デート・ア・アウトサイダーズ   作:GGO好きの幸村

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キングオージャー最終回、よかった…タランチュラアビスの出番無さそうだなと思ってた分、デズナラク様との連携攻撃めちゃくちゃ興奮したし、コフキの横からスっと飴が出てきたところで「べダリア⁉️」って声出ましたw
ファイズのVシネはまだ見れてないので、鑑賞次第この作品にどの程度反映させるか考えます‼️


第7話/君の名前は

 ─空間震の発生が確認されてから少しして。士道は1度フラクシナスに戻ってから、再び精霊が居る高校へと戻ってきていた。幸いな事に、ASTは未だ遮蔽物の多い校舎への突入を敢行していない為、対話するなら絶好の機会なのだが…

 

「…琴里、本当に大丈夫なんだろうな?」

 

『なによ、まさかまだ精霊を口説く覚悟が出来ていないのかしら?とんだチキンね』

 

「…いや、そうじゃなくてだな…」

 

 士道は、自分が精霊を口説く覚悟はもう─半ばヤケクソではあるが─出来ている。問題は…

 

 …さっきみたいな変なアドバイスしないよな?先生や鳶一の時とは違って、下手しなくても俺死ぬぞ?

 

 という不安である。死因が『他人の指示通りに変態チックな言葉で女の子を口説いたことによる斬殺』なんて冗談では無い。水色髪の某水の女神もプークスクスと嘲笑うどころか、同情までしてくれるだろう。

 

 と、そんな心内を察したのか、琴里が「安心しなさい士道。〈フラクシナス〉には頼りになるクルーがいっぱいよ」と告げる。

 

「そ、そうなのか?」と士道が問うと、「えぇ、例えば…」と、クルーを紹介して行く。

 

「五度もの結婚を経験した恋愛マスター・〈早すぎた倦怠期(バッドマリッジ)〉川越‼️」

 

 …それは、四回もの離婚も経験している、という事では無いだろうか?

 

「夜のお店で大人気、〈社長(シャチョサン)〉幹本‼️」

 

 …ただの金の力ではなく、レジェンド校長のような人望だと信じることにしよう

 

「恋のライバルは獄門疆の中へ‼️〈藁人形(ネイルノッカー)〉椎崎‼️」

 

 呪いだと⁉️非ィ科学的だ‼️

 

「100人の嫁を持つ男・〈次元を超える愛(ディメンション・ブレイカー)〉中津川‼️」

 

 …その嫁達はちゃんと立体的世界に存在しているのだろうか…

 

「その愛の深さ故に、法律で愛する彼に近づけなくなった女・〈保護観察処分(ディープラヴ)〉箕輪‼️」

 

 …もはや色々と手遅れな気がするのは俺だけだろうか…?

 

「そしてそんなクルー達の統括役・〈みんな疲れているのか…(メロンエナジー)〉呉島‼️」

 

 

「安心してくれ、ここに居る全員、能力も人格も問題ない者ばかりだ」

 

 …何故だろうか、彼自身に問題は無さそうなのに、彼が人を褒めると急に信じられなくなるのは…

 

「…皆、クルーとしての腕は確かなんだ」

 

 本当かぁ?とは思ったが、琴里に「ま、士道なら1度くらい死んでもコンティニュー出来るわよ。さっさと行って来なさい」と催促され─いや、それよりもあの少女ともう一度話をしてみたい思いから、精霊が現れた場所…二年四組の教室の扉を開けた。

 

 

 

 

「やあ、こんばんわ、どうしたの、こんなところで」

 

 ─なんて、軽い挨拶から会話を始めるつもりだった。だが、そんな思考は、すぐに掻き消えた。

 

 黒髪の少女が、机に片膝立てて座り、黒板を見つめている…文字に起こせばただそれだけの事なのに、一目見ただけで、士道の思考は完全にフリーズした。

 

「─ぬ?」

 

