【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話   作:れべっか

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余話42 下魔アバドンズ

ユーラシア大陸から日本海を渡り新潟へ渡来する船。古くは渤海使から新しいところでは脱北漁民船*1まであれこれあるが、中でもメシア教過激派の空中戦艦『贖罪(ヴーセ)』号*2は飛びっきりの厄ネタであろう。

ノアの箱舟を原型としたその飛空要塞は、【魔王アバドン】をベースにした仮面ライダーもどき『アバドン・ハレル』の低レベル分体『アポリオン』を無数に生み出す移動型生物生成プラントである。青空が三割にアポリオンたちが七割を占めると表現されるほどの、万にも億にも達する膨大な数のアポリオンが新潟に押し寄せ、佐渡ではパピヨンニキ*3やデスザウラー、マザーバンガードが、新潟港では鑑定ニキ*4や人魚ネキ*5たちが、それぞれ防衛にあたった。

佐渡島・新潟港はどちらも防衛に成功するが、しょせんそれは陽動である。本命であるアバドン・ハレルは『大量発生型相変異人型アバドン虫アポリオン』を11体生み出し、S県の砂浜──かつて大天使サタンが降臨した場所──へと侵攻を開始するのであった。

 

*

 

そんな、春の映画祭・仮面ライダー大集合オールスター劇場版の様相を呈する本編の裏側。

 

Lv5と低レベルである『アポリオン』は、佐渡島や新潟港などでシェルター防衛に成功するも、その数の多さから新潟県内で全て駆除できたとは言い難い。一部は隣接する富山・長野・群馬などに流入したほか、長野新潟県境である国道117号線津南街近くのトンネルで撃破された数体の大量発生型相変異人型アバドン虫アポリオン*6は、爆散したMAG残り香ともいうべきものが飛散してそれが長野県域を汚染している。

折からバッタ大量発生の気配があった*7ため、DLV1の蝗が大量発生するという蝗害が、新潟県だけでなく長野県にも発生したのであった。

 

「ちきしょーっ! 蝗なんか、大っ嫌いだーっ!」

 

長野県における蝗害を対処するために各地を走り回っていた馬ニキは、GS(ゴーストスイーパー)美神の助手・横島を彷彿させる態度で愚痴っていた。

 

長野県は新潟県と異なり、人の住める土地(シェルター)は少なく無人の地が多い。そのためDLV1の蝗を駆除する人手が足りず、後手後手に回らざるを得ない状況となっていた。

そうすると、新人デビルハンター飛鳥とベテラン亀仙人が組んでビル除霊したときに【Lv持ち悪魔】が出ない程度の濃さの【障気】から【悪霊ガロット】が生まれた*8ように、何かのきっかけでDLV1の蝗が集まって【下魔アバドンズ】*9が生まれることもある。

この下魔アバドンズはアバドンの配下である蝗の群体であり、悪霊の群体である【レギオン】をイメージしてもらうと分かりやすい。偽典・女神転生では降天使アバドンがLv24に対し下魔アバドンズがLv16とそれなりに強く、この蝗害で発生する下魔アバドンズもLv10半ばからLv30程度までと、基本的に発生規模に応じた強さを持っている。シキオウジを倒せる修羅勢【黒札】とまではいかなくても、真面目に戦闘経験を積んだ黒札でないと対処できない。地元霊能組織のロバや、山梨支部に引きこもって専用式神に依存している黒札では太刀打ちできないのだ。

 

田舎ニキが蝗害対策としてそれなりに手を打っており、馬ニキはその恩恵をしっかり受けているのだが、やはり人手が足りない。

【ガイア連合】製の予知・占術・探査アイテムで下魔アバドンズの発生を探り、見つけ次第現地に急行して下魔アバドンズを討滅する。ここ最近の馬ニキはそのルーチンをこなすだけで精一杯だ。

 

「蝗を焼却処分するまでの間、主殿は休息を取るが良い」

「ああ、そうさせてもらうよ……」

 

アバドンズの死骸を放置すると、蝗の死骸に卵が残っていて翌年に再び蝗が大発生するように、ロクなことにならない。死骸からフォルマやMAGを回収した後は【アギ】などで火葬するのが一番確実だ。

孔雀明王の加護を受けた鶏に死骸を食わせるという手もある*10が、加護を持つ鶏が少数しかいないので入手性に難があり、しかもここはシェルター外なので家禽を連れまわすのはあまり上策ではない。

 

「あー、天気が良いから暑っついわー」

 

地面にごろりと横になった馬ニキが抜けるような青い空に目をやると、ふと田舎ニキの顔が好天のブルースクリーンに浮かび上がった。

 

『すまない…… アバドンの後始末をさせてしまって、本当にすまない……』

「いや、謝られてもどうしようもないっす」

 

もちろんこの田舎ニキは、馬ニキの脳内イメージであり本人が幻視しているだけだ。

アバドンの襲来は彼の責任ということもなく、単に愚痴をこぼすことで心の負担を軽くしようとしているだけである。

 

Pi-----!

