皆と別れた私は、ユニ先輩と一緒に水着売り場へと入って行くことに。
万が一にも逸れたりしないようにと配慮で手を繋ぐ。
最初見た時から思っていたが…この方は本当に小さいのだな…。
まさか、歳上なのに私よりも手が小さい人物がいるとは思わなかった。
「ん? どうかしたのかね? ラウラくん」
「いえ…なんでもございません」
「そうか。何かあったら何でも言いたまえ」
「はっ。了解しました」
いや…見た目だけで判断してはいけないな。
噂では、この方はIS学園で一番の秀才であり、同時に在学中に博士号まで得ていると言う稀代の天才児。
なかよし部三人のISを設計したのも、実はユニ先輩だと言う。
それを聞いた時、私はなんて相手に挑もうとしていたのかと、自分の愚かさに呆れてしまった。
「臨海学校に向けての水着を買いに来たのは良いが…どれが良いのか皆目見当がつかないな。ラウラ君は何か欲しい水着が有ったりするのかな?」
「いえ…申し訳ないのですが、私にも何がいいのかサッパリ…」
「矢張りか…う~む…」
このような時、副官であるクラリッサがいてくれたら心強いのだが。
きっと、私だけでなく、ユニ先輩にも似合う水着を見繕ってくれるに違いない。
「取り敢えず、適当に見廻ってみるか」
「そうですね。お供します」
しかし…水着とはこんなにも種類があるのだな。
正直、学園指定の水着でもいいのではないかとも思うのだが、それを言うと凄い形相で見られそうなので言い出せない。
「あ…あの…お客様?」
「「ん?」」
いきなり誰かに話しかけられた。
胸元に名札らしき物を付けていると言う事は、恐らくはこの店の女性店員か。
「お二人とも、水着をお探し…ですか?」
「その通りだ。このボクとラウラくん…二人分の水着を所望しているのだが、どれが良いのか全く分からなくては。端的に換言すれば、二人揃って途方に暮れている状態だ」
「それは丁度良かった! 実は、この先に今年の最新水着の展示コーナーがあるんです! 良ければご案内いたしましょうか?」
「おぉ…それはいい。是非ともお願いしようじゃあないか」
「畏まりました! では、こちらです!」
なんだか、店員の今日妙な口車に乗せられているような気もするが…実際問題、我々だけではどうしようもなかったのも事実。
ここは大人しく、この店員の後に着いて行くことにするか。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「「おぉ~」」
案内されて到着した場所には、色とりどりの水着が様々な形で展示されていた。
これ全部が水着なのか…?
「そちらの銀髪のお客様には、こちらの水着なんかがお似合いかと」
「む…私か?」
そう言って手渡されたのは、黒いビキニタイプの水着で、何やら白いフリルのような物が付いている。
確かに可愛らしいとは思うが…露出が多すぎやしないか?
最近はこんな水着が流行なのか…?
「そして、そちらの茶髪で三つ編みのお客様には、こちらが宜しいかと」
「ふむ…? これもまたビキニタイプだが…あまり見ないデザインだな」
「はい! こちらの水着もまた今年最新の商品になっておりまして! 更には、今お買い上げの方には装飾品としてベルトや日焼け対策用の薄手のコートなどもセットでお売りしております!」
「ほほぉ…?」
ユニ先輩に手渡された水着もまた、私目線から見ても可愛らしかった。
サイズも先輩にピッタリのようだし、これならば問題はあるまい。
「では、ボクはこれに…」
「ん? お前達は…」
「「え?」」
この声は…まさか?
「矢張り、真宮寺とボーデヴィッヒか。これまた珍しすぎる組み合わせだな」
「織斑教諭か」
「お…織斑教官っ!?」
ど…どうして教官がここにっ!?
もしや、教官も水着を買いに来たのか?
「教諭もボク達と同じように水着を買いに来たのかな?」
「その通りだが…お前達も水着を?」
「うむ。今度の臨海学校に向けてな。事情は聞いているのだろう?」
「当然だ。生徒会の代わりに、今年はなかよし部が同行すると」
なんと…そうだったのか…。
そう言えば、私は三年生であるユニ先輩が水着を買いに来ている事に対して何の疑問も抱いていなかったな…。
「だが、ここにお前達二人だけというのも不自然だ。他の連中も一緒なのか?」
「勿論だとも。クロエくんとシャルロットくん、チエルくんと箒くん。それに荷物持ちとして一夏くんにも一緒に来て貰っている」
「矢張りか。精々、一夏の奴をこき使ってやれ。最近のアイツは、どうもお前達と一緒にいる事が多いからな」
「彼のツッコミは貴重だからね。お蔭で活動もスムーズに進む」
「そうか。まぁ…お前達三人ならば、誰であったとしても私としては何も不満は無いんだがな」
「ん? どういう意味かな?」
何故だろうか…教官の最後の一言が、物凄く意味深に聞こえたのは…。
「その手に持っているのを買おうとしているのか?」
「今のところの最有力候補かな。つい先程、そこの店員にオススメして貰ったのさ」
「お勧めしました!」
この女店員も強かだな…。
教官相手にも全く怯まないとは。
「うん…いいんじゃないか? 私から見ても、お前達に似合っていると思うぞ」
「そうですよね! やっぱり、そう思いますよね! いや~…お目が高い! ところで、お客様はこのお二人とはどのような御関係で?」
「片方は担任で、もう片方は部活の顧問をしている」
「なんと! 先生さんでしたか! それならば、こちらの黒いビキニはいかがでしょうか!? 黒いスーツを見事に着こなしているお客様に良くお似合いと思います!」
「私に矛先を変えてきたか…。だが、悪くは無いな」
こ…この店員…出来る…!
