ラウラのISのVTシステム暴走事件から数日。
なかよし部と学園側の迅速な対応によって一切の被害を出さずに事件を収束させることに成功し、その後も学年別トーナメントは通常通りに進んで行った。
なかよし部の三人も自らの相棒と力を合わせて順調にトーナメントを勝ち進んでいき、三人揃って見事に決勝戦に進出することが出来た。
クロエだけは前大会優勝者と言う事もあって特別にシードで決勝戦に直行したが。
そして今日、学年別トーナメント最終日。
遂に学学年のトーナメントの決勝戦が始まろうとしていた。
まずは、ユニとダリルのコンビのトーナメント三年生の部決勝戦。
アリーナ全体が緊張感に包まれた中、全く緊張していない様子のユニは、いつものような飄々とした感じで自身の専用機である『蜃気楼』を身に纏い、その隣ではいつも以上に気合十分と言った感じのダリルが、八重歯を剥き出しにしながら拳を二義締めながら不敵な笑みを浮かべつつ専用機である『ヘル・ハウンド』を装着していた。
「ダリル君。決勝戦でもいつも通り、油断せずに行こうではないか」
「当然だ。最後だからって緊張したり、浮かれたりすんのはド素人やメンタル弱者だけがする事だ。オレたちにはンな事は無い…だろ?」
「勿論だとも」
鉄壁の防御に加え、高い指揮能力と高度な情報処理能力。
更には広範囲を一度に攻撃可能な武器まで所有しているユニと、その高い火力と機動力で最強の前衛となってユニの弱点をカバーしているダリル。
世辞抜きにして、今のこの二人は誰もが認めるレベルで最高のコンビになっていた。
それは、今までの試合の内容が証明している。
「うぅ…なんとか決勝戦まで来れたけど…」
「およそ考えうる限り、最強無敵のコンビじゃないのよぉ~…」
相対している二人も、三年生で決勝まで残っている時点で相当な実力者なのだが、それすらも軽く上回っているのが目の前の彼女達なのだ。
「ふむ…ダリル君よ」
「どうした?」
「折角の決勝戦なのだから、ここらで一つ『ネタ晴らし』をしても良いだろうか?」
「ネタ晴らし?」
「うむ。端的に言えば『彼女』の事を紹介したい」
「あぁ…そーゆーことか。うん。別にいいんじゃねぇか? 試合前のいいパフォーマンスになるだろ」
「同意してくれて感謝する。では…こほん」
いきなり何を言い出すのだろうか。
相手選手たちも観客達も、突然の事にざわつき始めた。
「えー…君達は疑問に感じた事は無いか? 一体どうやって、このボクが高度な援護をしながらも機体の制御まで行っているのかと。正直に告白すると、お世辞にもボクはそんなに器用な人間じゃない。二つの事を同時に行うなんて不可能だ。並列思考? そんな事をしている暇があるなら、二つ分の思考を一つに集約した方が遥かに効率的だ。けど、この蜃気楼の性能をフルに発揮するには、それではいけない。ならばどうすればいいのか。その答えは簡単だ。実にシンプルな事だった」
ユニの…蜃気楼の右腕が上がって人差し指を立てる。
「もう一人…『別の誰か』にやって貰えばいい」
左腕が上がり、それもまた人差し指を立てた。
「えっと…つまり、どゆこと?」
「こういうことさ。ほら、自己紹介したまえ」
『了解しました。ユニ博士』
「「!!??」」
いきなり聞こえてきた機械的な音声。
それは蜃気楼から…正確には『蜃気楼自体』から聞こえてきた。
しかも、声色はまんまユニと一緒。
『私の名前はロゼッタ。ユニ博士の専用機『蜃気楼』の機体制御用AIです』
「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――っ!!??」」
ここに来てまさかの展開に、相手の女子だけでなく観客全員が度肝を抜かれた。
候補生でもなければ国家代表でもない一介の女子高生が専用機を所持しているだけでも十分に驚嘆に値するのに、まさかそれに自分で作ったサポート用AIを搭載しているだなんて誰が想像するだろうか。
「このロゼッタが蜃気楼の機体制御を担当し、このボクはドルイドシステムを用いた絶対守護領域の展開や拡散相転移砲使用時の演算などに専念できると言う事なのだよ」
これでようやくユニの強さに納得がいった。
コンビと言ってはいるが、実質的に彼女達は『トリオ』で戦っていたのだ。
「とは言え、AIはあくまでAI。選手には数えられない。端的に換言すれば、ボク達はルール違反は犯してはいない…ということだ」
「へ…屁理屈だ…」
「屁理屈も理屈の内だよ。では…始めようか。ボク達の決勝戦を」
「おう! 腕が鳴るぜ!!」
『私も全力でお二人をサポートします』
あぁ…これ終わったわ。
試合が始まった直後、相手選手の二人はそう悟ったと言う。
後の彼女達はこう語っている。
『あんなん勝てる訳ないじゃん』…と。
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・・
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二年生の部 決勝
相対しているのは、これまで試合を勝ち上がってきた楯無&サラコンビと、シードで決勝戦に直行したクロエ&フォルテのコンビ…なのだが…。
「「…………」」
「ん? 急に黙り込んで、どしたん?」
「いや…クロエちゃん…」
「なんかランスロットの姿…変わってない…?」
そう。
クロエの専用機『ランスロット』の姿が明らかに変わっていたのだ。
パッと見は今までと同じように見えるが、同時に明らかに違う部分も多々あった。
「あー…やっぱバレちゃったスねー」
「しゃーないか。割とガチめで変わってるしね」
当人達は全く気にする気は無し。
観客達は与り知らぬことだが、同じ二年生や三年生たちは楯無たちと同じように驚いていた。
