実家で産土神との遭遇を終えて山梨の星霊神社に戻ってから、真っ先に事務のちひろさんに報告・相談した。
俺の所属については、あちらの規模が小さく実質乗っ取りになることも承知しているようなので、
馬背神からの異界攻略の試練に関しては、地方霊能組織から手に負えなくなった異界の攻略依頼を【俺たち】が請けることはさほど珍しいことではないようで、猶予が一年近くあるのでその間に強くなりましょうとさほど役に立たないアドバイスしか貰えなかった。
「戦力の安売りは他の黒札さんにも迷惑かけるから、異界攻略を依頼されたら謝礼をたっぷり搾り取るのが通例ですが…… まぁ
「半分身内ですから搾り取るのは勘弁してください」
「大丈夫ですよ、Lv1が一人だけのほとんど看板降ろしてる組織なんて、ロクなもの出ませんから絞っても意味ないです」
そういうブラックジョークを言うから、一部で守銭奴とか呼ばれるんですよ、ちひろさん。
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修行用ダンジョン低層に潜ってすぐに、<ヒメ>が今までより大幅に戦力増強していると分かった。
単純なパワーやスピードは前と変わらないが、馬背神の恩恵で思考AIがバージョンアップした結果、とっさの判断がワンテンポ速くなった。また汎用スキル【食事】を得て人としての概念がより強くなりディアの効きが良くなった*1ことも上げられる。
ショタオジ謹製のレンタル式神を悪く言うつもりはないが、やはり黒札専用高級式神はモノが違う*2。
これなら【地霊ノッカー】を相手にするのは卒業して、狩場をもう少し奥へ移動しても大丈夫だろう。
ダンジョンアタックだけでなく、アイテム作成とミナミィネキの個人指導もバランス良く。以前の成長方針は変わらぬまま、合間に<ヒメ>を可愛がったり(意味深)、<ヒメ>がミナミィネキへの嫉妬心を見せたと思ったら二人纏めてミナミィネキに指導(意味深)されたり、ゴールデンウィーク前から教習所に通っていたが無事に普通運転免許を取得できたり。
ダンジョン外の修行では陰陽和合に力をいれた結果、気の循環ができるようになり、汎用スキル【房中術(劣化)】から劣化が取れた。それに連動して<ヒメ>も新たな汎用スキルを取得し、更に連動して【性交】のスキルカードが作成できるようになった。
今までスキルカード作成を一手に引き受けていたミナミィネキは負担軽減に大喜びし、俺に『スケベ部幹部』と名乗る許しを与えてくれたのだけど…… 幹部を名乗る意味も特典もないので丁重に辞退した。
スキルカード作成により稼いだぶんは全部ガチャにつぎ込んで<ヒメ>用の装備とスキルカードを揃え、さらなるダンジョンアタックに備える。
そんなこんなで九月も終わるころには、俺はLv9、<ヒメ>はLv5、アガシオンもLv3までレベルアップした。アガシオンが高級式神にレベルアップ速度で負けるのは仕方ないところだが、アガシオンが【念動】を取得したためアイテム使用(主にデビルポイズンやデビルスリープ)という戦闘の幅が広がったのは良いことだ。
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星霊神社の修行用異界低層の最深部は、平均Lv10~15*3の【邪鬼オーク】【魔獣カーシー】【地霊ファハン】【夜魔キャク】【妖魔キンナリー】などが出現する。ここら辺になると敵も全体攻撃や状態異常など使ってくるので、高級式神の物理耐性に任せたゴリ押しが通用しにくくなってくる。安全重視の黒札だとそもそもここに来ないか、黒札複数名でパーティを組んでの探索となる。