 次に士道が思考を取り戻したのは、なにやら物凄い悪寒に襲われた時だった。本能の命じるがままに頭を下げると、ひゅん、と少女が軽く手を振り、それから数秒もしないうちに士道が入ってきた教室の扉とその後ろの廊下の窓ガラスまでもが、粉々に砕け散る。あのまま突っ立ってたならば、士道の首はどこぞの危機一髪のようにスポーンと吹っ飛んでいただろう。

 

『士道‼️』

 

 琴里の声に反応して上を見ると、少女が手のひらに黒く輝く光球をこちらに放たんとしていた。

 しかし悲しいかな、先の攻撃を躱すのに精一杯だった士道はすっかり腰が抜けてしまい、最早逃げることさえままならない。迫り来る光の奔流を、ただただ見つめることしか出来ない。

 

 ─琴里、悪い…俺、死んだ。

 

 そんな事を考えながら、迫り来る命の危機にギュッと目を瞑る。

 数秒がまるで永遠に感じる…死の淵に立つと時間の流れがゆっくりに感じると言うが、まさか体験する日が来るとは思ってもみなかった。

 

 …やっぱり『変身』してから入るべきだったか?いやいや、それだと精霊を余計に刺激してしまう。

 

 そんな益体もない事を考えていると、ある違和感に気付く。

 

 ─いくらなんでも、あの光が届くのが遅すぎやしないか?

 そう思い、ゆっくりと瞼を開くと…そこには予想だにしないものがあった。

 

「Battle mode」

 

 …()()()()だ。

 銀色に輝くボディにタイヤのような背面装甲、右肩にあたる部分には赤く流線的なパーツ。よく見ると手にもタイヤのようなパーツが付いており、それを盾として光流から士道を守っているようだ。恐らくはこちらの危機に対してフラクシナスが寄越してくれた援軍だろう。そう考えた士道は、自分が生命の危機から脱した事を察し、ホッ、と息を吐く。

 

 やがて奔流も収まり、ようやく彼女と対話が出来ると思ったその時‼️

 

 ダダダダダダダダ‼️

 

 ロボットが手に持つタイヤから無数の弾丸が彼女目掛けて放たれる。

 

「ちっ、やはり伏兵が居たか‼️」

 

 少女はそう悪態を吐くと、初めて見た時に座っていた玉座を呼び出し、その背もたれで銃撃を防ぐ。ロボットは放銃は効果が薄いと判断したのか銃撃を止め、少女に接近し、肉弾戦を仕掛ける─この時の士道には預かり知らぬものだが、このロボットには超高性能AIと飛行機能が搭載されており、普段ならば標的の周りをホバリングしながら周回し、全方位からの飽和攻撃で防御を撃ち破るのだが…今回は飛行するには狭すぎる室内であると言う点、そして護衛対象の士道が無防備なことから、万が一にも流れ弾が当たらないようにと考えた故の判断である─少女は即座に玉座から大剣を抜剣すると、鉄の拳を剣の腹で受け止め、即座に切り返す。

 

「琴里‼️今すぐにあのロボットを止めてくれ‼️このままじゃ、俺たちはASTと同じになってしまう…このままじゃ、あの子が本当に人間を信じられなくなる、完全に人間の敵になっちまうよ‼️」

 

 そんな士道の悲痛な叫びも─

 

『…無理よ』

 

 無為に終わる。

 

「っ、なんでだよ⁉️フラクシナスは精霊との対話を『だって‼️』…?」

 

『だってあれは、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「んな…」

 

 唖然とする士道の耳に、焦りを含んだ琴里の声が響く。

 

『どこの国、武装組織に支給されている武装に類似品無し、装甲の材質不明、目的も不明…ASTの反応が校内に突入していない事から、彼女達の先遣兵器とも考えられない…精霊の確保を試みる国家の秘密兵器か、私たちラタトスクの様な世間一般には公開されていない組織の介入か、はたまた天才的な頭脳を持つ1個人の仕業か…どちらにせよ、このタイミングで突然現れる?全くもって、冗談じゃないわよっ…‼️』

 

