我らが異界『浦野牧』にちょっかいを出しているギリシャの神格は何ぞや。
占術の得意な黒札に依頼をする前にちょっとギリシャ神話を調べたところ、さほど苦労することなく一つの名前が出てきた。
ネペレー。ギリシャ神話に登場する雲のニュンフ(ニンフ)、または下級女神。
イクシオンが女神ヘラに横恋慕したとき、ゼウスが雲からネペレーを作り出し、ヘラの代わりに彼女を宛がったという。この交わりによりネペレーが産んだのがケンタウロス族の祖とされている。またネペレーはアタマースとの間に息子プリクソスと娘ヘレーを生み、アタマースの後妻イーノーの陰謀からプリクソスとヘレーを助けるために翼のある金色の羊を遣わした*1。その金羊毛はコルキスの宝とされ、イアソンとアルゴナウタイの冒険につながっている。
「金毛羊と【ケンタウロス】、どちらも縁深い存在だからネペレーで確定だと思うんだ。【ニンフ】なら【妖精】【精霊】の類だからそんなに強大な存在じゃないし、焦らなくても良いかなって」
「……ネペレーは合っていると思うが、与しやすしと侮るとあっさり死ぬよ?」
念のためにと占術の得意なくそみそニキ*2に相談したところ、考えが甘いと一蹴された。
「ニンフの一種である【妖精ナパイア】*3や【妖精ドリアード】*4などをイメージしていると思うんだけど、ニンフは女神転生外伝ラストバイブルではLv39と結構強い。それにゼウスがヘラを模して作ったこと、アタマースとイーノーの騒動でヘラはネペレー側についたことを考慮すると、ネペレーはヘラの分け身と認識すべきだ」
「マジっすか! ギリシャ神話主神の正妃の分身とか、めっちゃ大物じゃん!」
「ギリシャ神話の破天荒な男神に比べればまだ大人しいけど、ネペレーの背後にいるヘラは嫉妬深いことでも有名。扱いを間違えないようにね」
くそみそニキの口ぶりからするに、粗雑な扱いをしてヘラを怒らせる未来を垣間見たのでは?
そう察して背筋を震わせる馬ニキであった。
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DDS-netで自衛隊ニキネキのライブバトル*5が配信された。
これは東京・上野の自衛隊ニキネキと【女神イズン】の【黄金の林檎】を賭けた戦いが東京内の別シェルターにライブ配信され、その配信映像をアーカイブ化して東京の外に向けて通信したものである。同時に上野シェルターの欲しいものリスト*6も公開されており、視聴料代わりに欲しいものリストにあるものをお布施として送ってくれというものだ。
「美の女神による権能のぶつかり合い、マジ凄い」
中東の【女神イシュタル】(推定)の加護を受けた自衛隊ニキネキ's(オリジナルと催眠女人格の二体分裂)vs北欧の女神イズンによる美貌と歌とダンスの圧倒的パフォーマンス。
良いもの見せてもらいました、都内自販機への支援物資送付プロジェクトに投げ銭します。
「金が取れる映像とは、まさしくこれを指すのだな。我らが撮影したAVなど足元にも及ばぬ」
仲魔と一緒に鑑賞したが、鬼女紅葉がぼつりと漏らし、一同それに同意する。
ドクオニキのところで撮影したAVは、ミナミィネキの儲かるという口車に乗ったが、実際にはまったく稼げていない。販売本数も少ないし、投げ銭・お布施どころか一言感想すらろくに届かない。数少ない感想を掻き集めたところ、雌馬獣姦モノはニッチすぎる、屍鬼オバタリアン無様エッチモノは悪趣味きりたんネキ*7の作成するAVの方が尊厳凌辱の出来が良い、ということだった。
「そうだな、ドクオニキへの支援という義理は果たしたし、AV撮影はもう辞めるか…… いや元スカディへの尊厳破壊は続けよう。
馬ニキの見せしめ制裁へのやる気 【1D100:79】*8
ドクオニキのように義務感で復讐やって心を病むのとは違い、好んでやっていますね。
「まぁそれはそれとして、支援する物資はなに贈ろう」
