チエルと海…チエルと海…!
まさか、こんなことが叶うとは…臨海学校に来て本当に良かった…。
「うーん…こうして海にまで来たは良いですけど、いざ何をするかって言うと迷いますよね~」
「確かにそうだな…。小学生の時などは、砂で城を作ったり、スイカ割りなどをしていたのだが…」
「高校生にまでなって、砂でお城ってのは若干の勇気がいる感じですよね~」
人によっては、無駄に拘って凄い代物を作るらしいが、私にはそんな技術は無いしな…。
「ん?」
「どうしたんですか~?」
「いや…あれ」
「あれ?」
ふと視界に入ったのは、青いビキニを着たセシリアだった。
手に持っているのは…日焼け止めか?
「セシリアちゃんが~…誰かを探してる感じですかね?」
「そうみたいだな。まぁ…誰を探しているかは一発で分かるが」
「ですよね~」
大方、一夏に日焼け止めを塗って貰おうと思っているんだろう。
別にそれ自体はセシリアの自由だし、私はもうその事に対して何も思わない。
今の私はチエル一筋だからな!
「仕方がない…おい、セシリア」
「あ…箒さん。と…風間さん…?」
「チエルでいいですよ~。私もセシリアちゃんって呼ぶんで~」
「わ…分かりましたわ」
流石のセシリアも、チエルのテンションにはまだついて来れないか。
その気持ちはよく分かるな。
最初の頃の私もそうだった。
「一夏のことを探しているのか?」
「えぇ…その通りですわ。って、どうしてその事をッ!?」
「「いやいや」」
余りにも露骨すぎなんだ…お前は。
思わずチエルと二人で同時にツッコんでしまったではないか。
「はぁ…一夏さん…どこに行ってしまったのかしら…」
「さぁな。水着に着替えてからは一時解散と言う流れになって、それからあいつがどこに行ったかは分からん」
「そ…そうなんですの? というか、箒さんは一夏さんの事を探さないので?」
「どうして私が一夏の事を探さねばならないんだ? アイツだって一人になりたい時ぐらいあるだろう」
「でも、箒さんは一夏さんの事を…」
「それは昔の話だ。今は違う」
「…そうでしたわね」
確かに一夏は幼馴染で初恋の相手ではあった。
それは認めよう。
だが、私にとってはそれだけだった。
今の一夏が色恋など求めていない事を知ったからな。
なかよし部…特にチエルを通して。
チエルは私に勇気をくれた。
友の大切さを教えてくれた。
だから、私はチエルが好きになった。
友人として、一人の女性として。
「今から一夏を探していたら、折角の自由時間が無くなってしまうぞ」
「そう…ですけど…」
「一途なのも考え物ですねぇ~」
「だな」
はぁ…仕方があるまい。
「セシリア。日焼け止めに関しては素直に諦めろ。夜になれば、また会う機会は幾らでもあるだろう」
「っていうか、寧ろそっちの方が会える確率は高くないですか? この浜辺…思ってるよりも広いですよ?」
「ここは妥協しろと…そう仰るのですか…?」
「時にはそれも大切だ。この自由時間の全てを一夏を探す事で費やしたくなければな」
「それは…そうですけど…」
なんかじれったくなってきたな…。
こうなったら…!
「こうなったら! チエル達がセシリアちゃんに日焼け止めを塗ってあげましょう!」
「なんでそうなるんですのッ!?」
「だって、このままじゃいつまで経っても日焼け止めが塗れないじゃないですかー!」
「いや、私の主目的は日焼け止めを塗ることではなくて、一夏さんと…」
「ええい! 問答無用! ってことで箒ちゃん!」
「了解だチエル! いい加減に観念しろセシリア!」
「なんで箒さんも結託してますのッ!?」
「私は常にチエルの味方だからだ!」
「え―――――――っ!?」
こうして、私とチエルでセシリアの体に日焼け止めを塗る事になった。
少し哀れではあるが、今回ばかりは諦めろ。
私とチエルに見つかった時点で、こうなる運命だったんだ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
クロエ先輩と一緒に海♡ クロエ先輩と海♡
これは夢か幻か…否、現実です!
