【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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余話89 劇的ビフォアーアフター

【ガイア連合】技術部、と一口に言っても多種多様な物があるが、武器防具製造の中でも銃を扱う部署がある。

主に退魔銃や属性弾の作成・メンテナンスを行なう所であり、キノネキ*1などが所属している。

なお、しょせん黒札なので、実体は同好の士が緩く集まるだけである。

 

そんなある日、キノネキは技術部武器防具課銃係(仮)から耳寄りなニュースを仕入れたのであった。

 

「へぇ、とある黒札が持ち込んだ、幕末時代の火縄銃ねぇ…… 傍装雷火銃(ほうそうらいかじゅう)とか迅発撃銃(じんはつげきじゅう)とか?」

「さすがにそれは(ヾノ・∀・`)ナイナイ」

 

傍装雷火銃は、信濃国松代藩の御用鉄砲師である片井京助・佐野常忠親子が開発したもので、通常の火縄銃が二発撃つ間に七発撃てるという速射連射機能のある銃である。銃口から弾丸と発射火薬を込めるのは従来の火縄銃と変わりないが、発射薬に着火する部分に「雷粒」と呼ばれる衝撃で発火する火薬粒を使用するのが特徴だ。複数の雷粒を一つづつ火皿に落とすスライド式ケースを備えた撃鉄機構は、一部のガンマニアにとって垂涎の的であろう。

この銃は松代藩が秘密裏に作成したものであるが、嘉永六年(1853)のペリー来航により国防が叫ばれたとき、これを秘したままでは国家的損失と考えた佐野常忠は藩を裏切り、傍装雷火銃は幕府の知るところとなる。幕府はこの銃の製造法や使用法の技術移転を条件に松代藩を不問とし、佐野常忠は松代藩を追われた後、仙台藩伊達家の臣下となる。

迅発撃銃は、同じく松代藩の佐久間象山が片井京助と共同開発した連発銃であり、安政三年(1856)に完成したとされるが現存していない(設計図や解説書は残っている)。

 

「キノネキは、国友筒・堺筒・雑賀筒は持っている*2よね? 水戸藩製のは?」

「それは持ってないけど…… でも単なる火縄銃じゃ食指は動かない」

「まあ現物を見なよ、百聞は一見に如かずってね」

 

同僚に促されてキノネキは、テーブルの上に置かれている布をひょいと摘まんで、その下に隠されている砲身長1mほどの銃をご開帳。

 

「ふーん、何の変哲もない火縄銃…… じゃないね、これ、退魔銃だよね?」

「神社に長らく奉納されていたから、退魔の属性を得たようだ。詳しい経緯は分からないが、長野県上田市の山家神社に、大正13年の時点で社宝一覧に記録が残っている*3

「長野県上田市って、馬ニキのところか。それで、経緯不詳なのに水戸藩製ってのはどこから?」

「銃身に人名が刻銘されていて、それが水戸藩の鉄砲鍛冶師だと判明している。当人は桜田門外の変で井伊直弼を襲撃した水戸藩士一員として処刑されている」

 

最初は興味なさげであったキノネキだが、実物を目にして触れてみると、ニヘラと顔がだらしなく歪んだ。

漫画ならじゅるりと擬音表現されること間違いなしの、何かに魅入られたようなニヤケ顔である。

 

「これを悪魔退治の実戦に耐えるようリストアするのがオーダーなんだけど…… おい、他人に見せられない顔してんじゃないよ!」

「うへへ…… いい銃だね…… ウチの子になろうね……」

「おいこら、勝手に所有権を主張しない!」

「実戦に使用するなら現代のライフルでも渡してやればいい、種子島じゃ1秒10発の連射速度は逆立ちしても出せっこないから、属性弾さえ切らさなければ性能で文句言われることはないよ」

「だ・か・ら! 無断で猫ババしない!」

「劇的ビフォアーアフターで、種子島がAK-47に生まれ変わったことにならない? ……いやぁ、冗談だよ冗談」

 

テヘッという漫画擬音を背負い、小首を傾げて小さく舌を出すキノネキ。笑って誤魔化そうとする彼女に、同僚は溜息を一つついた。

*1
【カオ転三次】世界が終わるまでのバイク旅

*2
世界が終わるまでのバイク旅「銃器博物館」

*3
https://www.sankei.com/article/20180123-3HO2C7QTCVNN7PK3OABSI24DFM/

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