いきなりであれだが、ありのままに今起こった事を言うぜ…!
ずっと男だと思っていたルームメイトのシャルルは実な女の子だった…!
何を言っているのか分からないと思うが、俺も何を言っているのかよく分からない…。
ちゃちな手品やトリックなんかじゃあ決してない。
もっと恐ろしいものの片鱗を垣間見た気がするぜ…!
「あ…あの…一夏? なんかさっき電話をしていたみたいだけど…誰に連絡をしていたの?」
「…風間さん」
「え? あの子?」
「うん…言動は破天荒でぶっ飛んではいるけど、他に頼れそうな人間が思いつかなくてさ…。なかよし部の皆なら、良い考えを出してくれそうな気がして…」
「な…成る程…?」
ジャージに着替えてからベッドに座っているシャルルが疑問形で小首を傾げる。
その気持ちはなんとなくだが理解出来る。
自分でも未だに『これで良かったのか?』って思っているぐらいだし。
「ユニちゃん先輩とかは本当に頭が良いし、力にはなってくれると思うんだよな」
「頭は良いよね…頭は」
シャルル。『頭は』の部分だけ強調しなくても良いぞ。
(あの千冬姉も何気に頼りにしているぐらいだしな…いざって時は頼りになるって思っても良い…んだよな?)
前に一回、廊下で千冬姉がユニちゃん先輩に相談事を持ちかけている姿を見かけた事がある。
その時の千冬姉は、しきりに頷き、最後には礼を言って去って行った。
正直言って、素直に凄いって思った。
(…頼むから早く来てくれ…ぶっちゃけ、今の状況はかなり気まずい…)
どうして気まずいのかだって?
頼むから聞かないでくれ…。
そうして俺が悶々としていると、いきなりドアがコンコンとノックされた。
「もしもーし。皆のアイドルのチエルですよ~」
「か…風間さんッ!?」
ちゃんと来てくれた…!
よかった…本当に良かった…!
「言われた通り、先輩達も連れてきてあげましたよ~」
「た…助かる…!」
これで少しは状況が好転すればいいんだけどな…。
今は兎に角、風間さん達を部屋の中に入れよう。
全てはそこからだ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
取り敢えず、皆を急いで部屋の中に入れる…まではよかったが、なにやら一人だけ知らない人物が混じっていた。
水色の髪が特徴的で、なんか知らないけどクロエ先輩と滅茶苦茶仲が良さそうに見えた。
「えっと…なかよし部の皆さん?」
「どうしたのかね? 一夏くん」
「そのー…クロエ先輩にべったりなその人は一体…?」
「おいおい…それは流石に無いと思うぞ?」
「え?」
なんかいきなりユニちゃん先輩に呆れられた。
そんなに有名な人なのか?
「つーか、自分が通ってるガッコの生徒会長の顔ぐらいは知ってろヨ」
「…生徒会長?」
……マジ?
「はーい♡ IS学園生徒会長の更識楯無でーす! よろしくね、織斑一夏くん」
「は…はぁ…」
まさかの生徒会長まで一緒とは…これは良い意味での予想外…と思ってもいいのか?
クロエ先輩と一緒って事は、この二人はルームメイトだったりするのか?
「さて…シャルル君がそうしている時点で、なんとなく現在の状況は察する事が出来る…が、しかし」
「しかし?」
「その前にやることがあるのではないかね?」
「やること…?」
やることって…一体なんだ?
マジで何の事なのか分からないんだが…。
「ここは君達の部屋で、ボクたちは客人だ。ならば、茶の一杯ぐらいは出すのが礼儀というものではないのかな?」
「あぁ~!」
それならそうと言ってくれよ!
なんで、そんな回りくどい言い方をするんだ?
「因みに、ボクはアイスココアを所望する」
「ウチはオレンジジュースをよろ」
「チエルは烏龍茶でいいですよ~」
「なら私はアイスティーにしようかしら?」
「注文をバラバラにするのは普通に止めて貰えませんかねぇっ!?」
めちゃくそ面倒くさいんだよ! 一人一人、別々のを用意するのって!
はぁ…喫茶店の店員とかって、こんな気持ちなのかな…。
もし今後、喫茶店に行く機会が有ったら気を使って注文しよう…。
茶を入れない事には話が進みそうにないので、仕方がなく全員分のを用意することにした。
ついでに俺のとシャルルの分も。
「うむ…いい塩梅だ。やるな一夏くん」
「そりゃどーも」
市販のココアを適当に淹れただけなんスけどね。
お気に召していただけたのなら満足ですよー。
「…では、本題に入るとしようか」
空気が変わった…ここからが本場って事か…!
