美少女が優勝する。
案の定と言うべきか、三年生の部の決勝戦は終始、ユニとダリルのコンビが場の流れを独占していた。
「本当に反則よね…! 超火力と超防御の組み合わせは!」
「どの距離のどんな攻撃でも有効打は与えられない…! これ…マジでとんでもない組み合わせじゃないっ!? しかも…」
迫り来る火炎弾と炎の拳。
必死にそれを防御、もしくは回避をして反撃に転じたかと思ったら、ダリルの目の前には真紅の障壁が出現し、あらゆる攻撃を無効化する。
今までの対戦相手も、この組み合わせに苦戦を強いられ敗北した。
『ダリルさん。11時の方角からミサイルが来ます。迎撃を』
「おう! ありがとよロゼッタ!」
ロゼッタの情報通り、ダリルに迫り来る三基のミサイルが。
だが、彼女はそれを自慢の轟炎にて一掃する。
「あのロゼッタっていうAIの子が別方面で完璧なサポートをしてるから、全く隙が無いんですけどー!?」
ここまで来ると、もう殆どギャグである。
ワーキャーと叫びながら涙をブワーっと出していると、真上に何やら見覚えのある結晶体があった。
「あ…あれって…まさか…」
「ユニちゃんお得意の…」
「「拡散構造相転移砲だ――――!?」」
「そのとーり。では…ポチっとな」
「「い――――や――――!?」」
頭上から降り注ぐレーザーの雨。
どこに避けても全部読まれているので命中率100%だし、前線にいるダリルには全く当たらない。
一見すると滅茶苦茶に見える攻撃も、ユニの緻密な計算とドルイドシステムによる演算によって、敵味方識別機能を持つMAP兵器へと姿を変える。
「何度見てもエゲつねぇよなぁ…この攻撃はよ…」
「蜃気楼の主武装だからね。これぐらいの威力が無くては困るよ」
ISの試合において、一回でも蜃気楼に拡散構造相転移砲の発射を許せば、その時点で相手の敗北は必至となる。
それ程までに、この武装の威力と射程は反則染みていた。
「では、そろそろフィニッシュといこうか。ロゼッタ。ダリルくん。『アレ』を使わせてほしい」
「おぉ…アレか」
『了解です。蜃気楼、出力アップします』
突如、蜃気楼が移動して満身創痍状態となっている対戦相手二人が見渡せる場所に向かう。
「な…何…?」
「さっきので武器も殆ど破壊されて…もう負けも同然なんですけど…」
嫌な予感がした。猛烈に。
彼女達のその予感は見事に的中することになる。
「では…やるか」
再び蜃気楼の胸部装甲が展開し、思わず二人はビクっとなるが、そこには何もない。
不発か?
一瞬だけそう思って安心したのも束の間。
その胸部にエネルギーが集中しているのが見えた。
「これは…」
「ウソでしょ…?」
両腕を真横に広げ、装甲内にあるユニの眼に標準が表示される。
「これで試合終了だ。いくぞ。必殺…」
「「もう好きにして…」」
「ユニビ――――――――――――ム!!」
本来、拡散して放つビームを直接発射する。
普段は分散するビームが一点に凝縮するのだから、その威力は推して知るべし。
二人は無言のまま笑みを浮かべつつ吹き飛ばされ、そのまま地面に落下する。
結局、決勝戦もダリル&ユニの完封勝利で幕を閉じてしまった。
「オレとユニは無敵のコンビなんだよ。な?」
「あぁ…そうだな。ダリル君とボクの組み合わせは非常に素晴らしかった」
最後に、お互いにハイタッチをしてから、試合終了のアナウンスが流れ、アリーナは大歓声に包まれた。
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・・
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一方、学年別トーナメント2年生の部も非常に熱い激戦を繰り広げていた。
「何よこれ…フォルテちゃんにこっちの攻撃が一切通用しないッ!?」
「あの子の周囲が何やらキラキラしてるけど…あれは一体…!?」
これまでずっと常勝していた楯無とサラの二人の快進撃も、決勝戦にてピタリと止まった。
相手はギリシャの候補生であるフォルテと、前年度トーナメント優勝者であるクロエ。
例え何があっても絶対に慢心なんて出来ない相手だ。
「私の『ミステリアス・レイディ』と、フォルテちゃんの『コールド・ブラッド』の相性は最悪に近いものね…攻撃は慎重にしないと…!」
「水と氷だもんね…」
ナノマシンで空気中の水分と操って攻防一体の武器とする『ミステリアス・レイディ』。
同じように、ナノマシンで空気中の水分を凍結させて攻撃する『コールド・ブラッド』。
だが、楯無が覚えている限りは、フォルテの機体にあんな防御機構は無かった筈だ。
見えない壁を使った防御なんて能力は。
「はいそこ。ウチを相手に余所見とかしててもいいの?」
「「しまったッ!?」」
緑の軌跡がステージを縦横無尽に駆けまわり、サラに向かって斬り掛かってくる。
咄嗟にサラの前に出て楯無がランスを使っての防御をするが、その一撃で一気に押された。
「流石は楯無。今のを防いじゃうんだ。やるジャン」
