【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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ネタが尽きたので毎日更新はここで終了します。


余話34 黒姫伝説(5)

突発的に発生したイベント・キングギドラ討伐を終えて『浦野牧』シェルターに戻ってきた馬ニキたち。

鉄は熱いうちに打てとばかりに事後ミーティングで戦闘の拙かった点などを話し合う…… ということはせず、無事に生き延びたことを祝う打ち上げをささやかながら行った。

 

「で、今回の根本的な原因は何? 第二第三のキングギドラ発生は有り得るの?」

「当面はあり得ないでしょう」

 

馬ニキの疑問に即答したのはヌナガワヒメ。ちなみに黒姫山頂で見せた美姫モードは引っ込めて、年増のおばはんスタイルに戻っている。

 

「黒姫弁財天として黒姫山の地脈に接続することで、彼の地に起きたこともある程度読み取れました。事の起こりは神霊クズリュウが新潟の地で暴れた*1ことです」

 

そういえば田舎ニキが最終決戦とか言って異界でドンパチやってたな。地球が魔界に落ちた際の大混乱で手助けできなかったし、詳しい情報も回ってこなかったけど。

 

「クズリュウの力は大半が異界内に封印されたが一部が現世に放出され、それらのおおよそは大気に散った。だが僅かな破片は纏まったまま漂い、クズリュウに縁ある地脈に吸収される、はずだった」

「ああ、戸隠神社は地主神として九頭龍も祀っていたな。今は天手力雄命、天八意思兼命、天鈿女命の天津神三柱によりシェルター運営されているけど…… もしかして天津神の張った結界にクズリュウの力が弾かれた?」

「おそらくは。行き場を無くしたクズリュウの残滓が戸隠近辺に滞留し、それに触れた大沼池の黒龍が戸隠神社に戻るという残留思念に飲み込まれたのかと」

多頭龍(キングギドラ)の姿はヒュドラ由来じゃなく九頭龍、か」

 

クズリュウ戦は【終末】直後なので時間差があるような気がするが、神霊は時間に縛られない存在だからそういうこともあるだろう。

割とガバガバな推測だが、馬ニキは勝手にそう納得した。

 

三つ首龍(キングギドラ)は討伐され、クズリュウの力の欠片はより微細に砕かれました。天津神の結界をすり抜けて地脈に吸収され大いなる存在へと還るでしょう。もう大事にはならぬはずですが…… 九頭竜の残滓がばら撒かれた彼の地を中心に、今後竜種が活性化するかも知れませんね」

 

もう一波乱あると含みを持ったヌナカワヒメの予言に、どうにも嫌な予感が働く。

 

「竜って基本的に水を司るものだから、クズリュウの残滓が千曲川沿いに伝染したり、する?」

「するでしょうね。近辺に心当たりがあるなら重点的に哨戒するがよろしいかと」

 

かつてアラハバキが信濃川に『自然に帰れビーム』を打った*2後に、信濃川・千曲川*3流域でミヅチや河童が活性化*4して新潟では黒札総動員がかけられたという。

おそらく信濃川が市内を横断する十日町市シェルターでミヅチの被害が増えるのは確定として、千曲川が上田市を横断する『浦野牧』も他人事ではない。

それだけではなく、『浦野牧』の根拠地・長野県上田市には竜蛇の民話に事欠かない。

例えば塩田地区の鞍が淵。小泉小太郎伝説の小太郎はこの鞍が淵で大蛇の母から生まれたといい、蛇の女怪となれば【邪龍ハクジョウジ】が連想される。

また上田市には太郎山中腹に白蛇神社があり、上田城のお堀に住んでいた白蛇を祀ったという縁起がある。この白蛇神社では九頭竜大権現を併祀しているのでクズリュウとの相性もばっちりだ。

 

「やることが…… やることが多い!」

 

某少年の事件簿で犯人が苦悩したように、頭を抱える馬ニキ。

 

「確か、白蛇神社には弁天堂も併祀されているはず。ヌナガワヒメ、黒姫弁財天として白蛇神社を一時でも押さえることはできる?」

「神社を任せてもらえる気持ちはありがたいが、わらわは『浦野牧』(ここ)では黒姫弁財天ではなくヌナガワヒメなのでな、ちと無理かな」

 

ヌナガワヒメは首を左右に振って否定の意を示すが、馬ニキは僅かな望みを持って食い下がる。

 

「じゃあ、黒姫山に座する黒姫弁財天なら?」

「あちらも今は忙しいの。キングギドラを撃破して飛び散ったクズリュウの残滓を現地で制御するのに手いっぱいで、こちらまで手は伸ばせぬ」

 

それじゃ仕方がないと諦めた馬ニキに、ヌナガワヒメは暗い笑いを浮かべた。

 

「のう、知っておるか? 戸隠神社は地主神として九頭龍を祀っており、『九頭龍弁財天』像があることを」

「九頭龍弁財天ですか、初めて聞きました。ふむ、戸隠・黒姫と弁財天が共通してますね」

「弁財天が共通しているのは霊山から流れる水の象徴ゆえ。クズリュウの力が戸隠の地脈に流れ込むこの機に、こっそり干渉してバックドアを仕込んでやろうか。くくく、あの小娘、BBAなどと愚弄したことを後悔させてやる」

 

()わぁ~っ!

 

天津神と国津神の意地の張り合いを垣間見てちびりそうになる馬ニキであった。

*1
故郷防衛を頑張る俺たち 「最終決戦、神霊クズリュウ戦」

*2
故郷防衛を頑張る俺たち「出現!国津神アラハバキ!」

*3
長野県を流れる千曲川は新潟県に入ると信濃川に名前を変える同一河川である

*4
故郷防衛を頑張る俺たち「暴走の顛末2」

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