6月初頭の日曜日。
俺は休日を利用して家に帰り、寮に持って来れなかった荷物を持ってきたり、暫くいない事で埃が溜まった家の掃除などをしていた。
で、その後に中学時代の友人である『五反田弾』の家に遊びに来ていた。
弾の家は『五反田食堂』をいう食堂をやっていて、昔はよく俺もお世話になっていたもんだ。
最初は弾の部屋でゲームなどをしながら久し振りに遊んでいたのだが、その途中で弾の妹である『五反田蘭』が呼びに来て、一回のお店で昼食を食べることにした。
「にしても一夏。IS学園に通うようになってから妙に疲れた顔になってないか?」
「そりゃ疲れた顔にもなるっつーの。自分以外の全員が女子なんだぞ? 精神的疲労が半端じゃないんだよ」
「俺からしたら夢のような空間なんだけどなぁ…」
「それは、お前が何も知らないからだよ。はぁ…」
階段を降りながら言われたが、本当に最近は気苦労が多い。
ようやく少しだけ今の学園生活にも慣れ始めたって時に、物凄く衝撃的な出会いがあったからな…。
あの日の夜のことだけは、今でもハッキリと思い出せるぐらいに鮮烈な思い出となってしまった。
因みに、その時のことを千冬姉に話したら『すまん…』の一言だけが帰ってきた。
どうやら、俺の予想通り、千冬姉はあの『なかよし部』の顧問をやっているらしく、いつもあの三人の予測不能な行動に振り回されているとの事。
千冬姉ですら制御できないとなると、もうあの学園内になかよし部を止められる人間って一人もいないんじゃあないのか?
今の所、これと言った被害は出していないらしいけど…。
いや、一つだけあったわ。
茶道部の備品を堂々とぶっ壊したって言ってた。
その後で同じ物をもう一セット買ったらしいが。
あと、いつの間にか千冬姉の口座から茶道部の備品分の代金が引き落とされていたらしい。
割とマジで怖いんだが…。
「どした一夏? 急にぼーっとして」
「ん? あ…いや、なんでもねぇよ」
いつの間にか、あの三人の事を無意識の内に思い出していた…。
それだけ俺の脳内に深く刻み込まれているってことなんだろうか。
「昼飯時だって意識したら、急に腹減ってきたな。急ぐか」
「だな」
俺と弾は少し早歩きで階段を下りていく。
そして、一階にある店舗がある所に入っていくと…。
「「「あ」」」
「いぃっ!?」
…なんでか、私服を着たなかよし部の三人がテーブルに横並びになって座り、揃って食事を楽しんでいた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
まさかの邂逅に、俺は思わず体を震わせながら三人に尋ねた。
もしかしたら、もしかする可能性もあるからな…。
「な…なんで三人がここに…? まさか、前に千冬姉から聞いた『屋外活動』ってやつなんじゃ…」
「何を馬鹿な事を。いかな我々とて、休日にまで活動をする訳がないだろう」
「じゃあ、なんでここに…」
「ウチらは休日に三人で買い物に出かけてただけだっつーの」
「ですので、織斑君の心配するような事はナッシング! ですよ!」
「はぁ……」
つーことはあれか?
買い物帰りに食事をしに、偶然にもここに立ち寄っただけってことか…?
それにしても偶然すぎるだろ…。
「ボクはあれだ。予約していたゲームを受け取りに行っていたのだよ」
何にも聞いてないのに急に説明が始まった。
ユニ先輩ってゲームとかするのか…。
「そのついでに、ウチは陸上部で使うシューズを買いに行ってたんよ」
「あれ? クロエ先輩ってなかよし部一本なんじゃ…?」
「運動部と文化部は兼任で入れるんだよ」
「知らなかった…」
というか、なかよし部は文化部だったのか。
そっちの方が驚きだわ。
あの部は運動部にも文化部にも属さない『第3の部』と思ってたから。
「っていうか、織斑君の方こそ、どうしてここにいるんですかぁ? しかも、なんか二階から降りてきませんでした? どゆこと?」
「ここは俺の友人の家で、今日は遊びに来てたんだよ」
「「「成る程…」」」
にしても、まさか休みの日までこの三人に会うだなんてな…。
こんな事ってあるんだな…普通に驚いたわ。悪い意味で。
「おい一夏…」
「ん? なんだよ弾…ぐぇっ!?」
急に弾から胸倉を掴まれたんだけど!?
俺、何かしたか!?
