1度終わってしまったこの世界で 作:終わりを迎えた世界でできることは?
お気に入りや評価も嬉しかったです。
「……剣は悪くないですわよ。けれど、氣と魔法がおざなりでバランスが取れていないのが玉に瑕ですが」
伝統ある大会の決勝の舞台で、男女2人がいた。女は腕を組み余裕綽々と講釈を垂れている。そして男は
「言われなくても分かってんだよ!!!俺には剣しか取り柄がないことぐらいよォ!!!」
負け犬が如く吠えていた。頭では負けるのは分かっているが
「…敵に塩をおくるその態度。貴族だか騎士だかの精神は好きじゃねぇ!強ければ強いでいい。だけどな、そんな精神を気にするお前ら貴族は気に食わねぇ!!」
「…ただただ力を求めて、この学園に入ってこられたので?」
「ああ!それ以外の理由は待ち合わせてないんでな!」
「いいでしょう!
女はそう言い、少しの魔力と氣を解放した。男の周りを逃さないとばかりに囲う焔に変えて。
「…そのまま終わってよろしいので?」
「ふざけんな!勝ってみせるわ!お前によ!!」
男は自分が
「何とも惜しい力ですわね…その力を讃えて私も全力を尽くしましょう!」
女は自分の持ち得る全てを解放し、炎の熱量を上げ、男を囲う赤炎とした。男が心が折れるほどに…
それでも男は
「死ねよォ!!!横薙ぎ一閃!!!」
自分が操れるだけの全てを使い、一矢報いるために自分が最も自信のある技を撃ち放った。
だが結果は残酷であった。
「紅蓮の炎」
女の出した炎の壁を打ち破れるはずもなく、炎の海に飲まれた。
これが後に剣聖として讃えられ、呆気なく死んでしまう男の初敗北だ。
はじめは不真面目な生徒だと思った。この歴史ある学園の入学式に遅刻してくるやつは私が見ているなかで初めてだった。……まぁサボりたくて遅れた訳でなかったから、単なるバカかと思った……
だから私は気にも止めてなかった。
「強い!強すぎるぞ!!」
だが、これは一体どういうことだ?
「他の生徒がまるで敵ではないと言わんばかりに軽く蹴散らしている!」
確かに、入ってきたばかりにしては体が少し出来ていると思った。しかし、それだけだ。……なのに何故!あれほどの氣を纏っている!下手すればこの学園のトップである「生徒会長」や「風紀委員長」にも届きうるほどの質、量ともに高い。……少なくとも入学して早々の1年生が相手になる訳がない。
「…決勝戦も含め全ての試合で1発もくらわずに、今季の1年生のトーナメントを優勝していったのは!!」
「才能」というチンケな言葉でまとめられるような氣ではないし、剣技と魔法で見てもレベルが高い。……それもまだまだ余裕という感じが離れていても分かるほどに手を抜いている。
「レイ•アルファードだあァァァ!!!」
本来力と力、技と技のぶつかり合いのはずの試合が一方的な蹂躙となってしまうほどの実力を持ち合わせている…
コイツは一体なんだ??入ってきたばかりの1年生のはずが、歴戦の猛者ように見える…
ただ1つ分かるのは、コイツを担当する私はとんでもなく
「…っ!真面目に戦ってくださいまし!!貴方少しも本気でやってないでしょう!?」
「あぁ。だが本気を出さずとも負けるお前が悪いんじゃないか?…なぁ、アルデンヌお嬢様?」
「そう言ってられるのも今だけですわよ!」
そう言い、一気に氣を溜め放つ準備をする、いかにも貴族のお嬢様感のある金髪の少女。レイナ•アルデンヌだ。
前の世界の決戦戦で俺が負けた相手だ。今の力で考えると敵ではないが前の世界のこの時間帯の自分では勝てる気がしなかった。……それほど入ってきてばかりの自分が弱かったことが分かる。
氣のコントロールと剣技、魔法の使い方などは心が覚えているので楽勝だ。……体は前の世界の今といっしょなので何とかしないと、そのうち耐えなれなくことは明白なのだが…
…師匠に頼むか…あの人とは思えない人ならどうにかなるだろう。
「負ける訳にいかないのです!ましてや本気を出さずに戦うような人に!!」
本気のぶつかり合いがさも正義であるかのように言うな。前の自分を見ているようで反吐が出る。確かに騎士道精神がどうとかほざいてる連中からすれば、自分の待ち得る全てを出し切って相手にするのが好ましいのだろう。…滑稽だな。
弱い奴は戦い方や死に方を選ぶ権利はないのだから。
「…全て燃やしつくして!!」
レイナ周りに赤炎がメラメラと纏われていく。
…溜めが長すぎるだよな、この技。
だから俺の速さには追いつける訳がない
「紅蓮n」
「一閃」
「…ぇ」
レイナが技を発動させる前に俺は氣を必要分だけ解放し、横に一閃を撃ち放った。……相手が真正面から技を喰らってくれるなんて確証はないのに、溜めが長い技を使うのが悪い。
俺の一閃が防御のことを考えていない腹に突き刺さり、場外の壁まで吹っ飛んでいった。
「……だからお前らは弱いんだよ」