「見た目は細身なのに…本当に凄いパワーよね…ランスロットって…!」
「スピードも乗ってるからね」
「っていうか…前よりもパワー上がってない…? やっぱ第三形態移行したからかしら…?」
「かもね。ま、一番上がってるのはスピードなんだけどね」
「みたい…ね!」
全身を使って全力で押し返し、そこをすかさずサラがアサルトライフルで追撃するが、異常とも言うべきランスロットのスピードの前に簡単に避けられてしまう。
「狙いが…全く定まらない! なんてスピードなのよッ!? あれ、明らかに前の『ランスロット・コンクエスター』よりも倍以上の速度が出てるんだけどッ!?」
「今のクロエちゃんに攻撃を命中させるのは殆ど不可能…だったら!」
ありとあらゆるISの速度をぶっちぎりで超越してしまったランスロットには、生半可なことでは勝つ事は愚か、攻撃すらも当てられないと判断した二人は、当初の予定通りにフォルテに攻撃を集中させる作戦に出る。
「私が牽制しながら突撃するわ! サラちゃんは援護をお願い!」
「了解!」
楯無はランスを両手で構え、内蔵されているガトリングを斉射しながら速度を上げて接近、その間にサラは両手のライフルを拡張領域へと仕舞い込み、両手持ち式のジャイアントガトリングを装備、バックパックにドラム式の弾倉を装着し、給弾ベルトを銃身に差し込む。
「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」
煌めく無数の弾丸がフォルテへと迫る。
だが、彼女は全く避けようともせず、不敵な笑みを浮かべながらその場にジッと浮遊していた。
「そーんなことをして…本当にいいんスかねー…?」
「「え?」」
その時、初めて二人は気が付いた。
フォルテの周囲から固い何かが何度も何度も跳ね返っているかのような金属音が無数に聞こえてくることを。
「二人が撃ってくれた弾…そのままお返しするっスよ」
「「キャァァァァァァァァァッ!?」」
なんと、自分達が撃った弾がそのまま自分達に向かって飛んできた。
撃ってしまったのはお互いにガトリング。
無数の弾丸が逆に自分達を傷つける事になろうとは。
「コールド・ブラッド…『
「それが…私達の攻撃を防いだ物の正体…!」
「その通り! 特に実弾系の飛び道具に対しては無敵に近い防御力を持ってるんスよ! これがウチの決勝戦専用の切り札ッス!」
光学兵器なんて全く持っていない二人だからこそ最大限に発揮される防御。
これにより、楯無とサラは自分達の射撃が封じられたも同然になってしまった。
「で…でも! それだけの防御壁を展開するのなら、そっちにだってかなりのエネルギー消費がある筈じゃ…!」
「普通はね。でも、アンタ等の場合は別」
「クロエちゃんッ!?」
背後からの奇襲にて、すれ違いざまに両手に持ったMVSで斬りつけながら、フォルテに横に並んだ。
「確かに、フォルテの奥の手である『ジェントリーウィープス』は消費エネルギーが半端じゃない。けど…」
「楯無が攻撃に使ってくれてる水があるから、今回限定でエネルギー問題は解消されてるんスよ!」
そこで初めて、楯無は自分が犯した致命的ミスを知る。
「そうか…私の機体が水を使って攻撃をすればするほど、空気中に水分が溜まっていく。フォルテちゃんはそれを利用して氷を…!」
「じゃ…じゃあ…試合の序盤にクロエちゃんが超高機動で楯無の広範囲水攻撃を避けてたのは…」
「そ。誘導してたんヨ。楯無の水を使った攻撃を。ステージ内が湿気れば湿気る程にフォルテのジェントリー・ウィープスはより強固になっていくから」
「「……!?」」
射撃は跳ね返され、水を使った攻撃は逆にフォルテを有利にするだけ。
かといって、凄まじい動きを見せるクロエに攻撃を当てるのはほぼ不可能。
「ヤバいわね…これ…!」
「最後まで諦めたくない…って言いたいけど…ちょっと心折れそう…」
「んじゃ、ここから攻勢に転じますか」
「賛成っす! このままステージ全体をカチンコチンにしちゃうッスよー!」
強者同士の戦いは、更に激しさを増していく。
観客達はその様子を固唾を飲んで見守っていた。
・・・・・
・・・・
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そして、一年生の部も予想以上の白熱っぷりを見せていた。
「うぐぐ…!」
「悪いな一夏。お前には私の相手をして貰うぞ?」
まず、ステージの右半分の方では箒と一夏が鍔迫り合いを繰り広げていた。
お互いの刃が火花を散らし、何度も交差するが、全く一夏は踏み込めない。
「どうして専用機なのに自分は攻め込めないんだ…そう思ってるんじゃないか?」
「そ…それは…!」
図星だった。
「私だって、機体の性能じゃお前には勝てないことぐらいは重々に承知しているさ。だから私は…」
「しまっ…!?」
器用に剣を扱いながら、箒は一夏の握りしめていた雪片弐式を弾き飛ばし、その瞬間を狙って一気に懐に入り込みながら斬り抜けた!
