【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

136 / 148
「幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。 」からキャラをお借りしました。


余話76 三羽烏の競馬場食べある記(上)

『浦野牧』、長野県上田市にある【ガイア連合】の【派出所】であり、【黒札】である馬ニキの本拠地である。

【支部】より小規模で大型デパート『ジュネス』も出店していない、ガイア連合からすればさほど見るべきものもない、よくある田舎の一地方である。

しかしここには、【終末】後に競馬場があるという珍しい特徴がある。

馬ニキは終末後に文明が退化して家畜の馬が労働力の中心になると見込んで、地元の馬背神社と組んで終末前の早い段階から馬牧場に投資していた。その頃から牧場の敷地の一角でローカルな草競馬を不定期に行なっており、ショタオジや他黒札たちの頑張りで終末後も文明はそれなりに維持されている今でも、散々投資していたからと損切りせずに馬牧場を維持している。

終末後の日本は、かつての公営競馬体制は崩れてしまったが、まだ競馬の火はぎりぎり絶えていない。

 

 

「いやー、ここに来るのも久しぶりだなー」

「おっ、屋台があるぜ。やっぱり競馬場でモツ煮は定番だよな」

「ビールも売ってる! おビール様だ! モツ煮とビールで優勝するぞ!」

 

自称・三羽烏、他称・三馬鹿ラス。サスケニキ、ヨロイニキ、クロマニキと呼ばれる三人組*1は、上田市派出所に存在する競馬場で気炎を上げていた。

今日は上田競馬場で定期開催される草競馬の日である。かつて開催されていた公営競馬と比べて月とスッポンほどの違いがある、馬場と観客席は柵一つで仕切られただけの上に客席は立ち見オンリーというのどかな小規模ローカル競馬であるが、終末後に頑張って定期開催を維持している、貴重な場所でもある。

三人は屋台のすぐ横に設置されている、立ち飲み屋に置いてあるような背の高い丸テーブルに陣取ると、ビールのコップを掲げた。

 

「競馬場でビール! 飲む打つ買うのうち二つを制覇! 勝ったな!」

「ワーッハッハッハッハ!!」

「俺たちの馬が勝つことを祈って!」

「「「乾杯!」」」

 

カツンとコップをぶつけあって、三人はそのままグビグビと飲み干し、その勢いのまま、三人は空にしたコップをテーブルにぶつけるように置く。

 

「「麦茶だ、これ!」」

 

某プロレススーパースター列伝のコラ画像のように、サスケニキとヨロイニキがクロマニキの方を向く。

 

「最初から酔ってたら競馬予想できないだろ?」

 

クロマニキはモツ煮の丼をテーブルの隅に移動させて、空きスペースに競馬新聞を広げた。

 

「俺たちの馬が勝つことは当然として、単勝一点買いじゃオッズ的に旨味が少ない。狙うは三連単で万馬券!」

「ふっ、俺はもう買い目は決めているからな、酔っていても問題ない。おーい、お姉さん、ビール頂戴!」

 

サスケニキは手を挙げて大声を出し、近くの屋台からはーいという返事が聞こえたので満足そうに頷いた。

ちなみに彼らが馬を所有しているというのは、以前に彼らがウィニングライブに乱入して走れマ〇バオーを踊って熱唱した事件*2が発端である。

競馬場でレース後にウィニングライブをするという、某スマホゲームを起源とする謎の風習がここ上田競馬場にあるのだが、それに出演するのはレースに勝った馬の馬主または出走者当人(この競馬場は馬以外が走ることがある)のみの権利である。そのため無断で乱入した三馬鹿ラスは関係者にしこたま絞られた後、馬の一口馬主権を購入したという名目で和解金を支払い、レース勝ち馬の馬主だからウィニングライブに出演できたという形にして騒動を収めたのだ*3

それ以来、三人は気が向いたときに上田競馬場へ赴いてギャンブルを楽しんでいる。

 

「俺が賭けるのは56-56-123で決まり!」

「おい馬鹿やめろ」

 

ちなみに、この発言は1着に5番か6番のどちらか、2着に5番か6番のどちらか、3着に1番か2番か3番のいずれか、という意味である。

このレース、5番と6番はどちらも人気薄の馬であり、1番2番3番は手堅いと評判の馬である。真面目に競馬予想しようとしていたクロマニキは、いきなり人気薄のワンツーフィニッシュという万馬券狙いに苦言を呈するが、その程度で止まるようなら三馬鹿ラスと呼ばれることはない。

 

「いいや! 限界だ、押すね!」

 

サスケニキはCOMPをポチポチ押して操作すると、DDS-net経由のオンライン投票で馬券を購入する。

すると余程の高額を突っ込んだのか、人気薄だった5番と6番のオッズが更新されて1番2番3番と同程度になる。

 