真正面から技を受けてもらえると思ってる。卑怯な手を使わず正々堂々と勝負してくれると本気で思ってる。手を抜かず全力で相手をしてくれると思ってる。……そんなのは闘いじゃない。本当の勝負にはそんな甘えたものなんてない。ただ純粋に勝てば何でもいい。それが勝負だろうが……
「…もうちょっと早く倒さないとな」
非難混じりの歓声なんてどうでもいい。
俺は王女がいるところへの謁見する資格を貰えれば、それでいい。
ここから、もっと色んな人嫌われるだろう。前の世界で仲がよかった面々とも仲良くなれないだろう。…もうレイナは無理だろうな。騎士道精神を重んじ、貴族であることを誇りに思っていた彼女と今の俺では重要視するものなど、何もかもが違いすぎる。…1年のときは俺の教師のような人だったが、その事実はもうない。
仲が良かった平民の奴らも無駄に誇りを持っていた貴族の奴らも、俺のことを敵視するだろうな。…騎士道精神の真逆を行く俺を。
だが、それでいい。あいつらに明確な壁がないと成長しない。だから俺が壁になろう。
…最低限のところまで強くならないと、この世界では簡単に死ねるからな。
「……実力は本物というか、既に
「分からないわ。彼、最低限の力しか出していないもの。でも少なくとも氣と剣の扱いなら、この学園の誰も巧いわね」
「私もそう思いますが、
「事実は事実よ。力はある。その戦い方は騎士道の教えからはかけ離れているけど」
「相手に何もさせずに勝つですか。…相手を重んじる騎士道から真逆をいってますが、強いですね」
「実力だけで言ったら私たち2人を除いたら学園最強ね。それを教師陣や
「実力だけでは駄目ですからね。……どうされますか?私たち
「そうね……まずは彼に希望を聞いてみましょう。風紀か生徒会のどちらにも属さないようであれば無理やりでも入れ込むことを視野に」
「…逸材であることには違いないですからね。1個下の代が不作なだけに、この学園としても欲しい人材ですね」
「えぇ。準優勝の子は人格は大丈夫そうで強さも申し分がなさそうね。…この代は任せられそうなら人がいて良かった」
「1つ下の代に任せるのは少し不安でしたからね。まぁ彼に任せるのも今のままでは不安ですが」
「…そうね。彼に関しては、王族のというより王女様に好かれるかどうかによって変わってるわね。好かれれば彼はもっと強くなれるし、
「…どうされますか?少しこちら側から助力しましょうか?」
「私たちが口添えしたところで人を見通せる、あの王女相手なら意味がないわよ。それに嘘をつくようなら、
「確かにそれはそうですけど……」
「彼に任せるしかないのよ。結局のところわね」
「……優勝、レイ•アルファード。おめでとう」
「…ありがとうございます」
「その名誉を讃える式は3日後、王城にて執り行われる。忘れるなよ」
「はい」
第1目標達成まで、あと少しだ。王城に赴き、王女の騎士と王城の教会にいるだろう聖女に会うことができる。
この2人の助力が、あのくそったれなヤツへ挑むことができる絶対条件だ。そのためには、王女サマに気に入られるしかない。
人間観察が大の得意の、
前の俺のように何も考えず真っ直ぐに「世界を、全てを救う」なんて言えない。それを言えるほどの無知ではなくなった。
前の世界で王女サマと会ったのは、もう俺が師匠と会っていた2年時の初期だ。あのとき、王女サマは「全てを救えると本気で思ってそうな目がイイ」と言って俺を気に入っていた。……あのときの俺と今の俺は違う。
ただ、それでも王城に行って助力を願う以外の選択肢は取れない……
世界を守るにはそれ以外の方法はないのだから。
〜人物設定〜
サラ教官 やる気ない人。教官としての腕は良い。新人の顔が歪むところが見たいという理由で1年を担当している。あと、3年とかはやること多くて面倒というところも影響している。いつもだるそう。
レイナ•アルデンヌ 貴族。「•••ですわ!」多分金髪。性格はちゃんといい。驕らず自分の知識を他人に授けられる。前の世界でレイの教師役を担っていた。•••レイの口調をチンピラ口調から不器用な敬語にランクアップさせた。偉い。
レイ•アルファード 主人公。相手を尊重する騎士道精神が前の世界のときから嫌い。しかし、前の世界ではレイナ先生のせいで「当たり前」という認識がついた。口調はチンピラ→不器用敬語→常体という変化をしている。常体になった理由はカッコいいから。レイナをボコしたことは、ちょっと胸に引っかかっている。
風紀委員長 強い。平民。多分メガネ掛けてる。生徒会長がいなければ突出して高い実力であっても、人の外側に行けるほどではなかったが、生徒会長に追いつくために死に物狂いで強くなった人。尊敬ってすごい。
生徒会長 強い。ただただ強い。風紀委員長よりも強い。ぶっちぎりで歴代最強。貴族。生徒会長として非の打ち所がない人。これは尊敬される。前の世界では生徒を庇って死んじゃった。最後まで生徒会長であり続けた。それは正しいのかな?