デート・ア・アウトサイダーズ   作:GGO好きの幸村

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ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙投稿場所間違えたア゙ア゙ア゙ア゙ア゙‼️


1章 十香コンプリート
第2話/日常


 そのサンバは、とても素晴らしいものだった。音がないにも関わらず、思わず演奏が聞こえてくるかのようなリズムのとり方。無駄がなく、それでいて情熱的な足さばきは、一朝一夕で身につくようなものでは無いだろう。これを夢うつつな状態で見ていたら、夢の中にはきっと行ったこともないのにリオのカーニバルが出てきた事だろう。路上パフォーマンスで行われていたら投げ銭は諭吉になっていたと断言出来るほど見事なサンバだった…そう、これが寝ていた自分の体の上で行われていなければの話だが。

 

「おお!!おにーちゃんおはよーなのだ‼️」

 

「あー、うん、おはよう琴里」

 

 つい先ほどまでダンスステージにされていた士道は、寝起きでかすれた声で独特な方法で自分を起こしてくれた義妹、五河琴里に挨拶を返す。

 

 今日は4月10日、士道が2年生に進級する日だ。しかしまだまだ外は寒く、布団の魔力は未だ健在である。これに抗う事など、並大抵の精神力では出来やしない。瞼がスーッと重力に沿って閉じていくが…

 

「ぐふっ!」

 

「あはは、ぐふっだって‼️陸戦用だー‼️」

 

 …頭上の琴里(小悪魔)がそれを許してくれそうにない。

 なんとかもう少し眠れないかと頭で考えた事が脊髄反射で飛び出してくる。

 

「あ~琴里、実は俺は『とりあえずあと10分寝ていないと妹をくすぐってしまうウイルス』、通称Tウイルスに感染しているんだ…」

 

 …自分で言っておきながらなんとも無茶苦茶な話だが…

 

「ギャーーーッ!」

 

 と悲鳴をあげてリビングへと逃げていった。これを信じるとは…お兄ちゃんは今から将来が不安です。

 時計を見ると、時刻は5時55分55秒。ドアを開けたらやかましい怪人たちが乗っている時の列車に乗れそうな時間である。

 

 と、ここで今日から両親が出張でしばらく家を空けるので、朝ごはんと弁当を作るために琴里に起こすよう頼んでいたことを思い出す。

 しかし冷静になって考えてみると、今日は始業式しかないから弁当を作る必要は無いし、登校も去年届いたバイク…オートバジンを2人乗りで使うから以前より時間にだいぶ余裕がある。

 

 今日は琴里に負担をかけてまで早起きしなくても良かったな…なんて思いながら下に降りると、そこにはテーブルでバリゲードを作って身を潜める義妹の姿が。俺は苦笑いを浮かべながら、安心させるように両手を広げた。

 

 

『本日未明、天宮市近郊のー』

「ん、近いな…何かあったのか?」

 フライパンに卵を割り入れている時にテレビから聞こえてきた住んでいる街の名前に、すわ事件かと火を止めてカウンター越しに画面を覗くと、そこには悲惨な姿の市街地が。

 ああ、また空間震かと、いつもなら特に気にもとめないのだが、今日は不思議と気になった。

 

「最近なんでこんなに空間震が多いんだろうな?」

 

 特段興味がある訳でもないが、こういう事は1度考え始めるとそれらしい理屈を聞いて納得したいものである。

 自分と対して歳も変わらぬ妹に質問…というよりも答えを求めていないのだから大きめの独り言の方が近いだろうか?なんにせよ、喉に小骨が突っかかったような疑問が、ぽろりと口から零れる。

 

「んー、そーだねー。予想より少し早いかなー」

 

「早い?なにがだ?」

 

「んー、あんでもあーい」

 

 と、ここで士道は少し疑問を覚える。それは妹の発言を不可解に思ったとか空間震の秘密やらなんやらに気付いたのではなく、途中から妹の言葉がもごもごとこもっているのだ。まるで何かを口に入れているかのように。

 

 まさかと思い琴里の頭をこちらに向けさせると、予想通り口の中には彼女の大好物のチュッパチャプスが。

 

「こら、飯の前にお菓子を食べるな」

 

 士道は口から飴を取り上げようと棒を引っ張るも、口をすぼめて抵抗することで中々抜けない。可愛い顔を崩し、変顔百面相をしてでも離さない執念にとうとうこちらが折れて、しっかりと朝ごはんを食べると約束させた上で棒から手を離す。

 

 再びコンロに火を灯したところで、今日の昼ご飯のことを考え始める。2人とも午前終わりなら、今のうちに昼ご飯の下ごしらえも済ました方が後で楽になる。中学校も午前中だけなら折角だしメニューは琴里の好物にしてやろうと話しかける。

 

「今日は中学校も始業式だよな?」

 

「そうだよーだから今日は午前中だけだねー」

 

「じゃあ昼飯も家で食べるよな…琴里、何かリクエストはあるか?」

 

「んーじゃあデラックスキッズプレート!」

 

「当店ではご用意できかねます」

 

 返ってきた答えはまさかのファミレスのお子様ランチ。これは流石に作れない。出来るだけ出費は避けたいが、仕方ないかと嘆息する。

 

「よし、なら昼は外で食うか」

 

「おー!本当かー!」

 

「本当だ。ただ予定表見るとこっちの方が終わるの遅そうだし先にファミレスで待っててくれ」

 

「絶対だぞ!絶対約束だぞ!地震が起きても火事が起きても空間震が起きてもファミレスなのに焼肉をしてる絹ごしの冷奴を掴めないくらい不器用なお巡りさんたちが居ても絶対だぞ!」

