【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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外伝 魚沼で頑張るロバ霊能者の話6

翌日。新潟・魚沼地方の地元名家・九重家が管理する屋敷の一室に、ガイア連合の【黒札】二人と地元霊能者二人の計四人が集まっていた。

黒札は馬ニキと男性優位プレイネキ、地元霊能者は九重静と重下稔。この魚沼地方に根を張る黒札・田舎ニキは不在である。

 

「……時間になりましたが、来ませんね。まあ九重さんがいるので問題ありませんか」

 

そう切り出した男性優位プレイネキは、気力体力ともに充実というか、お肌の張り具合がつやつやてかてかというか、満足そうな顔をしている。

馬ニキと稔少年の男二人は、畳の上にうつ伏せになり、無言で腰と尻の辺りを手で押さえている。物理的な傷害は【ディア】で治癒できるので、おそらくは精神的なモノを引きずっているのだろう。死屍累々と表現するのが似合っている。

最後に、九重家のトップであり責任者としてこの場に立ち会わざるを得ない九重静は、この場に田舎ニキがいないことに憤懣やるかたないといった様子だ。なにせ、昨夜は田舎ニキから「君とはもっとロマンティックな所でロマンティクスしたい!」と猛烈に口説かれ、ついうっかり(ほだ)されて言質を与えてしまい、田舎ニキに逃げられてしまったからだ。

田舎ニキからすれば「あんなサバト会場にいられるか! これは撤退ではない、転進だ!」と主張するところだが、他のメンバーからすれば敵前逃亡まったなし。

 

「重下稔君ですが、依頼通り、レベル上限を1から2に引き上げました。一晩の処置では、まあこんなものでしょうか。これ以上を望むのであれば、回数を(こな)すか、あるいは別の手段でアプローチするかですね」

 

男性優位プレイネキは九重静へそう報告すると、柔和な笑顔を浮かべて転がっている男二人にチラリと視線を向けた。

 

「ああ…… やはり私の身体を貪った殿方に逆襲して分からせるのは良いですね」

 

彼女の視線を受けてピクンと身体を震わせた男二人だが、相変わらず無抵抗で寝転がったままの俎上の魚状態。男性優位プレイネキの手のひらの上でいいように転がされたことは想像に難くない。

 

「次に同じ処置を希望するなら、絶対に(・・・)田舎ニキさんを呼んでくださいね?」

 

温和な態度と裏腹に、男性優位プレイネキの口調は押しが強い。静は彼女の圧に耐えながら、脳内で彼女の言を検証していた。

 

『私と碧神様(かれ)が結ばれるなか、男性優位プレイネキ(かのじょ)が彼を掘るのは浮気でもなんでもない。けれど、彼が彼女の身体を貪るのは、浮気でしょうか?』

 

九重一族の戦力アップと自身が恋焦がれる男の放蕩を天秤に掛けて、九重静は迷った。

ちなみにその内心の葛藤を口にしていたら、「浮気の定義がガバガバすぎる」とか「あんた田舎ニキとまだ寝てないだろ、寝てから言え」とか突っ込まれること請け合いである。静もそれは分かっているのでわざわざ口に出して厄を呼び込むような愚は犯さない。

 

「碧神様が望むのであれば」

「そこは彼の首に縄かけてでも連れて来ると気概を見せて欲しいところね」

「我ら地下(じげ)の者の実力では、【ガイア連合】の有力者にそのようなことを強いることはできません」

「恋する女の子パワーで振り向かせなさいよ」

「昨晩、失敗したばかりです。彼は奥手なので、一足飛びに距離を詰めるのは悪手です」

 

田舎ニキの尻を狙う男性優位プレイネキと、玉虫色の回答をする静の会話がラリーする。どうにも詰め切れない男性優位プレイネキはいったん彼女の説得を諦めて、違う方向から攻めるべく馬ニキに視線を向ける。

 

「馬ニキさんは協力してくれますよね?」

「そんな必要ないだろ、静さんが田舎ニキを絡めとる手腕を黙って見守るのが一番さ」

 

馬ニキはやる気なさそうに返答し、男性優位プレイネキは眉を顰める。

 

「だいたいさぁ、田舎ニキは【備前の短刀】や【ファティマスーツ】などの【退魔武器】をしこたま投入するだけじゃなく、黒札向けの【アガシオン】や【デモニカスーツ】まで静さんに渡してる*1。どう見たって田舎ニキの方からハニートラップに掛かりに行ってる。【スケベ部】謹製の黒札にも効く発情薬とか渡しておせっかい焼いても逆効果だ」

