IS学園なかよし部 活動記録   作:とんこつラーメン

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なかよし部 試合開始

 第九世代機という前代未聞の機体を引っ張り出してきたチエルに、対戦相手であるラウラは勿論、何の事情も知らない観客席にいる生徒達全員を驚愕させた。

 

「それじゃあ箒ちゃん。手筈通りにお願いしますね~」

「承知した! こっちは任せてくれ、チエル!」

 

 完全に連携する気満々なチエル&箒コンビ。

 一方のラウラ達はと言うと…。

 

「おい…貴様」

「ひゃ…ひゃいっ!?」

「余計な真似をして私の邪魔をしてみろ…その時は、貴様から先に排除してやる。そうなりたくなかったら大人しくしている事だな」

「わ…分かりましたぁ…」

 

 連携する気全く無し。

 見事にラウラの独占状態。

 相川清香は泣いていい。

 と言うか、もう泣いてる。

 

「てなわけで、ボーデヴィッヒさんのお相手は、チエルがやりますね~」

「望むところだ。貴様のその第九世代機とやらがハッタリではないことを証明してみせるんだな」

「ハイハイwww」

 

 紅蓮聖天八極式は全身装甲になっているので顔は見えないが、装甲の下では絶対にメスガキのような顔をしているに違いない。

 

「そういう訳だ。悪いが相川…私の相手をして貰うぞ」

「あうぅ…もうどーにでもなれだぁぁぁ!」

 

 相川清香。完全にヤケクソ。

 今回、彼女こそが唯一にして最大の被害者なのかもしれない。

 

「まぁ…トーナメントに備えてやれることはやったし…箒ちゃんなら楽勝でしょうね。操縦技術はともかくとして、操縦者の運動能力が違い過ぎるし」

 

 箒のIS適性は『C』。

 良くも悪くも普通。

 だが、箒はそれを自身の運動神経で見事に補っていた。

 それを見た時は、思わずチエルも口笛を吹いた。

 

「問題はこっちの方か…」

 

 正直、勝とうと思えば簡単に勝てる。

 以前に圧倒的な実力差を見せつけられておきながらも、未だに力に固執して相手を見下している時点でチエルの勝利は決まったも同然。

 となると問題なのは『どう勝利するか』だった。

 

 本当に本気で戦えば、良くて秒殺。最悪瞬殺。

 しかも、やり方次第じゃ機体も操縦者も大怪我をするかもしれない。

 流石のチエルも、相手に怪我をさせるほど外道ではない。

 

(うーん…向こうは殺る気満々っぽいけど、ここはあくまでも『試合』として決着を付けますかねー)

 

 方針決定。

 取り敢えず、ラウラのISのSEを枯渇させてルール上の『敗北』を与える。

 

(ま…攻撃だけは手加減してあげますよ。攻撃だけは…ね)

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 クロエの手によってリボルバーカノンが破壊され、その後に千冬によってISを回収されていたので全く修復されていない状態なので、今のシュヴァルツェア・レーゲンはワイヤーブレード以外の飛び道具が存在しない状態となっていた。

 通常ならば余りにも大き過ぎるハンデ。

 だが、未だに絶対的な過信をしているラウラは、自分の敗北を全く信じていなかった。

 

 だが、その自信は試合開始から僅か数秒で粉々に崩れ去ることとなる。

 

「ほらほら~! そ~んなとろくさい攻撃じゃ、チエルにダメージを与えようなんて夢のまた夢ですよ~」

「ば…バカな…!? こんな事が…!?」

 

 試合開始と同時にワイヤーブレードを全て射出して先制攻撃を仕掛けたラウラ。

 並の者ならば、一瞬で全身を拘束されて身動きが出来なくなる。

 しかし、残念ながらチエルは『並の者』ではない。

 彼女は『なかよし部』なのだ。

 IS学園で唯一、生徒会ですら持ちえない『独自行動権』を有する部活。

 その事実だけで、彼女が普通ではないとすぐに分かる。

 

