話の流れでクラスメイトである風間と、今度の学年別トーナメントのペアを組むことになってしまった。
本当は一夏と一緒が良かったのだが…あの時、真宮寺先輩が言っていた事も尤もだし…今回は大人しく諦める事とするか。
「なぁ…風間」
「なんですか~」
場所は寮の自室。
今日もまた私の目の前でテレビに映っているインストラクターの指示に従いながら、マットの上でヨガをしている風間。
なんというか…凄く体が柔らかいんだな…。
「どうして、私なんかと組もうと思ったんだ?」
「保健室で言った通りですけど? なんだか箒ちゃんが寂しそうって言うかー…ボッチ一歩手前っぽく見えたもんで。ルームメイトとして、流石にそれは見過ごせないなーって思って」
「…それだけか?」
寂しそうに見えた…か。
強ち間違いではない…かもな。
自分でも分かっている。
私はお世辞にもコミュニケーション能力が高い方とは言えないと。
そのせいか、中学の時も自然と周囲に壁を作っていた。
「後はー…そうですねー。純粋に箒ちゃんと仲良くなりたかったから…じゃダメですか?」
「私と…仲良く…?」
「そーですよー。折角、こうして一緒に部屋になれたんですし。お友達にならないと損じゃないですか~。それに~」
「…それに?」
「これから3年間ずっと顔を合わせて暮らしていくんですし、楽しく仲良く暮らせるほうがずっといいじゃないです?」
…風間の言っている事は全て正しい。何も間違ってはいない。
何の因果か、私はこいつと一緒に暮らす事となった。
ならば、今後の事も考えて少しでも距離を縮めようと考えるのは当たり前の事だ。
「というわけで、まずはお互いに名前呼びにしませんか? って、チエルはもう既に名前で呼んでますけど」
「な…名前か…そうだな…」
べ…別に名前で呼ぶくらいは全然平気だ。
鈴やセシリアの事だって、いつの間にか名前で呼んでいたしな。
その要領で、ごく自然な感じで呼べばいいだけの話だ…うん。
「ち…チエル…」
「なんですか~? 箒ちゃ~ん? きゃはは♡」
は…恥ずかしい…!
自然に…ではなく、意識して相手の名前を呼ぶと言うのは、こんなにも恥ずかしいものなのか…!
思わず一瞬だけ、チエルのことを意識してしまったじゃないか…!
「うんしょっと。んじゃ、ちゃんとお友達同士になれたところで、今後について話しますか」
「あ…あぁ…そうだな」
友達同士…友達同士…か。
何故だろうな…そんな風に言われて嬉しいと思っている自分がいる…。
「箒ちゃんって剣道が得意って事は、やっぱISでも近接戦を好むって感じですか?」
「そう…だな。好むと言うか、私にはそれしか出来ないと言うか…」
剣を握ることしか能が無い…我ながら不器用だとは思う。
ISは剣一本でどうにかなる程、甘い競技じゃない。
そんな事が可能なのは、それこそ千冬さんのような達人だけだ。
本当は射撃の訓練などもしないといけないんだろうな…。
「うーん…実を言うと、チエルも得意なのは接近戦なんですよね~」
「そ…そうなのか?」
「そーなんですよー。実際、チエルの専用機もガッチガチの接近戦仕様ですし。一応、遠距離攻撃が出来ない訳じゃないんですけど…」
チエルも私と似たような物だったのか…。
生身でISを振り回すほどのパワーを誇るチエルだからこそ、その力を最大限に活かせるのが接近戦なのかもしれないな。
「確か、箒ちゃんってよく『打鉄』を使ってましたよね?」
「あぁ…それがどうかしたのか?」
打鉄を使う理由も、単純に『鎧武者みたいだから』なんていう理由なんだがな。
あと、防御力が高いと言うのが私と相性が良い様に思えた。
「チエルの記憶が正しければ、打鉄ってかなり沢山の換装装備があって、その中に腕部装着型のマシンキャノンがあったような…」
「そんな物があったのか?」
「はい。主武装にはならないけど、相手を牽制するにはもってこいですよ? 特に、接近戦を主軸とするなら必須の武装ですしね~」
チエルが言うには、弾を命中させる必要性は全く無く、相手に接近する際に適当に乱射をするだけでも十分らしい。
相手が怯んでいる間に自分の間合いに潜り込み、そこから私の剣を打ち込めばいいと。
腕部に装着すれば片手が塞がる必要がないから、すぐに接近戦に移行が出来る。
「…チエルは凄いな」
「それ程でもありますかね~。こー見えても企業所属のIS操縦者ですしー」
そう言えばそうだったな…すっかり忘れていた。
「明日から早速、一緒に訓練でもしましょうか? 期間は短いけど、それでも即席の連携ぐらいは出来るようになりたいですしー」
「そうだな。私も、チエルの足手纏いになるような事はしたくない」
「お? やる気満々ちゃんですね~! チエルも負けてられないな~!」
こんな私を選んでくれたチエルの期待を裏切るような真似だけは絶対にしたくは無い。
せめて、チエルの援護ぐらいや露払いぐらいは出来るようになりたい!
