IS学園なかよし部 活動記録   作:とんこつラーメン

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なかよし部は決着を付けます

「ボーデヴィッヒさんのISが機能停止したと同時に異形の姿に変化した…! あれが真宮寺先輩の言っていたVTシステムなのか…!」

 

 観客席にて試合を見ていたシャルルは、身を乗り出しながら目の前で起きた異常事態を冷静に観察していた。

 

 実は、ユニは千冬だけでなく、同じなかよし部であるシャルルや、自分達と親しい関係にある二年や三年の専用機持ちや候補生達ともVTシステムに関する情報を共有していた。

 いざと言う時に無用な混乱を招かない為に。

 

 因みに、セシリアや鈴とはそこまで親しくない為、特に何も教えてはいないし、一夏に至っては小難しい事を言っても理解してくれるかどうか分からない上に、下手したら勝手に暴走する危険性すらもあったので、後で教えることに決めた。

 

「それにしても、まさか第九世代型なんて前代未聞のISを引っ提げてくるなんてね…タダ者じゃないとは思っていたけど…これは流石に予想出来なかったよ…!」

 

 現行のISの全てをぶっちぎりで超越したIS。

 その真紅の軌跡を描く超高速の動きは、まさに圧巻としか言いようが無かった。

 なかよし部がどうしてIS学園内で特別な立場にあるのか、その理由の一部を垣間見たような気がした。

 

「ちょ…何なのよあれ…! 試合も機体も何もかもが凄すぎたけど…」

「ボーデヴィッヒさんのISが突如として変態するなんて…これは一体…!」

 

 隣りで大きく目を見開いて驚いているのは鈴とセシリア。

 一応、動けるぐらいには回復した二人は、試合だけでも見ようとこうして観客席にまで足を運んだはいいが、その余りにもぶっ飛んだ実力をまざまざと見せつけたチエルと紅蓮に圧倒され、今度はVTシステムによって怪物と化したレーゲンに空いた口が塞がらない状態となっていた。

 

「あれ? そう言えば一夏は? さっきまで隣にいた筈だけど…」

「一夏? あいつなら、ついさっきお腹を抱えたままトイレに行ったけど」

「ト…トイレ?」

「えぇ。なんでも『冷たいものを飲み過ぎた』とか仰っていましたわ」

「そ…そう…」

 

 まさかの一夏不在の状態でのVTシステム戦突入。

 微妙に緊張感が削がれてしまったシャルルであった。

 

 

 

 

 

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 試合中にいきなり起った謎の異変。

 シュヴァルツェア・レーゲンが突如としてファンタジーに出てくるような怪物になってしまったことで、観客席にいる生徒も列席者も全員が驚きの余り無言になってしまった。

 つい先程まで歓声に包まれていたとは思えない程の静寂。

 普通ならば、すぐに緊急事態を知らせるアラームが鳴り響き、全員の避難を開始させている所。

 だがしかし、実際には避難は愚かアラームすら鳴っていない。

 

 彼らは知っていた。

 今、異形の化け物と対峙しているのが誰なのかを。

 第九世代機と言う超兵器を身に纏い、操縦者自身も圧倒的実力を見せつけた。

 皆は分かっていた。

 どうして誰も逃げないのか。

 どうして警報すら鳴らないのか。

 それは、分かっているから。

 自分達の眼前にいる、真紅のISを纏う少女ならば、必ずや自分達を守ってくれると。

 そう信じさせてくれるだけの実力を見せてくれたから。

 

 だから誰も声を発しない。

 彼女の邪魔をしない為に。

 下手な応援よりも、この勇気ある戦いを最後まで見届けることこそが重要だと思ったから。

 

 

 

 

 

・・・・・

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 一方その頃。

 試合を終えたユニとダリルは、ピットにてタオルとドリンクを持った虚に出迎えられていた。

 

「お疲れ様でした。流石でしたね」

「まぁな。一回戦じゃ負けられねぇって」

「その通り。こんな序盤で苦戦するようならば、優勝なんて夢のまた夢…ん?」

 

