【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

157 / 157
余話96 平氏末裔も楽じゃない(2)

神奈川県小田原市の宗我神社へ無事(?)参拝を終えた馬ニキは、次なる参拝先として宮城県仙台市青葉区の宇那禰神社を選んだ。

仙台市は宮城支部のお膝元、シェルター結界内であり、北神奈川支部よりトラブル率は低いと見込んでいる。

 

「幼女ネキ、こんにちは」

 

【トラポート】で仙台に移動した馬ニキは、宮城支部のボスである幼女ネキに挨拶する。

 

「実は、葛葉キョウジから『平氏の末裔』であることを保証されまして*1。そのときに退魔一族・葛葉の保証も同然』と言われたので、念のため葛葉繋がりでライドウ*2にも話を通しておくべきかなって」

「ライドウの? 保証?」

「いやー、実は……」

 

馬ニキが恥ずかしそうに、自分のルーツがどこぞの馬の骨とも言えずに見栄を張った結果、平氏の末裔という家系捏造に至った経緯を説明する。

 

「ぷーくすくす。完全に自爆じゃん」

「なんともお恥ずかしい限りで」

「話を聞く限り、桓武天皇の分霊に認定されたんだから、葛葉の保証とか不要だと思うけど。うん、まあライドウとして追認しとくね」

自身にとって割とどうでもいい案件だったので、雑な返答をする幼女ネキ。しかし彼女の横に立つ幼女ネキの嫁六号、タマは、思うところがあるようだ。

彼女は肩をすくめ、馬ニキに苦言を呈した。

 

「『平氏の末裔』が嘘から出た(まこと)となりましたが、今までは貴方と桓武天皇が当事者同士で互いの利益のためにそう言い張っているだけでした。しかし、鵺原リンという『強力な第三者』から、そうであると認識された。その重みをもう少し自覚すべきです」

「?」

 

事態を深刻に捉えておらずのほほんとしている馬ニキに、タマは眼鏡くいっのポーズをして説明し始めた。

 

「信濃和田氏の流れを汲むと仰りましたね?」

「はい、そうですが。何か懸念でも?」

「和田氏と同じく平維茂を祖とする越後城氏はご存じですか?」

「通り一遍だけなら。すいません、末裔はニワカでして、詳しくは……」

 

タマは溜息をついて、馬ニキに憐れみの視線を向けた。

 

「鎌倉時代の歴史書『吾妻鑑』にこうあります──」

 

鎮守府将軍・平維茂の子、城繁成(平重成とも)は生まれてほどなく行方不明となった。人々が悲嘆に暮れること四年、夢のお告げに導かれて探し求めたところ、狐塚にてこの子を見出し、家へ連れ帰ったという。その折、狐が老人の姿に変じて現れ、刀と挿し櫛を子に与え、こう語った。

『この子を、老いた私が人里離れた地で育てていれば、日本を征服するほどの英雄となったであろう。しかし人の世に戻った今は、その位に就くことはあるまい。』

この子こそが、繁成である。城長茂はその血を継ぐ者として、今なおその刀を所持していると伝えられている。

 

「越後城氏は建仁の乱により鎌倉幕府軍に鎮圧され、歴史の表舞台から消えました。しかし城長茂の甥、城資盛が討ち取られた記録はなく、脱出して行方不明のままです。彼は同族である信濃和田氏に身を寄せ、城氏の血筋は和田氏と同化して残った…… ロマンある話だと思いませんか?」

「歴史ロマンある話ですが、それが史実かどうかは不確定ですね」

「でも完全否定出来ないでしょう? 和田氏と城氏はどちらも平維茂の子孫、同族です。それは呪術(オカルト)的に重要なことです」

「確か、和田氏は維茂の長男・繁貞の血筋で、城氏は維茂の三男・重成の血筋です。和田氏が城氏の分家筋というならともかく、城繁成が受けた狐の加護が、和田氏の流れを汲むことになった私にも、という話であれば、言い掛かりにも程があります」

「でも貴方は和田氏と城氏の起点である平維茂の転生体でもあるのでしょう?」

 

うっと詰まって反論の言葉を途切れさせた馬ニキに、タマはこくりと頷き、屠殺場に送られる豚を見るような憐れみの視線を再び向けた。

 

「実利があるから、悪魔は高レベル黒札と縁を結びたがります。理屈と膏薬はどこにでも付く、と言いますが、ほんの僅かでも食いつく隙があるなら、狐の元締めである稲荷神が見逃すことがありましょうや。まして貴方は温厚ですから、交渉が失敗してもローリスク。私が稲荷神の立場なら駄目元でやります」

 

タマの正体は【神獣ウカノミタマ】であり、稲荷神の分霊であった。今は幼女ネキの仲魔という立場だからこそ、こうしてアドバイスしてくれる。

ちなみに彼女が馬ニキを温厚と評したところで、彼女がちらりと幼女ネキに視線を向けたが、誰と比較して温厚なのかは察して欲しい*3

 

「平安神宮詣でのついでに伏見稲荷にでも行ってごらんなさい。散失した刀と櫛を再び、とばかりに差し出してきますよ」

「うへぇ」

「それを受け取ったら、中臣鎌足が稲荷神から鎌を授かった伝説の再来だと、そうこじつけて、次はどうなるのでしょうね」

 

