以前にロキからマグ汚染を喰らったときにショタオジの診察を受けたが、今回もショタオジに診断してもらった。
馬ニキは【トラポート】持ちなので、終末後でもフットワークが軽いのは利点である。
「まずは、君の魂を汚染した【ロキ】の意志を持つ【マグ】は、完全に溶けて君と同化したようだね。おめでとう」
「ありがとうございます」
「意志のないただのマグになったとはいえ、ロキの風味は君から失われたわけじゃないから、『前世を乗っ取られた』状態のままであることに変わりはない。でもこれで君の内側からロキが誘惑してくることはないはずだ。……新しいロキの分霊が君に接触しない限り、安心していい」
「割と安心ならないんですが、それ」
「ロキ除けのお札とか、君自身がロキ要素をしっかり含むから効果ないんだよね。僕の方で多神連合に釘を刺しておくから、ロキも迂闊なことはことはしないと思うよ、多分、メイビー」
「そう言って不安を煽るのは止めてください」
「ははは、君のリアクションが楽しくてね。でも半分は老婆心からの忠告。泥棒が来ると分かっているなら予め備えておくのが当たり前、ロキとの強い縁を持つ君は最低限心構えだけでもしておかないとね」
そうしてショタオジは、にこりと笑って話題を切り替えた。
「ロキの力を引き出せるようにとは言ったけど、いやぁ、Lv30後半になってから
ショタオジは立派な装丁の分厚い書物を片手に、俺をまじまじと見つめた。彼が手にしている本はおそらく、ルシファーの知識の詰まった【悪魔全書】とも言うべきものなんだろう。
「君が
女神転生というゲームにおけるスレイプニルのグラフィックは、蜘蛛と同じく、明確に脚が八本あるスタイルで描かれている。
それに対して俺が変身した馬の姿は、輪郭でいえはサラブレッドによく似ている。ただし馬体の球節から蹄の部分*1がサラブレッドと比較して太くごつい。しかもその部分の色が外側と内側で異なるため、一本の脚に足先が二つあるようにも見える。人間で例えるなら腿や脛は一本だが足首から先が二つあり左右合計で足四本、というイメージだ。
「【マーメイド】に悪魔変身する黒札が、下半身が通常のマーメイドと違うと悩んでいた*2こともあるし、悪魔の外見は当人の意識に強く影響されることも多いから」
ショタオジは推定・悪魔全書に走り書きしたメモ用紙を栞のように挟みこみ、それを脇に置いてから話を続けた。
「後は美大生ネキと同じく【悪魔カード】*3を渡しておこう。君も修行すれば複数種類の悪魔に変身できるようになるよ。……君の相性からすると、該当する悪魔は【バイコーン】、【ユニコーン】、【ペガサス】、【スレイプニル】、【ケルピー】くらいかな。【ケンタウロス】みたいな半人半馬はもっとデビルシフト能力に習熟すれば可能性がある、【馬頭鬼】のような人型メインは頑張ってもぎりぎりワンチャン?」
「ペガサスの飛行能力やケルピーの水棲能力は気になりますが、霊格的にスレイプニルが一番強そうな気がします」
「そうだね、馬型悪魔しかバリエーションがないなら、複数に分散するのはあまりお勧めしない。美大生ネキは人の血肉を好む悪魔の影響を薄めるという意味が大きかったけど、君なら日常生活に悪影響が出ることもないだろう」
*
「悪魔変身【俺たち】のサークルがあるなら、挨拶しておきたいところだけど。そんなサークルあるかな?」
ショタオジとの面談を終えた馬ニキは、山梨第二支部をうろついていた。
そこへ彼に声をかける一人の女性。
「馬ニキさん、お久しぶりです」
「これはミナミィネキ、お久しぶりです」
「ふふふ…… 上田市のシェルター運営、お疲れ様です。私から見ても頑張っていると思いますよ」
「そう言っていただけると励みになります」
スケベ部部長にして馬ニキの房中術の師匠、ミナミィネキが笑顔で彼を褒める。
彼女は立ち話もあれだと彼をカフェに誘い、馬ニキもほいほいと彼女の後を付いていく。
「ところで、聞きましたよ。デビルシフターの能力に目覚めたんですって?」
「耳が早いですね。秘密にしていないとはいえ、積極的に広めてもいないはずですが」
「壁に耳あり障子に目あり、と申します」
ミナミィネキはすまし顔でさらりと躱し、馬ニキも無粋な突込みはしない。
「ところで、今回お誘いしたのは、スケベ部の仲間を助けて欲しくてですね。ドクオニキ*4がシェルター運営に苦労されているのはご存じ?」
「ええ、理由がないとシェルターに足を運ばないようになったとは噂で聞きました」
「それなら話は早いですね。彼のシェルターではニッチなAVを撮影して稼いでいるのですが、ここは一つ、AV撮影に協力していただきたくて」
「ドクオニキには以前に世話になりましたし、恩返しできるなら構いません」
どうせ撮影係とか女優スカウトとか、裏方周りを任されるだろうと勝手に思い込んだ馬ニキは、深く考えずに同意する。
「本当ですか? ありがとう! もう私の方で企画を練ってあるんですよ。これが企画書です」
そう言ってミナミィネキが薄っぺらい紙束を馬ニキに手渡す。
馬ニキは1枚目のタイトルを見て、全身を強張らせた。
「……『黒札がTSケモノ化! シキガミの馬耳ケモノっ娘と極太ディルドー純愛百合獣姦、攻め受け交代あり、女性型仲魔が乱入して百合乱交もあるよ』って、コレがタイトルですか?」
「はい、分かりやすいタイトルだと自画自賛しちゃいます!」
「ええ…… まさか、俺が女優側に回るなんて。あの、やっぱキャンセル……」
ミナミィネキは威嚇するようなにっこり笑いを浮かべ、馬ニキは首をすくめ言葉を引っ込めることしかできなかった。
「自衛隊ニキネキのポルノが公開された後、彼女にどれだけの貢物が届いた*5かご存じ? 貴方ご自身にとっても実入りのいい案件ですよ」
それを聞いて物欲と羞恥の間で悩む馬ニキと、ここで悩むならもう折れたも同然ですねと内心でほくそ笑むミナミィネキ。
二人の打合せはそれから30分ほど続いたが、ミナミィネキは最後まで柔らかい笑みを絶やさなかったとか。
※ 本作では18禁描写をしません。
※ なおファンアートはいつでも受け付けております。
「終末に向けての準備するとある転生者の話」の作者様は素材フリー宣言していませんので、無断使用です。
ご本人様からの抗議があったら該当部分を削除します。
ご本人様から許可を頂きました。感謝!