 手渡されたタオルで汗を拭いていると、いきなりユニの専用機『蜃気楼』の待機形態である高性能スマホが反応し出した。

 

「これは…遂に発動したのか」

「それって…この前言ってた『アレ』か?」

「VTシステム…ですね」

「そうだ」

 

 前述した通り、この二人には先に説明をしてあったので話も早い。

 すぐにユニが何を言いたいのかを理解してくれた。

 

「だが、心配はあるまい。相手はあのチエルくんだ。すぐに鎮圧してくれることだろう。織斑教諭も、それを信じて敢えて警報を出していないのだからな」

「ま…あいつならな…」

「楽勝でしょうね。まず間違いなく、チエルさんは一年生の中で最強ですから」

 

 この二人もチエルの実力はよく知っている。

 正確には、なかよし部の三人の実力を良く知っている。

 全員揃って世界レベルの実力者であり、その気になれば国会代表すらも簡単に倒せるほどの領域にいる事を。

 

「解決は時間の問題だ。我々は我々の成すべき事をするとしようじゃあないか」

「そうだな。後輩の事を信じてやるのも先輩の仕事か」

「ユニさんの仰る通りですね。チエルさんならばきっと大丈夫でしょう」

 

 そうして、ユニとダリルは第二回戦へ向けて体を休めるのであった。

 

 

 

 

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 更に同時刻。

 クロエはフォルテと一緒に一回戦を見事に勝ち抜いた楯無とサラを労っていた。

 

「おつー」

「お疲れッスー」

 

 何とも軽い言葉だが、今の二人にはクロエの言葉と言うだけで最高の清涼剤になっていた。

 

「ありがと、クロエちゃん。まずは順調に一回戦と突破よ」

「この調子なら、あっという間に決勝戦まで行けるかもね」

「油断乙。ま、アンタ等なら楽勝かもだけどサ」

 

 クロエなりに注意をしたが、すぐに『こいつらはそんなに馬鹿じゃないか』と思い直した。

 それだけクロエが彼女達を信じているという証拠でもあった。

 

 そんな時、クロエのスマホに突如としてユニからメールが来た。

 

「ん? パイセンから? あ……」

 

 メールの内容を見て、すぐに何があったかを知る。

 だが、それでもクロエの表情が変わることは無かった。

 

「どうしたの?」

「ユニパイセンからのメール。なんか、チエルの奴が例のドイツっ子をボッコボコにしてVTシステムを無事に発動させたってさ」

「ボッコボコって…」

 

 チエルの実力を考えれば当然の結果ではあるが、だとしても哀れだった。

 なんせ、チエルはクロエと真正面から戦って互角に渡り合える唯一無二の存在。

 代表候補生などでは相手にすらならないのは明白だった。

 

「ま、チエルなら大丈夫っしょ。少なくとも、あんなパチモン製造機(笑)に負けるほど軟な鍛え方はしてないし」

「パチモン製造機って…」

「VTシステムの事をそんな風に言うの、世界広しと言えどもクロエちゃんだけね…」

「それマ? ないわー」

 

 割と緊急事態の筈なのだが、チエルに対する絶対的信頼があるお蔭でいつもと全く変わりのない空気の二年生組なのだった。

 

 

 

 

 

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・・・

・・

 

 

 

 

 場面は戻り第三アリーナ。

 ヒト型になりそこなった未成熟な状態のVTシステムを前に、チエルは紅蓮の右腕部を構えて睨み合っていた。

 

「さーて…どう料理してあげますかねー…っと!」

 

 紅蓮のエナジーウィングを広げた瞬間、それに反応してVTシステムが半ば融解しかけている体から触手のような物を無数に放ち、チエルの身体を拘束しようとしてきた。

 少し離れた場所に箒たちがいるにも関わらず、それらを完全に無視してチエルのみを狙う。

 先程までの戦闘でチエルの危険性を認識し、最優先排除目標にするように敢えてヘイトを貯めた結果だった。

 

