【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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作中の時系列が終末前なので、話数をExにしています。



Ex16 ガイアファーム霧ヶ峰

ガイアファーム&ガイアレーシングが設立され、【ガイア連合】が競馬業界に参入*1してしばし。

阿里川騎手を専属に迎え、美浦トレセンに程近い茨城県筑波にガイアファームが外厩を作って以降、ガイアレーシングが好調である。

日本中央競馬会(JRA)の拠点としては茨城・美浦と滋賀・栗東の二か所にトレーニングセンターがあるが、美浦所属馬と栗東所属馬の勝利数・獲得賞金数を比べると、1980年後半からは西高東低と揶揄されるほどに差があり、その理由として栗東トレセンの坂路調教コースが挙げられる。

美浦所属の調教師の中には『栗東留学』と称して自分の管理馬を栗東トレセンへ長期に預ける者まで出る始末であり、ガイアファーム筑波が独自に坂路調教コースを造成したことは、美浦復権の第一歩として受け止められている。

まあ、ガイアファーム筑波を使えるのはガイアレーシング所有馬が優先であり、隙間があればガイアレーシングにコネのある調教師が、という状況であり、全ての美浦所属馬が使えるわけではないのだが。

 

そんなガイアファーム筑波に頻繁に出入りする【黒札】が一人。平田維茂、渾名は『馬ニキ』。長野県上田市で小規模な【派出所】を営みつつ細々と活動している、平凡なレベルのエンジョイ勢である。彼は地元の馬背神と深く結びついているため動物の馬とも縁深く、ガイアレーシングの一口馬主であり、一応は関係者である。

彼は【トラポート】が使えるので二日に一度くらいの頻度で顔を出し、【覚醒者】特有の身体能力を生かした雑用やら、【ディア】【パトラ】などで体調不良の人・馬をケアしたり、何かと便利な小間使いではある。ただしガイアファーム職員からすれば『扱いに困る人』でもあった。

そんな訳で、ガイアレーシングの四木谷代表が馬ニキに直接釘を指すハメになった。

 

「平田さんよぉ、ガイアファーム筑波に不定期(・・・)に顔出すの止めて貰える? アンタが居ると助かるのは事実だけど、居るか居ないか分からない、スケジュールが見通せない人には頼れないんだわ」

 

社会人として働く立場として、四木谷代表の言うことはごもっとも。馬ニキは素直に謝罪することしかできない。

 

「ふらっと気まぐれで寄るんじゃなく、ガイアファームのスタッフとして正式契約するなら歓迎するけど、どうする?」

「うーん…… 自前で派出所抱えて本業そっちだからな…… 本業鞍替えはさすがにできない」

 

項垂れたままの馬ニキに、四木谷代表は『まあそうだよな』と小さく溜め息をついた。断られることは想定の範囲内で、出来る男は二の矢を用意しておくものだ。

 

「じゃあサブプラン、こういうのはどう?」

 

四木谷代表は書類鞄から紙を一枚取り出し、馬ニキに手渡す。それには『ガイアファーム長野県分場(仮)案』と記されている、コンセプトを簡単に説明したチラシ程度のものだ。

 

「地元で馬牧場を保持しているんだろ? アンタはその牧場の長という立場のまま、ガイアファームの組織に組み込むことで立場を明確にし、スケジュールや責任をはっきりさせる」

「『浦野牧(うち)』は競走馬を訓練する施設ないけど」

「そういうのは筑波でやれば良い。故障した馬のリハビリとか、引退した功労馬の余生を過ごす場所とか、レースに直接関係なくてもやれることは色々あるだろ」

 

馬ニキは紙に視線を向けたまま、じっと考え込んでいる。それを見て四木谷代表は手ごたえを感じ、ふらふらしている彼に首輪を付けることができそうだと内心で安堵した。

 

*

 

しばらくして。四木谷代表は馬ニキから『ガイアファーム長野県分場(仮)案』のコンセプトにそこそこ肉付けした叩き台を受け取った。

 

・ガイアファーム霧ヶ峰(仮)

 長野県諏訪市の霧ヶ峰牧場を買い取り、拡張する。

 霧ヶ峰牧場は1961年の天皇賞を制したタカマガハラの生産牧場。老舗だが経営不振のここにガイア連合の資本を注入し、立て直す。

 生産牧場であるが、イヤリング*2馴致も将来はやりたい。

 霧ヶ峰牧場のオーナーを雇われ社長として引き続きトップに据える。ケツ持ちの黒札は馬ニキ(他に黒札の希望者・適任者がいるならそちらでも可)。

 中央自動車道で関東関西のどちらにもアクセスが良い。関東・関西、関西・新潟の馬運搬で一時休憩を提供する中継点としても視野に入れる。

・ガイアファーム霧ヶ峰分場(仮)

 長野県上田市にある馬ニキの根拠地牧場。

 故障馬のリハビリ、引退功労馬の余生、引退馬の乗用馬転換トレーニング、など。

 関東と新潟へはアクセスが良いが、関西へのアクセスは霧ヶ峰に劣る。そのため霧ヶ峰がメインでこちらはサブの位置づけ。霧ヶ峰牧場との直通ルートである和田峠は道路整備も検討する。

 

「あの人は…… 何で余所の牧場救済に手を出してるんですか」

 

四木谷代表は目を瞑り鼻根のあたりを指で揉みながら、『長野県の馬産関係者に泣きつかれでもしたんだろなぁ』と彼の気苦労を慮った。

しかし、破綻寸前の牧場を立て直すのはまだ分かるが、道路整備とか覚醒者特有の思い付き・ガバガバ観で大丈夫だろうか。

 

「ガイアファーム霧ヶ峰は独立採算制にして、借金火だるまになっても彼一人の被害で済むようにしますか」

 

馬をトレーニングしてレースに出すという狭義での競馬には直接関係しないこともあり、【俺たち】の思い付きは勝手にやらせるのが一番と、四木谷代表は経営者目線でシビアに判定した。

*1
カオ転三次「騎手やってるってよ」

*2
1歳馬のこと。離乳後から本格調教を始める前、基礎体力を養い人との信頼関係を築く期間

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