「まずは確認だ。一夏くん」
「は…はい」
「君は、そこにいる彼女…シャルル・デュノアの正体を知ってしまった。これは間違いないな?」
「そう…です。…ん?」
今…『正体』って言ったか?
それってつまり…。
「あの…もしかしてですけど、ユニちゃん先輩…いや、なかよし部の皆は最初からシャルルが女の子だって知ってたんですか?」
「「「「知ってたけど?」」」」
「「嘘ぉッ!?」」
思わず俺とシャルルは同じリアクションをしてしまった。
って言うか、今しれっと会長さんも『知ってる』って言わなかったか?
「因みにですけど…いつから?」
「「「「最初から」」」」
「「えぇ~…」」
まさかの最初からかよ…。
ってことは、気が付いてなかったのって俺だけ…?
「この場に生徒会長がいる事からも分かるとは思うが、我々『なかよし部』は生徒会とも非常に密接な関係でね。色んな情報なども共有していることが多いんだ」
「生徒会長たる者、転入生の情報ぐらいはいち早く入手して当然だから」
そうだったのか…それならシャルルの正体を知っていても不思議じゃない…。
生徒会と仲良しなのも普通に驚きだけど。
「顔写真を見た瞬間から満場一致で『コイツ女だろ』って思って、実際に姿を見た瞬間にチエルたちの予想が完全的中したって確信しましたよね~」
「そ…そんな…ちゃんと男装をしていたのに…」
「ちゃんと男装をしていた…だと?」
あ。シャルルが地味に落ち込んでいる所にユニちゃん先輩が反応した。
「シャルルくん。どうやら君は『変装』というものを甘く見ているようだね。ハッキリ言おう。君の男装はお遊戯会レベルだ」
「え――――――!?」
「声色を変えていない。肩幅などもそのまま。やっている事と言えば胸を隠すことぐらい。恐らくはコルセットなどを使っているのだろうが…余りにも舐め過ぎている。それで騙せるのは素人だけだ。我々の目は絶対に誤魔化せない」
「は…はい…」
なんか急にシャルルの変装に対する説教が始まってしまった…。
ちょっとだけ先輩らしいと思ってしまった。
「君に真の男装というものを見せてあげよう。チエルくん。楯無くん」
「「はーい!」」
「え? ちょ…なに?」
急に風間さんと更識先輩がクロエ先輩の両腕を掴んだ?
「クロエ君を使ってこの二人に『男装のお手本』を見せてあげてくれ」
「「りょーかいです!」」
「は…はぁっ!? ちょ…冗談じゃないんですけど!? つーか離せし!」
必死に体を動かすが、あの二人相手には無駄な抵抗だったようで、結局はそのまま更衣室へと連行されてしまった。
「さて…クロエ君がドレスアップしている間に、こちらで得た情報や予想した事を教えておこうか」
「「は…はい…」」
多分、物凄く大事なことなんだろうけど…クロエ先輩の男装が気になって仕方がない。
本当に大丈夫だろうな…?
「君はデュノア社の関係者…いや、正確にはデュノア社社長『アルベール・デュノア』の実の娘…だね?」
「…はい。それも調べたんですか?」
「まぁね。『デュノア』というファミリーネーム自体が珍しいし、同時の有名な名前でもある。それと同じ名を持つ人間がいきなり現れれば、嫌でも調べようとするもんだろう」
名字だけでシャルルの正体や家族にまで到達したのかよ…!
