日本に戻ってきました。いつもお世話になっている【ガイア連合】の受付嬢ちひろさんにハワイ特産マカダミアナッツチョコを手土産にして、ガイア連合の【派出所】を俺の地元に設立するための相談を持ち掛ける。
俺が構想しているのは、四国・大赦や青森・恐山のように商業施設【ジュネス】を誘致する大規模なものでなく、【ガイア連合支部・地獄湯】*1のような小規模なもの。オカルト情報の共有場やオカルト仕事の依頼仲介、ガイア連合製のオカルトアイテム販売などを行うが、地獄湯のように娯楽色強めといった特長をつけるつもりはない。ガイア連合所属の俺がここを活動拠点にすると周囲に示すことができればそれで十分。
大規模なものではないから、ショタオジ、財界ニキ、政界ニキなど組織運営系幹部連中の手を煩わせることなく設立できる*2…… と思う。まずは根回しの最初の段階だから今から不安がっても仕方ない。
ただ小規模とはいえガイア連合の窓口となると、最低でも長野県上田市、最高で東信地方*3のオカルト関連を仕切ることになるから、俺のLv20では貫目が足りないと言われるかもしれない。Lv30前後までレベリングすることが急務になるかも。
次に、異界『浦野牧』を終末に対するシェルターとして機能させるための牧場化計画だ。モデルは瀬戸内の【サクナヒメ】異界で、あそこがサクナヒメの権能で米を生産する代わりに、馬背神の権能で馬を育てる。
終末後は石油を燃料にしたトラック・トラクターはまともに運用できないだろうから、家畜としての馬は需要が高いだろう。また馬だけでなく牛・山羊・鶏なども飼育して食肉・乳・卵の生産も目指したい。理想を言うなら江戸時代の農村をベースに自給自足だが、米はサクナヒメの所が強すぎるのであそこから輸入する方が手っ取り早いかも知れない。他所と繋がりを保って損はないし。
*
そんな訳で、<ヒメ>と二人で馬背神社まで【トラポート】で移動して異界に入る。以前に*4年二回ほど異界内の雑魚掃除をするよう指示があったので、【餓鬼】やLv1未満の【スライム】のなり損ないを間引きながら、この異界のボスである馬背神(分霊)を探す。この異界は半径600mほどの平地主体なので、馬背神を探すことはそれほど難しくない。
「あ、馬背神様、お久しぶりです。今日は雑魚間引きのついでにお伺いしたいことがありまして」
「ブルルッ」
「馬の奉納については目途が立ちました、今は道産子を選定しているところなのであと一か月もあれば」
馬の姿の馬背神だが、異界ボスの座を奪取したときに比べてだいぶレベルが上がっているようだ。これならこの異界に野良悪魔が湧いてもボスの座を再び奪われることは早々ないだろう。ただ人の姿をしていないから会話がやりにくいんだよね。
「して
あ、<ヒメ>に憑依された。これはこれで会話に不自由しないけど、【シキガミの義骸】*5を用意してそっちを使ってもらうほうが良いかも知れない。
「馬を連れてきた後ですが、単にここで放し飼いにするのではなく、私以外の氏子たちもこの地に入れるようにして、ここを牧場にしたいのです」
「来る【終末】に向けて我が庭にて氏子どもを守るか、それは構わぬ」
「ありがとうございます! それで相談なのですが、この地の今の広さでは少々狭いかなと思いまして。
北向観音も生島足島神も俺の夢に出てきて俺を勧誘した*6くらいだから、協力してくれると思うんだよね。それに馬背神も力を得てきたから異界拡張できると思うんだ。
異界拡張のイメージ図
「……吾の力だけではなく、祖父神、
「それはタケミナカタ様なら土地を広げる
諏訪大社の祭神でもあるタケミナカタは、古事記に置いて国譲りの神話でタケミカヅチに敗北した国津神である。諏訪湖畔に諏訪大社が建てられた*7ことから分かるようにタケミナカタは水神であり湖畔を渡る風神であり、また弥生時代から諏訪地方の守護をしているため狩猟や農耕の恵みを人に与える神であり、中世に諏訪の一族が武士化したため戦神の側面まで持つようになった、広い権能を持つ神である。
そのような神であれば、異界を拡張することもできると。タケミナカタは馬背神社にで馬背神と合祀されているし、生島足島神社には境内社として諏訪神も祀られている。馬背神の言う通り、力を借りて異界拡張できそうな気がする。