 怒りからか、パキリ、とチュパチャップスを噛み砕く音が聞こえる。

 …このロボットがフラクシナスのものでは無いと分かった以上、このまま呆然と事態を眺めるなんて考えは士道の頭から消えた。

 

「おい、やめろっ、よっ‼️」

 

 士道は少女相手に拳打を叩き込もうとするロボットの不意をつき、人間で言う肩の部分に腕を滑り込ませて動きを封じる。

 

「えっと、君、とりあえずコイツは俺が抑えとくから今のうちに外に…行くとASTが居るんだよな、ちくしょうめ‼️」

 

 そんな事を言いながらも尚も抜け出そうとするロボットを押さえつけていると少女はハァと息を吐き、

 

「…そのメカメカ団っぽいやつを倒すまでお前には手を出さず、防御に専念しといてやる…これでいいか?」

 

 と答える。

「悪い、ありがとう!」と士道は答えると、ロボットとのとっつかみあいを再開する。幸いな事に、士道には少女に向けたような銃撃などは行って来なかった─護衛対象だから当たり前なのだが─為、思ったよりも容易に組み伏せられた。

 

「どこの誰だか知らないけど、いい加減に…ん?」

 

 と、士道はロボットの胸元のマークに既視感を覚える。これは、確かファイズフォンの表面に付いているメモリーとよく似たマーク…「この不思議ツール、まだ隠しダネあったのかよ⁉️」なんて考えながらロボットの全身を凝視すると、先程も少し気になった右肩のパーツにも強い既視感を覚える。あれは確か、精霊周りの事情に関わることになった日の数日前、愛車のオートバジンを洗車していた時─

 

「SB555-B…確かこれってウィンカーのちょい下のパーツに書いてある番号…もしかしてだけどお前、オート、バジン…?」

 

 バイザーの奥が、士道のその問いに賛同するかのように、ピカリと光る。

 

「…ひょっとしてお前、俺を助けようとしてくれたのか?」

 

 この問いにも、頷くようにバイザーの奥を光らす。

 …そう、少女が放つ光流に身を投げ出したのも、その後に少女に襲いかかったのも…全て、士道を守る為の行動だった。

 それを察した士道はロボット…もといオートバジンを解放し、

 

「ありがとな」

 

 と礼を述べる。

 確かに、オートバジンの方法は精霊を悪戯に刺激してしまったかもしれない。けれども、その行動で士道の命が拾われたのもまた事実。ならば、それに対しての礼はするべきだろう。

 それがどんな方法であれ…誰にそう教え込まれたとしても。

 

 その上で士道はでも、と前置きし

 

「次からは、こういうやり方はやめてくれ」

 

 と続ける。

 

 

 

「…確かに、お前は強かったし、頼りになる。ひょっとしたら、精霊も倒せたかもしれない」

 

 奥の方で少女が、む…と嫌悪感を露わにする。

 それはオートバジンに自分が倒せたかもと言われた事に対するものか、はたまた自分を害する事を発言した士道への失望感か…しかしその表情も、すぐに複雑なものに変わる。

 

「でも、それじゃダメなんだ。それだと、俺が嫌だと思って、認められないと思ったやつらと同じになる。それは、嫌なんだ」

 

 分かってくれるか?と言う士道の言葉に、オートバジンはコクリと頷くと、

 

「Vehicle mode」

 

 元のバイクへと戻って行った。

 しかしこんな機能まであるんだな、後で説明書読み直さないと…なんて考える士道に向けて、

 

「─止まれ」

 

 と、少女が剣の切っ先を突き出す。

 

「おまえは、何者だ」

 

 様々な疑問が含まれているのを感じる問いに、さてどう答えたものかと思っていると、

 

『待ちなさい』

 

 と琴里の声が耳元のインカムから聞こえてくる。

 

『あのロボットがなんなのかとか、士道が何を知っているのかとか、聞きたいことは色々あるわ…でも、一旦それは後回し。精霊との対話のサポートは、〈フラクシナス(私たち)〉に任せなさい‼️』