そんな場所を俺は狩場と定め、単独パーティで挑んでいる。理由はいくつかあるが、修行用異界低層には安全地帯(通称セーブポイント)が用意されているのが大きい。
「撤退! てったーいっ!」
カーシーと戦いが終わった直後、ちょっと気を抜いたところでファハンに遭遇し、出会い頭に【マハーブフ】を貰ってパーティ半壊。俺と<ヒメ>はともかく、アガシオンは氷結弱点なのでマハーブフ一発でHPが危険水域に落ち込む。ここの狩場は少し格上の敵が出るので、アガシオンの【エネミーソナー】で敵を検知できないとマジで死ぬ。俺はアガシオンを失わないようにディアを掛けながら、<ヒメ>を
「な、何とか逃げ切れた……」
這う這うの体で安全地帯に逃げ込み、無様に寝転がって荒い呼吸を深呼吸で整える。
気持ちが落ち着いたところで改めてアガシオンにディアを掛け、とりあえずの立て直しが出来たことを確認してから、先ほどの反省を始める。
「戦闘終了時に気を抜かない、それができていない」
「ごめんなさい主様、私が不甲斐ないばかりに……」
「いや、あれは俺が悪いな。カーシーとの戦闘の趨勢が決まった時点でアガシオンを警戒に回すべきだったし、あの気の抜きようでは、アガシオンからの警告があってもまともに受けられなかっただろう」
アガシオンは【テレパシー】でエネミーソナーの結果を教えてくれるが、その対象は契約者である俺だけだ。
「ファハンやキンナリーを相手にするのは分が悪いので、場所を変えますか?」
「うーん、修行場中層に挑むにはまだ早いかな。
「ガイアカレーを食べるほど消耗してませんわ。主様のお側におります」
「そっか」
俺は安全地帯に持ち込んだ荷物の中からペットボトルの水を取り出して喉を潤し、タオルで顔の汗を拭ってから、地面に腰を下ろし座禅を組んだ。目をつぶり、呼吸をゆっくり大きく、意識は丹田に。丹田から発する気エネルギーはまるで温泉の湯面から湯気が発するかのように。その湯気を集め、円を描くように練る。
【チャクラウォーク(劣化)】、俺が新しく覚えたスキルだ。本来は歩くたびにMPが回復するスキルだが、気の循環を目標として房中術を収めた俺は、歩く代わりに瞑想することでMPを回復する。
この修行用異界低層には、ショタオジの好意で【エストマ】が常に掛かっている安全地帯が設置されている。本来ならこの安全地帯は一時的な休憩場所でしかないのだが、俺はチャクラウォーク(劣化)とディアが使えるので継戦能力が落ちない。
安全地帯を拠点にして、エネミーソナーで敵を選別して少し格上の敵に挑み、戦闘が終わったらすぐに安全地帯に戻って戦力再編する。なんと効率の良い稼ぎか!
とはいえ、安全地帯が存在することと万が一のレスキューサービスが受けられる、修行用異界低層ならではの稼ぎ方なので、他所では通用しないのだが。
平田維茂(ひらた・これしげ) 男・19歳 転生者 Lv9
ステータスタイプ:【体】寄りのバランス型
耐性:破魔無効、呪殺耐性(装備)
スキル:パトラ、ディア、ポズムディ、チャームディ、チャクラウォーク(劣化)*1
汎用スキル:房中術
称号:馬背神の加護(微)*2、スケベ部幹部*3
装備:ソニックナイフ、ガイア連合製退魔銃(拳銃型)、足軽具足一式、八尺瓊勾玉レプリカ
予備装備:デモニカ
仲魔1:シキガミ<
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、火炎耐性、氷結耐性、精神状態異常無効、呪殺無効
スキル:かばう、プリンセス☆パンチ(ひっかき互換)、挑発、チャージ、一分の活泉(装備)
汎用スキル:会話、食事、性交
装備:巴の薙刀、ハイレグアーマー、赤色のピアス
仲魔2:妖魔アガシオン Lv3
耐性:物理耐性、氷結弱点
スキル:ジオ、エネミーソナー、テレパシー、念動