HRFF13特別連載 "三統抗争" 国木田視点    作:fミク

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長門有希の憂鬱

 

……私は、"怒り"と"嬉しさ"を手に入れた。

 

それはとても嬉しい事であり、

 

また、誰かにとっては恐ろしい事だった

 

私はその"誰か"なんてどうでもいい。

 

彼は喜んでくれるから……

 

 

 

……ここから先は、少し感情を手に入れた私と、

 

あなたと仲間達の、とても楽しい思い出の話。

 

私にとって温かく、優しい記憶……

 

 

 

 

〜三統抗争長門有希視点第二弾〜

 

『長門有希の憂鬱』

 

 

 

「スキー合宿の会議をします」

 

 十一月二十九日。

放課後に集まったアグネスタキオン以外のメンバーの前で、彼はまず会議の内容を、一行で、簡潔に説明した。

 

「……標的でもいるのか?」

「当たり。楽しむ前にまず仕事、ってわけだ」

「面倒臭いなぁ。そんなの国木田さんがやれば良いじゃないですか。せっかくの合宿だっていうのに」

「ただスキーするよりは良いと思うがな、オレは。それで茂、標的はどんなやつだ」

「……"地霊 コダマ"。油断しなけりゃ大した事はねぇレベルのやつだ。普段は隠れてるらしいんだが、たまに人を襲ってるみたいなんで討伐依頼が国木田さんのとこに来たのを俺達に回してきたわけだ」

「コダマかぁ。Gランクのやつだね。回復スキルを使ってくるけど、一気に叩けば怖くない」

 

……

……?

 

「……あの、ランクって何」

 

「……あ〜……えっとな、悪魔やモンスターは"ランク"で分けられていて、その中で更に"レベル"が決められているんだ。基準とかそういうのは不明らしい」

 

「"1〜10"がG、"11〜20"がE、"21〜40"がD、"41〜50"がC、"51〜70"がB、"71〜90"がA、"91〜110"がA+……で、それ以上は未だ観測されていない」

 

「何故、基準が不明なの?」

 

「……レベル制度の発端は"悪魔召喚プログラム"ってなやつが元になってる。製作者はスティーヴンっていう謎のおっさんなんだけど……とある男のスマホに入ってたプログラムのデータを元に"デビルズレポート"が作成されたんだ」

「だから、不明なんだ。製作者は謎だし、事実を知ってたかもしれない人間もいるんだけど、話そうとしないらしい……ちなみにモンスターの方は"エネミーレポート"っていう過去の記録を使ってる。こっちも製作者はスティーヴンなんだ。だから基準は同じだろうと言われてる」

 

「……成程、"とにかくわからない"という事は理解した」

「まぁ、そうなるわ」

「ちなみに、スティーヴンは車椅子に座っているらしいですよ。単なる噂ですけどね」

「……そう」

「……まぁ、それは置いておいて……取り敢えず、"コダマ"程度だし、一人か二人でどうにかなると思うんだ。……だから、今から二つのグループに分かれて、じゃんけんをして負けた奴二人が"コダマ"退治をするって事にする。何事も公平に、だ」

「りょーかい」

 

 茂成以外の全員が各々返事をする。もちろん私も。

 

……その後のジャンケンの結果は……

 

「はい。じゃあ、今回は茂さんと長門さんという事でね」

「……お、おう」

「……」

 

……ええっと……

 

「……よ、よろしくね」

「おう。……まぁ、どちらにせよ俺らはくっついて行動してただろうから別にいいけど……」

「ちょっ」

「……あっ」

 

 ……恥ずかしい。

 

 

 その後は特に話す事もなく会議はお開きになり、私は茂成と帰路についた。

 

「……有希」

「何?」

「さっきはその……悪かったな」

「……どうせバレている。心配は無用」

「だとしても恥ずかしかっただろ……」

「……それはそうだけど」

「……まぁ、気をつけるよ」

「いや、いい。むしろ言って」

「……」

 

「……可愛いな、お前」

「なっ……そ、そう」

 

 ……不意打ちにも程がある。

 

