俺の【トラポート】の性能を実地検分したところ、行先は俺が行ったことのある霊地のみ、輸送できる荷物の大きさ・重さは俺個人が持ち運びできる範囲という制限があると分かった。30kgの米袋を両手で抱えて一度に運ぶなら頑張っても4袋120kgが限度。覚醒して常人より身体能力が上がっているとはいえ、荷物の重さに気を取られすぎるとトラポートを発動する集中ができないので、まぁこんなものかというのが正直な感想だ。俺のレベルが上がりトラポートにも習熟したなら、輸送量が改善される可能性があるが、トラポートの輸送依頼だけでは食べていけないだろう。
「それでもトラポート持ちは数少ないし便利です。全国のガイア連合支部・派出所を一通り廻って移動先を増やしつつ、各地の異界で武者修行というのも悪くない選択肢では?」
ちひろさんにそう言われると、それはそれで悪くない気がする。トラポートの転移先を増やすことは理にかなっているし、ショタオジも星霊神社の手厚いサポートで戦闘ができるようになったら地方遠征して自分のスタイルを確立するのが大事と言ってた。*1
「そうですね、来年は地方遠征します。それよりちひろさん、転居の処理お願いします」
「ファミリータイプをご所望ですね、一軒家とマンションで物件をそれぞれ探しておきます」
「そうそう、年末年始は実家に帰省しますが、ちひろさんはお土産に希望あります? お菓子が好きならクルミを使った焼き菓子とか、それともクラフトビールや地酒とか、食べ物よりファッション系が良いとか」
俺が実家から独立して山梨に引っ越した時は、黒札用独身アパートに住んでいた。高級式神と二人でいちゃいちゃしながら住むだけならその広さでも構わないが、紅葉が追加されて三人となると手狭に感じたのだ。
星霊神社近くの黒札用住居はいざというときのシェルターにもなるので、転居については事務のちひろさんに力を借りることになる。そしてお願いをスムーズに通したいのであれば、こうして心づけをするのが一番。もちろん賄賂とか大金が動くレベルじゃなくて、お中元お歳暮レベルの話だ。
有馬記念が終わってから年末年始の帰省は遅くないかって? 実家の大掃除を手伝わされないよう、ぎりぎりまで引っぱるんだよ。
*
実家に戻ったのは大晦日の午後という限界ぎりぎり。炬燵に潜って夕飯食べて、紅白歌合戦は詰まらないと格闘技の方にTVチャンネルを切り替え、だらだらしているうちに除夜の鐘が聞こえてきた。そろそろ頃合いだろう。
「二年参りに行ってくるよ、<ヒメ>もコートの準備して」
寒いのは嫌だとばかりに父母兄はいずれも外出を拒否し、俺と<ヒメ>の二人で年越しデートと洒落こむことに。
神社までのさして長くもない距離を、二人でのんびり坂を上る。除夜の鐘の高く澄んだ音*2をBGMに、鎮守の森の暗がりを進むのは、去年までと違って不思議な感じがする。【未覚醒】だった今までと違い【覚醒】できたことで心に余裕ができたからなのか、それとも単に<ヒメ>が隣にいるからなのか。
式神が人間に近いとは言っても、呼吸していないから吐く息が白くならないし、寒さで鼻の頭が赤くなったりもしないのだな、人前ではマスクさせる方が誤魔化せるか…… なんでロマンチックな方向に思考が行かないないのか。
そんな下らないことを考えているうちに、馬背神社の境内へ到着。馬背神社は屋台とか出ない寂れた神社なので、二年参りの人も少ない。境内の隅には焚火があり、そこに火の番の男が一人。
「宮下のおじさん、こんばんは」
「維茂君、こんばんは…… 旧年はお世話になりました、今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
丁度午前零時の切り替わりだったようで、俺たちは三人で神社の本殿に二礼二拍手一礼し、そうそうに暖かい場所(火の近く)へ移動した。なお馬背神の啓示はこのタイミングではなかったので、帰宅して布団の中で夢として受け取るのだろう。