「それはそうですが……」

「待てば海路の日和あり。田舎ニキと静さんが結ばれるのは既定路線として、こう言うと失礼かもしれないけど、サラブレッド(いなかにき)の性欲をロバ(しずかさん)一人でずっと受け止めるなんて無理だから。すぐに夜の性活が破綻してスケベ部に相談することになるから、それを待とう?」

 

不承不承といった態の男性優位プレイネキだったが、馬ニキの説得に思い直した。

 

「……こほん、久々の優良獲物に気持ちが急いてしまったようですわ。やはり誘い受けが私のスタイルということで。九重静さん、どうぞ…存分に貴女の恋を追い続けてください…!我々は…その姿を心から…応援するものです…!」

 

綺麗な手のひら返しに、馬ニキも九重静も内心では呆れているが、それを馬鹿正直に口にするほど愚かではなかった。

 

*

 

「平地セット、召喚(サモン)、姥石明神!」

「なんのこっちも、『炎の戦士』を召喚!」

 

重下稔とTCGカードデュエルをしているのは『城之内克也』*2、魚沼周辺の霊能名家の出身でガイア連合魚沼支部の初期から実働している古参メンバーである。

城之内克也と『本田ヒロト』はガイア連合【ホビー部】の開発したデュエルディスクシステムに適合し、ホビー部からデュエルディスクを貸与された、ある意味で重下稔のお仲間である。なお、城之内と本田は高校生でありショタという年齢ではないので、スケベ部の毒牙にはかかっていない。

 

「『サラマンドラ』のカードで炎の戦士を強化! 攻撃(アタック)!」

「ぐわあぁぁっっ!」

「そこまでっ! 勝負あり、勝者城之内!」

 

審判役の本田ヒロトが宣言して模擬戦は終了、三人で振り返りという名の感想戦が始まる。実際には年上の二人が年下の重下稔を導く形だ。

 

「重下君は以前よりスムーズに召喚・使役できるようになったね。このままレベルを上げて手数を増やすことが当面の課題かな」

「そうだな、まだまだ中坊には負けてられないぜ。でも姥石明神の単体性能は炎の戦士に見劣りしない、今回はサラマンドラのサポートカードで差がついた感じだ」

 

Lv1の重下稔が使役できるようスケベ部の手によるデチューンがされているとはいえ、姥石明神は道祖神などと同格の村の守護神であり、悪魔としての格は高い。黒騎士部隊として前線に立ちLv5に成長した城之内*3の切り札・炎の戦士と比べて見劣りしないというのは、実はかなり凄いことだったりする。

当の稔少年はと言うと、城之内の片腕に装着されたデュエルディスクを熱心に眺めているが、彼の実力ではまだデュエルディスクを使いこなせないのが実情だ。

 

「召喚モンスターをサポートするか、あるいは新しい召喚モンスターを増やすか、どっちの方向で手数を増やすかは要検討だけど」

「それは運も絡むし、焦るんじゃねーぞ。俺たちは悪魔との縁に恵まれないとカードを増やせないからな。悪魔との取引を焦ると片腕を食いちぎられたり生体マグを吸われて干からびたりして死ぬぞ」

「手持ちのマッカを与えても『もっとくれ』とか言い出して結局損するだけだったりね。ガイア連合には『悪魔と交渉するだけ無駄、殴って命乞いさせて従えるのみ』なんてストロングスタイルな人もいる*4らしいけど」

 

稔少年からすれば、スケベ部により魔改造された姥石明神が勝手にチン媚びしてチン落ちしただけなので、いまいちピンと来ない部分もあるのだが。

それは上田銀山を異界に育て探索する、尾瀬三郎ミッションを進めるうちにいずれ経験することになるだろう。

 

*

 

そんなデュエリスト三人組の修行の様子を遠くからこっそり眺め、九重静は一つの決断をした。

 

「城之内と本田がデュエリスト系霊能力者として順調に育っているので、重下君の成長を急ぐ必要がない。スケベ部にショタを差し出す計画は保留にしましょう」

 

ガイア連合との繋がりが田舎ニキのみというのはリスクがあるので、ホビー部やスケベ部とコネを維持する必要はある。近隣の他の黒札──新潟市の鑑定ニキや佐渡島のパピヨンニキなど──とも仲良くする必要はある。それでも、スケベ部にがっちり関わる必要が薄くなったことは大きい。

そして何より── 田舎ニキの後ろの貞操を男性優位プレイネキに売り渡す必要性が薄くなったことに、九重静は安堵した。

*1
故郷防衛を頑張る俺たち「九重静の終末対策1~2」

*2
故郷防衛を頑張る俺たち「九重静の終末対策3」

*3
故郷防衛を頑張る俺たち「九重静の終末対策3」で邪竜ワームと戦う前なのでこれくらい

*4
「終末に向けての準備するとある転生者の話」の人魚ネキの話が噂で誇張された

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