「……今日は家帰ったら合宿の用意するぞ。

着替えやらなんやら、ある程度用意は出来てるから……」

「……」

「……そっちの服とかは自分で買えよ?流石にそこまでは……」

「茂成が選んで。私はお金を持っていない」

「……えぇっと、金くらいは貸すけど……」

「……いいから」

「……」

 

 

「あのな、有希。俺が今更お前の下着を見た所でお前は恥ずかしくないのかもしれんが、世間一般的に俺達はちょっと優秀なだけの小学生。つまりは子供なわけで……まぁその、女の子の服を男が選びに行くというのはだな……」

 

「……」

 

「……かなり、周りから見てまずい」

 

「……あなたがそういうなら……わかった」

 

 私は気にしない。"周りの人間"なんてどうでもいい。茂成の友人達はその光景を見ても何も言わないだろうし。……ただ、茂成の身の上のデータはある。茂成が"周りの人間"を気にする理由はよくわかる。……だから、私はそれ以上言わなかった。

 

 "あの日"から続く日常は、私にとって心地の良い物だ。交代でお風呂に入って、晩御飯を食べて、アニメを見たり本を読んだりした後、明日の用意をして、就寝。茂成は元々1人の時もあまり変わらない毎日を送っていたそう。

 

"お前が一緒に住むようになっただけで、いつもやってた事に特別な気分を覚えるようになったがな"

と、茂成は言っていた。

……よく、そんな事を真顔で言える。私には無理。恥ずかしい……

 

今日は合宿の用意も一緒にして、その後就寝した。

 

「おやすみ、有希。明日、ちゃんと服買いに行くんだぞ」

「わかってる。おやすみ」

 

 ……ちなみに、私達は同じ布団で寝ている。……流石に向き合って寝る勇気はないので、背中合わせだけど。……だからこの寝付くまでの時間は……とてもドキドキする。多分、茂成も……同じ。

 

 

「……なぁ、有希」

「……な、なに」

「……だ……」

「……?」

「……こう、なんというか……向き合って寝たい」

「……今、"だ"って言ったのは、なに」

「………………」

「ちゃんと言って」

「抱き合いたいです」

「にゅあっ」

 

 本当に言ったし。……うぅ

 

「……わかった」

「……」

 

 そのまま寝返りを打って、私から彼を抱き締める。彼も私を優しく抱き締める。……向き合っているのにお互いに顔を見られないまま、眠りについた。

 

 

 次の日私は言われた通りに服を買いに家の近くにある洋服屋に行った。特に変わった所はない普通の店なので何もいう事はない。目に留まった服を見て、試着して。それを淡々と繰り返して、ある程度服が買い物かごに溜まってきた所で……

 

「……長門有希だな」

 

 後ろから声がした。かちゃ、という音がしたのでどうやら拳銃を突きつけているようだ。

 

「……だれ」

「統括組織のモンだ。悪いがここであんたを排除させてもらう」

「……あなたには無理」

「……試してみないとわからないだろう?」

 

「……そこの男、動くな」

 

 また、声がした。少しお年を召した老紳士の声。

 

「……あぁ?なんだテメェは」

「統括組織の人間だと言っていたが……これはこれは。か弱い少女に銃を突きつけるのが千葉統括組織の仕事なのかね?」

「……んだとテメェ!!」

 

 ドタドタと音がする。銃が離れたので統括組織の人間が老紳士に攻撃を仕掛けたのがわかった。……このままでは危ない。

 

「……」

 

 そっと後ろを振り向いてみると、先程まで私に銃を突きつけていた男らしき姿が見えない。腰を抜かした洋服屋の店員さんと、老紳士だけがそこにいた。

 

「……怪我はないかね、お嬢さん」

「……はい」

「私は広津柳浪という。世間では隠居したと言われている"ポートマフィア"の人間だ」

「お嬢さんは"長門有希"というのだな。覚えておこう。亭主の事や他の事で悩み事があれば我らポートマフィアを頼るといい。連絡先と名刺を渡しておこう」

 

 そう言って広津柳浪は名刺と連絡先が書かれてた手紙を渡してきた。

 

 ………………ん?てい、しゅ?

