デート・ア・アウトサイダーズ   作:GGO好きの幸村

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フリーレン様。前回の更新は最近の事ではありません。前の更新の時は「葬送のフリーレン」のアニメは放送されていませんからね。前の更新はもう半年も前のことです。

もうそんなにか。人の時間は早いね。だけど作者も総合型1期とはいえ受験生として色々と頑張っていたんだ、多少は大目に見ようじゃないか。

ちなみにこの作品の1話の投稿から1年が経ちました。

フェルン。それは流石に嘘だよ。デアラとライダーのクロスオーバーで、変身しないどころか十香の名付けイベントまでたどり着けていないまま連載開始から1年経った作品なんて、あるはずが無いよ。



…これからも更新が遅いとは思いますが、何ぞとご容赦ください
あ、今回この作品初の1万字越えです


第6話/レッスン♪ラブハプニング

「きり~つ、礼」

 

 ありがとうございました~と生徒たちの言葉と共に、本日の学業が終わった教室は部活の準備や近所に出来たコスメショップの話題でガヤガヤとにわかにうるさくなる。

 

 そんな空気の中、士道はさっさと帰り支度を終えて外へと向かう。それはギャルゲーの失敗で世に放たれた数々の黒歴史を誰か話題にしてないかという不安もあるが…単純な話、今日が次狼がなんとか時間を作ってくれた日だからだ。

 

 オートバジンを駆り向かう先はカフェ・マル・ダムール。来禅高校からバイクで10分程の距離にある知る人ぞ知る名店で、最近の士道の行きつけだ…最も、1杯1500円のオリジナルブレンドを頼むことはそうそう無いが。

 

 そんなことを考えているうちに店に着き、駐車場に停めてからドアを開ける。

 

 チリンチリン、と音を立てて開いたドアの向こう側にソワソワしながら座っているのは2人の男…次狼と音也だ。

 2人の「どちらが人望あるか対決」は未だ続いており、

 

「店に入ってきた時、先に士道から声をかけられた方の勝ちでどうだ?」

 

「おっと?子犬ちゃんは堂々と人望を得る自信が無いのかな?…まぁいいだろう。この俺のカリスマ溢れるオーラに触れたなら、誰であろうと声を掛けられずには居られないからな‼️」

 

 …なんて、謎ルールを設けていたからだ。

 そんなことを知る由もない士道が最初に声をかけたのは…

 

「師匠、お邪魔しま~す」

 

「あら、士道ちゃんいらっしゃい」

 

 …まさかのマスターである木戸明。

 これには2人とも驚き、思わずといった感じで問い詰める。

 

「おいマスター‼️何で士道とそんな気安い感じなんだ⁉️」

 

 と言うのは音也。

 

「あ、そういえばそっか…最近音也ちゃんたち朝早くか閉店ギリギリに来るじゃない?で、士道ちゃんは昼頃によく来るのよ~なんなら都合のいい時は店の手伝いもしてくれるしね。渡くん達とならんでウチの若い名物客ってわけ」

 

「…おい士道、師匠ってのはどういう事だ」

 

 と尋ねるのは次狼だ。

 

「初めてここに来た時に頼んだブレンドとオムライスが凄く美味しくて…家で作ってみたんですけどあの味が出せなかったので、次来た時に無理を承知でレシピを聞いてみたらじゃあ直接見てあげるって言われて、それ以来お店が暇な時に料理を見てくれるんですよ。最近はお客さんに出せるって太鼓判押してもらいました‼️」

 

「「そ、そうか…」」

 

 と、2人は不服そうな顔をしながらも席に着く。

 

「…先に士道に反応されたのは俺だから人望があるのは俺の方だな」

 

「おいちょっと待て、それはお前が質問した相手が士道だったからじゃねぇか‼️勝負は先に声を『かけられた』方だ、今の勝負は無効だ、む・こ・う‼️」

 

「はっ、負け犬の遠吠えは醜いな」

 

「あぁ?それはお前の方だろ?」

 

