【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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余話2 難民の玉突き事故

終末後、長野県上田市の【ガイア連合派出所】である『浦野牧』は【シェルター】としても機能している。

シェルターを実質支配する【黒札】は通称『馬ニキ』、本名は平田維茂。このシェルターに定住する黒札は彼のみであり、シェルター運営において彼が頼りにするのは零細地元霊能組織『馬背神社連』の宮下(いたる)知佳(ちか)の親子2名。この親子二人は馬ニキお気に入りの金札という扱いで、終末前に市会議員をしていた宮下(父)がシェルターの代表として全体を仕切り、宮下(娘)と結婚して娘婿となった馬ニキが実働担当、宮下(娘)は派出所に設置した人外ハンター協会の窓口業務を仕切っている。

なお、かつてロリショタニキに人材派遣を再依頼した*1が、人の縁というのは難しいもので、今のところ派遣契約は成立していない。

ついでに言うと、金札のうち宮下(父)は才能上限がLv1、宮下(娘)は才能上限がLv4のところ房中術による肉体改造*2によりLv8まで引き上げて、これが現在シェルターに常駐する現地霊能者のトップ。マキマネキ*3のように現地霊能者を上手く戦力化できておらず、戦力としては馬ニキが一人だけ突出しているので、馬ニキの負担はかなりヤバい。

 

馬ニキが実働担当となっているが、実際の役割は【三重第二支部】*4と比較すると、自衛隊のグラハムと地元霊能代表の夏油を足して2で割らない。

強力な悪魔と真正面から戦い、シェルター外部の探索をこなし、異界・シェルターに加護を与える馬背神ほか神仏のご機嫌を取り、低Lvのデビルバスター育成を支援する。そこに黒札という立場からしかできないガイア連合や他黒札と折衝と、オカルトアイテムの作成が加わる。馬ニキはトラポートを使えるので頻繁に緊急呼び出しされるのもブラック労働の要因となる。

 

*

 

シェルター外に出て、低Lvデビルバスターの引率をしながら悪魔を間引きしつつマグ稼ぎ。

一仕事終えて戻ってきた馬ニキは、シェルター長を委任している宮下(父)に呼び止められた。

 

「あの、新潟・魚沼から難民漂着*5のクレームが届きました」

「え? 道案内も護衛もなしに生き延びたの? というかうちを出発してから到着までずいぶん時間がかかったね?」

「終末後の魔界は時間・空間が歪むこともありますから、そういうこともあるのでしょう。それよりどうします? クレームの名義は碧神凍矢ではなく九重静となっており、【黒札】案件ではないので無視することもできますが」

「うーん、田舎ニキとは仲良くしておきたい。こっちも黒札(おれ)じゃなくお義父(おとう)さんの名義でお詫び文を回答してください。それで済むならそれで良し、向こうが誠意を見せろってごねるなら、Lv5くらいの【バイコーン】か【ユニコーン】1体を【デビオク】経由で渡すか、【パトラ】の【スキルカード】1枚なら譲ってもいいから」

「厄介者を押し付けた迷惑料というには高価すぎません?」

「そう? 詫びの手土産として渡すならうちの特産品が手ごろかなって思ったけど」

 

【異界】としての『浦野牧』は馬牧場の側面が強いので、低Lvの馬型【悪魔】はそこそこの頻度で発生する。Lv30台に達した馬ニキならそれらを捕らえ従えることも難しいことではない。また馬ニキは過去にパトラのスキルカードを何度も生成しているので、どちらも多少の手間がかかるだけの生産可能な品という認識である。

とはいえそれは高Lv黒札の視点である。低Lvの現地霊能者からすれば上級の戦力増強手段であり、切り札として乱発すべきでない高級品に見える。

 

「魚沼支部とは今後も長い付き合いになります。どこもリソース確保には苦労しているのですから、今回の詫びの品を基準とされて今後何かとこのレベルの貢物を要求され続けることを懸念します」

「田舎ニキはそこまでケチな人じゃないよ」

「私が心配しているのはクレーム名義の九重さんです。黒札の威を借る形で、黒札に無断で、何度もタカるような卑しい性根かも知れません」

「【黒札】の名前を出して大事(おおごと)にしたくなかっただけだと思うけどなぁ」

 

馬ニキは、かつて魚沼支部の異界『黄泉比良坂』へ出向いたときに彼女が同行したことを思い出した。彼女の印象としてそんなケチ臭い人物ではなかったはずだが、それを口にして反論することは止めた。

代わりに大きくため息をついて、眉間に皺を寄せて言葉を絞り出す。

 

「シェルター運営に必要なことなんだろうけど、他人を疑って生きるのは面倒だな」

 

長らく政治家の端くれとして市議会議員を務めてきた宮下(父)は、それに対して何も言わない。

 

「……ああ、田舎ニキには俺からも話を振っておくよ。トップ同士で認識合わせておけば、不心得者の入り込む隙間もないでしょ」

 

シェルター運営を諦めて山梨・星霊神社に引っ込む黒札の気持ちがよく分かる。

*1
本作「Ex Final スローライフの終わり(最終話3回目)」

*2
カオス転生ごちゃまぜサマナー IF小ネタ 佳君ととある黒札

*3
小ネタ 頭マキマさんな俺たち

*4
小ネタ 三重第二支部デビルハンター(バスター)事務所ってどんなところ?

*5
故郷防衛を頑張る俺たち「長岡市シェルター防衛と悪徳政治家」

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