は優秀な
決着がついた後、息を吹き返してのろのろと立ち上がるゼブラマン&ゼブラウーマン。
敗者のケジメとして、まずはゼブラウーマンが自ら覆面を脱いだ。
「ゼブラウーマンの正体は! 夢見りあむ! 第一試合のロイヤルランブルで棚ボタ優勝したりあむが、まさかの!」
「どういうことなんでしょう、これは?」
予想外の展開に、放送席も観客も等しくざわざわする。すると、状況を説明すべくレフリーがマイクを持つ。
「えー、夢見りあむさんですが、ロイヤルランブルの優勝賞品、一回だけいつでもチャンピオンに挑戦する権利を、早速行使しました。それに伴い、本試合は『レスラーニキvsゼブラマンの
それだけの説明では理解しきれる者もおらず、皆なんのこっちゃと首をかしげている。
「勝者がレスラーニキであることに変わりはなく、敗者であるゼブラウーマンが覆面を脱いで正体を現したこともこれまた事実。これにて本公演はすべて終了したとみなします」
レフリーはそう言い切るとマイクを手放した。
「んー、これって、ゼブラマンは覆面を脱がず正体は闇のまま、ってこと?」
「ははぁん、レスラーニキの勝利でハッピーエンドではあるが、将来の引きとしてゼブラマンを温存するってことか」
「搦め手というか、コスいやり口ですねぇ。まあ関西ガイアプロレスも商売ですから、ここでゼブラマンを使い切るのは勿体ないと判断してのことなんでしょう」
「まあレスラーニキvsゼブラマンの遺恨清算マッチそのものは無事終了したから、とりあえずはそれで良しとしよう」
「そろそろ中継の時間も終了となります。実況はウサミミネキこと兎山シノと」
「解説のくそみそニキこと阿部でした」
「それでは、さよならー!」