 

「……あの、亭主って」

「ん?その家の主人、という意味だが。この場合は鍋島茂成の事を指す」

「……えと、もう一つの方は……」

「……ふっ。さて、どうだろうか?

……では、私はこれで」

 

 広津柳浪はそのまま洋服屋を後にした。

……その後私は服を買い、どんどん紅潮する顔を手で覆いながらわたわたと洋服屋を出て家に帰ったのだった。

 

「……有希、今日も抱き合って寝……」

「わかった」

「はやっ」

「……いちいち言わなくて良い。私はもう背を向けて寝るのはイヤ」

「……お、おう……」

「恥ずかしいの?誰も見ていないのに」

「……そうだな。誰も見てないもんな」

「……ふふ」

 

「それじゃあ、おやすみ。あなた(、、、)

「……!!……お、おぉう……」

 

 茂成の顔が真っ赤になっている。……ふふっ

 

 

 

 

 

 

 十二月一日。

私達はバスに乗り、スキー場へと向かっていた。私は茂成の隣に座らせてもらっている。

 

(おい、あの二人っていっしょに生活してるんだろ?)

といった風に、私達の噂話をする声が辺りから聞こえてくる。いつものことだし、私も茂成も大して気にはしないけれど、とにかくうるさい。

 

「……ねぇ、茂成、周りがうるさい」

「知ってる。黙らせようと思えば出来るけど、後が面倒臭いから我慢してくれ」

「わかった」

 

 その後もうるさい声を我慢しつつ、茂成と一緒に外を眺めていた。そうしているうちにスキー場に着いた。

 

 先生の少し長い話を聞いて、部屋班に別れて部屋に入り、荷物を置く。その後、自由にスキーやスノーボードが出来る時間まで待機し、再集合。部屋班の女子とはなるべく会話しないようにした。

 

 どうせ大した事は話さない……

 

 

「茂成っ」

「お、有希」

「行こう、仕事。さっさとここから離れたい」

「お前俺の友人もいるって事をだな……まぁ、良いか。あいつらもうなんか遠いとこ行ったし……」

 

 煙が上がっているのが見える。恐らくは信影の力だろう。……なので位置は確認出来る。

 

「……いつの間に」

「まぁ、あいつなら納得できるけどな……」

「……取り敢えず、行こう」

「そだな」

 

 茂成と私は移動を開始した。二人で同じ色のスノーボードを選んで、走ったり滑ったりしながら標的の散策をした。

 

「……こりゃいいな!斜面を滑るのって、こんなに"楽しい"んだな!!」

 

 ……"楽しい"。

 

「……うん。そうだね、とても楽しい!!」

 

 ヒャッホー!!なんて声を上げながら、茂成がジグザグに滑り始めた。被らないように私は逆向きにジグザグ滑りをする。……初めてなのにとてもピッタリハマった。楽しい。

 

「……おっと!見つけたぞ標的」

「んんっ、どこ?」

「あの黄緑色に発光してるやつ」

 

 茂成が滑りながら左を指差す。そこには黄緑色の光が見える。確かにそれを発しているのは黄緑色のクレヨンで描いたような顔がある表面的な生き物だった。

 

 地霊 コダマ LV.3。

 

「コダマの見た目、ちょっと吹くだろ」

「うん。とてもユニークなデザイン」

「あの顔なんなんだろうな……」

 

 取り敢えず、位置は確認出来たので、私達は一旦滑り切った後にスノーボードを取り外し、木に立てかけた。その後、標的がいる場所へ歩いて行った。

 

「ほっ、ほっ……」

「流石に、滑ってきたのを戻るのは大変」

「大変なだけで疲れないけどな」

「そうだね」

 

 歩いて行くと、小さな神殿のような物に辿り着いた。そこには三体のコダマがいた。

 

「……あいつらだな」

「弱いとはいえ油断は禁物だから。準備いい?」

「いつでも行ける」

「……じゃあ行こう。茂成」

 

茂成と一緒に飛び出す。コダマはこちらに気付いて、手で何かをこねるような事をし始める。恐らく攻撃姿勢なのだろう。……でも無駄!

