上田市【派出所】こと『浦野牧』シェルターは、規模としては小規模になる。馬牧場を主産業としているため敷地面積はそれなりに広いが、現在の人口は2000人。1つの県を管理するレベルの超大規模である霊山同盟支部*1や、結構大きめの地方都市サイズであるマキマネキの出張所*2とは比べるべくもなく、ドクオニキのいじめっ子隔離シェルター*3などと同規模である。
このシェルターにLv40の【黒札】がいるのだから、規模に対して戦力過剰とも言える。しかし
『浦野牧』シェルター周辺に出没する野良悪魔は高くてもLv20代、平均でいえばLv10代後半である。これは『浦野牧』が【異界】をベースにしたシェルターであり、シェルターの主祭神であり異界のボスでもある馬背神が地域一帯の地脈をコントロールしてLvの高い野良悪魔が出没しないようマグ濃度を調節しているからだ。とはいえ現地霊能力者勢だけでは、シェルターの外に出ることもままならず、馬ニキの引率が必須となる。
Lv40に到達した馬ニキにとって敵の適正レベルは40代前半であり、シェルター近辺の野良悪魔を積極的に狩っても経験値的には美味しくない。彼にとってレベルアップが遅い理由はダブルクラスによる成長率ダウンだけではない。
「可能なら適正Lvの狩場に長期遠征して、経験値だけでなく【マッカ】も稼ぎたい。マッカを稼げば現地霊能者用【デモニカ】・【COMP】や【シキガミ】パーツ移植などへ投資できるようになり、現地霊能者が育てば俺の手が空いてもっと稼げる。正のスパイラルになる」
「其方個人に強く依存している現状は問題よの。その考えに異存はないが、まずは其方の代わりとなるシェルター防衛戦力を用意せねばならぬ。やはり傭兵か?」
「あっ、依存と異存を掛けましたのね! 用意と傭兵も韻を踏んでますの? 流石は紅葉さん、知識ありますわー!」「ええい、話の腰を折るでない」
「黒札仲間に傭兵を頼むと高くつくのと長期契約を望めないのが欠点かな。逆に外様神の信徒や【メシアン】なんかは安いし定住も可能だけど、祭壇作るのが条件だったり、シェルター乗っ取りを警戒しなきゃならない*4」
「霊山同盟支部のように高頻度で悪魔が襲撃してくる*5ことはないので、防衛戦力として黒札である必要はないが、【ガイア連合】製品の豊富なバックアップ込みでもLv20は欲しい。【終末後】のこのご時世に、そうそう都合良い人物が余っているのか疑問ですね」
シェルター運営について仲魔+金札の宮下親子も含めて打合せしていると、そのような話題になった。
「傭兵に頼らず戦力を自前で育てる手段はありませんか? 例えば、うちの知佳を孕ませるとか」
「将来的にそうしたいところですが、知佳ちゃんは俺に次ぐ戦力二番手なので、妊娠出産で離脱されると戦力ダウンが洒落にならないんです。それに今から仕込んでも戦力化まで15年ほどかかるじゃないですか」
「15年などさほど長くもない」「神霊特有の時間感覚で言われても困ります」「知佳が駄目なら他所から女を攫って来ればよい」「ローマ建国神話のロムルスじゃあるまいし、ここは南欧と違います」「主様っ! シキガミの私が孕みますわ!」「ヒメが抜けたら知佳ちゃん以上の戦力ダウンだから駄目」
「のび太ニキ*6あたりに話をつけて、一か月ほどの短期傭兵契約を結ぼう。それが出来たら山梨・星霊神社のショタオジ謹製ダンジョン上級でマッカ稼ぎに精を出す。この方針で行こう」
「
やいのやいのと話し合っているうちに、とある神霊が神託を告げてきた。
『聞こえますか── 平田維茂くん、聞こえますか── 今、あなたに霊界通信で話しかけています』
「えっと、
シェルターの祭神であり馬ニキが信奉している馬背神は【国津神タケミナカタ】の孫とされており、馬背神社に合祀されている。そのため馬ニキはタケミナカタを仲魔でなく祭神として扱っている。
『諏訪大社を、
「諏訪大社と馬背神社は関係が”近い”から、即座に乗っ取りを警戒しなくて良いのは好条件に見えますね」
『そうでしょう、そうでしょう。それからついでに、軽井沢の諏訪神社に行ってください── もう神社としては機能していない跡地ですが、野良悪魔出現個所として近隣のメシアンのシェルターから迷惑がられています── 我が名代としてトラブル解決に赴いてください──』
さらっと言ってるけど、これは大事になりそうなネタではないかと気になる馬ニキであった。