三宝荒神型ストーブをオカルトアイテム化しようとして失敗した馬ニキ。
未練がましくあれこれ捏ね繰り回したあげく、ようやく失敗を失敗として認めることができるまでに、そこそこの時間を要した。
気を取り直した馬ニキが再び新潟・魚沼支部を訪れたところ、金札・九重静からまたもや試作品を手渡された。
ファンの直径が大人の手のひらサイズの、卓上扇風機。PCデスクに置くUSB給電型のそれと比べ、金属製の物々しさを感じさせる。
試作品のためファンガードはついておらず、六枚羽に三宝荒神の真言が刻まれているのがよく分かる。
「ストーブファンと呼ばれるキャンプグッズに、マニ車の理論を加えました」
「ストーブ、ファン?」
金属の温度差を電気エネルギーに変換する『ゼーベック効果』という現象を利用し、ストーブの天板に乗せるだけで動き出す小型扇風機。
ただそれだけで、室内の空気をかき混ぜるので暖房効率が上がり、功徳を積むことができる。
元がキャンプグッズとして実績があるので、オカルトアイテムへの改造も最低限で済む。
「なん…… だと……」
馬ニキはそれまでの努力を否定されて目の前が真っ暗になり、ガクリと膝をついて四つん這いになった。
それまでストーブ内部に風車のようなものを追加しようとして四苦八苦していたのに、こんな簡単な解決法があったことに気づかず、無為に労力を浪費してしまったことに、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
「そんな…… 俺の今までの苦労は何だったのか…… うう……」
馬ニキはそのまま五体投地の体勢でバタリと倒れ、あまりのショックに白目を向いて失神した。
なお、三宝荒神型ストーブの改造に寝食を忘れてのめり込んでいたのが失神の主な原因である。
「ひぃっ?! 平田様?! 平田様ぁーっ!!」
これに慌てたのが九重静。
前に面会したときに試作品の三宝荒神型ストーブ・火鉢を贈ったところ、気に入ってもらえたので、今回も喜んでもらえるだろうと思っていた。あにはからんや、急に垂れ伏してピクリとも動かなくなるとは。
傍から見れば、余所の黒札を暗殺した場面である。下手すればシェルター同士の抗争に発展する可能性もある。
「あわわわわ……」
気が動転した静は腰を抜かし、顔色を真っ青にしてその場にへたり込んだ。
「わ、私じゃありません! 私は
壊れたレコードのようにやってないを繰り返すだけのbotとなった静。
十数分後、様子を見に来た田舎ニキが二人を発見し、それでようやく事態は収拾するのであった。