去年、圧倒的な強さでトーナメントを制したクロエのランスロットが、明らかなパワーアップをしていたのだから。
「ランスロットって…そんなにシャープな見た目してたっけ…? いや、今までも十分にシャープでカッコよかったけど…それが更に増してると言うか…」
「それに、なんか背中から緑色の光の翼っぽいのが生えてるんだけど…? 前まではあんなの無かったよね? 普通に高機動用パッケージ『コンクエスター』を装備してなかったっけ?」
そこまで指摘されて、クロエは『あ』と声を上げて思い出す。
「そういや…まだ言ってなかったっけ? ウチの『ランスロット』さ…少し前に『
「「聞いてないよっ!?」」
「ダチョウ倶楽部だ」
「ッスね」
なんて言いつつも、心の中じゃ『流石にヤバかったかな』なんて焦っていたりする。
「あー…なんかゴメン。フツーに言うのを忘れてたわ。一応、織斑センセーには報告してあるんだけど…」
「そ…そうなんだ…学園側にはちゃんと言ってあるのね…」
そこだけは少しだけ安心。
ISに関することは、例えどんな些細なことでも学園側に報告しなくてはいけない義務がある。
「因みにだけど…ランスロットはどれぐらいの強化がされてるのかな~…なーんて…」
「前とは比較にならないレベルの超高機動戦闘が出来る。あと、専用射撃武装の『ヴァリス』がモードチェンジするだけで単発と照射を簡単に使い分けられるようになった」
「「その一文だけでヤバいぐらいに強化されてるのが分かる!!」」
ランスロット最大の武器は、その異常とも言うべき機動力を駆使した一撃離脱戦法だった。
それが更に…比較にすらならないぐらいに強化されるだなんて、相手からしたら悪夢でしかない。
クロエとランスロットの恐ろしさを身を持って思い知っている楯無とサラは尚更だった。
「こ…これは…最初から全力で行くしかないみたいね…!」
「クロエちゃん相手に一瞬の油断や隙はマジで命取りになるからね…!」
「なんて言われてるッスよ? クロエちゃん?」
「なんでウチがボスキャラみたいな扱いをされんといけんわけ?」
前大会優勝者なんだから実際にボスキャラみたいなもんだろ。
観客全員が全く同じことを考えた。
「ま…お話はこんくらいにしてさ…」
拡張領域からMVSを取り出してから、その切っ先を楯無たちに突き付ける。
「今のランスロットの性能…その体に直に確かめてみな?」
「「当然!!」」
「んじゃ…アタシも全力全開でいくッスよー!」
両者ともに気合全開の中…試合が開始した。
・・・・・
・・・・
・・・
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・
そして、トーナメント一年生の部、決勝戦。
「いやー…チエル達って何気に凄くないですか? だって、初出場で決勝戦まで来ちゃってるんですから」
「言われてみればそうだな。だからと言って、決して心を乱したりはしないが」
精神的動揺が全く見受けられないチエルと箒。
箒の場合は、剣道の大会にて何度も優勝経験があるので場慣れしているのかもしれないが、そんな経験が一切無いチエルが全く狼狽えていない事には素直に驚かされた。
「二人とも…見事に平常心を保ってるね…」
「あぁ…本当にスゲェよ…!」
殆ど機体の性能とシャルルの援護に助けられる形で決勝まで勝ち進んだ一夏。
だが、ここからの試合はそんな小細工は全く通用しない。
自分達の相手は、一番最初の試合から圧倒的な強さを発揮してきた者達なのだから。
トーナメント開催前は優勝候補の一角と称されていたラウラと一回戦でぶつかり完封してみせたチエル。
箒もまた、その高い身体能力と剣の腕を駆使して量産機とは思えない動きを見せて相手を倒してきた。
油断なんて絶対に許されない強敵たち。
自然と雪片を握る手も汗で滲んでくる。
実際の手は白式の装甲の下にあるが。
「あれれ~? もしかして一夏君達…緊張してますー?」
「してるに決まってるだろ…! だって決勝戦なんだぞ…!」
「二人は緊張とかしてないの?」
「「んー…別に?」」
全く同じ反応が返ってきた。
この二人、トーナメントを通じてめちゃくちゃ仲良くなってた。
特に、箒からチエルへの好感度は既に一夏への気持ちすらも完全に凌駕し、見事な天元突破を果たしている。
「言っておくが…生半可な覚悟では、私とチエルは討ち取れんぞ?」
「一夏君達に紅蓮の動きと箒ちゃんの剣…受け止めきれますかね~?」
「や…やってやろうじゃねぇか! 伊達に俺達だって決勝まで来てないだってことを証明してやるよ!」
「風間さんには大きな恩があるけど…今だけは忘れるよ。じゃないと、本気で戦えなさそうだから」
あぁ…成る程。
クロエの気持ちが今なら理解出来る。
去年、決勝戦に挑んだ時の彼女はこんな気持ちだったのか。
チエルの中で、クロエに対する感情が更に大きくなる。
「じゃあ…始めますか。チエル達のショータイムを…ね」
「おう!! 私とチエルで…必ず勝つ!」
「それはこっちの台詞だ!」
「いくよ…二人とも!」
そして…試合が始まった。
なかよし部で誰が好き?
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可愛いクロエちゃん!
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賢いユニちゃん!
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楽しいチエルちゃん!
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皆大好き!