「ウフフフ…♡」
「急に笑い出してどした?」
「いや…クロエ先輩と一緒で嬉しいなって思って」
「そこは普通『楽しいな』じゃねーの? 知らんけど」
「どっちもですよ~」
「ふーん?」
はぁ…不意を突かれて萌えキャラになるクロエ先輩も可愛くて最高だけど、普段のクロエ先輩もカッコよくて最高だよぉ~…♡
「そういや、どこかに海の家がある的な事を言ってる奴がいたっけ。後でそこに行って飲み物でも買おうか。まだまだ初本番じゃないとはいえ、この日差しは普通にキツいっしょ。水分補給はちゃんとせんと」
「クロエ先輩の言う通りですね。じゃあ早速、今から海の家に…」
「ん? 何あれ?」
海の家に行こうとすると、クロエ先輩が何かを見つけた。
視線は…海の方を向いてる?
「…ちょっちマジでヤバいかもしんない」
「え? どうかしたんですか?」
「誰かが海で溺れてる!」
「えぇっ!?」
お…溺れてるって、一体誰がッ!?
「ウチは急いで助けに行くから、シャルロットは誰か人を呼んできて! 先生でも他の生徒でも、誰でも構わないから!」
「わ…分かりました!」
流石はクロエ先輩…緊急時でもテキパキしてて凄いなぁ…。
って、今は惚気てる場合じゃなかった!
本気で急がないと!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
折角の海だから一夏と一緒に回ろうと思っていたのに、アイツはどこにも見つからない。
なんだか腹が立ってきて、そのイライラを少しでも抑える為に泳ぐことにした。
そこまでは良かったんだけど…。
(まさか…泳いでいる途中で足がつって溺れてしまうだなんて…代表候補生失格ね…!)
殆ど飛び込むような形で海に入ったから、準備運動とかしなかったせいかしら…。
アタシ…こんな形で死んじゃうの…?
あぁ…こんな事なら、もっと一夏を探そうとしておくんだった…。
そうすれば…アタシが溺れる事も無かったかもしれないのに…。
(助けて…一夏…!)
最後に一目だけでいいから…一夏に会いたかったなぁ…。
(え?)
アタシが諦めかけた瞬間、誰かの手がアタシの腕を掴んで引っ張ってくれた。
もしかして、本当に一夏が助けて…?
「こんな事で生きる事を諦めようとすんなし! しっかりしな! 折角の臨海学校を台無しにする気かッつーの!」
「ア…アンタ…は…?」
一夏じゃ…ない…?
この顔は…どこかで…。
「ったく…臨海学校で溺死とか洒落になんないっつーの! ほれ! 急いで砂浜に運んでやるから! 意識だけはちゃんと持ってろし!」
「う…ん…」
名前は忘れたけど…今は言葉に甘えよう…。
色んな意味で、何かを言う余裕はないから…。
そうして、誰かの背中におんぶして貰う形でアタシは無事に砂浜に戻ってくることが出来た。
「はぁ…はぁ…はぁ…! 割とマジで焦ったし…。ったく…臨海学校まで来て人命救助とかさせんなし…。早くもなかよし部として活動しちまったっつーの…」
なんか愚痴っぽい事を言われながらも、アタシは静かに優しく浜辺に寝かされた。
その時、遠くの方から誰かの声が聞こえてきた。
「クロエせんぱーい! 人を連れてきましたー!」
「おっし、でかした」
あれは…シャルロット…よね…?
アイツがこっちに走ってくる…。
「クロエ先輩! デュノアさんから急いで来てくれって言われたんですけど…って、凰さんっ!?」
「一体何があったんですかっ!?」
「なんか海で溺れたっポイんだわ。そんなに水は飲んでないみたいだし、取り敢えずはどこかでゆっくりと安静にしておいてほしいんよね。本当はウチが付き添った方が良いんだろうけど、生徒会の代理として来ている以上、簡単にここから離れる訳にはいかんのよ」
「分かりました! 凰さんの事は任せてください!」
「責任持って静かな場所に連れて行くので!」
「ん。任せた」
「「はうぅ…クロエ先輩からのサムズアップ…最高…♡」」
クロエって…思い出した…。
前にアタシとセシリアを助けてくれた二年の先輩…。
「シャルロットもあんがとね。こーゆー時、やっぱ頼りになるわ」
「た…頼りになるって…これってもしかして告白っ!?」
「なんでそうなる」
…鼻血出してるし。
こいつって、こんなキャラだったっけ…?
