ラウラの暴走をなかよし部の皆の手で食い止めた後、その被害者であるセシリアと鈴の二人は保健室に運ばれ、俺や箒、シャルルやなかよし部の皆はそれに着いて行った。
「「…………」」
体に包帯を巻いた状態でベッドに寝てはいるが、鈴は明らかな膨れっ面で、セシリアの方は完全に落ち込んでいる。
「本当に…情けない姿をお見せしましたわ…」
「別に…助けて貰わなくても、アイツぐらいアタシ一人で…」
「はいはい。そんなんはどーでもいいから、取り敢えずは茶でも飲んで落ち着きな。ほれ」
そう言ってクロエ先輩が差し出したのは、自販機に売ってあるペットボトルのお茶。
一体いつの間に、あんなのを買ってたんだ?
「ありがとうございますわ…」
「…いただきます」
おー…セシリアはともかく、あの鈴が初対面とはいえ先輩相手に敬語を使ってる…。
ま、クロエ先輩は不思議とそうしたくなる雰囲気があるよな。
「しかしまぁ…随分と派手にやられたものだね。ま、どうしてあんな事になったのかの大凡の見当は着くが。なぁ? シャルル君」
「そうですねユニ先輩」
え? シャルルとユニちゃん先輩が意気投合してる?
なんか地味にシャルルもなかよし部に染まってきてるのか?
「多分ですけどぉ~…あの子が一夏くんの悪口とかを言ったんじゃないんですか? 二人を挑発する意味を込めて」
「そうなのか?」
風間さんが目を細めながら推理漫画の探偵役みたいな口調で予想を言って、それを俺が二人に確認してみると、急にセシリア達が顔を真っ赤にして狼狽えた。
「ち…ちちちちち違いますわよ!? か…風間さんッ!? 適当な事を言わないでくれませんことっ!?」
「そ…そそそそっそうよ! 仮にも代表候補生であるアタシ等が、そんな安い挑発になんて乗る訳がないじゃないのよ!?」
「「…………」」
…図星だな…こりゃ。
ここまで分かり易いと逆に凄いわ。
「もう暫くはそうして安静にしておきたまえ。じゃないと、治る怪我も治らないぞ?」
「「うぐ…」」
ユニちゃん先輩の正論。
これには俺も全面的に同意だ。
「…なぁ…一夏」
「どうした箒?」
「気のせいだろうか…さっきから廊下の方から『ドドド…』というような地鳴りと言うか地響きと言うか…それっぽいのが聞こえてこないか?」
「あー…箒にも聞こえてたか。空耳じゃなかったんだな…」
しかも、なんか段々とこっちに近づいて来てないか?
おぉ? 遂に振動まで感じ始めたぞ。
「「「「織斑君!!」」」」
「「「「デュノア君!!」」」」
「「「「私とタッグを組んでください!!」」」」
「「は?」」
凄まじい勢いで保健室の扉が開かれて、廊下から大勢の女子達が入り込んできた。
っていうか『タッグ』とはなんぞや?
「おいこらそこ。ここは保健室で怪我人もいるんだケド? ちっとは静かにし?」
「え…? ク…クロエ先輩ッ!? どうしてここに!?」
「それはこっちの台詞だし。つーか、いきなり『タッグを組め』とか言っても普通に意味不明。その紙は何? ちっと見せてみ」
「はわわわ…憧れのクロエ先輩に触っちゃった…♡」
す…すげー…クロエ先輩の一喝…つーか鶴の一声で一気に皆が大人しくなった。
これが学園の人気者の実力か…。
しかも、その内の一人に至っては顔を真っ赤にして照れてた。
「えーと…何々? 『今月末に開催される予定の学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を執り行う為に二人一組での参加を必須とする。もしも当日までにペアが組めなかった生徒については、トーナメント当日に抽選で選ばれた者同士で組む事とする』…だってよ」
成る程…だから皆して男子である俺達と組みたがっていたのか。
いや、実際には男子は俺だけで、シャルルは女子なんだけどな?
でも、これはちょっと拙くないか?
千冬姉たちに負担を掛けない為に、少なくともトーナメントが終了するまではシャルルの正体は隠しておかないといけないし…。
「残念だが諸君、それは不可能だ」
「「「「え?」」」」
ユニちゃん先輩?
不可能ってどういう意味だ?
「一夏くんは、ここにいるシャルル君とコンビを組むと既に決まっているのだよ」
「そ…そうなのっ!?」
「うむ。二人は男子同士であり、同じ部屋に住んでもいる。二人がタッグを組まない理由はあるまい?」
「い…言われてみれば確かに…」
「完全に盲点だった…」
これだけの女子達を一発で論破してみせた…!
流石は学園一の天才…!
