これが一番書きやすかったのは内緒。
「それでは、今日の活動はここまで。解散」
はぁ…今日もやっと部活が終わったか…。
半ば、なし崩し的に顧問をする羽目になったとはいえ、最近はこいつらのノリにも少しだけ着いて行けるようになってきたな。
果たして、それが良いことなのかどうかは分からないが。
「……と、いつもならば言っている所なのだが、今日は皆で居残ってやらなければいけない事がある」
やらなければいけない事だと?
いつもは真っ先に寮の部屋へと帰る真宮寺にしては珍しいな。
「それは一体なんなんですかぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
風間。無駄に声がデカい。
あと、テンションも高すぎだ。
「はぁ…面倒くさいことじゃなけりゃいいんだけど」
それに関しては激しく同意だが、だったら大人しく陸上部の方に行けばよかったんじゃないのか黒江?
「今から、部室の掃除をやろうと思う」
「ほぅ…? 部室の掃除か。いいんじゃあないか?」
普段から使っている以上、定期的に掃除をして清潔を保つ事は良いことだ。
…私が言っても説得力なんて皆無だろうが。
「諸君も知っての通り、もうすぐ二学期が終了し冬休みへと突入する。年の瀬に大掃除をして綺麗な状態で新年を迎えなければいけないのは自分の部屋や実家だけではなく、部室もまた同様だと考えた」
ふむ…確かにその通りだ。
休みの間は基本的に校舎内への出入りは禁じられているから、掃除をするタイミングを設けるとすれば今しかないか…。
「因みに現在、我々の部室は校舎を取り囲むような形の三ヵ所に点在している」
「なんで三つもあるっ!?」
ん…? ちょっと待てよ?
「おい真行寺! 私達が今いる場所は『部室』ではないのかッ!?」
「何を言っているんだ織斑教諭。我々が今いる場所はあくまで『会議室』であって『部室』ではないぞ」
「だ…だが、これまでにこの場所を『部室』と言っていた事があるような気が…」
「それは単に作者が間違えて書いてしまっただけじゃないんですかぁ?」
「誤字ぐらい、世の中には腐るほどあるんだから、今更それぐらいでピーピー言ってちゃダメっすよ」
「えぇ~…」
これ…私が悪いのか…?
「余談だが、この三つの部室を線で繋ぐと校舎を囲む正三角形が完成したりする」
「一体何の結界だ」
そう言えば…私はまだこの『なかよし部』に関して知らない事が多いな…。
これを機に、少しでもこいつらの事を知った方がいいのかもしれない。
「そもそも、どうして部室が三つもあるんだ。まずはそこを説明しろ」
「ふむ…いいだろう。織斑教諭が驚くのも無理ないことだしな」
私でなくとも誰だって驚くと思うが…。
「現代社会に於いて、個々のプライバシーとは最も配慮されるべき項目の一つだ。この『なかよし部』は、それをどこよりもいち早く取り入れたにすぎないのだよ」
「ま…まぁ…確かにプライバシーの保護は大切だが…」
「いつの日かきっと訪れる事だろう…一人一部室の時代が」
来てたまるか。
維持費だけでも膨大な額になるわ。
「部室の掃除かぁ~…そういえば、割り当てられてから半年ぐらい経ちますけど、まだ一度もやった事がありませんでしたねぇ~」
「そうだったのかっ!?」
それはそれでまた問題があるような気が…。
いや、だからこそ今、掃除をするのか。
「んじゃ、取り敢えずは近場から始めますかね…っと」
「黒江? 陸上部の方は良いのか?」
「別に。ただ……」
「ただ? どうした?」
「なんか無性に掃除がしたい衝動に駆られたっつーか」
こいつ…他人の言葉に影響され過ぎだろ。
将来、黒江が詐欺とかに引っかからないか心配になってきた。
・・・・・
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・・・
・・
・
ということで、私達は校舎の外へと出てから三カ所ある部室を一つずつ回っていくことになった。
「それでは、まずはここから始める」
…見た感じは、どこにでもある普通の小屋のようだが…。
「これは誰の部室なんだ?」
我ながら、凄い日本語を使ってるな…。
こんな質問、私以外に誰もしないんじゃあないか?
