ノリと勢いだけで書きました!楽しんで頂けると嬉しいです!
とある街角。そこには2人の少女がいた。
先程までショッピングをしていたのだろうか、足元に散乱する紙袋から新品の洋服や、可愛らしいスイーツが顔をのぞかせている。
…そう、足元に手荷物が散乱しているのだ。これは明らかに只事ではない。
そしてその場には2人の少女だけでなく、仰々しい装置に身を包んだ屈強な男達が片方の少女を羽交い締めにし、もう片方の少女も身動きが取れないように取り押さえる。
もしもこの場に第三者がいたらこの様子をこう言うだろう…「誘拐現場」と。
「離せ、離せ、離しやがれっていってるんですよ!…ぐっ!」
「真那ちゃん!くっ、どいて、どいて、どけよ!なんで真那ちゃんを連れていこうとするんだよ!くそっ、どけ、どけよ!真那ちゃぁん‼️」
黒髪の少女が伸ばした手は無慈悲にも届かず、独特な言葉遣いをする青髪の少女は男達に連れ去られてしまう。
…拐われる青髪の少女の姿が完全に見えなくなると、流石にもう追いかける事は不可能だろうと思ったのだろうか、男達は黒髪の少女の拘束を解き、まるで魔法のように空の彼方へと飛んで行った。
「…っ!つ、伝えなくちゃ…早く、この事を…」
そう呟きながら少女はよろめきながらも立ち上がる。
拐われた親友には兄がいる。どこか抜けてて、時々香ばしい発言をするが、いざと言う時は頼りになる、そんな兄貴分が居るのだ。
この事を早く親友の実兄で、自分の兄貴分である彼に伝えなくては。彼女はその一念でボロボロな体を動かした。
さっき取り押さえられた時に落としてしまった携帯端末は見るも無残な姿になっていたが、幸いな事に彼の今いる場所は分かっている。
彼が人生初のデートを行うと言うので、2人で間違いないと世間の恋に恋する者たちに自信を持って勧められる完璧なデートプランを考えたのだ。余程のことが無ければこれに沿って行動している筈だし、仮に外れててもお相手は「絶世の美女」という言葉ですら霞む程の女性だ。少し聞き込めばこの海辺の街の地図、彼の普段からの思考などに当てはめれば簡単に居場所は分かる。
自らを天才と言って憚らない少女は、その優れた頭脳で見込みをつけると、彼女は全身に広がる鈍痛を堪えながら目的地へと向かう。
彼らの方にも何かあったのだろうか?聞き込みなどで当初のコースから逆算するとまるで何者かから逃げていたような居場所に居ることを割り出した彼女はそんな事を考えるが、そんな事よりも早く親友の危機を兄貴分に伝えなくてはと思考を切り替え、駆ける。
「っ…はぁ、はぁ、真士にぃ!澪さん!大変だよ、真那ちゃんが、真那ちゃ、ん、が…」
…しかし、不幸とは立て続けに起こるものだ。
やっとの思いで2人の元へとたどり着いた彼女が見たのは
「シン、シンっ…」
大粒の涙を流すデート相手の少女と、
「………」
物言わぬ骸となった兄貴分だった。
体にはかすり傷ひとつ無いのに、死んでいると分かる
「アハハハハ…アハハ、アハハハハ‼️」
…なにが親友だ。その彼女を守れないで。
…なにが妹分だ。自分の事でいっぱいいっぱいになって、彼がどうなっているかなんて考えもしないで。
…なにが…なにが天才だ‼️何一つ出来なかったくせに‼️
「アハハハハ‼️アハハハハ‼️アハハハハハハ‼️」
笑う、哂う、嗤う
己の無様を、己の無力さを、世界の理不尽を
「アハハハハハ‼️」
彼女はもう、
天宮市。
その街はおよそ30年前に起こった大規模な空間震、通称南関東大空災によって壊滅的な被害を被ったところから、長き日を経て、今では世界屈指の「空間震に強い都市」とされる街である。
そんな街に住む高校1年生の青年、五河士道は玄関先で困惑していた。
「えっと、これ本当に俺宛てであってます?」
「はい、たしかに五河士道様宛ですけど…」
「えぇ…でも、こんなの買った覚えは無いんですけど…」
「いや、そう言われてもこっちも仕事なので…じゃっ、これで失礼します‼️」