こてんと小首を傾げながら、獰猛な笑顔を浮かべるタマ。まるで獲物の小鼠を追い詰めた肉食獣のような雰囲気だ。

馬ニキは救いを求めるように恐る恐る、幼女ネキの方をちらっと見た。

 

「なんだ、デビルサマナーが悪魔に隙を見せる方が悪いだろ。自業自得じゃないか」

 

さくっと切って捨てられ、馬ニキはがっくり項垂れる。

 

「稲荷神の分霊を一方的にボコれるくらい強くなれば、無理な要求を跳ねのけられるぞ。星霊神社ダンジョンの深層をしっかり探索してる? Lv上げ頑張ってる?」

「いやぁ、修羅勢と同じにしないで……」

 

詰問されて(なお幼女ネキは詰問しているつもりはない)呻くように声を絞り出す馬ニキに、仕方ないとばかりに幼女ネキは肩をすくめた。

 

「まあ、笑わせてもらったからな。稲荷神があまりに無体なことを言うなら、私がタマを通じて取りなしてやってもいいぞ」

「リンちゃんがデレました! ツンデレ! 駄目男を甘やかすバリキャリ女の図です!」

「やかましい!」

 

横からちゃちゃを入れたタマに幼女ネキがパシーンとツッコミを入れ、タマが衝撃でよろける。

 

「照れ隠ししなくていいのに……♡ もうっ♡」

 

変なスイッチが入ったのか、タマがくねくねし始める。

彼女から立ち上るラブの気配を察して、馬ニキは空気を読んだ。

 

「じゃ、私はこれで。ほな、さいなら」

 

怪しげな関西弁の挨拶を入れて、馬ニキはその場から脱兎のごとく逃げ出した。

*1
本作 余話94「楽しい家系捏造」

*2
【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策「転生ようじょ、もうちょっと未来。」では「一応ライドウの正式認可は頂くことにしたようです」とのこと

*3
幼女ネキの暴れっぷりにくらべると、ね?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

カオス転生異聞 デビルズシフター(作者:塵塚怪翁)(原作:女神転生)

カオスな女神転生の世界に転生したわりとカオスな設定がいっぱいある主人公のいろいろとあるお話。▼完結しました。▼※どくいも様の【カオス転生ごちゃまぜサマナー】及び他の三次作品をリスペクトして作った三次創作です▼※注意:この作品の世界は、筆者の設定をかなり盛ったためオリジナル様とはズレた世界線です


総合評価:2170/評価:7.29/完結:53話/更新日時:2022年07月15日(金) 18:00 小説情報

スキルツリーがバグった【俺ら】の現地事情(作者:神薙改式)(原作:女神転生)

 タイトル通り現地霊能者の家に生まれた結果、現地民と協力してほぼ手探り状態で異界攻略していた掲示板苦手な主人公…才能がロバなのにお人好しで覚悟ガンギマリばかりな現地民をなんとか助けたい一心で頑張っていたら、なにやらおかしな事になった様で…?▼ この作品はどくいも様作「カオス転生ごちゃまぜサマナー」の三次創作です…が、作者は神話やら伝承、歴史に関しては全く詳し…


総合評価:1625/評価:6.58/連載:84話/更新日時:2024年06月18日(火) 18:00 小説情報

Fate/Doomsday of the FAKE やべーやつらの聖杯戦争(作者:大嶽丸)(原作:Fate/)

▼いきなりだが、スノーフィールドは滅亡する!▼やべーやつら揃いのFAKEの鯖達を更にやべーやつらだらけにしただけの話。▼大部分のサーヴァントが他のキャラに入れ替わっていますので推し鯖が存在抹消されてるのかもしれませんのでそこんとこはご注意でお願いします。▼あと思い付きで書いたので続くかは分かりません。そもそも原作も完結してないからライブ感で行きます。


総合評価:1337/評価:8.9/連載:14話/更新日時:2026年08月29日(土) 16:58 小説情報

クソボケ激メロ術師の現代伝奇バトルでハーレム構築スローライフ希求譚(作者:所羅門ヒトリモン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 クソボケ激メロ術師の現代伝奇バトルでハーレム構築スローライフ希求譚。▼ 世界観が重くて、ヒロインの過去も重めだけど、主人公の周りでだけは『日常』や『青春』が謳歌されるやつ。▼ ザックリ言えば、バトル系少年マンガの女性キャラクターって魅力的な娘多くない?▼ 彼女たちとラブコメしてたほうが幸せじゃないか? って気づいてしまった男の話。▼ なお、別に少年マンガの…


総合評価:19818/評価:8.83/連載:37話/更新日時:2026年08月12日(水) 12:01 小説情報

カードの精霊が見えるプレイヤー相手に、『コントロール奪取』戦法をヤッたら絵面が酷すぎる件について(作者:コイントスは先行が良い)(オリジナル現代/冒険・バトル)

なお主人公(素でカード愛が重い)に精霊の姿は一切見えないので、周囲とは致命的な温度差が生まれて、とんでもない勘違いをされたり。超危険人物扱いされたり、自分の存在に気づいてほしい厄ネタ満載の精霊がめっちゃハッスルしたりする――そんなお話。


総合評価:4598/評価:7.88/連載:5話/更新日時:2026年09月22日(火) 19:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>