「主にボクが使っているよ」
「ということは、ここは真行寺の部室になる訳か」
「そうなるな。ま、遠慮なく入ってくれたまえ」
そう言いながら扉を開くと、そこには驚きの光景が広がっていた。
「……秘密基地?」
室内には巨大なパソコンが隙間なく敷き詰められていて、三方の壁には沢山のディスプレイが設置してあり、更に床には植物の根のように数多くのコードが転がっていた。
どことなく、束の部屋を彷彿とさせるな…。
「凄く近未来的な部室ですねー!」
「結構カッコいいじゃん」
「感想はそれだけでいいのかッ!?」
他にも言うべき事は山のようにあるだろうがッ!?
どうして一文だけで終わってしまうんだっ!?
「どうして部室内にこんな物があるんだっ!?」
「この部室が土地、位置、方位。その全てにおいてボクの仕事道具である機械類を置くのに相応していただけだよ」
風水的な事は本気でどうでもいい。
「けど、こんなに機械ばっかりじゃ掃除なんてしたくても出来ないんじゃあないんですかぁ?」
「あれ? なんかメールが来てるっぽいんだけど?」
「なんだって?」
黒江に指摘され、急いでメールの内容を確認する真行寺。
何故かメールは英語で書かれていて、その内容は全く分からなかった。
「ふっ…そういうことか」
「どうしたんだ?」
「どうやら、このボクが学会で発表した論文が高く評価されたようだ」
「学会ッ!? 論文ッ!?」
一体いつの間にそんな事をして、そんな場所に行っていたッ!?
私は全く預かり知らない事だぞっ!?
「来年から忙しくなりそうだ。今から非常に楽しみだよ」
「そ…そうか…」
普段から部屋に引き篭もってばかりの真行寺が嬉しそうに笑っているから…いいのか…?
「近々、ここで今後についての簡単な会議を開きたいとも書いてあった」
「学者仲間全員を学園に集合させる気かッ!?」
しれっと、とんでもないことをカミングアウトしたぞコイツ!
「それでは、次の部室へと向かうとしよう」
し…暫くは真行寺の行動に警戒が必要だな…。
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二つ目の部室。
そこには部屋いっぱいにアイドルのグッズや可愛らしいぬいぐるみ、美少女フィギュアなどが所狭しと飾ってあった。
「あー……風間?」
「なんですかぁ?」
「一体何だ、この頭が痛くなりそうな部室は」
「まだ何も言ってないのにチエルの部室だって、よく見抜きましたね。さっすが織斑センセーですね!」
「というか、僅か五畳半で冒険するな」
ある意味、さっきのよりもインパクトはあるぞ…。
本当に何なんだこの部屋は…。
部室ってよりは、完全に趣味の部屋と化してるじゃあないか。
「折角ですし、皆でお茶でもどうですか?」
そう言うと、風間はテーブルの上にあった小さいベルを鳴らした。
次の瞬間、ドアを開けて一人のメイドが入ってきた。
「お嬢様~! お呼びですかぁ~!?」
「誰だ――――――――――――!?」
ウチの学園の生徒…じゃないよな…?
歳はこいつ等と同じぐらいみたいだが…こんな顔は見た事が無い。
「紹介しますね。ウチの家に仕えているメイドの『天野雀』ちゃんです」
「は…初めまして! あ…天野雀です! 部室専属メイドをやってます!」
「初めまして…」
生まれて初めて聞く職種なんだが…。
「スズメくん。元気そうで何よりだ」
「この間は世話になったね。サンキュ」
「お前ら、この子と顔見知りなのかッ!?」
い…いや、同じ企業に属している以上、知り合いであるのは当たり前か…。
だとしても普通に驚くが。
「それにしても…凄いグッズの数々だな。これ全部、お前の物なのか…?」
「そうですねー。チエル自身が熱狂的なアイドルオタクってのもあるんですけど、それ以外の物はー…ふと視界に入れちゃうとつい買っちゃうんですよね。テヘチェルリンコ♡」
ブルジョアにしか言えない台詞だな…。
やってる事は完全に収集癖のある変態だが。
「わ…私がいつもここにいて、2時間に一回のペースでお掃除してます!」
「勝手に学園内で寝泊まりしないでくれ…」
これ…学園長になんて説明すればいいんだ…?