 バチバチ、と2人の間に電撃が走る。

 

「…なにやってるんですか?あの2人」

 

「ん~?こどもの喧嘩。2人とも~喧嘩するなら外でやりなさいよ~」

 

 そう言いながらマスターは、静かにコーヒー豆を挽いていた。

 

 

 

 …それからしばらくして。

 

「んで?士道。わざわざ俺に相談したい事ってなんだ」

 

「あ、はい。実は…」

 

 ようやく本題を聞いた次郎に、士道は状況を話す…勿論、精霊のことは上手く隠しながらだが。

 

「なるほど?つまりはやむにやまれぬ事情から自暴自棄になって暴力に走ってる非行少女をなんとか更生させたい、しかもその為には相手の女をお前に惚れさせないといけないって事か?…なんとも七面倒臭い事をしようとしてるな」

 

「あはは…やっぱりそうですよね。加えるなら彼女と敵対してる相手のレディースの勢いや殺意とかも凄ぇ高くて…彼女、この世の全てに対して絶望してる様に見えたんです。だから、案外この世界も捨てたもんじゃないぞって教えたくて…次狼さんは昔この辺りで1番のモテ男だった、って話を思い出したんです。だから、なにかコツとか聞きたいな~と」

 

 すると次狼はなにやら苦虫を噛み潰したような顔をして2、3秒程唸ると、ハァとため息を吐き、

 

「悪いが俺はそういう話は得意でなくてな…認めたくは無いが、そういう話なら、コイツの方が詳しい」

 

 と、音也の方を指さした。

 

「確かに昔は女遊びもそれなりにした…が、俺は鼻が利くんでな。後々面倒になりそうな女には関わらないようにしてた。それに比べてこの馬鹿は運命がなんだと言ってどんな女にも手を出した。クラブの女、バイオリンの教え子、道行く小娘、果ては人妻までな」

 

「おい、さっきからお前誤解を招くような言い方しか「…あぁ、そういや幼女をだまくらかして自分のツケを払わせたりもしてたな」…後で覚えとけよこのクソ狼が…‼️」

 

 あまりの言いように、さすがに看過できなくなった音也が苦言を呈そうとすると、次狼は間髪入れずに更なる火種を投げ込む。

 

「…お前の知りたい事がナンパの方法や危ない女の見分け方、デートスポットとかなら俺で正解だったが、自分から面倒な事情持ちの女に突っ込んでいくならコイツの方が適任だ。良かったな、この馬鹿が着いてきたからわざわざ連絡をとる必要が無い」

 

 そこまで言うと、後はもう出る幕じゃないとばかりに、次狼はテーブルに出されたコーヒーの香りを堪能する。

 

「あのヤロウ…‼️まぁいいか。おい士道‼️今からこの俺様が特別に女の扱い方をレクチャーしてやる」

 

「えぇと…はい!よろしくお願いします!」

 

 突然な話に士道は目を白黒させるも、とりあえず話を聞いてみる事にした。

 

「1度目偶然、2度奇跡、3度目必然、4運命…分かるか?」

 

「なんというか、ロマンチックな言葉ですね」

 

 士道としては特に小馬鹿にした訳ではなく、本心からの言葉だ。それは音也も分かっているのか、「だろう?」と笑みを浮かべる。

 

「1度目の出会いはただの偶然かもしれない。だが、それが2度、3度となると必ず意味が生まれる。偶然でも、故意にでも関係なく…お前の奏でてる音楽は、特にな」

 

「…俺の、音楽?確かに、昔ちょっとだけギターをかじったことはありますけど…」

 

 音也が時々ポエマーな表現を使うことは知っているが、急に士道が奏でてる音楽、なんて言われて思わず首を傾げる。

 

「人はみんな心の中で音楽を奏でているんだ、知らず知らずのうちにな。お前の音楽は…とてつもなく下手くそな不協和音だ‼️」

 

「え、えぇ…」

 

 いきなり心の音楽がどうこう言われたと思ったら、唐突なディス。これには士道は勿論、聞き耳を立てていた次狼やマスターもドン引きである。

 