あの織斑教官すらも即座に籠絡するとは…!
一瞬で相手に似合う水着を選定して売ろうとしている…!
これが俗に言う『商売人根性』というやつか…!
「ではもう、これに決めてしまおうか。ラウラくんはどうする?」
「そう…ですね。他に該当する物も見当たらなさそうですし…私もこれに決めます」
「よし。それでは、ここは先輩らしくボクが奢ってあげよう」
「え? いやしかし…」
命を助けて貰った上に、水着まで奢って貰うとなるのは、流石の私も後ろめたいと言うか…。
「気にしないでくれ。こう見えてもボクは小金持ちでね。只でさえテストパイロットと機体設計を担当しているお蔭で給料が有り余っていると言うのに、そこに加えてボク自身が余り散財をしないタイプでね。財布の中や通帳の中には使いきれないお金が大量にあるんだよ。だから、ボクを助けると思って遠慮なく奢られてくれたまえ」
「そ…そこまで仰るのなら…お言葉に甘えます…」
この人には敵わんな…。
そこまで言われて断ることなんて出来る筈がないだろうに…。
「ふっ…久し振りに吹かせた先輩風はどんな感じだ?」
「悪くは無いね」
「そうか。普段のお前は同級たちからだけでなく、下級生たちからもマスコット扱いされているからな」
「三年生にもなれば、流石にもう慣れたさ。彼女達のお蔭で、服に関しては余計な買い物をせずに済んでいるしね」
「そう言えば、そうだったな」
そうか…ユニ先輩は三年生。
それはつまり、ここにいる一夏を除くメンバーの中で織斑教官と最も長い付き合いでもあるのか。
三年間も一緒ならば、仲良くなっていても不思議ではないか。
「お前達がそれに決めるのならば、私も勧められたコレにするか」
「お買い上げ、ありがとうございまーす!」
「まだレジにも行っていないんだが…」
「実に気が早い店員だな。面白い」
真逆の性格に見えて、意外と気は合うんだな…。
どこか惹かれ合う所があるのだろうか?
「では、改めてレジに行くとしようか」
「はい」
こうして、結局私はユニ先輩に水着を奢って貰った。
また一つ大きな借りが出来てしまったな…。
いつの日か必ず恩返しをしなくては。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「これでー…いいか」
別に男の水着なんて誰も気にしないだろうしな。
適当に好きな色&デザインで決めた。
んで、とっくの昔にレジで会計を済ませて、今は近くに会ったベンチに座ってジュースをチビチビと飲みながら皆を待っていた。
「そういや…なかよし部の皆はどんな水着を選ぶのかな…」
前に弾の家で私服姿を見た時は、三人共よく似合ってたな。
学園内だけじゃなく、プライベートでも仲がいいんだって良く分かった一日だった。
「しっかし…まさか、千冬姉と山田先生まで来てるとは思わなかったなー」
確かに、臨海学校に行く以上、あの二人だって水着に着替える訳で。
となると、水着を買いに行くのは当然なのか。
「店の中でなかよし部の誰かと出会ってたりしてな」
その可能性は大いにあり得る。
レゾナンスの中にあるとはいえ、店の規模自体はそんなに大きくは無い。
少し適当に見て回っていたら、高い確率で誰かには会うだろう。
まぁ…俺は男一人だったから誰にも会わなかったけど。
「にしても、シャルロットと箒…クロエ先輩と風間さんにベッタリだったな。いつの間に、あんなにも仲良くなってたんだ?」
箒の場合は、同室になった事に加えて、学年別トーナメントでコンビを組んで優勝したことが大きいんだろうな。
あれはきっと一生もんの思い出になるだろう。
シャルロットはー…なんだ?
やっぱ部活か?
前にデパートでバイトしてた時も二人で行動してたし、先輩も先輩でシャルロットの事を気遣ってた節があったしな。
今思えば、あの頃にはもう既にシャルロットの正体に気が付いてたんだよな。
全部分かった上で気遣ってたんなら、マジでクロエ先輩を尊敬するな。
決定的な姿を見るまでは、俺は気付きすらしなかったし…。
「あ…ジュースが無くなった」
いつの間にか飲み干してたのか。
何処かにゴミ箱ー…あった。
とっとと捨ててくるか。
「ちょっと」
「ん?」
なんか誰か俺を呼んだか?
いや…流石に気のせいか。
自意識過剰すぎだな。
「そこの男! 聞いてるのッ!?」
おーい。
誰かは知らないけど、早く気付いてやれよー。
「無視するんじゃないわよ! そこのジュースの缶を持ってるアンタよ!」
「え? もしかして…俺?」
おいおい…マジかよ。
冗談じゃねーッつーの。
明らかに『女尊男卑』主義者じゃねーか。
こーゆーの…苦手なんだよなぁ…。
なかよし部で誰が好き?
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可愛いクロエちゃん!
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賢いユニちゃん!
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楽しいチエルちゃん!
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皆大好き!