考えるだけで胃が痛くなってくる…。
「どうやらチエルくんの部室も掃除の必要が無いようだな」
メイドさんが逐一、掃除してくれてるからな…無断で。
「それでは、次はクロエくんの部室へと向かおう」
・・・・・
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・・・
・・
・
三ヵ所目の部室前まで行くと、急に黒江が我々を静止させた。
「あ…ゴメンだけど、ちょっとここで待ってて。散らかってるかもだから、せめて足の踏み場があるぐらいには簡単に片すから」
「了解した」
黒江の部室はそんなにも汚れているのか?
もしや、私と同類なのか?
ゴソゴソとした音が少し聞こえた後に、扉が開かれて黒江が顔を出した。
「どーぞ。入ってもいいよ」
「では…失礼する」
中へと入ると、そこにあったのは大量の段ボールの山と、小さなテーブルの上にある折鶴と作りかけの造花だった。
「…まさか…内職か?」
「ウチはお世辞にも裕福とは言い難いんで。企業所属のIS操縦者として、かなりの給料を貰っているとはいえ、少しでも家に入れる金は多い方が良いから。本当は外で掛け持ちのバイトが出来ればいいんだけど、流石にそれは不可能だから。せめて内職ぐらいは出来ないかなって思って」
さっきまでとは違って急に話が重くなったんだがッ!?
私も顧問として黒江の家庭事情は把握していたつもりだが、想像以上に深刻だったのかもしれない…。
「黒江。お前の気持ちは痛いほどよく分かる。何か困った事があれば、なんでも言ってこい。いつでも相談に乗ってやる」
「ん…あんがと。織斑先生…」
普段の様子からは全く想像が出来ない程に苦労をしているんだな…。
私も何か手伝えればいいのだが…。
「因みに、よく暇潰しにチエル達も内職の手伝いなんかをしてるんですよ。ねー?」
「うむ。時には頭を空っぽにして地道な作業をするのも悪くは無い。研究が行き詰った時などは特にな」
ふっ…どうやら、私の心配は無用のようだったな。
色々とありつつも、こいつらはこいつらなりの絆で結ばれている。
そこに割り込むのは野暮というものか。
「けど、今のこの部屋を片付けられたら、ちょっち困るんだけど」
「確かにそうですよねぇ~」
「仕方がないな。では…」
…あれ? 私達は何の為になかよし部の部室巡りをしていたんだったか?
年末の大掃除をする為だったような気が…。
「今日の延長活動はここまで。解散!」
結局、何がしたかったんだ…?
三人の知らない一面を知れたのは、顧問として素直に嬉しかったが…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
なかよし部から解放され職員室へと戻っている途中、廊下で女子達が何やら困っている光景に出くわした。
「ここも電波が入らない。マジでどーなってんの?」
「意味分んないよねー」
電波が入らない…だと?
そんな事は無い筈だが…。
「おい、お前達。一体どうした?」
「あ…織斑先生。実は…」
「なんでかスマホに電波が入らなくって…」
「そうなのか?」
試しに自分のスマホでも確かめてみると、確かに『圏外』と表示されていた。
「いつから、こんな感じなんだ?」
「えっとー…半年ぐらい前からだったような気がします」
「その頃からだよね。校舎の中だけ圏外になるの」
3つの部室を結ぶ結界の効果が判明した瞬間だった。
なかよし部で誰が好き?
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可愛いクロエちゃん!
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賢いユニちゃん!
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楽しいチエルちゃん!
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皆大好き!