長野県上田市にある『浦野牧』は同地にある
異界の広さは大規模であり、シェルターとしては1万人以上を収容可能。ただし畜産業・農業とも黒札のお遊び程度しか開発は進んでおらず、1万人を食わせ続けることが可能かというと現時点では疑問が残る。
また馬背神というマイナー神格がボスの割に異界規模が大きいのは、
異界規模に反比例してガイア連合派出所としての組織力は貧弱で、黒札は前述の平田維茂1人だけ、地元霊能組織も貧弱な『馬背神社連』を従えたのみ。
─────ガイア連合事務員・千川ちひろの異界雑感
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今まで黒札として稼いできたマグを異界の主・馬背神に奉納し、異界『浦野牧』の拡張を願った結果、上田市の千曲川以西の全域を占めるほどに広がりました。小学校の学区でいうなら浦里・室賀・小泉・川辺・塩田西・中塩田・東塩田・南・城下の9つ。
これだけ広いと、当初の馬を飼うという目標に対して牧場だけでは土地余りになるので、農業も手を付けます。
当初の目論見だと、終末後の機械文明が崩壊した後も馬という家畜がいれば安心、という漠然とした思いだったわけですが。馬で荷運びや農耕をやらせるにしろ、馬にもそれら作業を教え込む必要があるわけで。馬の背に荷を括り付けたり、馬車を引かせたり、田んぼで犂を引かせたり、そういった訓練を馬に施すお仕事が増えるわけですよ。
ガイア連合支部長としての仕事がおざなりになる? ははは、聞こえないなぁ。
そんな訳で、唯一無二の相棒たるシキガミの『ヒメ』と一緒に拡張された異界の原野を開拓中。ヒメは馬背神の分霊であり馬との親和が高いので、彼女と一緒だと馬にいうことを聞かせやすい。田んぼつくりは日本有数の米どころ『ヒノエ島』異界に教えを乞うて、馬に馬鍬を引かせて荒起こしをしているが、人も馬も初めての手探り作業なので効率は悪い。
今シーズンの農業はリハーサルということで、真面目に取り組むのは来シーズンからになるだろう。来シーズンとか呑気な事を言って終末に間に合うのかって? そんなこと俺には分からない、ショタオジにでも聞いてくれ。
「ここらで休憩するか」
馬鍬を引かせている馬がへばってきたので、声をかけて馬を休ませることにする。霊能力者として覚醒した人間は常人(未覚醒者)の数倍の身体能力を得るが、Lv30超えとなると馬の体力をも上回るようだ。
馬の背から鞍を取り外して擦り傷などができていないかチェックし、馬に水を飲ませるためのバケツを持って水汲み場までひとっ走り。農業用水路の整備もしなければいけないが、高レベル能力者の身体能力でゴリ押しした方が早いかななんて思ってしまう。
「はい、ヒメもどうぞ」
「ありがとうございます、主様」
水汲み場で人間用に用意した水筒を渡し、畔とも呼べない田んぼ予定地の脇に二人で座り込む。馬は俺が持ってきたバケツで喉を潤した後、足元にある草をはみ始めた。俺はそれを見てなんとなく違和感を得た。
「あれ、ウマゴヤシはヨーロッパ原産の帰化植物*1だったよな? この原野に自然に生えてるけど」
「
「馬が酔う木と書いてあせびと読むんだったか。確か葉や花に毒があり、中毒症状が酔っているように見えることからそう名付けられた」
「ええ、奈良では野生のニホンジカも馬酔木を食べないそうです。うちの
「うーん、多く生えているなら間引いた方が良い?」
「馬酔木は葉を煎じたり水に浸けるだけでも除虫剤になるので、間引くのももったいないですわ」
脳筋タイプだと思っていたけどヒメは物知りだなぁ。
「
「ん? 身をもって?」
「はい、同じツツジでもレンゲツツジは毒があるので、花の蜜を吸うとお腹が痛くなります! レンゲツツジは毒があるからこそ虫が近づかず、観葉植物として重宝されるので、公園でツツジの花を見ても蜜を吸うのはお勧めしません!」
なるほど、ヒメが妙に賢いと思ったら、食欲に裏打ちされた知識だったのか。
「そっか、教えてくれてありがとう。 ……その、ツツジが咲いたら一緒に蜜を吸いに行こうか?」
「はいっ!」
本作は、サタンとかクズリュウとかビッグネームがラスボスとして登場することはないです。ローカルな話で終始します。