鴨南蛮蕎麦に満足してそのまま戸隠神社を辞するような雰囲気になってしまったが、こちらにも戸隠神社に用事がある。案内人さんにそれを伝えたところ、不思議な顔をされてしまった。
「足神さんですか?」
「鬼女紅葉伝説で確かめたいことがありまして」
戸隠神社の『戸隠』は
【終末】後の戸隠神社は、天手力雄命、岩戸隠れの際に知恵を出した
戸隠神社中社から200mほど離れたところに、足神社あるいは足神さんと呼ばれる小さな
今は主なき祠だが、伝説によると鬼女紅葉の配下であったお万が平維茂の鬼討伐の際に逃げ出すもここで力尽き、戸隠の僧*2に弔われたとされ、それが足神社の由来となっている。
馬ニキは足神社に参拝するとき、仲魔である鬼女紅葉をこっそり呼び出して周囲を伺わせてみたが、彼女は黙って首を横に振るだけであった。何も得るものがないと分かればもう用はないとばかりに、馬ニキは祠に軽く手を合わせるだけに留め、そそくさと戸隠神社を後にするのであった。
*
鬼無里村。伝説で語られる鬼女紅葉の最後の地。
戸隠神社から自動車で30分かかるが、
よく見かける悪魔は動物型妖怪と天狗である。天狗については、戸隠神社が中世から修験道の霊地とされてきたためだろう。もしかすると新潟・佐渡島の天狗塚*3と関係があるのかもしれない。こちらから仕掛けることはしないが、向こうから仕掛けてくるなら容赦はしない。特に【魔獣イヌガミ】【妖魔コッパテング】【幻魔クラマテング】の3種は【秘神カンバリ】*4の悪魔合体素材として人気が高い。
終末後には無人の地となった鬼無里村を、かつて軽井沢で行った*5のと同様に地脈を閉じて回り、周辺のゲートパワーを下げる。鬼無里村の産土神社である鬼無里神社は祭神が諏訪神なので、仲魔の【国津神タケミナカタ】にとっても懸念の解消となる。
また鬼女紅葉伝説の当地として、荒倉山の『鬼の岩屋』・紅葉の墓がある松巖寺・紅葉の住居があった『内裏屋敷跡』・紅葉の腰元だった夜夜の墓『月夜の陵』などを回り、最後に鬼無里の湯・奥裾花温泉で一休み。ここも無人で荒れ果てているが、休憩できそうな建物を不法占拠しても誰にも文句を言われない。
「それにしても、どこのシェルターも自給自足は変わらないな……」
雑談レベルで戸隠神社の案内人と話をしただけだが、蕪村が俳句を詠んだように戸隠の名産は蕎麦である。というか、現時点では戸隠神社が輸出できる唯一の品目である。しかし輸出と言っても、終末後の悪魔がはびこる世界では、隣村(隣シェルター)に移動するにも一苦労する。
そこで街道整備して新潟から塩を輸入したいというのが戸隠神社側の本音であろうが、初対面の相手に街道整備の援助を要求しないだけの良識があちらにもあったようだ。代わりに要求されたのは、『浦野牧』がDDS-netにオープンした信州アンテナショップに戸隠のそば粉を置かせてくれという打診だった。
戸隠神社主導で通販を手がけるとなると、DDS-net通信料も馬鹿にならないし、輸送費もターミナルを使えばその使用料で儲けが吹っ飛ぶ。【ガイア連合】派出所としてDDS-netやターミナルの使用にアドバンテージのある『浦野牧』ならそこら辺の問題はクリアできるし、アンテナショップとして品揃えが増えるのは利点だと言い含められたが、言質を取られないようにと釘を刺されたので持ち帰って検討しますとだけ回答してある。
この時点で馬ニキの脳内では、封鎖された東京で【魔人ゴトウ】が弱小シェルターを巡回支援している*6ようなものだとイメージしているのだが、『浦野牧』で岩塩が産出して輸出可能*7と知られればどうなることやら。
本作を投稿し始めて丸一年を経過。
だらだら続けていられるのは読者の皆様のおかげです。来年もよろしくお願いします。