「なんだ、あの美少女三人組は!! しかも、妙に仲良さげに話しやがって!!」
「ちょ…落ち着けって弾! 別に俺が誰と話そうと自由だろッ!?」
「そうだけど、そうじゃねぇ!!」
「意味が分からんわ!!」
まーた弾の発作が始まりやがった。
俺が女の子と話をしていると、いつもこうだ。
あの三人が止めてくれると信じてチラッと見てみると…こっちの事を普通に無視して食事を楽しんでた。
因みに、ユニ先輩は『唐揚げ定食』を食べていて、クロエ先輩は『チキン南蛮定食』、風間さんは『鳥の竜田揚げ定食』を食ってた。
見事に全員揃って鳥の揚げ物系で統一されてるな…。
「こらこら。今は食事中で、ここは食堂だ。余り暴れるのは感心しないぞ」
「その嬢ちゃんの言う通りだぞ。ガキ共」
「「うっ…」」
ユニ先輩に注意されたと思ったら、この食堂の店長にして五反田家の祖父でもある『五反田厳』さんに怒られた。
「うぅ…一夏さんに恥ずかしい所を見られちゃった…これで挽回できると良いんだけど…って、あれ?」
そこへ、何故か白いワンピース姿に着替えた蘭もやって来た…が、この異様な雰囲気にキョトンとしてしまった。
「えっと…何? この空気…」
俺に聞かれても困る。
寧ろ、こっちの方が聞きたい。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
仕方がないので、食事をしながら弾と蘭にも三人の事を紹介することに。
このまま無視しても、また妙な空気になりそうだったし。
「「三人共がIS学園の生徒っ!?」」
「まぁな。しかも、うち二人は上級生だ」
その中の約一名は見た目からじゃ全く判断できないけどな。
「まず、この唐揚げを食ってる人がIS学園三年生の『真行寺由仁』先輩」
ちょっとだけ『この小さい人』と言いそうになったが、それを言うと怒りそうな気がしたのでギリギリで止めた。
どれだけぶっ飛んでいても、こういう事を言うのはいけないと思ったから。
「真行寺由仁だ。親しみを込めて遠慮なく『ユニちゃん先輩』と呼ぶといい」
それ、ここでも言うのか。
どれだけ気に入ってるんだ、その呼び方。
「さ…三年生? こんなに小っちゃくて可愛いのに…?」
「小っちゃいは余計だ。一応言っておくが、ボクは決して飛び級などではないぞ。正真正銘、れっきとした18歳の女子高生だ」
「マジかよ…合法ロリって実在したのか…」
合法ロリて。
驚くのは分かるが、その反応はどうかと思うぞ。
「んで、チキン南蛮を食ってる人が二年生の『黒江花子』先輩だ」
「ちーっす。クロエでーす。ま、別に無理して覚えなくてもいーよ。どーせ、もう会う機会なんて皆無だろーしさ」
「クールな人だなぁ~…」
「一夏の奴…こんな美少女とお知り合いになりやがって…!」
「び…美少女ちゃうわ! べ…ベべべ別にそんなこと言われても全然嬉しくなんてねーし…」
クロエ先輩が顔を真っ赤にして、めっちゃ狼狽えてる。
前もそうだったけど、この人は他人から褒められることに慣れてないんだな。
噂じゃ、学園で物凄い人気があるらしいけど。
「「可愛い…」」
言うと思った。
俺でも一瞬だけそう思ってしまったんだから無理ないよな。
「因みに、クロエ君が体育祭などで競争で走ったりすると、周囲の女子達から毎回のように黄色い声援が飛び出してくる」
「「「分かる気がする…」」」
「揃って言うなし」
クロエ先輩みたいな人は、同性からの人気がありそうだしな。
しかも運動神経まで抜群なら言うことなしだろ。
「最後に、この竜田揚げを食ってるのが同級生でクラスメイトの『風間ちえる』さんだ」
「IS学園の誇る美少女の風間ちえるで~す! ちぇる~ん☆」
「「ちぇ…ちぇる~ん…」」
うん…そうだよな。反応に困るよな。分かる。
ちぇるーんって何だよって思うよな。俺もそうだった。
「けど、学年が全く違う三人が一緒って、皆さんは何か別に集まりか何かなんですか?」
「よく聞いてくれた少女よ。我等こそ、IS学園に燦然と輝く部活動。その名も『なかよし部』! またの名を『ユニちゃんズ』!」
「パイセン…いい加減に諦めなよ…」
「部の名前を決める時、皆で『なかよし部でいい』ってしたじゃないですかぁ~」
あ…そんな事が前にあったのか。
何気にこの二人も苦労しているのかもしれない。
「で…でも、凄いですよね! 皆さん揃ってIS学園の生徒だなんて!」
「「「それ程でも~」」」
褒めてな…いや、褒めてるのか。
実際、俺みたいな特別枠じゃなくて、正面から受験をして合格してるんだから、凄くない訳がないんだよな。
色々と言いつつも、あの千冬姉もこの三人の事を認めている節があったし。
「実は、私もIS学園志望なんです!」
「こいつはまた、そんな事を言いやがって…」
蘭はIS学園に入学したいと思ってたのか。
これは普通に初耳だな。
「別にいいじゃない! 私の進路なんだし! それに…ほらこれ!」
「「ん?」」
なにやら自慢げに蘭が一枚の書類を俺達に見せつけてきた。
よく見ると、そこにはこう書かれてあった。
【IS簡易適性試験 判定A】
マジか。俺よりも適性が上じゃんか。
因みに俺はBだった。なんて中途半端。
「これはアレか。政府がIS操縦者を探す一環でやっている簡易試験で、希望さえすれば誰でも受けれると言う…」
「そうです! 筆記は普通に自信あるし、適性もこの通り!」
「適正自体は問題なしっぽいし、筆記も出来るんなら確かに受かるかも」
「ですよね!」
クロエ先輩の一言で蘭の目が一気にキラキラし始める。
二年生の言葉ってのは中々に大きいようだ。
「そういえば、皆さんの適性値ってどれぐらいなんですか?」
「あ。それは俺も知りたいかも」
今にして思えば、俺はまだ彼女達の事を何にも知らない。
この機会に少しでも知れれば、そこから接し方が分かるかもしれない。
「「「A+でーす」」」
「私よりも上なんだ…凄いなぁ…」
それって確か、セシリアとかと同じランクだよな?