「勘違いするなよ?俺は別にそれが悪いとは思ってないし、不協和音の原因も多分お前の音じゃないしな」

 

「俺の音じゃない?でもさっき音也さんは俺の音楽が下手くそって…」

 

 というと、音也はなにやら難しそうな顔をして、

 

「うぅむ…なんと言うか、士道の音楽は、基本となる自分の音の上に、誰か別の人間の音楽があるんだ。この感じは…2人か?激しくて激情的なバイオリンの音と、悲壮なチェンバロの音だな。士道自信の音は、下からのびのびと支えるコントラバスの音だ」

 

 と告げる。

 自分の中に流れる他人の音、というのも気になったが、ふと思った事を音也に尋ねてみる。

 

「そういえば、音也さんにはどんな音楽が流れているんですか?」

 

「俺か?そうだな、昔は天才を称えるに相応しい、壮大なオーケストラだった」

 

「…今は?」

 

 そう聞くとフッと笑い、

 

「たった1人の運命の女神(ミューズ)の為だけに弾かれる、エチュードだよ」

 

 と答えた。

 

 

 

 その後も色々と話を聞いたが、イマイチピンと来ないものや「そんなの真似できるか‼️」と思わず口走ってしまうようなものばかりで、あまり参考にはならなそうだった…まぁ、普通に良さげなデートスポットや参考に出来る話もいくつかあったので、収支的にはだいぶプラスだったが。

 

 

 …ちなみにその日の夜、中々クリア出来ないヒロインに対して物は試しだ、と音也から聞いて無茶苦茶だと思った事を真似して試したところ、リケジョのヒロイン『桐生戦子』と体育会系ヒロインの「万丈龍巳」の同時攻略ルートに入り、変な笑いが漏れたのは完全なる余談だ。

 

 

 

「…さて、相談事も終わったし俺達もそろそろ戻るか」

 

 士道が立ち去った後のカフェ・マム・ダムールにて。次狼はそう言いながら、1万円札と5千円札をカウンターに置いた。

 

「まいどあり。でもどうしたの、これ。いつものコーヒーの代金もだいぶ多く払ってるのに、今日は追加で5千円も」

 

「あぁ、士道の分の代金だ、釣りはとっといてくれ…ただ、音也の代金の支払いには使うな」

 

「おまっ、そこは一緒に払うのが漢気なんじゃないのか?」

 

「生憎、お前に見せる漢気なんてかけらもないからな。自分のツケは、自分で払え」

 

 と笑う次狼にぐぬぬと歯ぎしりしながら、財布から5千円札…ではなく、今日日見ない五百円札を数枚取り出す。

 まいどあり、というマスターの言葉も半ばに外へと向かう。

 

「ラモン達には納期は多少オーバーしても大丈夫とは言ったが、遅れすぎてもマズイからな。今からでも向かうか」

 

「確かに違いない。初期の初期から開発に関わってるアレが完全する瞬間を見逃す、というのもいい気分じゃないからな」

 

「噂に聞く〈ラタトスク〉が動くということは、必然的にスマートブレインも動く…そうなってくれば必ず必要になるからな… ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・()()()()()()が」

 

 

 

 ─数日後

 

「や、やってやったぞー‼️」

 

 画面に映る『ALL CLEAR』の文字に、士道はコントローラー片手に雄叫びを上げる。

 当初は遅々として攻略が進まなかったが、音也や次狼のアドバイスもあって途中からはほぼノーミスでCGコンプに至った。

 

「クリアおめでとう、士道。その記念に、次の訓練(ごほうび)よ」

 

 と琴里が邪悪な笑みを浮かべて告げる。

 

「…それ、ご褒美と書いて訓練と読むやつじゃないだろうな」

 

「あら、よく分かったわね。妹の事を常時考えているからこそ気付くのかしら?病的なまでのシスコンね気持ち悪い」

 

「…もうそれでいいや」

 

