正直な感想を言うと、馬を使役した農業は想像以上に面倒くさかった。耕運機(トラクター)、田植え機、収穫機(コンバイン)などの農業機械が発達した理由がよく分かる。
終末期に家畜を使った原始的農業に戻るのではなく、文明の利器を使い続けることはできないか。【ガイア連合】の技術班ならそういった方面で研究している人もいるだろうと探してみたら、オカルト多脚戦車*1の研究をしているチームに行き当たった。
彼らが何をやっているのかというと、悪魔カードと武器を合体させる原理で、乗り物(戦車)を悪魔化させたオカルト兵器の製造である。これの何が良いのかというと、マグネタイト・電気・ガソリン・サラダ油といったアバウトな燃料でもわりと動くこと。また自動車機械の整備・改造スキルと悪魔合体系スキルの双方を要求されるがオカルト的技術は割かしシンプルなので、【俺達】だけでも安定して生産できること。
デメリットとしては素材となる乗り物の調達コストが高いことだが、コンバインなど農業機械なら戦車に比べ安価で調達できる。
悪魔合体系スキルはスケベ部のミナミィネキが詳しい*2のでそちらから教えを乞うて、サクナヒメや稲荷伸など豊穣・農業系神格の分霊をデビオクで入手すれば良いのでは?
「……ミナミィネキのところで修行するか」
「思いついたことを深く考えずに手を出すのは、黒札特有の悪い癖じゃの。どうせ機械の整備改造スキルを得られずにお蔵入りになるに決まっとる」
「それでも悪魔合体系のスキルは身に着けて損のないものですから、強固に反対して主様の機嫌を損ねるのではなくコントロールする方向でいきましょう」
「機械整備のスキルカードなど見つからないとは思うが、一応は探してみようか……」
*
社伝によると養老元年(717)に養蚕の守護を祈って
上田市には当時の経済を支える神社として、文政11年(1828)建立の
しかし昭和恐慌と化学繊維(ナイロン)の普及により養蚕業が衰退すると、三神社とも信仰は衰退した。
ただし保食神がオオゲツヒメ/ウカノミタマと異なるのは、死体から牛馬も生まれたのでら牛や馬の神とも扱われること。
なんでそんなことを調べたのかというと、保食神から霊界通信によるコンタクトを受けたからだ。
優れた霊能力者に対し神霊側から接触することは珍しくない*3が、縁もゆかりもまったくないところからアプローチされることは基本的にない。これはつまり、拡張された異界『浦野牧』の農業開墾を行ったことで、馬と食料生産の2つの権能に該当したということだろう。
というか、以前に山家神社のイザナミ神からコンタクトされた*4のと同じパターンだ、これ。
「同じ地域を縄張りとする日本神話の仲間同士、仲良くやれると思うのですよ」
「はぁ」
保食神は日本書紀に性別の記載はないが、オオゲツヒメと同一視されるだけあり女神の姿だった。
「馬・畜産については馬背神の顔を立てて、わたくしが口を出すことはありません。しかし農業と養蚕については、わたくしの加護は有用です」
イザナミ神のときよりは高圧的ではないが、セールストーク的な押しの強さはあまり変わらないな。
それより保食神の言い分を検討しよう。今の浦野牧に力を貸してくれる(異界の主である馬背神以外の)神格というと、馬背神社に合祀されているタケミタヅチ神、生島神と足島神、北向観音(千手観音菩薩)、道敷大神、塩焼王というところか。農耕神の側面を有する神もいるがそれに特化しているわけではないので、保食神の席は空いているのは確かだ。むしろこれ以上の神格を受け入れて異界が壊れてしまわないか、そっちの方が心配になる。
「今ですら多数神の寄り合い所帯、わたくしは荒事が苦手ですので、今更一柱が増えたとて問題はありますまい」
そうかな、そう言われるとそんな気もするが……
「道敷大神と同じく、まずは小さな祠で良いのです。荒野を開墾して田畑を作れば実りは保証しましょう。それに……」
ん? 保食神が俺のシキガミである《ヒメ》に意味ありげな視線を向けたぞ?
「蚕のために桑畑を作れば、甘い桑の実が食べ放題」
「主様っ! 是非、やりましょうっ!!」
やられた! 将を射んとする者はまず馬を射よと言うが、ヒメの食い意地張った部分をきっちり狙われた。
これはヒメからのおねだりにこちらが根負けする流れだ。保食神は思ったより策士かもしれない。
「いやぁ、うまいトコ突かれました。……保食神、今後ともよろしくお願いします」
「はい、コンゴトモヨロシク」
満面の笑顔を浮かべる保食神と握手して、契約成立を認める。
おかしいな、浦野牧に関係する神格の方が人間の霊能力者より多いんじゃないか? 確か、人材派遣のオファー出してるところ*5あったような。