「すっトロいんですっつーの!! そんな動きでチエルと紅蓮の動きを本気で捉えられると思ってんじゃねーですよ!! コンチクショー!!」

 

 紅蓮はすぐにその場から飛翔し、アリーナ全体に真紅の軌跡を描きながら縦横無尽に飛び回る。

 

 正面から五つの触手が向かって来るが、その僅かな隙間を縫って前進しながら全てを回避すると言う神業を披露したかと思ったら、いつの間にか右腕の輻射波動機構に円盤状のエネルギーをいつの間にかチャージしていた。

 

「聖天八極式な紅蓮なら、こんな事も出来るんですよーだ!! くらえ!!」

 

 高速移動で触手を回避しつつ、全身を捻るようにしながら全力で収束した輻射波動を投げ飛ばす!

 まるでフリスビーのような軌道を描きながら飛んでいき、次々と触手を斬り裂いていき、本体であるVTシステムすらも一刀両断する…が、液状になっているが故かすぐに元通りに再生してしまう。

 

「ちっ! 超絶ヨワヨワな癖に耐久力だけは一丁前ですか! 生意気なんですよ…ね!!」

 

 迫ってきた触手を左手に持った呂号乙型特斬刀にて斬り裂き、すぐに思考を切り替える。

 遠距離での攻撃が効果が薄いのなら、さっきと同じように輻射波動を直にお見舞いしてやればいい。

 しかも、今度はさっきとは違い遠慮なく『最大出力』で。

 

「いきますよー…紅蓮!!」

 

 チエルの戦意に反応するかのように紅蓮の目が光る。

 最早、ステージ全体がVTシステムの触手によって覆われようとしている中、紅蓮とチエルの放つ紅い光が人々に希望を与えていた。

 

「アイツ目掛けて…飛んでけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 ワイヤーで接続された輻射推進型自在可動有線式右腕部が輻射波動を放ちながら真っ直ぐにVTシステムの本体目掛けて突撃していく。

 勿論、システムの方もそれを防ぐ為に触手にて妨害してこようと試みてくるが、其の全てが輻射波動の前に破壊されていく。

 

 そして、遂にその巨大な爪が漆黒の怪物を捉えた。

 

「捕まえた!! このまま一気に決める!!」

 

 右腕部でシステム本体を掴んだままワイヤーを短くしていき、紅蓮自身を凄まじい勢いで引っ張っていく。

 そして、紅蓮本体と右腕部がドッキングした瞬間、チエルはVTシステムをそのまま地面に叩き付け巨大なクレーターを作り出し、輻射波動の出力を一気に最大にまで引き上げた!

 

「これで…終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 超絶的な熱量が放たれ、それが内部にあるVTシステム自体に直撃する。

 凄まじい威力によってすぐに機能不全に陥り、徐々に融解したボディが消えてなくなっていく。

 

 全ての威力と熱量が一点に凝縮された瞬間、紅蓮とVTシステムの両方を完全に覆い尽くすほどの巨大な爆発と爆炎が発生し、アリーナ全体が轟音に包まれる。

 その様子を一番傍で見ていた箒は、その威力にチエルの身を案じ泣きそうな顔になったが、彼女の顔はすぐに驚きと喜びの表情に変わった。

 

「あ…あれは…紅蓮っ!?」

 

 その右手にシュヴァルツェア・レーゲンのコアを握りしめながら、爆炎の中から紅蓮が光りの翼を広げて飛び出してきた。

 あれだけの爆発の中心にいたにも拘らず、真紅の装甲には傷一つとてついてはいなかった。

 

「今度こそ…チエル達の完全勝利です!! ちぇるーん♡」

 

 紅蓮が似つかわしくないVサインを見せた直後、ようやく試合終了のアナウンスがなされた。

 

『試合終了! 勝者…風間ちえる&篠ノ之箒!!』

 

 そして、アリーナは勝利者を湛える歓声で包まれた。

 

 

 

なかよし部で誰が好き?

  • 可愛いクロエちゃん!
  • 賢いユニちゃん!
  • 楽しいチエルちゃん!
  • 皆大好き!
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