軽井沢については一区切りついた。もしあそこのメシア教シェルターがこっちにヘルプを頼むなら、スケベ部繋がりの【黒札】佐久間すみれネキ*1を紹介するのも良いだろう。そんでもって、次は長野県北部の、ぶっちゃけ長野市にある善光寺跡地だ。
あそこは戦後からメシアンが善光寺を隠れ蓑に陰謀を巡らせていたが、レイプマンニキ(改名前)がその陰謀を丸ごと打ち砕いた*2結果、霊能組織として立て直せぬまま【終末】を迎えることになり、野良悪魔に蹂躙されて人の住まない土地になった。その後に【デビルバスター協会】の依頼を通じで出没悪魔情報を更新したところ、ホーリーゴーストやエンジェルが野良悪魔として長野市に出現していることが判明。メシアンどもは善光寺の霊脈に半世紀近くかけて何か仕込んでいたようで、レイプマンニキの仕業により地脈エネルギーを暴発させて仕込みを強制リセットさせたが、まだ残滓が残っていたようだ。
管理人不在となった地脈を放置するとどんな野良悪魔が湧くか予想できないので、シェルター防衛の観点から【ガイア連合】の黒札が何かしらコントロール下に置く必要があるが、今までの『浦野牧』派出所は上田市全域をコントロールするだけで手一杯であり、余裕のありそうな新潟・魚沼支部に面倒をみて貰いたかったというのが本音。しかし魚沼支部の田舎ニキも新潟県の範囲が限界で長野県北部にまで手を伸ばす余裕がないと主張し*3、DDS-netの掲示板でお互いに押し付けあうレスバトルが発生したりもした。
そんな扱いの善光寺跡地だが、馬ニキが後天的にデビルシフター能力を得て
馬ニキと仲魔御一行が善光寺跡地に到着したところで、彼が見たのは新しく生まれた『異界』であった。
*
「で、おはなし*4してくれる?」
異界の最浅部に出没する悪魔はLv5前後の【ホーリーゴースト】とLv10前後の【エンジェル】たちで、Lv40に到達した【黒札】の馬ニキにとっては障害足りえない。
恐喝じみた会話の結果、ここの異界は『隠れキリシタンの聖堂・善光寺』という名称で、異界ボスは【ブラックマリア】と判明した。
「ブラックマリアはメシア教が異国の地に布教するときに現地宗教の地母神と融合した存在だよな? 戦後からずっとメシアンが善光寺の背後に潜伏していたけど、隠れキリシタンとはちょっと違うんじゃ?」
むしろ、メシアン弾圧を強めたKSJ研究所から身を隠すために、日本仏教と融合したんじゃないかと疑うほどである。
「この異界は稼ぎ場として良さそうだな。天使種族が出てくるなら、KSJ研究所から蟲毒皿を仕入れれば低レベル霊能者の育成に使えるかもしれない」
異界の浅い所を見回った後、馬ニキは中層部・深部へとダンジョンアタックを試みる。
その結果、この異界『隠れキリシタンの聖堂・善光寺』はなかなか面白い特長を持っているということが判明した。
まず、出現する悪魔の種類は天使のみ、最浅部はホーリーゴーストとエンジェルだが、奥に進むにつれてサン・ジワン(アークエンジェル)、納戸神(プリンシパリティ)、ハンタマルヤ(パワー)、マリア地蔵(ヴァーチャー)、マリア観音(ドミニオン)と隠れキリシタン独自の信仰対象が出てくるようになる。なお、デビルアナライズすると悪魔全書的には名前が違うだけの天使の互換として表示される。
「新しい女性型悪魔はミナミィネキが喜びそうだし、俺にとっても当面の狩場になりそうだな」
馬ニキはLv40に到達後、後天的デビルシフター能力を得たためにレベルアップ速度が遅くなるというハンデを抱えることになった。そのためレベルアップ効率のために適正レベルの敵を探していたのだが、この異界は深部になるとマリア地蔵(ヴァーチャー)やマリア観音(ドミニオン)が出現するので都合が良い。
更にこの異界は天使種族しか出現しないので、用意すべき装備やアイテムも傾向がはっきりしている。
「