「あ…の…ゴホッ…ゴホッ…」
「ん? 目が覚めた? でも、無理して声出す必要ないよ。今は体を休める事だけ考えときな」
あ…頭撫でられた…。
なんかホッとする…な…。
「ありが…とう…ござい…ま…」
「はいはい。無理して礼とか言わなくていいから。今は自分の事だけを考えな」
そう言いながら先輩はアタシに微笑み返してくれた。
あー…確かにこれは惚れるわ…。
シャルロットの気持ち…ちょっとだけ分かったかもしれない…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
うーん…これは一体どういう状況だ?
「中々に良い場所が無いな。静かに本が読める場所が望ましいのだが…」
「うわっ!? な…なんだっ!? あ…ただのヤドカリか…」
俺は確か、水着に着替えた後に自由時間を満喫しようと思って浜辺を散策しようと思っていたんだが…気が付いた時にはユニ先輩とラウラに挟まれて、まるで保護者みたいな感じになっていた。
しれっと二人とも俺の両手を握りしめてるし。
これじゃあ完全に、休日に子供連れで海に遊びに来たお父さんじゃねぇか。
「あのー…ユニ先輩?」
「どうしたのかね一夏くん。お? これはまた珍しい形の貝殻だ。折角だし拾っておこうか」
「こ…このプニプニしたのは一体なんだ? 半透明だが…生き物なのか?」
「おっとラウラ君。それには触らない方が良い。浜辺に流れ着いたクラゲだ」
「これがクラゲか…初めて見た…」
にしても、まさかあのラウラがユニ先輩とここまで仲良くなるとは思わなかった。
意外とお似合いの二人だし、背格好も近いから相性がいいのか?
なんにしても、友人が出来た事は良いことだと思うけど。
「ん? そこにいるのは…織斑と真宮寺とボーデヴィッヒか?」
「「「え?」」」
この声は…もしかしなくても我が姉ですね。
流石にこれは一発で分かる。
「織斑教員か。アナタも来たのだな」
「まぁな。真宮寺…ちゃんと水着を着こなしているじゃないか」
「当然だとも。ここで着てやらないと水着が不憫だからね」
「それもそうだな」
腕を組みながらユニ先輩と話す千冬姉は、真っ黒なビキニを着用していた。
なんでも、この水着はユニ先輩達と一緒に水着を買いに行った時、店員に勧められて買った物らしい。
因みに、ユニ先輩やラウラの着ている水着も同じ店員からのオススメなんだとか。
あそこ…かなりやり手の店員がいると見た。
「ボーデヴィッヒも似合っているじゃないか。軍服を着ていた頃とは大違いだ」
「きょ…恐縮です…」
照れて縮こまってしまった。
最近のラウラはすっかり普通の女の子になったなー。
来たばかりの頃とは、まるで別人みたいだ。
これも、なかよし部の皆のお蔭なんだろうか。
そう考えると、本当にあの三人は色んな人達を助けてるよなぁ…。
癖が強い三人ではあるけど、でも尊敬も出来るから凄い。
「さて…私も少し羽を伸ばして…ん?」
千冬姉が何処かを向いた?
何かを見つけたのか?
「おー…織斑センセーじゃないスッかー」
「う…流石にスタイルが良い…」
あれはー…クロエ先輩とシャルロット?
クロエ先輩は何か体が濡れてるけど。
海にでも入ったのか?
「あれー? もしかして、図らずも合流しちゃった感じですかー?」
「一夏の奴は、こんな所で何をやってるんだ? 見た目は完全に休日の父親になってるぞ」
そして、風間さんと箒もやってくる…と。
あと箒、今の俺が休日のお父さんになってるのは俺自身が一番自覚してるから。
「なんだ。結局は全員集まったのか」
「みたいだな。ついさっき解散したばかりだと言うのに。どうやら、なかよし部の絆はそう簡単には切れないらしい」
これ、そんな大層な話か?
単純に偶然が重なっただけだろ?
しかも、今度はそこに顧問まで追加して。
これで本当になかよし部が全員集合しちまったじゃねぇか。
どーすんだこれ?
なかよし部で誰が好き?
-
可愛いクロエちゃん!
-
賢いユニちゃん!
-
楽しいチエルちゃん!
-
皆大好き!