 

突然、馬ニキの懐に入れている懐中時計のようなものが警告音を発し、馬ニキは嫌そうに顔をしかめながらそれを手に取った。

見た目は漫画ドラゴンボールのドラゴンボール探知機、その実体は【ガイア連合】製のアバドンズ専用探査アイテム。田舎ニキがガイア連合技術部に手を回して作成させ、馬ニキを始めとする蝗害対策黒札に無償配布されている。

 

「あー、近場でアバドンズの発生を検知かぁー。どうしよっかなー」

 

馬ニキは嫌々そうに体を起こすと、死骸焼却中の仲魔に声をかけた。

 

「規模も小さいし距離も近いから、ひとっ走りして俺単独で殲滅するよ。みんなはここの処理が終わったらゆっくりでいいから追いかけてきて」

「了解ですわ、主様!」

 

馬ニキはデビルシフトで馬型悪魔(スレイプニル)に姿を変えると、そそくさとレーダーの示す方へと走り去る。

そして10分もしないうちに新たな下魔アバドンズを目視で確認した。

 

「遠くから見ると蚊柱だよなー、ホント」

 

馬ニキはアバドンズに近寄るとデビルシフター能力を解除して人の姿に戻り、これまたガイア連合技術部から支給された獲物を二本、二刀流スタイルで装備する。

片方の獲物は斬蝗陽滅刀レプリカ*11、某ギリシャローマ神話の太陽神を酷使しながら製造された、アポリオンキラー属性を持つ武器である。もう片方の獲物は電撃鞭、【ジオ】系の能力を持つ打撃武器。馬上鞭と同様に短鞭に区分される長さ60cmほどの、蝿叩きあるいはバドミントンのラケットの外見をしている。

 

「おらぁ!」

 

馬ニキが電撃鞭(蝿叩き)を無造作にふるうと、パシィン!という、夏場の深夜のコンビニで電撃殺虫器が発するような音がする。

下魔アバドンズは電撃弱点であり、しかもジオ系の攻撃を受けて麻痺効果により動きが鈍る。その隙に斬蝗陽滅刀レプリカで大ダメージを与え、また電撃鞭(蝿叩き)により隙を作るという、トールマン【ジオ】ハメを思わせる戦法だ*12

 

しばらくのちに馬ニキは単独(ソロ)で下魔アバドンズを倒し、死骸焼却のための仲魔待ちとして草むらに腰を下ろした。

 

「ま、対アバドンズも戦法が確立してればこんなもんか」

 

馬ニキはアバドンズ探知機からの更なる呼び出しがないことを祈りながら、再びぼうっと空を見上げる。

 

『『すまない…… 後顧の憂いを押しつけて本当にすまない……』』

 

田舎ニキと鷹村ハルカ*13の二人が仮面ライダーに変身してWライダーポーズで青空に浮かび上がってきた。

まさかの天丼ネタに、馬ニキは自身のメンタルがだいぶ削れていることを自覚するのであった。

*1
2012/11/28に佐渡島へ木造船が漂着した事件など

*2
故郷防衛を頑張る俺たち 「大天使サタン再臨計画①」

*3
ファッション無惨様のごちゃサマライフ

*4
親友が英雄の転生者だった件について

*5
終末に向けての準備するとある転生者の話

*6
故郷防衛を頑張る俺たち 「大天使サタン再臨計画⑥」

*7
本作余話41

*8
カオス転生ごちゃまぜサマナー 小ネタ「とある現地の新人サマナー 続きの続き」

*9
1999年にWindowsゲームとして発売された偽典・女神転生に登場

*10
故郷防衛を頑張る俺たち「大天使サタン再臨計画⑥」

*11
オリジナルは葛葉ライドウ対アバドン王で登場する

*12
偽典・女神転生の降天使アバドン戦もこの戦法が通用する

*13
霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。

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