 背面に広がる真紅に光る『エナジーウィング』で全身を包み込み、凄まじい速度と鋭角的な機動で紅い軌跡を描きながらワイヤーブレードを全て神回避してみせ、その圧倒的性能を実力に観客全員が唖然として黙り込んだ。

 

 その気になれば動きながら全てのワイヤーブレードを斬り裂けるが、チエルは敢えてそれをしなかった。

 チエルとラウラとの間にある圧倒的実力差を、回避運動だけで思い知らせる為に。

 

「ならば…これで!…何ッ!?」

 

 近づいて来た瞬間を狙ってプラズマ手刀で攻撃しようと企んだラウラであったが、次の瞬間、チエルの…紅蓮の姿が消え去った。

 実際には、消えたのではなくて、紅蓮の異常なまでの速度にラウラの目とISのハイパーセンサーが追いつけなかったせいで、あたかも消えたかのように見えてしまったのだ。

 

「ど…どこに消えたッ!?」

 

 反射的に周囲を見渡してチエルの姿を探す。

 ハイパーセンサーを使えば一発なのにそれをしないのは、ISという物を使用していても結局は視界に頼ってしまう人間の悲しき習性故だった。

 

「どこ見てるんですか~? チ~エ~ル~はぁ~…」

「はっ!?」

 

 背後から声が聞こえ、初めてハイパーセンサーを使用し、自分の真後ろにチエルがいる事に気が付いた。

 しかし、完全に後ろを取られた状態で気が付いても、もう後の祭り。

 

「きさm…!」

「ハイ残念!」

 

 AICで動きさえ止めてしまえば。

 そう判断し、振り向きながらAICを発動させようと試みるが、そんなのを易々と許すほどチエルと紅蓮の動きは緩慢ではなかった。

 

「まずは一撃~!」

「がっ…!?」

 

 一瞬で拡張領域内から『呂号乙型特斬刀』を取り出し、すれ違いざまにAICの搭載されているであろう両腕部を一刀の元に斬り裂いた。

 

「これでもう、ご自慢のAICは使えなくなっちゃいましたね~。ま、仮に機体が万全だったとしてもチエルの勝利は揺るがないんですけど~」

「貴様ぁぁ…!」

 

 バチバチと紫電が散っている両腕部を抑えながらチエルの事を睨み付ける。

 それだけ恨みと怒りの事もった目で見られても、彼女には痛くも痒くもないのだが。

 

「っていうか~…チエルって右利きなんですよね~。この意味分りますぅ~?」

「なんだと…!?」

「紅蓮のこの右腕…武器とか持てない関係上、基本的に何かを装備する時って左手なんですよね~」

「ま…まさか…!?」

「利き腕とは反対側の腕の攻撃すら防げないって…それでも現役の軍人さんなんですかぁ~? ププ…フツーにこれ面白いんですけど…」

「風間ちえるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」

 

 再びの挑発と完全に舐められた攻撃に激高し、ラウラは怒りの雄叫びを上げながらプラズマ手刀を展開して突撃していく…が、そんな愚直な攻撃がチエルの通用する筈もなく…。

 

「トロすぎ! ノロすぎ! マヌケすぎ~!」

 

 いつもならば最小限の動きでのギリギリの回避をするところが、ワザと高速移動を駆使してからの大袈裟な回避を披露してから距離を離す。

 

「あの~…やる気あります~? しっかりしてくれないとー…ギャラリーの皆さんも飽きちゃうじゃないですか~。せめて、チエルに掠り傷を与えるぐらいはしてくれないと~。ほらほら~頑張れ~」

「だ…黙れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 完全に舐められている。

 織斑千冬に指導を受け、ドイツ軍の特殊部隊で隊長を務めている自分が。

 こんな、極東の小娘に。

 その事実が許せず、ラウラの怒りは増々増大していく。

 それが己の視野を狭め、自分を敗北に近づけているとも知らずに。

 

「…もうそろそろいいか」

 

