シアトル、アメリカの太平洋岸北西部最大の都市。日本から空路でこの地に降り立った俺と<ヒメ>は、同じ黒札仲間である狩人ニキから熱烈歓迎を受けた。
「いやー、よく来てくれたね! 海外で活動する【俺たち】は数が少なくてね、できるなら君にもこっちで活動して欲しいものさ、HAHAHA!」
「すいませんね、まだ活動拠点は日本から動かせなくて」
「なに謝ることはないさ。それで、【トラポート】で日米間を移動できそうかい?」
「いいえ、この距離は不可能ですね。ただしカムチャッカ半島・アラスカを経由するか、ハワイを中継するなら、移動できそうな感触があります」
「Oh! そいつは悪くない。帰路でハワイに寄る予定だから、それで日米を股にかける運び屋がまた一人誕生するってわけだな! そうなりゃいずれ来る【終末】の前に備えが1枚増えるってもんさ*1」
「そうなればこっちとしても嬉しいんですけどね」
狩人ニキの運転する自動車に乗って、シアトル郊外の【メシア教穏健派】が運営する教会に到着する。
教会の神父やシスターに挨拶し、荷物をゲストルームに運び込む。
「この教会は君がトラポート移動先に必要な【霊地】の条件を満たすかい?」
「はい、大丈夫です」
「それは良かった。時差ぼけ解消のため、まずはゲストルームで仮眠を取ってくれ。その後に起きたら、食事をしてからさっそく君のレベリングを行う」
「分かりました、ところでレベリングする
「行くのは【メシア教過激派】の秘密基地、出てくるのは
「えっ?!」
「なに、君は回復タイプだから、俺の後ろをついてくるだけで良い。物理耐性持っている仲魔がいるならタンクとして出してくれると助かる」
「ええっ?!」
「
*
あれよあれよという間にメシア教過激派の秘密基地を襲撃することになりました。狩人ニキはあらかじめ内偵して手筈を組んでおり、俺は実働要員として呼ばれたと今更ながらに理解する。ああ、随分と俺に都合が良い依頼だと思ったが、こんな裏があったとは。
普通のビルに偽装されているが地下にはヤバイいものがあるそうで、狩人ニキが前衛、俺が中衛、<ヒメ>が殿の隊列で、ビルに突入する。ビルのセキュリティ解除とかマップとかは狩人ニキに任せ、俺はただ後を付いていくだけ。敵として出てくるメシアン・ブッチャーは戦力的には大したことがなく、鎧袖一触という表現がぴったりで狩人ニキと<ヒメ>が薙ぎ払う。
俺はというと、実はブッチャー相手に戦っていない。正直言うと、人であるメシアンに手を上げるのを躊躇っているのだ。今まで人でない存在とはいくらでも戦ってきたが、心の奥底では人殺しを忌避している。
そんな俺の葛藤を表情から読み取ったのか、狩人ニキは短く「覚悟しておけ」と言ってから次のフロアに進んだ。
次のフロアは、端的に言えば『人体改造工場』だった。山梨の星霊神社でデビルシフターは何度も見たが、あれとは似ても似つかぬ、人間と天使の融合を目指した失敗作。人としての自我は欠片も感じられず、また天使としての存在感も感じられない、ただ周囲のマグを感知して触手を伸ばすだけの
「マジか…… やはりメシアンはクソ」
「ああ、メシアン死すべし慈悲はない」
「ここには失敗作しかないみたいだ、紅葉、【マハラギ】で全部焼き払ってくれ」
紅葉は破魔弱点なので今まで封魔管(脆)から出さずにいたが、火葬のために出てもらった。紅葉は封魔管(脆)の中にいても周囲の状況がある程度分かっていたようで、何も言わずにマハラギを周囲にばらまく。俺はスライムが燃やされマグに還元される様子を眺めながら、内心で彼らの冥福を祈った。
「一皮剝けた、戦士の顔になったな」
狩人ニキが揶揄う口調で俺の肩をポンと叩く。しかし彼の瞳の奥はまったく笑っていない。
「……アメリカじゃこんなのは珍しくないのかい?」
「有り触れてるさ」
「ご愁傷様って言えばいいのかな、それとも日本の環境がぬるま湯なのか」
狩人ニキは無言で肩をすくめるジェスチャーをするだけだった。安っぽい同情はいらないってことらしい。
「さ、次で最終階。そこにいるボスをボコったらここでの仕事はお終いさ」
俺は狩人ニキに頷くと、念のため紅葉を封魔管(脆)に戻した。
腹の中は怒りでぐつぐつ煮えたぎっているが、頭は冷静に。それが戦場で生き残るコツだ。
*
サイゲームスの二次創作ガイドラインに従い、暴力的シーンはカット。
<ヒメ>の活躍シーンは各自で脳内補完していただくようお願いします。
*
メシア教過激派の秘密基地の最奥でボスのテンプルナイトを狩人ニキと一緒にボコって、トラポートでメシア教穏健派の教会に戻る。以降の後始末は穏健派の人たちに任せるので、俺の出番はここで終わりだ。与えられたゲストルームで武装を解いてベッドへ横になった途端に、今までの高揚感が消え失せる。
「俺、人殺しデビューしたな」
「主様、お側におりますから、今宵は手を繋ぐなり抱き枕なりご自由に」
「ありがとう、<ヒメ>。おやすみ」
背筋から疲労がどっと押し寄せ、体が泥のように重くなる。俺は目を瞑ると呼吸を瞑想のように細く長くし、意識を沈めていく。大丈夫だ、<ヒメ>というアンカーがあるから悪夢に飲み込まれることはないはず……
平田維茂(ひらた・これしげ) 男・19歳 転生者 Lv18
ステータスタイプ:【体】寄りのバランス型
耐性:破魔無効、火炎耐性(装備)、呪殺耐性(装備)、氷結弱点(装備)
スキル:パトラ、ディア、ポズムディ、チャームディ、トラポート、ハマ、チャクラウォーク(劣化)*1
汎用スキル:房中術
称号:馬背神の加護(弱)、スケベ部幹部*2
装備:小烏丸レプリカ、ガイア連合製退魔銃(拳銃型)、ブラッドデューク一式*3、デモニカ、八尺瓊勾玉レプリカ
仲魔1:シキガミ<
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、火炎耐性、氷結耐性、破魔耐性、呪殺無効、精神状態異常無効
スキル:かばう、プリンセス☆パンチ(ひっかき互換)、挑発、チャージ、食いしばり、勝利の小息吹、一分の活泉(装備)
汎用スキル:会話、食事、性交
装備:巴の薙刀、勝負服*4、赤色のピアス
仲魔2:妖魔アガシオン<アグネス> Lv9
耐性:物理耐性
スキル:ジオ、エネミーソナー、テレパシー、念動、警戒*5
仲魔3:鬼女紅葉 Lv12
耐性:物理耐性、破魔弱点、呪殺無効
スキル:ドルミナー、ディア、マハラギ、変化、酒の宴(劣化)*6