だから私は…今までの愚かな自分から脱却する!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
チエルと箒が絆を強めていた、その頃…。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!! ウチの勝ちっス~!!!」
「「負けたぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
クロエの部屋で、クロエとペアを組む権利を賭けて一人の国家代表と二人の代表候補生による熱いスマブラSP大会が繰り広げられていた。
「わ…私のセフィロスが…」
「キ…キングクルール…うぅ…」
「にゃ~っはっはっはっ! やっぱ、アタシの使う勇者こそが最強ッスね~!」
「つーか、どうしてスマブラで決めようとするかね…」
ゲームで決めようとするのは平和的でいいが、仮にも学園の一大イベントのペア決めがこれで良いのだろうかと言う疑問もあった。
…が、ゴチャゴチャと考えるのが苦手なクロエはすぐに…。
「ま…別にいっか」
…となった。
「私の『コールド・ブラッド』と、クロエちゃんの『ランスロット』が手を組めば優勝間違いなしッス~!」
「実際…相性は良いかもしれないわよね…」
「冷気で相手の動きを止めるコールド・ブラッドに、超高機動戦闘が得意な、距離を選ばない万能機である『ランスロット』…」
「冷気って時点で、私の『ミステリアス・レイディ』とは属性的な意味で不利だしね~…」
本当は、ここにいる誰と組んでもクロエは最大限の力を発揮できる自信があった。
クロエの専用機が、近年稀に見るほどにかなりの万能性を誇っているから。
遠距離、中距離、近距離。
どんな距離でも常に有効な攻撃が可能で、前衛で敵を抑えたり、または攪乱したり、後ろに下がれば強力な砲撃で援護が可能。
その気になれば広範囲の制圧武器も使用可能と言う優遇っぷり。
国家代表と言う楯無の肩書が目立つせいで忘れられがちではあるが、実はクロエこそがIS学園二年生の中では最強の実力者なのだ。
他の学年は兎も角、同級生たちの中ではそれは完全に周知の事実となっていた。
「そういや、去年の学年別トーナメントは、クロエちゃんが優勝してたっけ」
「あの時のクロエちゃんも本当に強かったわ~。全く動きが捉えられないんですもの」
「コールド・ブラッドの冷気なんて全く効いてなかったッスからね~。動きが速すぎて、凍りつく暇も無いって言うか…」
「そりゃ、試合となれば全力でするのは当たり前でしょーが。それが礼儀っつーもんじゃねーの? 知らんけど」
余談だが、一年生の時のトーナメント優勝が切っ掛けとなり、学園内でクロエのファンクラブが結成された。
本人は全く与り知らぬことだが。
「ともかく、今度のトーナメントはよろしく頼むッス!」
「ん。決まったもんはしゃーねっしょ。つーか、フォルテとなら大半の相手は楽勝じゃね?」
学年最強と代表候補生とのコンビ。
優勝候補最有力になるのは確実だった。
「はぁ…仕方がないか。それじゃあ、私とサラちゃんで組む?」
「そうね…そうしますか」
こうして、何気に優勝候補コンビが2つも爆誕してしまった。
他の生徒達が気の毒になりそうな布陣だ。
「今回はダメだったけど…その代り、埋め合わせとして今度、私とデートしてねクロエちゃん♡」
「デートぉ? まぁ…いっか」
「えぇ~! そんなのズルいっすよ~! ウチもクロエちゃんとデートするッス~!」
「それは私も同じよ! クロエちゃんと一緒に行きたいと思ってたお店があるんだから!」
「はいはい。別にこれはペア決めとは違っていつでも行けるし…順番に行けば問題無いっしょ?」
「「「わ~い!」」」
黒江花子。
もう既に今後の予定が埋まってしまった。
けど、本人も満更ではないので問題は無いだろう。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そして、ユニを巡って争っていた三年生たちはと言うと…。
「はぁ~…やっぱ、日々の疲れを癒すには『ユニ吸い』が一番だよなぁ~…」
「全く以て同感です…」
「なんでこうなった?」
ダリルと虚の二人に挟まれた状態で身動きが取れなくなっていた。
ダリルはユニのうなじに顔をくっつけて匂いを吸い、虚はユニの胸に顔を埋めてハァハァと息を荒くしている。
傍から見ると完全に変態の所業である。
「というか、このボクとどっちがペアを組むかで話をしていたのではないのかね?」
「その話な。それは普通にオレがユニを組むって事で示談が成立したわ」
「示談て」
本人が全く知らない間に話が纏まっていた件。
「私が得意とするのはあくまで『整備』ですからね。私がユニさんとペアを組んだら、却って足を引っ張ってしまいます。それだけはどうしても我慢出来ませんから」
「ふむ…虚くんがそれでいいのならば、ボクとしては何にも文句は無いが…」
ユニの能力が最も発揮されるのは後方援護。
特に電子戦ではユニの右に出る者はいない。
「実際よー…オレの『ヘル・ハウンド』と、ユニの『ガウェイン』が組めば普通に最強なんじゃねぇのか?」
「ちっちっちっ。ダリルくん、残念ながらボクの『ガウェイン』は無事に第2形態移行してね。前以上に大幅な強化がされているのだよ」
「マジか!? 強化っていうと…具体的にはどんな?」
「端的に言えば『世界最強の防御力』を手に入れた…って感じかな?」
「世界最強の防御…いいじゃねぇか! ガチで『鬼に金棒』だな!」
超攻撃的な能力を持つ『ヘル・ハウンド』に、ユニの機体の防御力が加われば、大半の相手には無双できる。
この時点で優勝は貰ったも同然だった。
「な…なぁ…ユニ…もしも優勝したらよ…その時はオレと最後の一線を…」
「おっと。残念ながら、そうはいきませんよ? ユニさんと最後の一線を越えるのは私です」
「またか…」
この手の話は、これまでに何度も繰り返されてきた。
どれだけ容姿が幼くとも、ユニも立派な18歳。
彼女達が何を言っているのかは普通に理解出来ている。
(この部分さえなんとかなれば、二人とも素晴らしい友人なのだがね…)
これこそが、ユニの目下の悩みの種でもあった。
こうして、なかよし部それぞれに組むべきペアが決定した。
なかよし部で誰が好き?
-
可愛いクロエちゃん!
-
賢いユニちゃん!
-
楽しいチエルちゃん!
-
皆大好き!