《1》
時刻としては深夜と言っても差し支えない時間。
「寺、だよな......。
『さっきも言ったけど今の時代に行われる聖杯戦争は亜種的なものだからね。本部からの下部組織の人員が派遣されたのかな。仏教徒が監督役というのはおそらく日本の方で済ませてくれ、みたいな連絡が入ったからなのかな?そんなに仲がいいわけではないと思うけどなあ』
「魔術の界隈?も大変なのな」
――見たものによっては「Hooo! Japanese temp , NO!!!“OTERA”!!!!!!!!!!!」などと雄叫びを上げかねぬほどに日本的な建造。
柊朔がライダーに案内され到着した先に
「この寺なら言ってくれればわかったぞ」
『不思議なことに僕の方にもこのお寺の名前、なんなら監督役の所在がお寺だっていう
「ふーん......まあ、細かいことは気にせずに入ろう」
その言葉を聞き召喚して際に一般人であることかと聞いた時と同じ声色を持たせて言った。
『やっぱり僕のマスターは当たりらしい』
「どういう意味だよ」
『いや、巻き込まれただけだけれど、
「余計に意味が分からん」
《2》
裏手に回り場所は庫裡の前。
寺にて僧が在住する場、つまり庫裡《くり》である。
既に訪問し室内に上がり、自分がマスターとなった旨を伝えたころである。
「にしても九条さんに監督役のお仕事が回ってくるとは思っていませんでしたよ」
「ええ、私も自分がこのような役割を担うことになるとは思っていませんでしたよ。このあたりに在住している聖職者、そして神秘に対しての理解が深い者となると私くらいしかいませんからね。
「なるほど、なら――」
「
――――ピンポーン――――
「何ですか?......いえ、これは――」
「ええ、このような時間に訪れてくるということは十中八苦
「ええ、わかりました」
《3》
「いや、こんな時間に訪問して呼び鈴なんか鳴らしてクソ迷惑なことしているのでは俺......!」
『どうどう、落ち着いてマスター。聖杯戦争関係のことは夜に済ませといたほうがいい。そも、聖杯戦争が始まったら深夜に動くのが基本になるからね。今のうちに慣れとこう?ね?』
「それは、そうなのかもしれないけど!」
――――ギィイイィ――――
「どちら様でしょうか?」
重い、扉の開く音。そして、男性的には聞こえるが、女性ともとれぬことのない声。
そちらに視線を向けると、柔和な笑みを浮かべ、
そして、驚いて上に挙げてしまった朔の左手の甲を見て、
「
「は、はあ......柊です。お邪魔します」
『――マスター、監督役だから問題ないとは思うけど一応の警戒はしておくんだよ』
ライダーはそのように言うが、当然ながら魔術への知見が全くない朔が警戒をしたところで何の意味も持たないのだが、これから戦場に身を置くことになる自分に対する危険に敏くなるように慣れさせるためのものだとし、脳内で処理を行う。
「マスターとして選ばれた者の先客がいますが、気にしないでください。ここでの戦闘行為は禁止されていますし、何よりまだ聖杯戦争は始まっておりませんので」
九条が、付け加えて言う。
「何より、あなたは巻き込まれた人でしょう。そんなに警戒したところで特に意味はないと思いますよ」
「……何で俺が巻き込まれたってわかったんですか?」
「顔つきでなんとなくわかりますよ。魔術師はこう、腐っているので」
「結構きっぱり言うんですね……」
柔らかい表情からは想像できないキツイ物言いは少しばかり朔のことを動揺させた。
「自虐としての意味もありますけどね」
九条は一瞬、目を伏せそう言うが、またすぐに柔和な笑みを浮かべる。
「すみませんスリッパがあと1足しかないのでサーヴァントは霊体化したままでお願いします」
「ああ、お気になさらず元々そのつもりだったので」
「ありがとうございます。ささ、奥の部屋でお待ちください。先ほど申し上げましたが先客がおりますので、適当に挨拶を済ませておいてください」
「はぁ、わかりました」
そう朔が答えたのを聞き九条は手前の部屋へ入っていく。
扉が開き一瞬、香りが漏れたがおそらくお茶でも入れていただけるのだろうと思いながら、朔は奥の部屋へと足を進める。
『にしても先客かぁ……こういうの同席させるのはあまりよくないと思うけど、監督役がいいって言うならいいか』
「よくない?」
『うん、魔術師にとっては姿や声なんてのはできるだけ人に知られたくない情報だからね』
「へー。不便なもんだな」
そんな雑談をしていると、九条の
「鬼が出るか蛇が出るか……」
自分でも発声したのかどうか、わからないほどの声量でつぶやき、部屋のドアを開けた。
少し半端ですが投稿します。