 

 そう猛々しく言う琴里の前方の巨大モニターには、精霊の少女の顔が映され、横には霊力の波長を感知するメーターなどの精霊の状態を表すパラメーター…その中でも一際目を引くのは、「好感度」と書かれたもの。

 …まるでギャルゲーのような画面を、クルー全員が凝視する。

 

 すると画面が明滅し、画面中央にウィンドウが現れる。

 

 ①「俺は太陽の子‼️五河士道‼️君を救いに来た‼️」

 

 ②「通りすがりの一般人だ、覚えておけ‼️」

 

 ③「人に名を訊ねる時は自分から名乗れ」

 

「選択肢ーっ」

 

 精霊の精神状態を精緻に感知し、精霊への好感度を高める会話内容を高性能AIが選択肢として表示しているのだ。

 選択肢の内容は本命・対抗・大穴とあり、その中から精霊の好感度を最も高められるものをフラクシナスクルーが俯瞰的に、そして多人数からの視点で判断し、現場の士道に伝えるのがクルーとしての仕事の1つだ。

 

 そして今回選ばれたのは─

 

「─みんな私と同意見みたいね。士道、私の言うとおりに答えなさい』

 

「…もう一度聞く。おまえは、何者だ」

 

 先程よりも剣先を首元に突きつけられ、再度質問された士道は、なるほどフラクシナスのサポートとはこういう意味か、と思いながら琴里の言葉を了承する。

 

「─人に名を訊ねる時は自分から名乗れ…っておい‼️」

 

「…ふざけているのか?」

 

 バァン‼️と破裂音が響き、教室の床に穴が空く。

 琴里の野郎、俺を殺す気じゃあるまいな…と思いながら、即座に口を開く。

 

「お、俺は五河士道‼️ここの生徒だ‼️敵対するつもりは無い‼️」

 

「…確かに、先程あのメカメカ団みたいなやつを止めてたしな、一応信じてやる…だが、そこを少しでも動いたら斬る」

 

 先程オートバジンを止めたのが功を奏したのか、一先ず殺される心配は無さそうだ。

 と、少女が士道の顔を少し凝視すると、「ぬ?」と眉を上げる。

 

「おまえ、前にメカメカ団との戦いに割り込んできたやつか?」

 

「あぁ、確か今月の十日だったな」

 

 士道の返事に、「おお」と得心がいったように手を打つと、

 

「おまえは、一体何なのだ?」

 

 と尋ねた。

 

「人間は、いつも私の事をこの世に存在してはいけないと殺しにくる。理由なんぞどうでも良い、そんな事を問おうとしたら攻撃を捌ききれなくなるからな」

 

 と前置きし、

 

「─だが、おまえは違う」

 

 と断言する。

 

「先程のメカメカ団もどきは、中々に強かった…もしかしたら、私を手負いにさせられると思う程度にはな。だが、おまえはアレを止めさせた。今までで1番私を殺せる可能性があったものをだぞ?だから、今の所はおまえが私を殺そうとしてないのは分かる」

 

「ならば、私のように人間では無いなにかかと言えば、それも違う。私側の存在ならば、前に会った時にメカメカ団を共に倒していたはずだ…だが、おまえは私とメカメカ団の戦いを止めようとした…おまえは、人間なのか?それとも、精霊なのか?」

 

「…俺は、人間だ」

 

「…そうか」

 

 少女の瞳に、失望か、落胆か…はたまた絶望か。どう取り繕っても、ポジティブとは言えない感情が写る。

 

 …あぁ、それだ。その顔をしているのが、どうしようも無いほどに嫌だ─だから俺は、あの社会的な命がかかった訓練を乗り越え、今この場に居るんだ。

 

「だけど‼️─人間は…ッ、おまえを殺そうとする奴らばかりじゃ、ないんだッ‼️…俺は、それを知って欲しくて、ここに来たんだ…俺は─おまえを、否定しない」

 