素直に凄いって思うぜ…伊達に『学園一の秀才』って呼ばれてないってことか…。
「君がお粗末な男装をしてまで学園に潜り込んだのか。その理由も殆ど見当がついている。だが、ここでは敢えて問うまい。傷口に塩を塗り込むような真似は趣味ではないのでね」
「ユニ先輩…」
俺もついさっき、皆が来る前にシャルルの口から事情は聞かされたけど…この人達はそれよりもずっと前に真実に辿りついていたって事なのか…。
「で…でも、それならどうしてすぐに僕を追究しようとしなかったんですか? その気になればいつでも…」
「君と言う人間を見極める為さ」
「僕を…見極める…?」
「そうだとも。確かに、性別査証やスパイに等しい行為をするのは一般的には良くない。だがしかし、誰にも人には言えない事情の一つや二つは必ずある。君が自ら進んで行動しているのか。それとも、誰かによって命令されて嫌々動いているのか。それから君自身の心情。それらを知る前にこちらが動くのはフェアじゃないと判断したのさ」
そうだったのか…。
あれ? それじゃあ…もしかして…。
「なかよし部の活動に僕を巻き込んだのも…?」
「君の行動を近くで見る為だ。学校から少しでも離れる事で、君の『素』の部分を見てみたくてね」
だから、山に行ったりデパートに行ったりといった課外活動が多かったのか…。
学園の中じゃ見られない『本当のシャルル』を見る為に…。
「結論から言えば、君の行動からは微塵も悪意は感じられなかった。故にボクらは生徒会と協力して本格的に行動することに決めたのさ」
こりゃ参った…。
俺がなかよし部に助けを求めたこと自体は決して間違いじゃなかったけど、この人達の行動力が俺の予想の遥か上を行っていた。
「まぁ…このタイミングで一夏くんに正体が露見したのは流石に想定外だったが」
「「すいません…」」
これに関しては素直に申し訳ない…。
完全に俺のミスだしな…複数の意味で。
「どうして一夏くんが彼女の正体をするに至ったのか…なんとなくは予想が付く。どーせ、ボディーソープが無くなっている事を知った一夏くんが、シャワーを浴びている彼女にそれを渡してやろうと思って何気なくシャワー室の扉を開けたら、そこには裸の彼女がいた…的な感じなのだろう?」
なんか全てを見ていたかのような推理なんですけどッ!?
正解だよ! 何もかもが大正解だよコノヤロウ!
「クロエ君達がこの場にいなくてよかったな。ボクはその手のトラブルに関しては寛容だから良いが、もしも彼女がいたら…」
「いたら…?」
「…一夏くんは明日からカツラを着けて生活していく羽目になっていただろうな」
「それだけは冗談抜きで嫌なんですけどッ!?」
頭かっ!? 頭を全部、剃られちまうのかッ!?
あの人って、怒らせるとそんなにも怖いのかッ!?
…今後はマジで怒らせないように気を付けよう…。
ツンデレの可愛い先輩だと思って油断しちゃダメだな…。
「けど…どうしてユニ先輩たちは、僕に対してそこまでしてくれるんですか…?」
「そんなのは決まっている」
何を今さら。
そんな顔をしながら、ユニちゃん先輩はハッキリと言った。
「『なかよし部は決して仲間を見捨てない』」
「仲間を…見捨てない…」
下手したら、からかわれそうなセリフを恥ずかしげもなく言えるって…なんかスゲーな…。
こりゃ、あの千冬姉が頼りにするのも納得だわ…。
「仲間って…僕は部員でもないのに…」
「何を言っている? 君はもう立派な『なかよし部』の部員だぞ?」
「「え?」」
そう言うと、ユニちゃん先輩は徐にとある日記のような物を手渡してきた。
これって…部活の活動日誌か?
「えっと…? なかよし部…顧問『織斑千冬』。部員『真行寺由仁 三年』『黒江花子 二年』『風間ちえる 一年』『シャルロット・デュノア 一年』…え?」
シャルロットって…さっき教えて貰ったシャルルの本名…だよな?
これに書かれてるって事は…まさか…。
「君は待望のなかよし部の新入部員と言うことだ」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」
い…いつの間に、そんな事になってんだ―――!?
冗談抜きで初耳何だがっ!?
「で…でも僕は入部届なんて出してないですよッ!?」
「それに関しては心配無用だ。密かにチエル君が入手した君の字が書かれた用紙から君の筆跡を調査し、それを完璧にコピーしてから我々の手で入部届を提出しておいた」
「「それって普通に犯罪なのではッ!?」」
「学園内の事なので問題は無い。それに、なかよし部は特別なのさ」
「特別って…」
シャルルのやっていた事って、なかよし部のやっている事に比べたら物凄く小さく些細なことなのでは。
そんな事が頭に過ってしまった俺は悪くないと信じたい。
「なかよし部に所属する事は決して悪いことではないぞ? 色んな『特権』があるからな。寧ろ、君にとってはメリットしかないと思う」
「「えぇ~…」」
なかよし部に所属すること自体が大きなデメリットになるんじゃ…?
そう言いたかったが、それは人として言ってはいけない事だったので大人しく飲み込んだ。
そんな事を話している間に、クロエ先輩の男装が完了した。
シャルロットのなかよし部入部は、完全に中の人ネタです。
プリコネをしている人なら分かる筈。
なかよし部で誰が好き?
-
可愛いクロエちゃん!
-
賢いユニちゃん!
-
楽しいチエルちゃん!
-
皆大好き!