「かーっ、このリアルタイムでオッズが変更される瞬間がたまんねーっ!」

「ふっ、その買い目じゃ抜けがあるぜ。俺は56-56-4も押さえるっ!」

 

続いてヨロイニキもオンラインで馬券を購入する。これまた高額を突っ込んだようで、オッズだけで見るなら5番と6番が頭一つ抜けた人気馬である。

 

「まったく…… オッズに影響を与えない程度の少額にしておくか」

 

クロマニキは小さく溜息をつくと、123-123-123という、彼らがオッズを荒らす前に手堅いと評判だった馬券を買った。

 

「おい、見ろよ。オフラインでもオッズが変更されるぞ」

 

この上田競馬場では、大掛かりな電光掲示板は存在しない。昭和時代の野球場のスコアボードのように、掲示板の数値が人力更新されるので、リアルタイムではなく若干のタイムラグがある。

それを受けて、掲示板周辺に屯っていた現地人らしき人々が右往左往し始める。

 

「このオッズ幻惑作戦に引っかかる間抜けがいると思うと、それだけで最高にハイってやつだぁぁぁ!」

「かーっ、高みの見物で酒が美味い!」

 

そこでタイミング良く注文したビールが届いたので、サスケニキとヨロイニキは改めて乾杯する。二人はこれまたゴグゴクと一気にコップを飲み干した。

 

「「お代わり(ワンモア)!」」

 

ビールの泡で口ひげを作りながらそう叫ぶ二人に、女給さんもにっこにこ。クロマニキは諦めたのか、空になったコップを即座に回収する女給さんの背を追って屋台へと歩き出した。

 

「フッフッフッ。どうだ、コレ! わざわざ広告枠買ったんだぜぇ~」

 

ヨロイニキはテーブルに置かれた競馬新聞を手に取り、がばっと開いて1ページ全面広告を自慢げに見せる。

そこには正装──サスケニキは忍者装束、ヨロイニキは和甲冑姿、クロマニキはFFの黒魔導士そっくりのローブとマント──した三人の写真と『オカルトのトラブル解決よろづ承ります』のキャッチコピー文字が印刷されている。

 

「おおっ! すげぇ!」

「本当は見開きで2ページ取りたかったけど、都合で1枚両面に合計2ページとなった」

 

ヨロイニキは全面広告のページをめくり、裏も全面広告になっていることを見せる。そのページには、ヨロイニキ単独の写真と『可愛いおんにゃの子も募集中!』という文字が踊っていて、隅っこに小さく『我々は×××号を応援しています』と書かれている。

ちなみにこの競馬新聞、地域のミニコミ誌の位置づけで、直前に広告出稿という外道スケジュールでもギリギリ対応してくれた。本来2つ折り8ページのところ、見開き2ページ広告だと残り2ページを急遽穴埋めが必要だがさすがにそれは無理ということで、折らない1枚2ページ追加となった。

 

「は? ズルくね? なんでお前だけデカデカと!」

「広告費は俺のポケットマネーから出したから、当然だろ? むしろ金出してないのに全面広告に載せてやったんだから、お前は感涙にむせび泣いて俺に感謝すべき」

「なんだ、その言いぐさは!」

 

ヨロイニキに食ってかかるサスケニキと、ふんぞり返ってサスケニキを見下すヨロイニキ。仲裁すべきクロマニキが不在のため、二人はヒートアップして一触即発の喧嘩腰だ。喧嘩するほど仲が良いとも言うが、傍から見れば呆れたものだ。

 

「やんのか?! コラ!」

「こっちの台詞や、コラ!」

 

お互いの襟首を掴んでにらみ合ったところで、二人の身体がテーブルに接触する。テーブルは転倒しなかったもののぐらぐら揺れて、モツ煮の丼がひっくり返って卓上を汚す。当然だが競馬新聞も濡れてべしょべしょだ。

 

「「あっ……」」

 

そこへ、モツ煮の汁に合うおにぎりは梅かオカカか昆布かで迷いに迷ったクロマニキが戻ってきた。彼は楽しみにしていたモツ煮が台無しにされたことで、二人を叱り飛ばす。

 

「やぁ~~っちまったなぁ~っ! おいコラ! どうすんだコラ! クレクレタコラ! 食べ物を粗末にするやつは、お天道様の罰が当たるぞ!」

「「正直、スマンかった」」

 

普段なら三人で喧嘩するところだが、食べ物を粗末にするなと正論を言われたヨロイニキとサスケニキは素直に反省して頭を下げる。こういうところが、三馬鹿ラスと蔑まれつつも憎み切れないところである。

*1
【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。

*2
「幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。」1話

*3
なお彼らが得た馬主資格は上田競馬場限定であり、公営競馬の資格ではない。念のため




なんと! キャラを借りておいて! ウチの黒札と絡ませる前に話を終えるのである!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。