 

「"無明斬り"!!」

「えーいっ!!」

 

 茂成の斬撃と私のビームで、一気に敵を撃退した。LV.3という事もあって、油断しなければ大した事にはならないみたい。

 

「……はぁ。終わった」

「そうだな。……いやー、余裕になったとはいえ、まだまだ緊張するな〜〜っ」

 

 私達は仕事を片付けた事に安堵し、深くため息をついた。私はその場にへたり込んだ。

 

 瞬間、"ドスッ"……という鈍い音がした。

 

「うっ」

 

 茂成の声がする。

いや、まさか、そんな事がある訳がない。

茂成は誰よりも正確に気を読み、先読みをして攻撃を迎撃してしまう強者だ。そんな事が、あり得る訳がない!

 

 ……ねぇ、そんなはず……ないよね?

 

「……ゆ……き……」

 

 "ドサッ"と、今度はなにかが倒れる音がした。……恐る恐る後ろを振り返ると、

 

 お腹に剣が突き刺さった状態で、茂成が横たわっている。周りには、血の海が……

 

 

「……あ……あぁ……」

「……茂成!しっかりしてよ、ねぇ!!」

 

 茂成を抱き抱えて、必死に呼びかける。しかし茂成は意識があるのかないのかすらわからないような、消え入るような目で私を見つめてくる。

 

「……ゆき……」

 

 震える声が、私の耳を刺す。その一言が、私に向き合いたくない現実を、ただ残酷に突きつける。

 

「……もう……」

 

 きっと……たす、からない。

 

「……いやだ」

 

 あなたが死ぬのは……いやだ。

"悲しい"の。ねぇ、私を悲しませないで。

おねがい。……いきて……しげなり……!

 

「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

「おーおー、機械がなんか言ってるわ。アンドロイドのくせに男が逝ったのがそんなに悲しいか」

 

「……は?」

 

 うしろのこえ。いまのいいかた……このこえのぬしが、しげなりをころした?

 

 ……きかい?あんどろいどであることで、わたしがかなしんでいるのが、そんなふうにみえるの?

 

 ………………ユルサナイ。

 

「……けす。」

「……あ?」

 

 じぶんがなにをしたのか、いまいっしゅんのことなのに、おもいだせない。そんなこと、いまはほんとうにどうでもいい。……おねがい、しげなり。いきかえって……

 

 だれか……かみさま、かみさまたすけて!

きせきをおこして!!

 

   ……しげなりを、たすけて……!

 

 

 

 

"迷える者よ"

 

 

"あなたの運命を、変えてみせましょう"

 

……かみさま?

 

"ええ。私は女神。あなたを……その男を、助けます"

 

……おねがいします

 

"……それと、特別にあなたを人間にします。あなたはとても悲しき運命を持つ少女。……せめて私達の手で力添えをさせてください"

 

……

 

"あなたに"使命"と"魔法"を与えます。

まず、使命はアンドロイド制作禁止条約を破った千葉統括をぶっ殺す事。つまり私達の元へ送る事です。"

 

……神様、バイオレンス

 

"まぁこれくらいでないとやってられませんよ。

魔法は……今、あなたが欲しがっている奇跡の力です。……これがあれば、生き返りなど容易い"

 

……本当に!!?

 

"ええ。最初なので多少魔力添えもさせてもらいます。……では、行きますよ"

 

……はい!!

 

 

 光が、私に一つ降ってきた。

その光は私の右腕に烙印を刻み、今まで感じたことのない力を与えてくれた。

 

「……これが、魔力?」

 

 目の前に、本が浮いている事に気付く。

表紙に"ハイペリオン"という文字と、赤い薔薇が描かれた、綺麗な本。私がそれに手を伸ばすと、ひとりでに開き、あるページで止まった。

 

「……えっと……

 

    "思考魔法  死者蘇生" 」

 

 魔力が一気に抜けていくのを感じる。本が緑色に光り、黄金の十字架を出現させた。その十字架は数秒輝いて消え、光に照らされた茂成は徐々に傷が癒えて剣が消滅し、……目を、開けた。

 