授業で言ってたけど、適性値の最高ランクはSなんだけど、Sランクは世界規模で探しても数人しかいないらしく、実質的にA+が最高値だとされているらしい。
「ん? ってことは、もしかして先輩達も専用機を持って…?」
「良く分かったな一夏くん。その通り、我々3人全員、専用機を所持している」
「マジかよ…」
って事は、三人共がセシリアや鈴と同じ代表候補生なのか…?
「と言っても、チエル達は別にどこかの国に属してるって訳じゃあないんですけどぉ~」
「そうなのか?」
「ウチらは候補生じゃなくて、企業所属のテストパイロットなんよ。つまり、立場的にはアンタと同じって事」
そういや、忘れかけていたけど、俺も専用機は持っているけど、実際には男性IS操縦者のデータを取る為に政府から貸し与えられてるんだよな…。
「どんな企業なんスか? 俺も知ってる所かな…」
「ボク達が所属しているのは『風間コーポレーション』といういう企業だ」
「風間コーポレーション……風間?」
それって…いや、まさか…。
別に風間って名字はそこまで珍しくはないし…。
「因みに、社長はチエルのパパがやってまーす!」
「やっぱり!? ってことは、風間さんって社長令嬢!?」
「そうでーす! ちぇる~ん☆」
人は見かけに寄らないっていうけど…寄らなさすぎだろ!
この性格で社長令嬢だなんて、誰が想像するかよ!
「んで、ウチらはチエルの伝手でテストパイロットになれたってワケ。ま、ウチの場合は単なるバイトなんだけどさ」
「ボクは寧ろ、向こうからお願いされたのさ。所属するかわりに、ボク達の専用機をデザイン、製造する権利を貰うという条件付きでだがね」
えっと…ん~?
なんだろうか…今、物凄く聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするんだが…。
「あ…あの…今、ユニ先輩が三人分の専用機を作ったって言ったように聞こえたんですけど…」
「聞こえた、のではなくて、実際にそう言ったんだが?」
「「「…………」」」
驚きの余り、俺達は揃って言葉を失った。
個人でISを作れる人なんて、てっきり束さんぐらいだと思ってたけど…意外とそうでもないのかもしれない…。
IS学園で一番の天才児だとは聞いてたけど、まさかここまでとは…。
「ついでに言うと、こう見えてもパイセン、今の時点で既に博士号とか持ってるんだよね」
「つまり…ユニ博士…?」
「えっへん」
えっへんって。
つーか、在学中に博士号を取るっていいのか…?
先輩がそれだけ凄いって証拠なんだろうけど。
「だから、来年卒業しても、今度は別の形でIS学園に残ることも可能と言うことだ。なかよし部は永遠に不滅だ」
流石に永遠は不可能だろ。
精々、あと2~3年が限界じゃないのか?
「で…でしたら! もし私が本当にIS学園に入学出来た暁には色々と教えて貰ってもいいですか!?」
「勿論だとも。なかよし部に不可能は無い。タイタニック号に乗ったつもりでドーンと任せておきたまえ」
いや、それだと最終的には氷山にぶつかって沈むから。意味無いから。
「パイセン。それじゃあ沈むから」
俺の代わりにクロエ先輩が言ってくれた。
少しだけシンパシーを感じてしまった。
「なかよし部…属性の塊みたいな部だな。合法ロリにツンデレクールビューティーにギャルっ子お嬢様…すげーよ…胸焼けしそうだわ…」
なんとなくだが弾の言いたい事は分かる。
この三人は確かに特徴の塊みたいな所があるよな。
そのお蔭で振り回されてるんだけど。
「さて。食事も終えた事だし、我々はここらでお暇するとしようか。お会計を頼む」
「もち、割り勘でヨロ」
「なかよし部に年功序列なんて言葉は存在しませんからね~」
思ったよりも平等主義ななかよし部を見送りながら、俺は彼女達の部活動以外の一面を見たことで、三人に対する印象が少しだけ変わった気がした。
テストパイロットとはいえ、専用機を持つ事を許されてる以上は、やっぱり皆揃って強いんだろうなぁ…。
いつか、俺もなかよし部とISで試合をする日が来るのだろうか…。
なかよし部で誰が好き?
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可愛いクロエちゃん!
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賢いユニちゃん!
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楽しいチエルちゃん!
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皆大好き!