 はァ、とため息を吐きながら、士道は持ち込んだサイフォンのアルコールランプに火をつける。元々ここは物理準備室だったのだ、この程度は許されるだろう。豆は家で挽いてきた物を持ってきたから風味は落ちるが、我儘を言ってここで淹れらるようにしたのだ、そのくらいは仕方ない。そんなことを思いながら、士道は黙々とコーヒーを淹れる。

 

「…まずは無難に、彼女など…」

 

「…いいじゃない、それで行きましょう…あら?いい匂い」

 

 ポタ、と最後の1滴が落ちきったのを見てロートを取り外す。

 

「よし…って、はいざっく⁉️」

 

 コーヒーを淹れ終わると、両隣りから琴里と令音が覗き込んでいる事に気づき、変な声を上げる。

 

「ハイザックって…この間のグフと言い、案外わざとやってたりするのかしら」

 

「いや、狙ってたとかじゃなくて、普通にびっくりしたんだよ‼️」

 

「それにしても中々いい香りだな…シン、私も1杯貰ってもいいかい?」

 

「あ、はい。元々3人分用意してたんで大丈夫ですよ」

 

 士道は手早く紙コップを3つ取り出し、なみなみと注ぐ。苦いものが苦手な琴里のコップにはシュガースティックを入れることも忘れない。

 

「出来たぞ~ほれ」

 

 そう軽く言うと、士道は2人にコップを差し出す。

 

「あら、いただきます…熱ッ‼️フー、フー…」

 

 出したコーヒーを1口飲んだ琴里が慌ててフーフーと息を吹きかける。淹れたては1番美味いがかなり熱い。少し冷ましてから出した方が良かったかな、と思いながらコップを傾ける。

 

「…うん、美味しい。挽いてから時間の経った豆でこの香りは、そこらの喫茶店よりもいい腕をしているよ。これでもコーヒーにはうるさい方なんだ、信用してくれ」

 

「いやいや、師匠に比べたらまだまだ…というか令音さん、ずっと眠れてないのってひょっとしてコーヒーの飲みすぎなんて訳じゃ…」

 

「…さて、訓練の話に戻るが…次の訓練は、実戦を想定したエキシビションに近いものだ」

 

 あ、話しそらしたなこの人

 そう思いながら「エキシビション?」と聞く。

 

「えぇ、精霊が現れたら、士道には基本的にこの小型インカムからの指示に従ってもらうことになるわ」

 

 そう返したのは琴里だ。やはり熱かったのか紙コップは二重に重なっており、どこから持ってきたのか水面には氷がプカプカと浮いている。その耳に付けられているインカムはとても小さく、予め聞いていた上で意識しなければ気が付かないだろう。

 

「…ちなみに、このインカムからなんかビーム出たりとか爆発したりとかしないよな?」

 

「…士道、あなたアニメと現実の区別も着いていないのかしら。わざわざインカムを武器にする意味なんて無いじゃない」

 

「そーだよな、うん。念の為聞いただけだ、念の為…」

 

 そう言いながら士道は後ろポケットで存在感を放っているビーム出たりバイクを呼び出せたりする携帯(ファイズフォン)に意識を向け、やっぱりコイツがおかしいんだよなと思うと共に、裏世界でも珍しいこんな物を、なんでスマートブレインは縁もゆかりも無い俺に送って来たんだろうかと内心首を傾げる。

 

「…さて、今回シンの訓練対象は岡峰珠恵教諭だ。頑張って口説いてきてくれたまえ」

 

 と、ここでさらっと令音から爆弾が投げ込まれる。

 

「え、あ、訓練ってそういう⁉️いや、そんなん出来るわけっ」

 

「あら、本番だともっと難物な精霊を口説かないといけないのよ?このくらい軽~くやってもらわなくちゃ」

 

「─っ、そりゃ、そうだけど…っ!」

 

 そんな事急に言われても特にそういう対象として意識したことも無いマスコット枠の先生を口説く気になれるはずも無い。

 そもそも、精霊を口説く為に他の人を口説くのは本末転倒というか、誠実では無いというか…

 