そう言うが早いか配達員の青年はトラックに乗って立ち去り、その場には立ち尽くす士道と荷物…立派なバイクが残された。
「俺、免許持ってないんだけどなぁ~…第一、なんでスマートブレインの本社から送られて来たんだ?」
…スマートブレイン。それは食料品からロボットまで幅広く扱う大企業である。その歴史は意外と浅く、女社長の「櫻田加奈」が20年前に起業。そこから飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、今では存在しない時代が考えられないほどの企業となった。
そんな大企業となんの縁もない自分の元に最新のバイクが突然送られてきたのだ。当然の事ながら困惑する。が、このまま呆然としていても何も分からないし、何より
家を空けがちな両親が帰ってきたらなんと説明しようかと考えながらバイクを押していると、荷台にアタッシュケースが括り付けられているのを見つける。
ただでさえバイクという進学したての男子生徒が中々手が伸ばせない代物が無料で手に入ったのに他にもオマケがあるとなると幸運を通り越して恐怖すら覚えてくる。
ケースを回収して家に戻り、妹からの質問ラッシュを適当に捌くと自室に入り、中身を見る。
中には最新鋭のデジカメを皮切りにいざと言う時便利なポーチライトなどが入っている。
その中でも特に目を引くのは何やらメカニックなものー隣に描かれているピクトグラムでは腰に巻き付けている様だし、腹巻か何かだろうかーと、今では中々お目にかかれないずっしりと重量感のあるガラケー。
この何の規則性も見いだせないラインナップに、士道の頭は破裂寸前だ。
これがもしも1年前に届いていたのなら、
「これが組織の連中が秘密裏に開発していた最終兵器、『
と、めちゃくちゃ
故に、今の士道にとってこれは未知なる世界への招待状ではなく、「なにかの手違いじゃないだろうか?」「後からとんでもない料金を請求されるんじゃないか?」とまさに恐怖の塊なのである。
だが、もしもそういう事件性のあるなにかだったとしても、今士道に出来る事は特に無い。ならばせめて、このアイテム群の使い方位は把握しておこうとビニールの中にある資料を取り出す。
その資料のトップにはこう印字されていた…
「ファイズギアユーザーズガイド」
と。
天宮市のオフィス街には他のビルのと比べて明らかに巨大なものがふたつある。
1つはイギリスに本社を置くデウス・エクス・マキナインダストリアルの日本支部。そしてもう1つがスマートブレインの本社である。
スマートブレインの本社、その最上階にある社長室にて、2人の男女が言葉を交わしていた。
「それで、彼の元に
「ええ、私の部下が彼が1度変身した所まで確認しています」
「さすがね、須藤くん。上の上の成果よ」
そう言って女性…スマートブレイン社長の櫻田加奈は微笑みながら相手の男性…須藤雅史を賞賛する。
「ありがとうございます、櫻田社長。では、約束のモノを」
「えぇ、もちろん。そういう約束だったものね」
そう言うと加奈は四葉のクローバーの模様が付いた灰色のピンバッジを投げ渡す。
「これで貴方は今日から我々オルフェノクの中でも上の上…最高クラスの実力を持つエリート集団、ラッキークローバーの一員よ」
「ありがとうございます…フフ、やはりオルフェノクになって頂点を極めるのは興味深い…‼️では、私はこれで」
「えぇ、ご苦労さま」
社長室から須藤が出ると、女性は『櫻田加奈』の仮面を外し、呟く。
「これで仕込みは上々、細工は流々、仕上げは…」
そこまで言うと、うっとりとした表情で額縁に入っている古ぼけた写真に触れる。
「もう少しだから、待っててね、真士にぃ…私の神の才能で、必ず蘇らせてみせるから」
そう言うと、彼女はゆっくりと両頬を上げた。
続きが気になってくれたら、お気に入り登録、感想、評価など頂けると幸いです!