「……ゆ、有希?」

「……しげなりっ……」

 

 涙がポロポロ流れてくる。生き返ってくれた。茂成が、生きてまた喋ってくれた。……あぁ、茂成……

 

「……よかった……」

「……あぁ。まさか生きてるとはな……。びっくりだが、奇跡は俺達血族の得意技……って、あれ?」

「……」

「……有希、お前その本」

「……茂成、聞いてほしい事があるの」

 

 

「……なんだ?」

「私、この合宿が終わったら、千葉統括を殺しにいく。……あなたは、来ちゃダメ」

「え、なんでだ?」

「……相手の力量がわからないから」

「……そう、か。気をつけろよ」

「うん」

 

 

 使命のデータを探索、記憶完了。

どうやら果たした後は、何年か会えなくなるみたい……。茂成も、私も、その間はとても辛いだろう。

 

 でも、私は人間になりたい。

 ……だから、戦う。

 

 

 ……この合宿が終わったら……「さようなら」だね。だから今は、あなたの側にいる幸せを噛み締める。

 

 ……ずっとずっと一緒にいたいから。私は、この時、そう決心したのだった。

 

 

 戻った私達は、茂成の服に風穴が開いている事以外は何も言われず、そのままスノーボードに戻った。

 

 滑って、転んで。雪を被りながら、たくさん笑って、楽しんだ。

 

 ……この後の事を考えると、悲しい気持ちが込み上げてどうしようもなくなるけれど……私は必死に我慢する。それが私の選択だもの。

 

 一日中スノーボードをして、午後八時頃に宿舎に戻って食堂で晩御飯を食べた。食べている間は雑談をしていて特に特殊な事は起きなかったけれど、一度だけ一茶がお椀に指を突っ込んで騒ぎになった。一茶は声が大きくよく通るので、

 

「うわあっつっ!!!」

 

という声が食堂中に響き渡った。……どうやらいつもこうなのであまり気にしないらしい。

 

 

「まぁ、あっついだけで大して気にならないんだろう?どうせ」

「まぁね。一応後でポーション使っておくけど」

「400も喰らわないだろ、その程度で。この無駄遣いめが」

「僕のポーションは50ギルだから問題ないんだよ〜」

「なっ……貴様、7側の人間か……」

「その数字だと7とは限らないだろ」

 

 

「まったくわからない……」

「有希、分からなくて良い。あれは……ゲームのやりすぎだ」

「……ゲーム」

「そう。……お前もわりとやり出したら止まらないよな」

「……そ、そんな事はない」

「……」

 

 

 その後、お風呂に入って、部屋に戻って、就寝。……特に目立った事はなかった。

 

 

 その後の時間はあっという間だった。楽しい、とても楽しいと思いながら、どこか切ない……そんな気分のまま、いつの間にかスキー合宿を終え、帰路についた。

 

 後の余韻に浸ったりしながら帰ってきたから、辺りはとても暗い。

 

 茂成と私は、徒歩でゆっくり帰っている。

 

 なんとなく、茂成が気を遣ってくれているのがわかっていた。……いつの間にか私達は、お互いに何かを隠しているのがわかってしまうくらいに深い関係になっていたようだ。

 

「……なぁ、有希……」

「何?」

「……本当に、行くんだな?」

「……うん」

「……そうか。……気をつけろよ」

「問題ない」

「……一緒に行きたい所だけど……まぁ、お前が行くって言うんだ。俺は行かない方が良いんだろ?」

「……」

「……この話は、今日はやめておこうか」

 

 

 ゆっくり歩いていた筈なのに、その後暫く会話したくらいで家に着いてしまった。

 

 ご飯を食べて。

 

 交代でお風呂に入って。

 

 アニメを見たり、本を読んだりして……

 

 すっかり当たり前になっていた日常。……この日常も、もしかしたら最後かもしれない。

 

「……茂成……」

「なんだ?」

「……ありがとう」

 

 

 

 抱き合って、寝る。

 

 明日になったら、私は行かなければならない。……辛いけど、行くしかない。

 

 

 茂成に気付かれないように、私は声を抑えて、泣いた。

 

to be continued…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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