 …恐らく、今までこの少女には、手を差し伸べてくれる誰かが…居場所が無かったのだろう。なら─俺が手をさし伸ばしてやれば良い、彼女にとっての居場所になってやれば良い。

 正直言って、恋させる云々はまだ小っ恥ずかしいし、世界の命運なんて荷が重すぎる。だけど…ひとりぼっちで絶望している少女に手を差し伸べる事の、どこに躊躇する理由があろうか。

 

「…シドーといったか」

「─ああ」

「本当に、おまえは私を否定しないのか?」

「本当だ」

「本当の本当か?」

「本当の本当だ」

「本当の本当の本当か?」

「本当の本当の本当だ‼️」

 

 と士道が間髪入れずに答えると、

 

「誰が信じるかばーかばーか…と、言いたいところだが、おまえにはさっきメカメカ団もどきを止めてもらった礼がある。無論、私1人でも勝てただろうが、この世界の情報も得たいからな。情報超大事」

 

『…ひとまず何とかなったようね。そのまま続けて』

 

 琴里の安堵した声に、了解と小声で返していると、少女が教室中の物をペタペタと触っている。

 

「なにか気になるのか?えぇと…あ」

 

 

『名、か─そんなものは、無い』

 

 

 少女がなにか気になる物でもあるのかと声をかけようとしたところで、以前名前が無いと彼女が言っていた事を思い出す。

 少女もぬ?と首を傾げると、合点がいったように頷き、

 

「そうか、話をするためには名が必要なのだな…シドー、私に名をつけてくれ」

 

 なんて宣われたのだった。

 

「お、俺がぁ⁉️」

 

「うむ。今の所おまえ以外と会話する予定もない…というか、おまえが来るまでそんなこと考えもしなかったのだ、問題なかろう」

 

 

 

「うっわ、ヘビーなやつ来たわね…士道、こっちでも考えるから、焦って変な名前言うんじゃないわよ」

 

 フラクシナスの艦長席にて、琴里はそう士道に指示を出す。

 

「総員!今すぐ彼女の名前を考えて、私の端末に‼️」

 

 琴里はクルー全員に名前の案を考えるよう指示を出し、自分の端末に送られてきた名前を吟味する。

 

「川越‼️美佐子って3人目の奥さんの名前じゃない‼️この娘を士道に惚れさせるのが目的なのに、別れた相手の名前をつけるのは不吉すぎるでしょ!却下‼️」

 

「えぇと、幹本!これなんて読むの⁉️」

 

「はい‼️麗鐘(くららべる)です‼️」

 

「却下‼️…確か貴方、子供3人居たわよね…もしかしてその子達の名前も」

 

「上から、美空(ぴゅあっぷる)振門体(ふるもんてい)聖良布夢(せらふいむ)です‼️」

 

「今すぐ改名させて、学区外に引越しなさい」

 

「そこまでですか⁉️」

 

「呉島のは…これ、斬月(ざんげつ)かしら?」

 

「はい。明け方まで残る幻想的な残月に、彼女の天使である剣を掛けてみました…とは言え、どちらかと言うと男児寄りだと思いますので、ここは幹本の案を推薦します」

 

「統括…‼️」

 

 思いもよらぬ推薦に幹本は目を輝かせ、他のクルー達はえぇ…と軽く引くような反応を見せる。

 

「却下よ却下‼️そうねぇ…トメ‼️士道、彼女の名前はトメよ‼️』

 

 琴里からの通信を受けて、士道は少女に恐る恐る尋ねる。

 

「えぇと、トメ、とかはアリだったり?」

 

「…なぜかわからんが、馬鹿にされてる気がするのでダメだ」

 

「…だよなぁ」

 

『あら?古風でいい名前だと思ったんだけど』

 

 ペットは飼い主によく似ると言うが、独特の感性を持つ者の部下には独特な感性の持ち主が集まるものなのだろうか、なんて士道は思った。

 

 …余談はさておき、彼女の名前をどうするものか。そもそも士道が彼女について知っている事は少ない。黒髪、大剣、4月10日…あ

 