「ま…まぁ…他の子と組まれるよりはずっとマシか…」
「そうだね…男の子同士ってのも、それはそれで絵にはなるし…」
「仕方がないか…地道に別の子を探しますか…」
意気消沈した様子で女子達はぞろぞろと保健室から出て行った。
一気に保健室が広くなった…。
「と言う訳だ。咄嗟の言い訳にしてしまったが、別に問題は無いだろう?」
「そう…ですね。俺は全然いいですけど…シャルルはどうだ?」
「うん。僕もそれでいいよ」
「決まりだな」
ぶっちゃけた話、いきなり『今からタッグを組んでください』なんて言われても、すぐに見つけられる自信が無かったから、ユニちゃん先輩の言葉は非常に有り難かった。
「あ…あの…一夏…」
「ちょ…一夏!? 組むならアタシと組みなさいよ! 幼馴染でしょ!?」
「いえ! それならばこの私と! 同じクラスメイトならば!」
「馬鹿言うなッつーの。ほれ」
「「~~~~~!?」」
呆れた顔でクロエ先輩がセシリアと鈴の身体をちょんと突くと、それだけで二人は顔を伏せて悶絶した。
お前ら…そんなにキツイならコンビ云々言ってる場合じゃねぇだろ…。
「まずは自分の身体を治す事に専念しな。まずはそっからだろーが」
「う…うっさいわね…!」
「しかし…!」
まだ粘るか。
ここまでしつこいと流石に引くぞ…。
「黒江さんの言う通りですよ」
「あ…山田せんせー」
また保健室に誰かが来たかと思ったら、今度は山田先生だった。
しかも、珍しく厳しい顔をしている。
「さっき、オルコットさんと凰さんの機体を軽く検査しましたけど、ダメージレベルが完全にCを超過してます。暫くは修復に専念させてあげないと、後々に重大な欠陥を生じさせる可能性があります。代表候補生ならば、それぐらいは分かりますよね?」
「「うっ……」」
マジか…ISの方もそんなに危ない状態だったのか。
それじゃあ、流石にトーナメントに出るのは難しいな。
「ISとお二人の身体、その両方を休ませると言う意味でも、今回のトーナメント参加は許可できかねます」
当然の結果だな。
こればっかりは本気で仕方がないだろう。
「山田先生よ。ISの方はボクの方でなんとか出来るぞ?」
「え? そうなんですか?」
「うむ。その気になればトーナメント前に修復は可能だ」
「「本当ですかッ!?」」
ちょ…嘘だろ?
ユニちゃん先輩って、そんなことまで出来ちまうのか?
運動以外はマジで万能過ぎないか?
「しかし、幾らボクでも君達の怪我はどうしようもない。ISが修理できても、君達が動けないのならば意味は無い。と言うことで、どちらにしてもトーナメント参加は諦めた方が賢明だ。ここで無理をすれば、君達自身の身体がどうなるか分からないぞ?」
「「…………」」
一旦、大きく上げてからどん底にまで突き落とした…。
可愛い顔をして、やることがかなりえげつないぞ…!
「仕方…ありませんわね…。先輩の仰る通り、ここは素直に諦めるしかありませんわ」
「け…けど、それじゃあ…」
「鈴さん。言いたい事は分かりますが、だからと言って何も出来ないのもまた事実…違いますか?」
「そ…れは…そうだけど…」
中々に粘るな。
いい加減に諦めればいいものを。
「こうなると、問題は我々だな。一体誰とペアを組んだらいいものか…」
「一応、ウチは何人か候補がいるけど…」
「チエルはどうしようかな~…チラリ」
そっか。
タッグ戦になった以上、ユニちゃん先輩やクロエ先輩、風間さんも同じように誰かとコンビを組む必要があるのか。
今から探すのは中々に骨が折れそうだよな~。
「篠ノ之さん。チエルとコンビ組みませんか?」
「な…なに!? どうして私とッ!?」
「ん~…なんとなく? なんか寂しそうにしてたから…じゃダメですか?」
「べ…別に私は寂しくなんて…」
風間さんに誘われて目を逸らしてるけど、意外と満更じゃないんじゃないか?
本当に嫌なら、もっと強い口調で言ってる筈だし。
「それに、一緒に部屋だから作戦も立てやすいと思いますよ?」
「し…仕方あるまい…今回だけだからな!」
「はいはい。分かってますよ~箒ちゃん」
「いきなり名前で呼ぶな!」
「きゃははは♡」
ふーん…あの二人、意外といいコンビになるんじゃないか?
っていうか、普通に仲良いだろ。
案外、箒には風間さんみたいなリードしてくれるタイプの子が相性良いのかもしれないな。
「早くもチエルは相棒確保か。ウチはどうするかね~…ん?」
クロエ先輩が急にドアの方を見つめだした。
また誰か来るのか?
「クロエちゃん!! 私とペアを組みましょ!!」
「来ると思ったよ、楯無」
やって来たのは、シャルルの一件でもお世話になった生徒会長。
そっか。この人ってクロエ先輩とめっちゃ仲良かったっけ。
「ちょっと楯無! 抜け駆けはズルいっスよ!!」
「そうよそうよ! クロエちゃんは私と組むんだから!!」
いっ!?
