【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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第3話 実家近所の異界

ダンジョンで一機乙った直後は気持ちが乗らないので、当面のダンジョンアタックは後回しにして製造班に顔を出した。

そこでオカルトアイテムの真贋鑑定やアイテム作成の基礎知識などを教えてもらい、【イワクラの水】の作成成功率が10%くらいになったところで製造班を辞し、再度のダンジョンアタックの準備を進めることにした。

これは、俺の懐具合という重大な理由がある。黒札割引があるとはいえ、デモニカと高級式神をどちらも注文したので、膨大な借金を抱えているのだ。早いとこLv10に到達して地方の異界探索に軸足を移せば、無理なく数年で返済できる額ではあるが、駆け出しデビルバスターには目も眩むような借金である。

 

武器は引き続き【ソニックナイフ】と、新たにガイア連合製の【退魔銃】。防具はガチャで当てた【足軽具足一式】で、デモニカは成長の邪魔になるので当面は封印。注文した高級式神が届くまではレンタル式神を使うが、高級式神と同じ人型の方が乗り換えた後に楽ということでタンク兼物理アタッカーの【妖鬼オニ】。

これで星霊神社の修行用異界・低層をLv4になるまで探索し、Lv4になったら【アギ】と【エネミーソナー】が使える【アガシオン】を購入して偵察兼術アタッカーにする。高級式神が届くころにはLv10になっていることが目標だ。

 

そのように目標を定めたところで、三月後半になった。山梨・星霊神社近辺に生活拠点を移すため、いったん実家に戻ることにする。

 

*

 

高校の卒業式も無事終了し、実家に残していた漫画雑誌など不用品も処分した。

両親と兄には【ガイアグループ】に就職したという表向きの事実だけ伝え、後は盆正月にちょいと実家へ帰省するだけになるだろう。

今年のゴールデンウィークには、初任給で両親に贈り物という名目で旅行券でもプレゼントしてやろうか。前世の記憶持ちなんていう世間とズレたガキを愛情たっぷりに育成してくれた両親には感謝している。

 

「さぁて。最後のご挨拶と参りますか」

 

生まれてからこのかた、夏祭りと初詣の年二回かかさず参拝していた、歩いてすぐの場所にある神社にお参りして、遠方の地に移り住むのでもう氏子ではありませんと報告するのだ。

かつては半信半疑であったが、覚醒してからは神の存在を疑っていない。生まれ故郷の産土神に今まで世話になりましたと頭を下げる、それくらいの義理を通しておいて損はないだろう。

スーパーで買った紙パックの日本酒にオカルトアイテム作成の要領でマグを注ぎ、お供えのお神酒も準備した。

夕方、人気のなくなる時間帯を見計らって、鎮守の森に囲まれたお社へ。そして、そこで見た衝撃の事実。

 

「覚醒してからの参拝が初めてとはいえ、異界を封じる結界なんてあったんだな、ここ……」

 

俺が未覚醒の頃に【異界発生地周辺の探索】のアルバイトで、この神社の周囲を探索したことがあり、結果は白だった。だから無いと思い込んでいたのだが……

結界の古さや綻び具合から敷設時期を推察するに、戦後にメシア教が日本各地の神を封じたという話と一致する。

 

「まぁメシア教はクソ。俺たちの共通認識」

 

とりあえず、お社にお神酒をお供えして二礼二拍手一礼。当初の予定通り引っ越しのご報告を済ませてから、改めて結界を観察する。

 

「経年劣化しているだけ、今すぐにも崩壊するってことはないな。結界の維持メンテを行っているようにも、逆に結界を解除しようとしているようにも見えない。地元のオカルト組織がまともに機能していない証拠でもあるんだが…… おっ、ちょい大きい綻び発見」

 

見つけた綻びは、俺なら隙間に体を滑り込ませる感覚で結界を壊さずに中に侵入できそうな気がする。何の準備もなくそんな暴挙はしないけど。

 

「まずは隙間から向こうを観察っと」

 

視界の先にあるものは、平地と山。山といっても裏山・里山と表現できる程度でさほど大きくない。平地の方は異界の八割ほどの広さを占めるが、家・道・田畑など人の手の入ったものは見当たらない。

そして、動物霊が多い。ざっと見た範囲では、鼠猫犬狐狸鳥牛馬と、人にも馴染み深い動物ばかりだ。そのほとんどはLv1未満の雑霊で、稀にLv1~3の動物妖怪がいる感じ。

 

「星霊神社の修行用異界低層と同レベル、とりあえず当面の脅威は低い。結界の綻びもLv1未満の存在しか通過できないほどに留まっているから許容範囲。一応マグ注いで補修しとこうか?」

 

補修といっても、ガタガタいってる扉に布ガムテープを張って、ガタガタしなくなったという応急処置レベルだけど。まぁ今までこの地で霊障が起きたとは聞いたことがないので、この異界の中の霊たちはあまり現世(こちら)に興味ないのだろう。

山梨・星霊神社に戻ってから報告しても十分間に合う、そう結論付けて異界観察を終了する。

 

「ええと、お騒がせしました」

 

もう一度お社に頭を下げた後、先にお供えした酒が消えていることに気づいた。

 

*

 

その日の夜、実家で過ごす最後の一夜。

俺は神社の祭神様から神託を貰った。こっちのレベルが低いので明瞭なメッセージではなく、ぼんやりしたイメージとして受け取るだけであったが。

俺はあの異界の中で、馬に乗って平原を走っていた。

 




平田維茂(ひらた・これしげ) 男・18歳 転生者・覚醒済 Lv2
ステータスタイプ:【体】寄りのバランス型
耐性:破魔無効
スキル:パトラ
装備:ソニックナイフ、退魔銃、足軽具足一式、(デモニカ)
仲魔:妖鬼オニ(レンタル式神)
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