「私自身の技量で、機体の性能差を埋めさせて貰う事にした!」
「ぐあぁっ!?」
思わぬダメージに一夏は悲鳴を上げる。
今の一撃は見事に胴体へと命中し、白式のSEを大きく削った。
片や、IS学園に入ってから久し振りに剣道を再開した一夏と、転校してからもずっと剣道を続け、中学三年の時には全国大会に出場し優勝をした箒。
どっちの剣の腕が上かなんて誰の目にも明らかだった。
「箒…いつの間に…こんなに強くなって…!」
「チエルのお蔭だ。アイツと一緒に過ごし、共に試合を勝ち抜く事で私は多くの事を学ばされた。それと同時に、チエルは私の中にある慢心した愚かな心すらも粉々に粉砕してくれたんだ。故に…」
振り向きながら剣を構え、自信に満ちた笑みを浮かべる箒。
彼女のこんな顔なんて、一夏ですら今まで一度も見た事が無かった。
「今の私に迷いは無い。油断も無い」
「マジかよ…」
迷いのない剣とは、ここまで真っ直ぐで強い物なのか。
一瞬だけ、箒の姿が千冬とダブって見えたのは気のせいだと信じたい一夏だった。
その頃、ステージの左側ではシャルルとチエルが激突していた。
「ほらほらほら! もっと頑張らないとチエルには当たりませんよー?」
「下手な鉄砲も数撃てば…と言いたいけど、この機動力は反則でしょ!?」
マシンガンを両手に持って一斉斉射にて少しでもダメージを与えようと試みるが、弾があった場所には既にチエルと紅蓮の姿は無く、そこには紅い軌跡が残されているだけだった。
「もう知ってるかもですけど、紅蓮にも飛び道具はあるんですよ…ね!」
「エネルギーの塊を飛ばしたっ!?」
輻射波動のエネルギーを円盤状に固め、それをフリスビーのように投げつける。
それはシャルルの持っているマシンガンを二つとも破壊し、地面に多数の弾丸が零れ落ちる。
「くっ…! まだまだぁっ!」
「うっわ…一体どんだけ重火器を積んでるですかって話なんですけどっ!?」
壊れたマシンガンを即座に投げ捨て、拡張域内から今度は大型のショットガンを取り出して両手に構える。
「弾の数で駄目なら…広範囲攻撃でいく!」
「おっと。難しいと分かっていても、敢えて接近戦を挑んできますか。面白いですねぇ~! なら…」
左手にMVS、右腕の輻射波動機構を稼働させ爪を立てる。
「こっちも、それに応えないと女が廃るってもんじゃあないですかぁっ!」
紅と橙が激突する。
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全学年の全試合が終了し、閉会式の前にまず表彰式が行われた。
『学年別トーナメント…三年生の部! 優勝は…真宮寺由仁&ダリル・ケイシーコンビー!!』
「おおー」
「へぇ…当然の結果だな」
表彰台の上に立ちながら、ユニは試合の時以上の歓声に驚き、ダリルは嬉しそうに鼻を擦る。
もう片方の手はしれっとユニの手を握っていたが。
『続きまして、二年生の部! 優勝は…黒江花子&フォルテ・サファイアコンビ! 黒江選手はこれで、まさかの二連覇達成です!』
「やったッスね! クロエちゃん!」
「ん…まぁね。二連覇…か」
「あれれー? もしかしてクロエちゃん…照れてるんスかー?」
「べ…別に照れてなんかないし…」
ニヤニヤしながらからかうフォルテに対し、クロエは頬を赤くしながらそっぽを向く。
それを見て『クロエちゃんファンクラブ』のメンバーの全員が鼻血を出しながら悶絶した。
『そして…一年生の部! 優勝したのはー…風間ちえる&篠ノ之箒コンビー!』
「いやー…優勝しちゃいましたねー!」
「なんだろうな…剣道の大会で優勝した時よりも遥かに嬉しいぞ…!」
「それってきっと、二人で勝ち取った優勝だからじゃないんですか?」
「二人で…そうだな。うん。きっとそうだ。これは…私とチエルの二人で勝ち取った優勝だ!」
こうして、学年別トーナメントは無事に閉幕。
結果として、トーナメントの優勝は全て、なかよし部が独占することとなった。
余談だが、この結果が原因なのか、クロエちゃんファンクラブの入団希望者が一気に増大し、去年の倍以上になったとか。
しかも、その殆どが今年の一年生で構成されていたりする。
次回からは、久々のギャグ回になります。
そこで『最後のヒロイン候補』が登場する…かも…?
なかよし部で誰が好き?
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可愛いクロエちゃん!
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賢いユニちゃん!
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楽しいチエルちゃん!
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皆大好き!