この世界に転生――と言っても生まれ直した訳では無い――した時、私は深い森の中に座り込んでいた。
果たしてこれで何度目の蘇生だったか。
最初の時と同じように世界に生成された私は、いつも通りの手順を踏む。
万が一がないように。
自分の存在を確かめるように。
何度も死んで生き返る私が、果たして私と言えるのか――。
少々容姿と肉体を弄ったので、黒髪赤目の、西洋人に近い顔立ち。性別はどちらにでも取れるよう、性差を感じさせない身体つき。
歳の頃は、大体前世で18歳程の姿か。
服は……この世界で一般的な麻布の服。多少着心地は悪いが、仕方ない。
取り敢えず人里に降りようと、近くに落ちていた荷物を拾う。大きめのポーチを探ると、地図と多少の食料、それなりの路銀を見つけた。
これまでの経験から、ある程度の地理は把握している。しかしその記憶も数年から数十年の間隔があり、ましてや再生を繰り返していると、その記憶も曖昧になってくる。
「……行くか」
取り敢えず、記憶にある最初の村か町に寄ろう。そんなことを考えながら、深い森の中を進む。
今回の人生は、より良いものになると信じて。
☆☆☆☆☆☆
太陽が真上に昇るよりも前に、
無事森の中の村にたどり着いた。
最初に立ち寄った村では、旅人として振舞った。
特に怪しまれることも無く村の門番に通される。
牧歌的な村。
村人の他にも、皮鎧姿の冒険者の姿もある。
それなりの数の冒険者が出歩いているところを見ると、私の記憶と違い少し発展しているようだ。
先程の門番との世間話で分かったが、私の記憶では10年程の間隔が空いていたと思っていたが――実際には30年程経っていた。もっとも、来た時の記憶もさほど思い出深いものではなく、今回と同じようにふらりと立ち寄っただけだが。
…まず、目覚めてからやることは、
そう。
「情報収集と行こうか」
冒険者の出入りもそれなりにあるからか、村にあった小さな酒場へと入る。昼前だと言うのに、既に酒場の席の多くは埋まっていた。
酒場の喧騒を避けるように、ひとり席へと座る。
注文を聞き付けにやってきた従業員に、ここ最近の情勢を尋ねる。
「良いですよ! ああ、でもその前に…」
ほら、となにやら目配せをする。
一瞬呆けた後、あぁと思い当たる。従業員は色々と教える代わりにチップをねだっているのだ。
半ば不文律と化しているとはいえ、前世では馴染みのなかったチップ文化は変わらず慣れない。
限られた路銀を支払う悔しさを飲み込み、必要経費として割り切る。
従業員が語る話に耳を傾けながら、物思いに沈む。