なんか急に知らない先輩が二人追加されたんですがッ!?
「誰だって顔をしてるんで自己紹介をさせて貰うッス。私はギリシャの代表候補生で二年の『フォルテ・サファイア』っス! そして、クロエちゃんの将来の嫁でもあるッス!」
「抜け駆けしてるのはどっちよ! クロエちゃんのお嫁さんになるのは私なんだから!!」
「おいこらそこ。うちにはウェディングドレスを着る資格は無いってか?」
そこにツッコむんだ…。
やっぱ、クロエ先輩も女の子だからウエディングドレスに憧れとか抱いてるんだろうか?
「サ…サラ先輩? どうして貴女まで…?」
「セシリア…知り合いか?」
「えぇ…この方は…」
「セシリアと同じイギリスの代表候補生で二年の『サラ・ウェルキン』よ。そして、クロエちゃんとは将来を誓い合った仲でもあるわ」
「勝手に人の過去を捏造するなし」
またもや候補生の先輩かよ。
つーかクロエ先輩、めっちゃモテモテだな。
「クロエちゃん! 一体誰をペアを組むのッ!?」
「私っスよねっ!?」
「いいえ私よ!」
「はいはい。一旦落ち着けッつーの。はぁ…うちはこいつらを落ち着かせてくるわ。んじゃ、また明日ー」
そうして、クロエ先輩は三人の先輩の背中を押しながら保健室を後にした。
人気者ってのも大変なんだな…。
「おいユニ! 俺と組もうぜ!」
またかよッ!?
ユニちゃん先輩を誘ってるって事は…今度は三年生かッ!?
なんか凄いセクシーな先輩だな…。
「今度は僕か。そして、まさか君が来るとは思わなかったよ。ダリル君」
「いや。虚を出し抜いて先に来ただけだ」
出し抜いたんかい。
ユニちゃん先輩も競争率が激しいんだろうか。
「彼女はアメリカの代表候補生で三年生の『ダリル・ケイシー』君だ。僕とは一年の頃からずっと同じクラスでね。その縁か、なかよし部以外で仲が良い友人の数少ない一人さ」
「おいおい…『友人』なんて悲しいこと言うなよ。こっちとしちゃ、いつでもどこでも、もっと先の段階に踏む込んでも良いんだぜ?」
先の段階って何だよ…。
聞きたいけど、聞かない方が良いような気がする。
「ダリルさん…何をやってるんですか?」
「げ…来やがったか」
うっすらを笑みを浮かべたまま入ってきたのは、眼鏡で三つ編みな三年生。
この人もユニちゃん先輩を誘いに来たのか?
「さっきも言いましたよね? ユニさんは私と組むんです」
「それ、ユニがそう言ったのか?」
「いえ…それはまだですけど…でも! 私とユニさんはルームメイト同士です! ならば、同じ部屋の者同士の方が色々と都合がいいでしょう!?」
「そう言って、本当はユニの事を愛でたいだけだろうが」
「そ…それは…というか、そう言う貴女の方はどうなんですか!?」
「オレ? んなの、ユニの事を隅から隅まで思い切り可愛がってやりたいに決まってるだろうが」
同じ穴のムジナ同士で喧嘩してる…。
というか、この眼鏡の先輩は何者?
「彼女は『布仏虚』と言って、生徒会に所属していて整備班の班長もしているんだよ。あの楯無くんとは幼馴染同士らしい」
「「「「へー…」」」」
としか言いようがない。
あの生徒会長の幼馴染…か。
布仏って名字…どこかで聞き覚えがあるんだけど…どこだったっけ?
「ほらほら君達。話ならば別の場所で聞こうじゃないか。済まない。ボクもここらで失礼するよ」
「いいぜ。んで、何処に行く? お前らの部屋でも行くか? そこで3Pでもしながら色々と…」
「しませんから! 純情なユニさんを色欲に染めようとしないでください!」
「ユニのエロい姿を見たくないのか?」
「見たいですよ! 見たいに決まってるじゃないですか! でも駄目なんです! 私にとってユニさんはそう…触れてはいけない存在と言うか…天使のような…」
「なにやら、とんでもない爆弾発言を聞いたような気がするが、敢えてここは聞かなかった振りをしよう。今後の人間関係を円滑にするためにも」
…色々と危ない発言をしながら三年生の三人は去って行った。
ここの三年生にはロリコンしかいないのか?
「実は、二年生にはクロエ先輩が、三年生にはユニ先輩がいるせいで、上級生たちは織斑君達を全く眼中に入れてないんですよねー」
最後に風間さんから衝撃の事実を聞かされた。
そういや…今までも教室にやってきてた女子達の中に上級生は一人もいなかったっけ…。
なんか急に二人に同情してきた…。
俺、本格的になかよし部に入ってやろうかな…。
なかよし部で誰が好き?
-
可愛いクロエちゃん!
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賢いユニちゃん!
-
楽しいチエルちゃん!
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皆大好き!