【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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余話72 アイテム製造の流行り廃り

覚醒した【黒札】というものは、何かしらアイテム製造に係るものである。

痛いのが苦手という理由で技術部に所属するブランカニキ*1を筆頭に、戦わなくてもいいという理由で技術・製造班に所属する黒札は多い。また、余程の戦闘修羅勢であっても異界に潜るときに便利なアイテムを自作することも多いし、【アイアンクラブ】や【終末対応戦闘車両(オボログルマ・ベース)】の試作に協力するゆかりネキ*2や退魔祠を作ったドクオニキ*3など枚挙にいとまがない。

黒札はステータスが高いので、多少は適性が合わなくても勉強や機材で、何年も勉強していたはずの現地民以上になんとかなってしまう*4し、ショタオジがルシファーの知識を書き起こした書庫*5には神主や司書黒札が作った要約版・指南書もある。

技術部未満なはかせネキ*6が趣味の延長で作ったアンチョコがアナスタシアに取って役立つ魔導書*7になったりと、黒札が片手間で作り上げたものの(黒札用装備としては)役立たずと判定されたものが現地民に有用であったりすることも多い。

 

山梨・星霊神社の境内の一角で、黒札同士が不用品を持ち寄るフリーマーケットが不定期に行われ、そこには黒札が手慰みで作った霊能アイテムもそれなりの頻度で出品される。

はかせネキの作成した魔導書についてDDS-netで話題になっているのを偶然見かけた馬ニキは、現地民向けの掘り出し物がないかぶらりと寄ってみた。もっとも、目端の利く黒札・金札が現地民への転売目的で手早くチェックしてしまうので、馬ニキが『これは』と思うようなものは残っていないのだが。

 

「ふぅむ……」

 

馬ニキは比較的売れ残りやすい、素材類──滑石や蛍石などの鉱石や、煎じてお茶にできる薬草など──を目の前にしながら考え込んだ。

石は丁寧に磨いて勾玉に整形すれば、お守りとして役立つだろう。薬草類も低級霊薬に加工できるので、儲けを出そうと思えば出せる。ただし加工の手間・日数を考えればその時間で悪魔狩りをする方が何倍も稼げるし、素材を素材として現地民に渡しても自身が製造したものよりさらに低級のものができるだけだ。

 

「授人以魚、不如授人以漁。老子の言葉の通り、指南書の方がいいか」

 

鉱石なら腐ることもなく保存が容易だからと、親指の爪ほどの滑石をいくつか買い込み、馬ニキはフリーマーケット会場を後にした。

彼の行先は書庫、そこで未覚醒者訓練用の『悪魔とは何か、オカルトとは何か』教本と、【アギ】や【ムド】などの低級スキルを覚える*8ための教本を買い込む。次に製造班へと赴き、これまた黒札用の初心者手引書を入手する。

 

「まずは音読百遍、その後に写経もとい写本かな」

 

人に教える行為は技術を身に着ける段階でも上位に位置し、少なくとも自分の中で確固たるものが出来上がってないと上手くいかない。

はかせネキの魔導書(ノート)にすら劣る出来であっても、指南書として現地民の手助けになるだけの物を生み出すとなれば、それ相応のものが作り手に求められる。

 

「水垢離とか精進潔斎は…… 今はまだいらないか」

 

とりあえず当座のものは揃ったので、【トラポート】で【派出所】の自宅に戻って教本をぺらぺら捲る。

 

「俺が覚醒修行したころとテキスト代わってないわ、買い直して損したか? いや昔のを探し直すのも手間だし」

 

ノートとペンを持ち出して、試しに序文を筆写してみる。

 

「他人に読ませる物だから、あんま汚い字でも書けない。うーん、ペン習字を習うのが先?」

 

一文一文に魂を込めるとまではいかなくても、気合いを入れて書かないと魔導書にはならない。馬ニキは気合いを入れ直して背筋をピンと伸ばすと、再びノートに向かい合った。

 

「あかん、集中力が持たない」

 

およそ一時間後、ペンを放り投げて机に突っ伏す馬ニキがいた。

 

「このペースのままなら、専念して半年から一年、隙間時間にちょこちょこやるなら二年ってとこか。ある程度慣れればスピードアップできるとして…… シェルター運営の合間にやるなら、一年くらいかな?」

 

何となくの概算を出して、顔をしかめる馬ニキ。着手前はもう少し手早くできる目算だったが、想像していたより長期間だ。

 

「うん、ちょっと気分転換しよう」

 

フリーマーケットで購入した滑石を取り出すと、縁側に移動して石同士を擦り合わせる。Lv60の黒札パワーでごりごり擦ると、石がみるみるうちに削れていく。ある程度を削って勾玉っぽい形になったところで、今度は手のひらに霊力を込めて指の腹で石を擦る。すると高レベル黒札パワーにより棒やすりかサンドペーパーかとばかりに石が磨かれていく。

勾玉は胎児を模したという。一神教の『産めよ増えよ地に満ちよ』ではないが、勾玉は多産・豊穣の象徴であり、スケベ部に所属している馬ニキも胎児には縁深い。手のひらに込めた霊力が石に浸透するように、石を愛撫するかのように丁寧に撫でさする。

 

「ま、こんなもんか。後で千枚通しで穴開ければ一応の完成ってことで」

 

およそ15分で、滑石製の勾玉が一つ出来上がる。服をぽんぽんと叩いて飛び散った石粉を払い、それを太陽にかざすと勾玉がきらりと光った。

 

 

勾玉のお守り(アクセサリー)

【体】微小+。半年から一年で込められた霊力が揮発して効果を失う。

*1
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「才能による資質と向き不向き」

*2
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「終末後のゆかりさんとあかりちゃん」

*3
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「祠壊しタンカー」

*4
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「才能による資質と向き不向き」

*5
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「書庫とか」

*6
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「アナ村の♂ってどうなってるんだろうね」

*7
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「はかせがアナ君に上げた魔導書」

*8
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「才能による資質と向き不向き」

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