「トーカ、とかどうだ?」

 

「ふむ、トメよりかはアリだな」

 

 若干不機嫌そうになっていた少女…ないしトーカの機嫌が良くなっているのを見て、ほっと安堵のため息を吐く。

 

「そういえばここがどんな場所なのか言ってなかったよな。ここ、学校って言って、人間が勉強する場所なんだけど…」

 

 そう言いながら士道はチョークで黒板に「十香」の字を書く。

 

「こう書いて、トーカ。君の、名前は…十香だ」

 

 少女…もとい十香は、十香、十香と、噛み締めるように口にした後、黒板に近づき、指先だけで黒板を削り、不格好な「十香」の文字を刻む。

 

「十香。私の名だ。素敵だろう?シドー」と微笑む彼女に、士道も「そうだな、十香」と微笑み返す。

 自分のつけた名前…しかも4月10日(トーカ)に出会ったからとつけた安直な名前を自分で褒めるのは気恥ずかしいが、彼女が…十香が笑っている姿を初めて見たのだ、このくらい、どおってことない。

 そんな事を士道が考えていると、突如、校舎を凄まじい爆音と振動が襲う。

 

『士道、外からの攻撃よ。目的は精霊をいぶり出す事…もしくは、精霊が隠れている校舎そのものをなくすつもりかしら』

 

「んな無茶苦茶な…ASTって空間震による被害を抑えるためにあるんだろ?それなのに建物を壊すのは本末転倒じゃないか?」

 

『あら、言ってなかったかしら?顕現装置(リアライザ)を使えるウィザードなら、建物の修復くらいなら朝飯前よ。だからコラテラル・ダメージとして建物を破壊する…言ってしまえば、江戸時代の火消しのようなものかしら』

 

 士道はなるほど、と思いながらも、そこまでしてでも精霊を討伐しなければならないと考えるASTとの溝に、なんとも言えない表情を浮かべる。

 

「早く逃げろ、シドー。このままでは同胞に討たれることになるぞ」

 

『選択肢は2つ。逃げるか、とどまるかよ』

 

 …なら、答えは決まってるよなッ…‼️

 

 十香の悲しげな表情に、琴里からの2択。ならば、答えは1つしか無いだろう。

 士道は十香の足元にどっかと音を立てて座り込む。

 

「は─シドー、何をして「確かに、このままじゃ俺もやられるかもな」なら、早く逃げ─」

 

「…だから、助けてもらうことにする!オートバジン‼️」

 

「Battle mode」

 

 士道の声に応えるかのように、スーパーマシン、オートバジンはその姿を人型へと変える。

 

「オートバジン、外に出て、俺と十香のところに人が来ないようにしてくれ…ただし‼️絶対に殺さないように…出来るな?」

 

 士道の問に、オートバジンはコクリと頷くと、教室の窓から空へと飛び立っていった。

 

「これなら、まだしばらく話せるだろ?」と嘯く士道に、十香は一瞬驚くような表情を見せた後、士道の向かい側に座り込んだ。

 

 

 …ここから先の事は、わざわざ語るまでもないだろう。

 大空で精霊を殺そうとする人間と精霊を守ろうとするロボットが戦い、その下…ボロボロになった教室で少年少女の小戦争(かいわ)があっただけだ。

 強いて言うなら、精霊の性質の一端が分かった事と、士道がクルー達の後押しもあって十香をデートに誘った事くらいだろうか?…結局デートの意味を説明する前に、十香は消失(ロスト)してしまったが。

 

 ともあれ、士道と精霊との2度目の奇跡的な邂逅は、こうして終わりを告げたのだった。




Open Your Eyes For The Next Outside

「ようやく気づいたか、ばーかばーか」

「んじゃあ、目覚めたらこの世界に来るってことか?」

「昨日のメカメカ団もどき…オゥトバジン?とやらはどうしたのだ?」

「あら、士道ちゃんの彼女さん?」

第8話/戦争(デート)・開始
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