 うごごご、っと頭を抱える士道に対し、それならと令音が落ち着いた声色で提案する。

 

「…なら、他の女子生徒に変えるかね?彼女ならば告白も受け入れないだろうし、あまり言いふらす事も無いと思ったのだが」

 

「っ‼️」

 

 確かに、そこを考慮するといい人選なのかもしれない。特に士道の場合、ギャルゲーの失敗ペナルティとして学校中に配られたポエムといういつ起爆するのか分からない爆弾もあるのだ、リスクヘッジはするに越したことはない。

 

「…あぁ、もうやるよやってやるよ‼️」

 

「ようやく決心がついたみたいね。令音!」

 

 そう言いながら、琴里は耳につけていたインカムを外し、こちらに投げてよこす。

 

「…ターゲットは東校舎の3階廊下だ、近いね。…そうだ、これも忘れないうちに」

 

 そう言うと令音は機械部品のような物を取り出し、指先でピンと弾く。それは羽根を生やし、虫のように宙を舞う。

 

「これは?」

 

「…超小型、高感度のカメラだ。虫と間違えて潰さないように」

 

 モニターがいつの間にかギャルゲーから変わっていて、このカメラで撮影されているであろう映像が、画面全体に表示されている。

 かなりの速度で動いているのに映像は全くブレておらず、画質もそこらのテレビカメラよりもクリアだ。

 士道が思わず感嘆のため息を吐くと、いい加減しびれを切らしたのか琴里が「ラタトスク(うち)の機械や設備はまた今度説明してあげるから、今は訓練の方に取り組みなさい」と催促してくる。

 

「んじゃ、行ってくるか…」

 

 物理準備室を出て少し歩き、階段を降りた先に、珠恵の背が見えた。

「先生‼️」と声をかけようとして、直前で踏みとどまる。大声ならば届く距離ではあるが、何分人が多い。ただでさえ女性を口説く胆力が無いのに、それを公衆の面前でやる度胸は士道には無い。仕方ないか、と士道は少し駆け足で珠恵に近づく。

 

「あ、先生。ちょっといいですか?」

 

「五河くん?どうかしたんですかぁ?」

 

「…っ、あ、あの─」

 

 と、ここで言葉が詰まる。ほぼ毎日見ている顔とは言え、口説く相手として見ると、些か緊張してしまう。

 

『─情けないわね。これは訓練、しくじったって死にはしないわ』

 

無茶言うなよ…ち、ちょっとその…そう、進路のことで相談があって、時間があったらそこの空き教室でお話したいんですけど…」

 

 士道は耳元から聞こえる琴里の声に若干の理不尽さを覚えたが、ひとまず口説くために人気の少ない所へ誘導しようと言葉を選ぶ。「この早い時期から進路について考えているとは、五河くんはしっかりしてますねぇ」と言っているので、ファーストインプレッションは成功と考えて良いだろう。空き教室に入ると、珠恵も進路の事はあまり人に聞かれたくないだろうと気を利かして扉を閉める。

 

「それで、進路はどうするつもりなんですかぁ?進学?それとも就職?どちらでも先生がきっちりサポートしますよ!」

 

 教師として生徒としっかり向き合わねば‼️と燃える珠恵を前に、士道はどう口説いていくべきかと頭を悩ませる。そもそもそういう経験自体が無いのだ、定石も何も分かるはずもない。

 

『鈍臭いわね。─とりあえずなにか話しかけなさいな。女性の前でだんまりするほどダメなことはないわ』

 

 そんな事言われても‼️と士道は内心叫ぶが、それで状況は変わらない。ええいままよと、アドバイス(音也流口説き方)を元に、言葉を発する。

 

「はい。…恋の、進路相談です」

 

「え?」

 

 突然の言葉に珠恵はポカンと口を開け、士道は内心「何言ってるんだ俺ぇぇぇぇ‼️」と悶絶するが、ここで止まったらこれ以上何も話せなくなると、口説き文句を並べていく。

 