欲しいものリストを見ると、食料・武器弾薬・日用品などシェルター維持に必要な汎用物資はガイア連合の事務局で纏めて取り扱うので【マグ】か【マッカ】を、美の女神を飾るに相応しい宝石など一品物はそれとは別にウェルカムとなっている。
「うちの異界で養蚕をやってるから、絹なら贈れるかな」
「上野シェルターに服を仕立て上げるだけの余力があるとは思えぬ、生糸や布を贈っても喜ばれるとは限らぬ」
「む、それはそうか」
「主様、自前の産物に拘るならウグイスの糞がよろしいのでは?」
ウグイスの糞は絹織物の染み抜きや染料落としとして使われるほか、美肌洗顔料としても古来から有名だった。またウグイスは鶏と違い大量飼育が難しく、数羽をケージ飼育する程度では糞を少量しか得られないため、美容品かつ貴重品という意味で美の女神への贈り物には相応しい。
ただし実情を知らないものが糞のイメージから不快感を持つこともあり、品名としてはウグイス粉などと言い換えられることもあった。
「オオゲツヒメのように糞を価値あるものとして渡してトラブルになる例もあるし、事前に問い合わせして確認取るのも面倒だから、マッカで済ませるのが手早いかな」
DDS-netの都内自販機支援物資送付プロジェクト紹介ページに移動すると、マッカ払いでも単発だけでなく定期支援年間コースがあり、一定額以上支援すると自衛隊ニキネキから返礼ビデオメールがあるなど、クラウドファンディングを意識した構成になっている。
「とりあえず単発でマッカ投銭&感想を送れば…… えっ、さっきのライブ映像をリピート再生するには一定の支援額が必要? これ絶対ちひろさんのアイデアでしょ」
それでもシェルター内の娯楽に転用できるから損しないでしょ、と気軽にポチった馬ニキであった。
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「【デミナンディ】はいったん廃棄処分だな。無理言って初期ロット譲ってもらったのにこちらの都合でストップとか、佐渡支部に顔向けできねぇー」
デミナンディは【シヴァ】神の乗騎である【神獣ナンディ】をベースにしておらず、実は台湾の【魔獣テーグー】という牛型悪魔をベース*9にしていると勘違いに気づいたのがつい最近。そう誤解していた一因が、サンプルとした受領したデミナンディが白かったからだ。
ナンディは乳白色の牛なので、名前だけ使用しているデミナンディに何らかの影響があったと思われるのだが、その白いというのがギリシャの神格にちょっかいを掛けられている現状では不安要素になる。
なにせギリシャ神話で白い牡牛といえば、ゼウスが白い牡牛に姿を変えてエウロペに近づくという有名な話が残っている。
「早々に屠殺して肉はBBQにして、助っ人のグリムアロエちゃんとアカネちゃんをもてなすとか?」
【トラポート】で山梨第二支部へ行き、黒札料理人のジャンニキ*10を連れてきて牛を捌いてもらい、ついでにBBQソースや焼きそばなんかも彼の伝手で入手できないだろうか、と取らぬ狸の皮算用を始める馬ニキであった。
ネペレーについてはR-18区分の別話で。
追記:時系列の整理
本作では、佐渡でナンディをベースにしたデミナンディ開発(アルカトラズ・レポート 前編)→それをサンプルとして浦野牧が受領(本作余話7)→佐渡がテーグーをベースに新デミナンディを開発中→新デミナンディがロールアウト(アルカトラズ・レポート 中編)、としています。
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ」作者の頓西南北様より、デミナンディについてご指摘をいただきました。デミナンディの素材に聖獣ナンディは使用しておらず、あくまで名前のみとのこと。
これを受けて本作内でのデミナンディの扱いを変更しました。(2023/9/17)