【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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余話83 シキオウジロボ・カスタム

長野県上田市の浦野牧【派出所】、ここは黒札の馬ニキこと平田維茂の築いた拠点である。

彼が地方に根を張るとき、【支部】にしなかったのは訳がある。簡単に言えば、黒札と言えど二十歳そこそこの若造では、デパート【ジュネス】を勧誘するだけの資金も市政の強いコネを持っていなかった。それと、長野県は人口が少ない田舎であることと、馬ニキが長野県全域をカバーしようと欲張らずにまずは小ぢんまりと始めよう、と考えたこともある。

そんな上田市派出所だが、【終末】後においてとある欠点が浮き彫りになった。大規模【ターミナル】を設置していないため、他シェルターとの物流が弱いのだ。

終末前は鉄道なりトラックなりで人と物は移動できたが、終末後はそうもいかない。新潟から山梨までの霊道を整備して*1、馬ニキ自ら馬型悪魔(スレイプニル)に変身して荷馬車を牽く*2などしたものの、一人では限界がある。

そこで馬ニキは大ターミナルを設置しようと心に誓い、その費用を稼ぐべく山梨の黒札用修行場異界(ダンジョン)にアタックしてマグやマッカを稼ぎはじめた*3

最初は強敵に手こずり何度も死に戻りした馬ニキだが、心身共にすり減らしながら少しずつ装備を買い替え、次第に安定して稼げるようになってきた。まあ馬ニキはまだLv60代前半なので、Lv3桁ある田舎ニキや人魚ネキなどから見ればまだまだであるが。

 

そんな折り、馬ニキはターミナル設置費用を稼いでウキウキ、から一転して失意の底に転げ落ちていた。

 

「ううう…… ようやく稼ぎ終わったと思ったのに…… そりゃ、ターミナルは重要装置だからセキュリティが大事なのは分かりますけど……」

「あー、拠点防衛用のシキオウジロボがないと設置できないのか」

「幼女ネキから貰った飛竜戦艦船首像(フィギアヘッド)*4は簡易シキガミだから駄目って言われましてね! ケチ臭いと思いません?」

「あー…… うん、セキュリティはね…… 大事かな……」

 

愚痴を言う馬ニキと、それに付き合わされる田舎ニキ。田舎ニキはターミナル設置費用をダンジョンアタックで稼げとアドバイスした仲であるため、律儀に付き合ってくれている。

 

「とりあえずターミナルは前払いで支払済みなんで、シキオウジロボの分も稼げば…… でもいつになるのか……」

 

ふぅと大きく溜息をつく馬ニキに、せめてでも前向きな話題を、と田舎ニキは頭を絞った。

 

「ああ、そうだ。シキオウジロボなんだけどさ、注文するのがまだ先になるなら、外見のカスタムするだけの時間があるってことだよね」

「外見のカスタム? ……ああ、十日町市シェルターのシキオウジロボはマジンガーZの外見*5でしたね」

「そうそう、ガワだけで中身は同じだけどね。どうだい、好きなロボはある? ガンダムとか好き? ガンダムが好きならクロスボーンガンダムとか!」

 

馬ニキが反応を示したことで、急に早口になる田舎ニキ。どうやら宮城の幼女ネキと一緒に何か企んでいるようだ。

 

「えっ、クロスボーンですか? ああ、あの連載の長いやつ*6

 

前世の記憶を思い出すように、ぼんやりした視線を宙に彷徨わせながら、馬ニキはボツリと零した。

 

「申し訳ないけど、長谷川先生の絵柄はマップスが肌に合わなくて、読んでないんです」

「は?!」

 

己の好きな物を布教しようと思ったところで出鼻をくじかれ、その言葉にピシリと固まる田舎ニキ。

 

「俺が好きなのは、ククルス・ドアン専用ザクなんです!」

「なん…だと……」

「ヒット作の目安と言われた興行成績10億を突破したんですよ?! それなのに、劇場版最新作がドアンは恥ずかしいからハサウェイ2を早く作れなんて言われた*7この屈辱、田舎ニキに分かりますか?!」

「うるせえ、クロスボーンは映像化してねぇんだ、贅沢言うな!」

 

何かのトラウマに引っかかったのか熱弁する馬ニキと、それに反射的に食ってかかる田舎ニキ。

 

「あっ…… すいません、つい」

「こちらこそ、熱くなってしまって」

 

しかし社会人として礼節のある二人は、そこで掴み合いの喧嘩をすることなく、大人しく引き下がった。

 

「『ガンダム好きに悪い人はいない、しかしまともな人もいない』と言いますが、どうですか?」

「けだし名言だと思います」

 

馬ニキの黒札専用シキガミであるヒメと、田舎ニキの黒札専用シキガミである破裂の人形が、両者を諫めるように割って入る。

馬と田舎の二人は互いに一瞬だけ視線を合わせ、お互いに苦笑いしてから肩の力を抜いた。

 

「どうでしょう、ここはククルス・ドアンとクロスボーンの間を取って、1日ザクにしませんか」

「おい」

 

突然、和解案?としてトンチキなことを言い出したヒメに、馬ニキがツッこむ。

 

「いいですね、魔法の少尉ブラスターマリ。カルト人気ではクロスボーンに負けていません」

「おいこら」

 

ヒメに同調して破裂の人形も変なコトを言い出し、田舎ニキも慌てる。

 

「顔の造詣が甘く面長になってしまったドアン型似のザクが、ヒートホークではなく布団叩きを獲物にして振り回すんです」

「素敵です。でも1日ザクはMS-05ザクⅠですが、ドアン専用はMS-06FザクⅡです。どうしましょう」

「問題ありません、1日ザクのボディはなぜか0080のMS-06FZベースで描かれていますから」

 

シキガミ二人が展開する話題についていけず、黒札二人は困惑しきり。

 

「うーん、この……」

「とりあえず、シキオウジロボの外見カスタムは保留にしましょう」

「そうしよう」

 

なお、近い将来シキガミの手によりいつの間にか1日ザクの外見案がガイア連合技術部に提出されることになるのだが、馬ニキのあずかり知らぬところである。

*1
本作 Ex1

*2
本作 余話24~28

*3
本作 余話68

*4
本作 余話57

*5
本作 余話26

*6
1994年に月間少年エースで連載開始。続編や外伝などを含め、2026年もまだ連載継続中

*7
2021年ハサウェイ1、2022年ククルス・ドアン、2024年SEEDフリーダム、2025年ジークアクス、2026年ハサウェイ2、の順で公開

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