宮様のご家族用の結界が使用できる、いくつかの候補地(※京都多め)に移動することになり。根願寺のエリート(笑)霊能力者だけでなく、大和神の紹介や恐山からも護衛要員を呼び、金札や自衛隊や技術者などにもショタオジが声を掛け。それなりに手厚い支援体制となったのだが。
それでもキョウジおじさんから見ればまだまだ、という状態である。
そんなある日。COMPに届いたメッセージを見て、長野県上田市【派出所】の長である【黒札】馬ニキこと平田維茂は眉を顰めた。
「んんー、黒札相手にスパムメールとは、大胆不敵な不届き者め。モノに寄っては呪っちゃうぞ」
見知らぬ差出人からの不埒な勧誘メッセージ。まるっと無視して削除してしまっても良いのだが、もしかしたら話の種になるかもしれないと思い返して、馬ニキは面白半分でそのメールに目を通した。
「うむむ…… スパムじゃなかったけど、これはこれで面倒な……」
キョウジおじさんは霊能者としてのレベルが低く、配下として黒札を雇えていない*2ので、とにかく即戦力としてそれなりに戦える黒札を欲しているようだ。彼の仕事はショタオジ公認ということで、黒札にスパムメールまがいの同時一斉送信したのだろう。
「寄付を募るにしろ、クラウドファンディングやふるさと納税みたいなもの、って表現がまず怪しいよねぇ」
【終末】後の法秩序が崩壊した世界に置いて、宮様のご家族をどうやって食わせていくか。日本国憲法の納税義務という言葉も形骸化しており、国で養うことができないなら自力で稼がねばならぬ。
広く寄付を募るという手段そのものは悪い考えではないのだが、キャッチフレーズが良くない。
「『君も
ちなみに宮様ご当人は隔離された東京に留まっており、ガイア連合東京支部のオザワとちっひが通信できているように、コンタクトを取ること自体は可能である。
宮様のご家族が売官でとりあえずの糊口を凌いでから、宮様が『やっぱ無し』というリスクもある。それに『官位を与えた』のだからと、ことあるごとに集られるのも面倒だ。御恩と奉公が釣り合わないのであれば、関わらない方が無難である。
「後は…… 宮様ご家族のお住まい改修に対する協賛金? ああ、京都御所とか二条城離宮とか、明治以前の建築物だからか」
京都には『宮様や宮様ご家族がお住まいになられる場所』がいくつかあるが、歴史的建築物であり、風呂トイレといった水回りは、現代建築からすれば貧弱もいいとこである。いくら結界に守られているとはいえ、エアコンどころか家電製品すら未考慮な建物に住み続けようとは思えない。
その点だけは、同情してもいいかなーと思う馬ニキであった。
「次は『検非違使になれるチャンス!』って、これは京の怪異を討滅する…… いや、黒札がロバ霊能者を指揮して成長させることも職務に含んでいるのか。怪我・死亡しても自己責任、霊能アイテムの支給・貸与もなし、悪魔を倒して得られたドロップアイテム・マッカ・マグネタイトなども半分は上納するクソ環境で、手を挙げる黒札なんぞいるのか、これ?」
この期に及んで引き籠ったままの、筋金入りのニート黒札をメインターゲットにした釣り案件かな。
馬ニキはそう判断して、これ以上メールを読むのは時間の無駄とCOMPから目を逸らした。