 

「わかったよ、ってか最後のお巡りさんたちは別に問題なくないか?」

 

 そんな事を言いながら、士道は完成したオムレツを皿の上に盛り付けた。

 

 

 

「2年4組…ここか!」

 今日から通う新しい教室を見つけ、中に入るともうすでに結構な人が入っていた。さて自分の席はどこかと座席表を確認しようとすると、

 

「─五河士道」

 

 後方から見知らぬ少女に呼び止められる。

 人形のような端正な顔立ちで…表情がまるで窺えなかった。

 しかし、こんな特徴的な人に会ったことがあるのなら忘れようもない筈だが、会った覚えは無い。だが、彼女は士道の名前を知っていた。やはりどこかで会った事があるのか、はたまた人伝に聞いたのだろうか?去年まで琴里は外泊が多かったし、歳の離れた友人の兄と話がしたかった可能性も十分にある。

 

 そんな予想は、彼女が「覚えていないの?」と不思議そうに首を傾げたことであっさりと否定される。

 

 やはり彼女と俺は会った事があるようだ。可能性があるとすれば免許獲得後に興奮冷めやらぬままオートバジンであちこちツーリングした時だが、あの時は同年代ではなくバイク好きの年上との交流が多かったし、唯一出会った同年代は、立ち寄ったラーメン屋で仲良くなったオレンジ髪が特徴の双子の少女くらいだ。様々なことで対決しているようで、その時は店の名物である大盛りラーメン早食い対決をしていた…ちなみに勝者は独特な言葉遣いをする少女の方で、「嘲笑。自信満々に勝負を挑んできたのに負ける気分はどうですか?ぷぷぷ」とドヤ顔を決めていた。

 

 そんな事を考えているうちに眼前の少女が自分のことを覚えていないことを察したのか、

 

「そう」

 

 と、特に落胆した様子も無く席に着いた。

 

 やはりどこかで彼女と会ったことがあるのか?ならば思い出さないと失礼だろうと悩んでいると、ぱちーん‼️と気持ちのいい音を立てて平手打ちが背に叩き込まれる。

 

「ってぇ、なにすんだ殿町!」

 

 振り向くとそこには腕組みしながら笑う級友、殿町宏人の姿が。

 

「おう、元気そうだなセクシャルビースト五河。この間まで浮いた話のひとつも無かったのにいつの間にあの鳶一と仲良くなったんだ、ええ?」

 

「鳶一…?さっきの娘か?」

 

「おま、知らないで話してたのか⁉️いいか、アイツはな…」

 

 そして語られるのは鳶一折紙についての情報。

 

 曰く、話しかけた際の反応は塩対応を越して永久凍土だのマヒャデドスだのと言われる程。

 曰く、成績は常に学年首位、体育の成績もダントツの超天才。

 曰く、去年の『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』では堂々の第3位の美少女。

 

 などなど、様々な噂も含めた話を聞かされる。

 そんな印象的な人物を何故知らないのかと呆れられるが、士道からすれば成績に関しては2輪免許の取得や取得後の遠乗りの為に補習のある赤点ラインを上回っているかしか関心が無いから、成績表は最低限しか見てないし、学校の美少女の噂はあまり興味が薄い。なんなら、ランキングがあったことも今知った程である。

 

 と、ここで少し疑問を覚える。

 

「なぁ、なんでベスト13なんだ?普通トップ10とかだろ?」

 

「主催者の女子が13位なんだよ」

 

「…なるほど」

 

 どうしてもランクインしたかったからなのかと、苦笑いを浮かべる。

 

「ちなみに男子の方はベスト358までだ」

 

「はぁ⁉️学校の男子ほぼ全員じゃねぇか。凄まじいまでの意地だな」

 

「全くだな。ちなみに主催者は俺だ」

 

「お前かよ⁉️」

 

「ちなみにお前は1票で52位だ、よかったな」

 

 そう言って血涙を流しながらこちらを見る殿町の顔から士道はそっと視線をはずした。

 

 ちなみに、席は件の鳶一折紙の隣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな会話からおよそ3時間後。

 

「五河ー、飯いかねー?」

 

 先程の自爆から持ち前のメンタルで復活した殿町が士道に話しかけてきた。

 昼前に学校が終わることはそうそう無く、たまには友人と共に食いに行くのも良いが、生憎と興味は先約がある。

 

「悪ぃ殿町、今日は琴里とデラックスキッズプレートの約束があるんだ」

 

「琴里ちゃんか…俺も一緒についてって良いか?」

 

 殿町と琴里は何回か会った事もあるし、特に問題はないだろう。OKサインを出そうとしたタイミングで、

 

「なぁなぁ、琴里ちゃんって今彼氏とか居るのか?」

 

 と声を潜めて聞いてきた。

 

「…お前、それを聞いてどうするつもりだ?」

 

「いや、琴里ちゃん今中2だろ?3歳年上とか大丈夫かな~と」

 

「…今日お前を絶対に連れていかない」

 

「いや、冗談だってばお義兄様」

 

「誰がお義兄様だ‼️」

 

 士道は殿町を置いてさっさとファミレスに向かおうとした、その時!

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー

 

 街中に不快なサイレンが鳴り響く。

 

『─これは訓練では、ありません。これは訓練では、ありません─』

 

 ─空間震警報の、発令だ




Open Your Eyes For The Next Outsider

「なんで馬鹿正直に残ってやがんだよ…っ!」

「─だってお前も、私を殺しに来たんだろう?」

「何が何だか分からないけど、これくらいなら、出来る!」

次回:第3話/邂逅

「歓迎するわ。ようこそ、〈ラタトスク〉へ」

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