「先生は可愛らしいし、ファッションのセンスもあるし、そしてなによりも優しい。俺、そんな先生が担任になってくれて、最近学校来るのが凄く楽しいんです。…実は俺、前から先生の事が─」

 

「ぃやはは…駄目ですよぉ。私先生なんですし」

 

 互いの顔は朱に染まり、珠恵の方から大人の女性として話を切り上げる方向に持って行ってくれた。小声で「もういい…もういいだろ‼️」と恐らく近くを飛んでいるであろう小型カメラに向かって話すも、インカムからは『いいわよ士道。その調子でガンガン攻めなさい』と琴里(悪魔)の声。どうしたものかと頭を抱えていると、『…確か彼女は今年で29だったね─ではシン、こう言ってみたまえ』と令音の声。これはありがたいと、多少恥ずかしいが、今更かと思いながら聞こえてくる言葉をそのまま発する。

 

「俺、本気で先生とけっ…」

 

 婚、と言葉を続けようとした士道の口がピタリと止まる。その理由は珠恵の表情だ。『結婚』というワードを出そうとした途端、彼女の瞳からハイライトが消え、まるで獲物を狙う猛獣のような…あるいは、海中から不気味にこちらを覗く、魚のような目をしていた。ゾクッ‼️と背中が冷えるのを感じ、自分が死地へと足を踏み入れようとしている事を察する。このままでは不味いと、士道は慌ててなぁなぁにする方向へと舵を切る。

 

「五河くん、今結婚「…いえ、こんな事言われても困りますよね」…いえ今結婚って「俺、こんな気持ちになるの初めてだったんです」なら結婚「でも、相手が先生だし、叶わないのも分かってました」いえ、全然結婚したい「でも、このモヤモヤを抱えたままなのも苦しくて…俺、多分振られに来たんだと思います」結婚したいならいいです、というかむしろ結婚してくだ「ありがとうございました、俺のこんな話聞いてくれて」いえ、年齢とか先生全然きにしないですし、証明して欲しいなら血判状でも「さようならっ‼️俺のッ‼️初恋ッ‼️」あ、待ってください五河くん、結婚、婚期、結婚~‼️」

 

 士道は背後から聞こえる呪詛(「結婚~‼️」)から逃れるべく、早足で教室を去っていく。インカムからは『なによチキっちゃって。男なんだから結婚くらいハッキリと言いなさいよ』と琴里(若さという特権を持つ側の存在)が言ってくるが、『…いや、今のはシンの判断が賢明だろう。私自身にあまり結婚願望が無いからか、少々29歳・女性で独身という焦りに対しての[結婚]という呪文の威力を考慮できていなかった』と、珠恵と同年代であろう令音(若さの特権を失いつつある側の存在)がアシストしてから、琴里の小言が聞こえなくなる。

 不機嫌から恐らくは物理準備室で頬をハコフグのように膨らまして拗ねているのだろう。しかし結果はどうあれ琴里が士道をサポートしようとしてくれたのは事実だし、今日は夕飯前のチュパチャップスを2本…いや、3本までは見逃してやるか。

 

 なんて事を考えながら教室(婚期の魔の手)から逃げようと早歩きしていたからか、曲がり角から出てきた生徒と正面衝突してしまう。

 

「っつつ…すまん、大丈夫、か…」

 

 自分の不注意でぶつかってしまったのだから、ひとまずは謝らねば。そう思いながら顔を上げると、視界が白に包まれていた。

 

 …正確に言うならば、白い布地に。

 

 ……もっと正確に言うと、純白のショーツ。

 

「うぉべらっ⁉️」

 

 混乱からか奇声を発しながら飛び退くと、そこにはぶつかってしまった人物にして今の真っ白な下着の持ち主…鳶一折紙の顔が見えた。

 

「す、すまん鳶一‼️ぶつかるつもりも、み、見るつもりもこれっぽっちも無かったんだ‼️本当に申し訳ない‼️」

 