狩場として使いにくいようであればKSJ研究所に丸投げしちゃえといい加減な打算含みで、馬ニキはニヤリとほくそ笑んだ。
*
善光寺跡地の異界を中心とした長野県北部の管理を上田市【派出所】が行うということで、管理権を互いに押し付けあっていた新潟・魚沼支部の田舎ニキと、同じ長野県にシェルターを持つカズフサニキには了解を取り付ける必要がある。ブラウニキ*5は長野県の地元霊能組織に種を蒔いているようだがその組織の運営やバックアップには積極的に係っていないので事後報告でも構わないだろう。
田舎ニキとは以前も難民の扱いで会話した*6仲だが、大事なことなので直接会って話をする方が良かろうということで、新潟に出向くことにした。
会見のアポもサクっと取れたし、話し合いもスムーズに終わったのだが、問題が一つ。善光寺異界を黒札の管理下に置いて定期的に悪魔狩りを行うことをどうやって周知するかという段りになって。
「ガイアプロレスをやらないか? 前回も試合を放映した*7のだから、黒札同士の取り決めを周知しつつお捻りも得られる一石二鳥だ」
俺の仲間になった【国津神タケミナカタ】がCOMPから勝手に出てきて、俺と田舎ニキにそう提案してきたのだ。
「レベル差が倍以上あるので*8まともな勝負にならないでしょ」
「俺、デバフ解除とHP回復しかできないんで、スキルを派手に使いまくった人外同士の能力バトルは無理です」
「碧神殿は【魔】特化タイプだから異能を封じた純粋な肉体・技勝負なら
プロレスと急に言い出したのはタケミナカタの武神としての側面からだろう。
諏訪大社の祭神であるタケミナカタは、元々は諏訪湖を司る水神であり諏訪湖の湖面を渡る風神であったが、やがて信者に恵みをもたらす農耕神・狩猟神としての性質を持つようになり、諏訪大社の神官一族が平安時代末期から急速に武士化したため武神としても崇められるようになった。
「【終末後】だからこそかつてのエンターテイメント、純粋なプロレスも喜ばれるはずだ! それにプロレスは筋書き有りのショーだから、碧神殿の勝つシナリオで良いとも」
タケミナカタは馬ニキの耳元にそっとささやく。
「自分より高レベルの相手と戦う。負けても命の心配がないどころか、経験値がたっぷり得られる。最近レベルアップの伸び悩みを気にしているのだろう?」
「やりましょう!」
「う、うーん…… まぁ、
即決する馬ニキと、その勢いに流され優柔不断な返事を返す田舎ニキ。
こうして第二回ガイアプロレスが開催されることが決まったのであった。
*
第一回ガイアプロレスは新潟で開催されたので、会場はそのままそこを使用することになり、馬ニキと田舎ニキはまずは合同練習となったのだが。
「やはり
「異能なしというルールだったのでは? うわ、競馬で見たサラブレッドよりデカい」
「変身能力以外は使わないからセーフ。これがホントの異種格闘技戦ってな!」
武神でもあるタケミナカタに
「挑戦者の一番の見せ場は、花道をロングダッシュしてのぶちかましが定番だろう」
「すいません、会場は中継メインで観客をあまり入れる予定がないんです。長い花道は作れません」
「そうなると、コーナーポストで跳ね馬ポーズの見得を切ってからヒロ斉藤ばりのダイビングセントーンか」
「えぇ?!
「注文の多いチャンピオンだな…… 場外への自殺ダイブなら、物理耐性持ってる
そんなこんなで試合の流れが決まっていったり。
「王者は脚関節技を持たねばならぬ。ファンクスのスピニング・トゥホールドや、リック・フレアーの足四の字固めなど、NWAからの伝統なのだ」
「脚関節って、馬の巨体を寝かせる前段階が必要だよね? どうやって?」
「まぁまぁ、田舎ニキ、二人で考えましょう。そうですね、私の突進をカウンターのダイヤモンド・カッターで切り捨てるとかどうです」
「そちらの突進に併せるとリング狭くない? うん、試しにやってみようか」
試行錯誤があったりなかったり。