「そういえば、この神社の神主はどなたで?」
「専属の神主の家系は、戦後のメシア教による弾圧で滅びた。分家筋の当家が氏子総代として普段は纏めているが、どうしても神主が必要という場合は生島足島神社からレンタルしている。何か心配事でも?」
「いえ、馬を奉納せよと神意を示されたのですが、奉納後に神馬の世話をする人がいないと難しいですね」
「そうだな、犬猫を飼うなら餌と排泄物と運動の面倒を見るのも大したことではないが、馬となると大掛かりになる」
「馬背神からは、異界の中に放し飼いすれば良いと言付かりましたわ」
「いや、馬を連れてきたらそれだけで周囲の耳目を集めるだろ。異界に入れたら馬が行方不明になって騒動になってしまう」
「維茂君が個人的に馬を飼うのはどうかな? このご時世、年老いて後継者もいないから農地も家も手放したいという人の心当たりがいくつかあってね、維茂君は次男だから新しく家を買ってそっちに住んでも問題ないだろ?」
「ペットの犬猫ですら一日以上放置できないのに、馬なんて無理です。定住どころか短期出張すらできなくなります」
「そうか…… 短期出張すら無理では、他所からオカルト仕事の応援も受けられないから厳しいね」
「そういう訳で、馬背神様、馬は諦めてください」
あっ、<ヒメ>がめっちゃ(´・ω・`)ショボーンしている。
項垂れている<ヒメ>を放置するのは流石に可哀そうだ、フォローしてやらないと。
「先ほど定住と言いましたが、こっちに居を構えることも考えているんですけどね」
<ヒメ>を抱き寄せて頭を撫でてやりながら、俺は以前からぼんやりと抱えていたアイデアを口にする。
「俺が責任者になる形で、【ガイア連合】の出張所を上田市に造れると思うんです」
「それはビッグプロジェクトだねぇ」
曲がりなりにも地元霊能組織として活動していた宮下のおじさんは、ガイア連合を地方に呼び込むことが何を意味するか、ティンと来た*3ようだ。
「ガイア連合内で流通しているオカルトアイテムを多少ならガイア連合外にも流せますし、拠点があればガイア連合から助っ人を呼びやすい。でも、拠点の第一候補としては別所温泉なんですよね。観光地だから余所者が出入りしても怪しまれにくいし、温泉があるから消耗後の回復も有利ですし」
「ううむ…… やはり温泉か…… あのとき室賀*4でなく浦野を主張できていれば……」
おじさんが深く考えだしたので、俺たちはさっさを家に戻ることにした。
なお、帰宅後に布団に入ったが、初夢に馬背神が登場して馬が欲しいガイア連合の拠点が欲しいと喧しかった。神の視点では有用でも、人の都合では実現しにくいんだって。
平田維茂(ひらた・これしげ) 男・19歳 転生者 Lv15
ステータスタイプ:【体】寄りのバランス型
耐性:破魔無効、火炎耐性(装備)、呪殺耐性(装備)、氷結弱点(装備)
スキル:パトラ、ディア、ポズムディ、チャームディ、トラポート、ハマ、チャクラウォーク(劣化)*1
汎用スキル:房中術
称号:馬背神の加護(弱)、スケベ部幹部*2
装備:小烏丸レプリカ、ガイア連合製退魔銃(拳銃型)、ブラッドデューク一式*3、デモニカ、八尺瓊勾玉レプリカ
仲魔1:シキガミ<
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、火炎耐性、氷結耐性、破魔耐性、呪殺無効、精神状態異常無効
スキル:かばう、プリンセス☆パンチ(ひっかき互換)、挑発、チャージ、食いしばり、勝利の小息吹、一分の活泉(装備)
汎用スキル:会話、食事、性交
装備:巴の薙刀、勝負服*4、赤色のピアス
仲魔2:妖魔アガシオン<アグネス> Lv7
耐性:物理耐性
スキル:ジオ、エネミーソナー、テレパシー、念動、警戒*5
仲魔3:鬼女紅葉 Lv10
耐性:物理耐性、破魔弱点、呪殺無効
スキル:ドルミナー、ディア、マハラギ、変化、酒の宴(劣化)*6