 あのシュミレーションと言う名のギャルゲーと寸分たがわぬ状況が起こるとは、〈ラタトスク〉のシュミレーション能力は凄まじいな。なんて若干現実逃避気味な事を考えながらも、士道は折紙に謝罪する。純粋に申し訳ないと思う部分もあるが、なにせ士道はついさっき担任の珠恵を口説いたばかりなのだ。ここで問題にされて、珠恵に痴漢で指導されるなんて気まずいなんてレベルの話では無い。しかしやってしまったのも事実なので、士道はひたすらに平謝りする他無いのである。

 

「ぶつかったのは受け身を取ったから問題ないし、見られたのも構わない。…どうせなら、もっと見る?」

 

「…はい?」

 

 ナニヲ、イッテイルンダロウカ、コノヒトハ。

 

 前半の受け身を取ったところは、元々彼女は決して喜ばしくは無いが、精霊を抹殺するべく訓練を重ねているASTの隊員だ。咄嗟に受け身を取る事くらい、容易いことなのだろう。

 見られた事を構わない発言も、年頃の乙女としては些かどうなのかと思わなくもないが、ビンタの1発は覚悟していた士道としてはありがたい限りなので、問題は無い。

 

 しかし問題は最後のもっと見るという言葉だ。士道が折紙に関するもので見てしまったものと言えば、精霊と戦うASTとしての姿と先程の純白の下着だ。ASTや顕現装置の事は今は特に関係ないし、以前に忘れるか、せめて他言はしないようにと釘を刺されたので考えずらい。となると残るは下着だけだが、それは、いったい、どういう…

 

『─ちょうどいいわ士道。彼女でも訓練しておきましょう』

 

 興奮と混乱で脳内の収拾がつかなくなっていた士道の耳元に、琴里からの司令が聞こえてくる。急になんて無茶振りを…‼️とは思ったが、『精霊攻略の為には、おそらく彼女と同年代であろう年代のデータも必要だからね』と言われたら一理あるし、このまま立ち去るのも諸々の罪悪感が強すぎる。

 先程の発言の真意はともかく、少なくとも事故で下着を見てしまっても許されるくらいの好感度はあるのだ、ここまでくれば毒を食らわば皿までの精神でやるしかない‼️

 

「と、鳶一っ」

 

「なに?」

 

「…あ~前から思ってたけど、制服がすげぇ似合ってるよな」

 

「そう?ありがとう」

 

 …まずい、会話が続かない。

 

 先程の珠恵は生徒と先生という立場を利用して進路相談というテイで切り込めたが、こちらはただの同級生だ。

 もっと言ってしまえば、珠恵は教室での会話や立ち振る舞いなんかから性格をよく読み取れるが、折紙は常に寡黙で表情を動かさない、ミステリアスな少女以上の情報が無いのだ。どういう会話なら彼女が食いつくかなんて、到底想像できない。

 

『…手伝おうか?』

 

 そんな士道を見かねてか、再び令音が助け舟を出てきた。これはありがたいと思いながらも、1つ留意しておく点があった事を思い出し、令音に伝える。

 

「あの、令音さん」

 

『ん、どうしたかね、シン。』

 

「いや、実は前に俺と鳶一は会ったことがあるみたいなんですけど…俺がその時のことを覚えてないんです。なのでぬか喜びさせちゃうと悪いし、申し訳ないので、昔あったことがあるとか、そっち方向のやつは無しでお願いします」

 

『…ふむ、君がそう考えているなら、それに合わせるとしよう』

 

 ありがとうございます、と感謝しながらも、士道は令音の言葉を、自分なりに言い換えて話す。

 

「…俺、折角鳶一と隣の席になれたから、せっかくだし仲良くなりたくて授業中、偶にお前のこと見てたんだ」

 

 中々に気持ち悪いセリフだが、令音の原文は『ここ1週間、授業中ずっとお前の事見てたんだ』である。さては令音さんも中々にぶっ飛んでる人だな?と、士道は今更理解した。

 

「そう…私も、見ていた」

 