 手加減をするのも楽ではない。

 本気で戦えないというのは、それだけでフラストレーションが溜まる。

 それが圧倒的格下で、しかも同情の余地もない相手ともなると尚更。

 

「エナジーウィング…出力最大」

 

 紅蓮の翼が真紅に燃える。

 それと同時に紅蓮の全身が翼と同じ光に包まれた。

 

「決着…つけちゃるわ!!!」

「は…速すぎr…!」

 

 最早、慣性の法則なんて関係ない。

 完全に常識を無視したような急加速からの急停止、再びの急加速という動きを見せ、ラウラの視界が全て紅い軌跡に覆われる。

 

「まずは一発!!」

「ワイヤーブレードだとっ!?」

 

 紅蓮の肩部から鋭い刃の付いたスラッシュハーケンという名のワイヤーブレードが二基射出される。

 数こそ少ないが、その速度と鋭さはレーゲンの比ではなく、ラウラは回避することも防御することも出来ずに直撃を受け、レーゲンの装甲にスラッシュハーケンの刃が突き刺さる。

 

「こっちに…来い!!」

「引き寄せ…られる…!」

 

 成すがままに全身を引っ張られたラウラだが、この後に何が起こるのかを予測して両腕を使ったクロスアームガードを試みるが、それは次の瞬間に放たれた腹部目掛けての勢いを付けたキックによって無駄に終わった。

 

「が…あぁぁ…!」

 

 絶対防御やシールドバリアーで安全が約束されているとはいえ、決してダメージが入らない訳ではない。

 チエルと紅蓮の全力キックによって数秒間だけだが呼吸が出来なくなり、吹き飛ばされながら意識が遠くなる。

  

 だがまだ、チエルのターンは終わっていなかった。

 

「まだ終わりじゃない!!」

 

 なんと、右腕の巨大な黄金の爪を持つ手甲部がワイヤーで繋がれた状態で射出され、そのままラウラの胴体部をガシっと掴み、今度は逆にチエル自身をラウラの方に引き寄せた。

 

「こいつで…トドメだ!!」

「がはぁっ!?」

 

 その勢いのままステージの壁に叩きつけられ、壁を破壊しながら身動きが出来ないまま押し込まれる。

 そして、右の掌内にある『機構』が作動して『紅い波動』が発生する。

 

「これが『輻射波動』だっ!!!」

 

 輻射波動機構。

 手甲部内に存在する機構の中にて高められた高出力の電磁波を高周波として放つ事により、膨大な熱量を生み出して相手を爆発四散させるという協力無比な紅蓮最強の兵装にして必殺技である。

 無論、競技用として多少は威力が抑え込まれているが、それでも並のIS相手には一撃必殺の威力を誇る。

 もし競技用のリミッターを外した場合、同レベルのIS以外は例外なく耐えられず、コアごと文字通り木端微塵と化す。

 

「あ…あぁ…あぁあぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!!」

 

 輻射波動の一撃をモロに受け、ラウラは悶え苦しみ、レーゲンのSEはあっという間に無くなっていく。

 SEが0になる直前、輻射波動の中心部にて巨大な爆発が起き、周囲は爆煙に包まれる。

 

 誰もが動揺する中、煙の中から颯爽と無傷の紅蓮が飛び出してきて、その紅い翼を大きく広げた。

 

「これが…紅蓮の力だ!!」

 

 それは勝利の雄叫び。

 チエルと紅蓮の約束された完全勝利だった。

 

 そして、煙が晴れていくとズタボロにされたレーゲンと共に口から煙を吐きながら倒れゆくラウラの姿が見えた。

 白目を剥き完全に気絶をしているようだった。

 

(まずは第一段階クリア…って所ですかね。問題はここからだけど…)

 

 

 

 

 

なかよし部で誰が好き?

  • 可愛いクロエちゃん!
  • 賢いユニちゃん!
  • 楽しいチエルちゃん!
  • 皆大好き!
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