Fate/Phenomenon   作:空峰京華

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第一陣営~2~

 

《1》

 

 

 ブオォ!!!!!!

 

 

 

 (はじめ)が部屋に描いた陣の中心から爆風が吹き荒れる。

 汚れないようにと敷いたマットも吹き飛び、瓶が倒れ余っていた血もそこら中に散布され(とびち)る。

 

 

「――問おう」

 

 

「君が、僕のマスターかい?」

 

 

 ――綺麗に整えられた薄茶色の髪の毛に、深い灰の目、透き通るような白い肌、歳は30ほどのように見える男。

 爆風の、魔法陣の中心が存在していた場所に存在し()たのは悪魔といった雰囲気は持ち合わせていない、そんなヒトの(かたち)をした男だった。

 

「あれ、おかしいなー。聞こえてるかー?おーい?」

 

「あ、ああ。聞こえてる」

 

「よかった、僕はライダー。よろしくね」

 

 目の前の「ライダー」と名乗った存在が話しかけてきたことによって、少しづつ平静さを取り戻してきた朔は手の甲にある“ジンジン”とした鋭い痛みと、痣のようなものがあるということを認識する。

 

「えっ、ああ、俺は(ひいらぎ)朔。よ、よろしく......?」

 

 そうして沈黙の時間が流れる。

 彼の名誉のために記しておくが、朔は特段、他人との会話が不得手というわけではない。

 さて実際にはそう時間は経っていないのだが朔の体内時計では数分ほど経ってしまったのではないか、と思い冷静に、言葉を――

 

「えっと、あんた悪魔?」

 

 否、冷静さは取り戻していなかった。――若しくは、どこか(たが)が外れていたのか。

 どちらにせよ紡いでしまった言葉はそのような質問であったことは事実である。

 

 ――朔のその問いを聞いた「ライダー」はなにやら何か面白いようなものを見るかのような目を細め、

 

「もしかして......マスター。君――」

 

 一拍置き、「ライダー」が言い放った。

 

 ――――一般人?

 

 

《2》

 

「なるほど。古本屋で見つけた本の通りに悪魔を召喚しようとしたら僕が召喚され()た、と。......君は生まれる時代と身体(才能)が違えば変人奇人の類が多いと言われる魔術師あたりで名前を残してたかもね」

 

「......()()()()にお褒めていただけて光栄だよ、ライダー」

 

 男――「ライダー」の言葉に対し、朔は皮肉を込めて言葉を返したが「ライダー」は意にも介していない風にニコリと人の好さそうな笑みを浮かべるだけだった。

 

「ああ、マスター取り敢えず()()()()については一通り説明したけど......何か質問はあるかな?」

 

 ――あらゆる願いを叶えるとされる万能の願望機・聖杯の所有をめぐり、英雄や偉人が死後、信仰によって精霊の領域にまで昇華された“英霊”を“サーヴァント”として使役し一定のルールを設けてとある地域で繰り広げる争い......()()()()7()()()()()()()()()、その名を――聖杯戦争。

 基本的には、ファンタジーでなく()()()と呼ばれる者、その中でもとりわけ名のある家系に連なるものが願望・悲願を果たすため、また己が技術(ちから)(しめ)すために参加するものなのだが......稀に、魔術に全くもって縁のないものが巻き込まれることもある。

 此度、本来の歴史ならば起こりえなかった筈の聖杯戦争に於けるその役回りを柊朔が請け負うことになった。

 この手の()()に巻き込まれる者はフィクション作品や他の「聖杯戦争」ならば主人公だったり“覚醒”だったりというイベントがあったりするのが“普通”だろうが、生憎にも柊朔はどうしようもないほどに一般人(ふつう)であり、またこの物語に於ける主人公という役を請け負うような性質(うつわ)でもない。

 

「なさそうだね。じゃあ、今回の聖杯戦争の監督役に会いに行くとしようか」

 

「監督役?」

 

「あーっと、聖堂教会っていうんだっけ?まあ、お上さんのほうから派遣されている人物だよ。今回はこの国にある下部組織?からの派遣らしいけれどね。形ばかりではあるけど聖杯戦争に於ける異常の隠蔽、敗北者の保護なんかをしてくれるんだよ」

 

「そーいうの、わかるもんなんだな」

 

「聖杯から知識が与えられているんだよ。まあ、()()聖杯戦争にしてはちょっと貰いすぎな気がするけどなあ......ま、それも監督役に聞けばいいさ」

 

《3》

 

「......以上が(オレ)についてだ」

 

「なるほど......ありがとう、ランサー。それでは、早速監督役――九条さんのところへ行きましょうか」

 

「御意」

 

 そう言って虚空に姿を(くら)ませたランサーにほんの少し驚いたように目を開く。

 

『どうかしたか?』

 

ランサーが()()で問いかける。

 

「いえ......ホムンクルス以外の精霊種は見たことがなっかたので。霊体化というのを初めてみたんですよ」

 

『そうか。今後は見るのが嫌になるやもしれぬからな。今のうちに関心しておけ』

 

 (そめる)はその言葉に苦笑する。

 

「じゃあ行こうか。今回の聖杯戦争は少し特殊らしいからね」

 

《4》

 

 暗がりの(なか)。白装束で身を包んだ者が言う。

 

「ランサーとライダーですか。機動力に長けていていい組み合わせですね」

 

 その者は続けて言葉を紡ぐ。

 

「と、思いましたが......ライダーの戦闘能力は低い、皆無と言っても問題なさそうですね。戦士や兵士には見えませんが......しかし体つき自体はそれなり。近代の英霊のようにも見えますね。最低限の護身術を修めている政治家やレーサーなどでしょうか。まあ、あまり前には出てこないタイプであることは間違いないでしょう。アーチャーに仕留めてもらうならランサーですかね」

 

 その者は目の前にいる......恐らくアーチャーと呼称された者だろうか、仮称:アーチャーに少しばかり目を向ける。

 

「まったく、困ったものです。私のペアは既に召喚を終えているはずなのですが......巻き込まれたにしてもサーヴァントの方から監督役のところに来るよう進言されていないとすればバーサーカー、若しくは精神汚染系のスキルを所持している可能性が高いでしょうね」

 

 目線を外し、言葉を続ける。

 

「そうなると自分の陣営は人数不利で敵が1人増える。仮にバーサーカーだとすると戦闘能力は高いでしょうね。まあ、直感のようなスキルを持っていなければアーチャーに狙撃してもらえるのですがね。バーサーカーとなると勘はいいでしょう」

 

 まあ、と。まだ言葉を紡ぐ。

 

「我々とてあまり前線に出るつもりもないですしね」

 

 息を、軽く吸う。

 

「私は勝算があるから参加したんです。アーチャー。あなたには期待していますよ」

 

 それに対しアーチャーは浅く頷き、肯定を示す。

 

 

 ――聖杯戦争開始まであと一週間。

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