「…本当か?あ、そういえば鳶一って朝のHRの前になにか本よんでるよな。あれは何を読んでるんだ?」

 

 これは士道の率直な疑問だ。ちなみに原文は琴里からのもので、『放課後の教室で鳶一の体操服の匂いを嗅いだりしてるんだ』である。お前は兄にどうあって欲しいんだと思い、やはり夕飯前のチュパチャップスは1本たりとも許さないと心に決めた。

 

「あれは普通二輪免許の参考書」

 

「へぇ‼️」

 

 と、ここで士道のテンションが明らかに上がる。

 普通二輪…すなわちバイクでのツーリングは士道のマイブームであり、まさかこんな形で同好の士を見つけられるとは思ってもいなかったからだ。上機嫌になった士道は、インカムから聞こえてくる令音の言葉をそのまま発する。

 

「そうか‼️なんか俺たち気が合うな‼️」

 

「合う」

 

「それで、もしよかったらなんだけど、俺と付き合ってくれないか‼️…ん?」

 

 待て、自分は今なんと言った?

 かなりの急展開に思わず油断していた。しかしこんな急に告白するものなのか⁉️

 

『…すまん、まさかそのまま言うとは』

 

 じゃあなんで元からそう言ってんだアンタは‼️と小さな声に怨嗟を乗せる。

 ふと、折紙の方を見てみると、いつもと変わらぬ無表情…なのだが、心なしか目を見開いてるように見える。

 

「いや、すまん、今のは─」

 

「構わない」

 

「…へ?」

 

「構わない、と言った」

 

 いや、なんでこの唐突な告白が受け入れられるんだよ‼️と考えてから、今の文脈なら(ツーリングに)付き合うという風に考えていてもおかしくない‼️それなら純粋にツーリング仲間が増えて万々歳だ‼️と思い直す。

 

「あ、ああ…免許が取れたら、ツーリングに付き合ってくれるってことだよな?」

 

「…?そういう意味だったの?」

 

 折紙は小さく首を傾げる。

 

「え、あ、ええと…鳶一は、どういう意味だと思ったんだ…?」

 

「男女交際のことかと思っていた」

 

 ちゃんと意味伝わってるのかよ‼️え、じゃあなんで鳶一は構わないって言ったんだ…?

 本日何度目かの衝撃が士道を襲い、これまた本日何度目か分からない混乱に襲われる。

 

「違うの?」

 

「い、いや…違わない…けど」

 

「そう」

 

 ─なんで「違わない」なんて言ったんだ‼️今なら、まだ勘違いで通せたのに‼️

 

 ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ─

 

 なんて士道が自問自答していると、唐突に空間震警報が鳴り響く。

 

「─急用ができた。また」

 

 と言うと、折紙は踵を返して走り去っていく。おそらく、いや確実に精霊を殺しに向かうのだろう…その顔に苦しみを浮かべながら。

 

 ─そんなことは絶対にさせない。あんな顔は、鳶一のものでも、精霊のものでも見たくない。そのためなら、攻略でもなんでも、やってやる

 

 そう決意を固める士道に、インカム越しに声が聞こえてくる。

 

『士道、空間震よ。一旦〈フラクシナス〉に移動するわ。物理準備室に戻りなさい』

 

「…やっぱり、精霊なのか?」

 

 士道の質問に、琴里は1拍置いてから答える。

 

『ええ。出現予測地点は─来禅高校(ここ)よ』




さぁーて、今回も次回予告はオレ様が担当するぜ~

次回‼️デート・ア・アウトサイダー「Burst mode」うわっ、何するんだ‼️おい、撃つのをやめろ、羽に、オレ様の羽に当たっちまっ、うわぁ~



Open Your Eyes For The Next Outside

「安心しなさい士道。〈フラクシナス〉には頼りになるクルーがいっぱいよ」

「おまえは、何者だ」 

「─人間は…ッ、お前を殺そうとする奴らばかりじゃ、ないんだッ‼️」

「俺は─お前を、否定しない」

第7話/

「君の、名前は…」
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