【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

49 / 148
Ex13 異界拡張(2)

正直な感想を言うと、馬を使役した農業は想像以上に面倒くさかった。耕運機(トラクター)、田植え機、収穫機(コンバイン)などの農業機械が発達した理由がよく分かる。

終末期に家畜を使った原始的農業に戻るのではなく、文明の利器を使い続けることはできないか。【ガイア連合】の技術班ならそういった方面で研究している人もいるだろうと探してみたら、オカルト多脚戦車*1の研究をしているチームに行き当たった。

彼らが何をやっているのかというと、悪魔カードと武器を合体させる原理で、乗り物(戦車)を悪魔化させたオカルト兵器の製造である。これの何が良いのかというと、マグネタイト・電気・ガソリン・サラダ油といったアバウトな燃料でもわりと動くこと。また自動車機械の整備・改造スキルと悪魔合体系スキルの双方を要求されるがオカルト的技術は割かしシンプルなので、【俺達】だけでも安定して生産できること。

デメリットとしては素材となる乗り物の調達コストが高いことだが、コンバインなど農業機械なら戦車に比べ安価で調達できる。

悪魔合体系スキルはスケベ部のミナミィネキが詳しい*2のでそちらから教えを乞うて、サクナヒメや稲荷伸など豊穣・農業系神格の分霊をデビオクで入手すれば良いのでは?

 

「……ミナミィネキのところで修行するか」

「思いついたことを深く考えずに手を出すのは、黒札特有の悪い癖じゃの。どうせ機械の整備改造スキルを得られずにお蔵入りになるに決まっとる」

「それでも悪魔合体系のスキルは身に着けて損のないものですから、強固に反対して主様の機嫌を損ねるのではなくコントロールする方向でいきましょう」

「機械整備のスキルカードなど見つからないとは思うが、一応は探してみようか……」

 

*

 

座摩(ざますり)神社、上田市上塩尻に存在するマイナー神社。

社伝によると養老元年(717)に養蚕の守護を祈って保食神(うけもちのかみ)を虚空蔵山頂に祀り同年絹の調(みつぎ)を奉ったとある。江戸時代から昭和まで上田市は養蚕の盛んな地であり、座摩神社は文化9年(1812)に京都吉田家より「正一位蚕養国大明神」の社号免許をうける。

上田市には当時の経済を支える神社として、文政11年(1828)建立の蚕影(こかげ)神社(上田市芳田)、昭和16年(1941)建立の蚕養国(こがいくに)神社(上田市中央北、大星神社摂社)と座摩神社の3つがあり、いずれも蚕の守護神として大いに賑わった。

しかし昭和恐慌と化学繊維(ナイロン)の普及により養蚕業が衰退すると、三神社とも信仰は衰退した。

 

保食神(うけもちのかみ)は日本書紀に登場する神で、口から食物を生み出すが月夜見尊(ツクヨミ)に殺され、その死体からは五穀や蚕が生まれる。古事記では同様のエピソードとして須佐之男命(スサノオ)大気都比売神(オオゲツヒメ)が書かれていることからオオゲツヒメと同一視され、また同じ食物神として宇迦之御魂神(ウカノミタマ)とも同一視される。

ただし保食神がオオゲツヒメ/ウカノミタマと異なるのは、死体から牛馬も生まれたのでら牛や馬の神とも扱われること。

 

なんでそんなことを調べたのかというと、保食神から霊界通信によるコンタクトを受けたからだ。

優れた霊能力者に対し神霊側から接触することは珍しくない*3が、縁もゆかりもまったくないところからアプローチされることは基本的にない。これはつまり、拡張された異界『浦野牧』の農業開墾を行ったことで、馬と食料生産の2つの権能に該当したということだろう。

というか、以前に山家神社のイザナミ神からコンタクトされた*4のと同じパターンだ、これ。

 

「同じ地域を縄張りとする日本神話の仲間同士、仲良くやれると思うのですよ」

「はぁ」

 

保食神は日本書紀に性別の記載はないが、オオゲツヒメと同一視されるだけあり女神の姿だった。

 

「馬・畜産については馬背神の顔を立てて、わたくしが口を出すことはありません。しかし農業と養蚕については、わたくしの加護は有用です」

 

イザナミ神のときよりは高圧的ではないが、セールストーク的な押しの強さはあまり変わらないな。

それより保食神の言い分を検討しよう。今の浦野牧に力を貸してくれる(異界の主である馬背神以外の)神格というと、馬背神社に合祀されているタケミタヅチ神、生島神と足島神、北向観音(千手観音菩薩)、道敷大神、塩焼王というところか。農耕神の側面を有する神もいるがそれに特化しているわけではないので、保食神の席は空いているのは確かだ。むしろこれ以上の神格を受け入れて異界が壊れてしまわないか、そっちの方が心配になる。

 

「今ですら多数神の寄り合い所帯、わたくしは荒事が苦手ですので、今更一柱が増えたとて問題はありますまい」

 

そうかな、そう言われるとそんな気もするが……

 

「道敷大神と同じく、まずは小さな祠で良いのです。荒野を開墾して田畑を作れば実りは保証しましょう。それに……」

 

ん? 保食神が俺のシキガミである《ヒメ》に意味ありげな視線を向けたぞ?

 

「蚕のために桑畑を作れば、甘い桑の実が食べ放題」

「主様っ! 是非、やりましょうっ!!」

 

やられた! 将を射んとする者はまず馬を射よと言うが、ヒメの食い意地張った部分をきっちり狙われた。

これはヒメからのおねだりにこちらが根負けする流れだ。保食神は思ったより策士かもしれない。

 

「いやぁ、うまいトコ突かれました。……保食神、今後ともよろしくお願いします」

「はい、コンゴトモヨロシク」

 

満面の笑顔を浮かべる保食神と握手して、契約成立を認める。

おかしいな、浦野牧に関係する神格の方が人間の霊能力者より多いんじゃないか? 確か、人材派遣のオファー出してるところ*5あったような。

*1
カオス転生ごちゃまぜサマナー「★【非報】ワイ将、リアルアイスティーされる+α」

*2
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ 悪魔しょうかん

*3
「23話超小ネタ 結局シキガミと本霊の関係って?」

*4
本作Ex4 伊邪奈美神の誘い

*5
なろう系な俺たち「【求】組織運営はつらいよ21【人手】」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。