「んー、ダイダラボッチ伝説か? 北向観音の背後にある夫神岳と女神岳はでいだらぼっちが運んできたと言う民話があるけど」
ダイダラボッチは山や湖沼を作ったという伝承が日本各地に残る巨人であり、鬼や大男だけでなく国造りの神の概念が含まれるとされる。上田市にダイダラボッチ伝説が残る以上は、ダイダラボッチの力で地形を変える(土地を広くする)ことも不可能ではないだろう。とはいえ国津神タケミナカタとダイダラボッチの関係はあまり密接ではないので、この
小学生の時に地元上田市の民話を勉強して、記憶の片隅に引っかかっているものが……
「あっ、小泉小太郎伝説!」
大蛇が人の子を産んで、その子が小泉村で小太郎という名で育てられた民話がある。大蛇は竜とイコールであり、竜は水神とイコール、すなわち水神としてのタケミナカタ。長野県には松本市にも泉小太郎という類似した伝説があり、こちらだと小太郎の母はタケミナカタの化身である竜とそのものずばり。そして小泉小太郎/泉小太郎は、母竜とともに半過の崖/山清路を突き崩し、湖であった上田盆地/松本盆地を排水して人が住める里にしたという。
「なるほど、タケミナカタ神は上田で土地を広げたという前例があるのか」
「きちんと『認識』したようでなにより」
オカルトの世界では『概念』や『認識』が重要な意味を持つ。悪霊を認識できない未覚醒者と認識できる覚醒者の差を述べるまでもなく、神が力を振るうにせよ概念・認識の有無は大きく違う。
ところで、俺の背後にいきなり出現したプレッシャーはなんですかね。馬背神が憑依している<ヒメ>が妙に生暖かい目で俺を見ているのも、関係ありますか。俺は観念して後ろに振り返った。
「タケミナカタ神でいらっしゃいますか」
「いかにも」
どう見ても【龍王ミヅチ】です。話の流れからして、タケミナカタ神の分霊で間違いありません。
「小太郎は竜の背に乗って巨岩・岩山を突き破った。其方は小太郎と同じく乗りこなせるか?」
「乗りこなすって、えぇと……」
「近頃は暴れることもなく退屈でな。我に力を示して見せよ、さすれば力を貸してやろう」
ミヅチはやる気満々ですね、ゲーム的表現ならイベント戦闘ってやつですか? 避けられない戦いっぽいなぁ。
今日は異界の雑魚掃討しかしないつもりだったから、装備とかきっちり用意してないんだけど、準備の時間を貰えませんか?
あ、馬背神(馬の姿)が俺達から距離を取って観戦モードに入った。いつの間にか馬背神の隣に北向観音と生島神足島神も居て、みんな観戦モードっぽい。
……仕方ない、腹を括ろう。ミヅチだけで良い、ダイダラボッチまで出てこないだけマシと考えるんだ。
「<ヒメ>! 紅葉! <アグネス>! やるぞ!」
北向観音と生島神足島神からやる気のなさそうな形ばかりの声援を貰い、俺達はミヅチに戦いを挑んだ。
平田維茂(ひらた・これしげ) 男・19歳 転生者 Lv20
ステータスタイプ:【体】寄りのバランス型
耐性:破魔無効、火炎耐性(装備)、呪殺耐性(装備)、氷結弱点(装備)
スキル:パトラ、ディアラマ、ポズムディ、チャームディ、パララディ、トラポート、ハマ、チャクラウォーク(劣化)*1
汎用スキル:房中術
称号:馬背神の加護(弱)、スケベ部幹部*2
装備:小烏丸レプリカ、ガイア連合製退魔銃(拳銃型)、ブラッドデューク一式*3、デモニカ、八尺瓊勾玉レプリカ
仲魔1:シキガミ<
ステータスタイプ:パワー型前衛
耐性:物理耐性、火炎耐性、氷結耐性、破魔耐性、呪殺無効、精神状態異常無効
スキル:かばう、プリンセス☆パンチ(ひっかき互換)、挑発、チャージ、食いしばり、勝利の息吹、一分の活泉(装備)
汎用スキル:会話、食事、性交
装備:巴の薙刀、勝負服*4、赤色のピアス
仲魔2:妖魔アガシオン<アグネス> Lv12
耐性:物理耐性
スキル:ジオ、スクカジャ、エネミーソナー、テレパシー、念動、警戒*5
仲魔3:鬼女紅葉 Lv15
耐性:物理耐性、破魔弱点、呪殺無効
スキル:ドルミナー、ディア、マハラギ、アギラオ、変化、酒の宴(劣化)*6