ラスボスはお母さん 作:ラスボスはゴッドウソップ
―――時は少し遡る。
「やはり!やはり!おれこそが内通者であったのだ!錦えもん、おれの首を切れ!おれはもうこれ以上……生き恥を晒したくはない!」
暴風雨が吹き荒れる中、一人の男が介錯を願った。
「バカなことを申すな!お前に罪はない!全てはこれだけ長く時を共にしておりながらお前の内に潜む"鬼"の存在に気付けなかった拙者の未熟さが招いた事!ここにいる誰も、お主の事を責めるものは存在しない!」
「だが、気付けた筈なのだ!おれには所々、
本来であるならその場所には打倒カイドウ、そして光月家の復興を掲げ、四千二百の侍達が集結していた……と思っている赤鞘の男七人とくの一は、破壊された廃船の残骸や約束の時間が過ぎても誰も集まっていないことから、他ならぬ身内の手引き、つまり内通者によって、今回の作戦を完封なきまでに潰されたのだと、勘違いした上で絶望した。
そして、その内通者は誰か……。
それは今こうして錦えもんに首を差し出し、この中の誰よりも絶望しながら詫びているカン十郎をおいて他にいない。
「もうやめろ!過ぎたことを悔いても仕方ない!」
「そうだ!カン十郎は悪くねぇ!」
「しかし!しかし……!」
だがしかし。少なくとも彼らの目の前にいるカン十郎には皆を裏切る気持ちなど欠片もなかった。
彼の忠誠は光月家ただ一つだけに注がれ、黒炭家などむしろこの手で滅多斬りしてやりたいほど憎んでいる。
ならば何故裏切ったと自分で言うのか……それは本当は彼が赤鞘の侍という役を演じていただけに過ぎない黒炭カン十郎であるから…………ではない。
少なくとも、少し前まではそうであったかもしれないが、今の彼にそうした後ろ暗い面は一切なかった。
彼はただ自身の内に潜んでいるであろう"鬼"が全てを台無しにしてしまったのだと本気で思い込んでいる。
「死にたいのなら、全てを終えた後で死ね!もし戦いの最中、お主が再び鬼に取り憑かれるような事があれば!その時こそ、拙者が叩き斬ってくれようぞ!」
「―――あ、ああ!!!」
だから、取り返しがつく……ついてしまった。
ボーウ、ボーウ、ボーウ
この嵐の中で鳥が鳴く。
この喜劇を引き起こした存在は、上機嫌に鳴いていた。
「…………は!?」
そして現在。
セルセルの弱点により、頭がパーになっていたルタは正気を取り戻す。
ここはどこ!?何がどうなった!?
まだ弱点のことを理解していない彼女からしたら、いきなり気を失って、覚醒したような感覚に近い。
「お、目が覚めたか!」
ヤマト!?
だから何故カイドウの息子(娘)である彼女が目の前にいるのか、当然ながら知るよしもないルタではあるが、血を流す彼女を見て、ほぼ反射的に能力を発動させた。
「おお!?僕の怪我を治してくれたんだね!ルフィ達から聞いていたが、凄いなこれは!まるで怪我をする前まで体が元に戻ったみたいだ!」
今、どれぐらい事態が進行しているか分からないが、取り敢えずルフィとは仲良くなった後らしい。
「ありがとう!これでまだまだ戦える!君は危ないからここで待ってて!」
いや、待って!もっと情報を。
「――あぁ、そうだよね。君からしたら突然こんな場所に連れてこられたことになるのか。……一応聞くけど本当に覚えてないのかい?」
と情報を求めたら逆に問い掛けてくる始末。
全く身に覚えはないが、さてはウルティに頭突きでもされて、記憶が飛んだのだろうか。
「そっか……うん!まぁ覚えてないなら仕方ない。僕も急いでいるから簡単に説明するけど、
成る程。だいたい状況は理解した。
つまりルフィがカイドウに
分からないのが二人に執拗に狙われる理由だが……何でだろう。
やっぱりセルセルの能力がチート過ぎるのが、
待って!?
いま、アンタ。何て言った!?
「そりゃ驚くよね。あのカイドウと、カイドウと同じぐらい強いっていうビッグマムに狙われているんだもん」
違う!そこじゃない!もっと前!私がルフィの◯◯◯!て所!!
「え?君のお父さんであるルフィってとこ?君はルフィの娘だろう?実は違うのかい?」
一人バレるだけでもヤバいというのに「皆がそう言ってたのに……」と、悪夢みたいなことを言い出したヤマト。
知りたくないが……どれぐらい私がルフィの娘だと知っているのか、恐る恐る聞いてみる。
「えっーと、僕が知ってるのだと、まずルフィだろ?あと海賊狩りのゾロ、トニートニー・チョッパー、トラファルガー・ロー、モモの助君に、しのぶさんぐらいかな?」
一気に4人も増えた。
しかもその内、二人は麦わらの一味って。
「そろそろいいかな。あんまり時間がないんだ!早くしないとルフィ達が危ない!」
放心状態となる私を前にソワソワとし出す。
……てけ。
つ
……け。
「え、何?」
連れてけ。
「いや……でも。君みたいな小さな女の子には危ないし」
ならば、問題ない。
と言うことで私はセルセルの能力を発動し、30代の男バージョンへと姿を変えた。
すると、グングンと身長は伸びて今まで見上げていたヤマトを見下ろす形となった。その身長は三メートルは超えているだろう。ただデカくなった訳ではなく、ガープを思わせるような筋肉モリモリマッチョマンだ。
この頑丈な身体なら滅多なことでは死にはしない。
「はぇ……ルフィそっくりって訳じゃないけど、やっぱり親子だから似てるんだね」
あとは適当に顔を弄くれば……ほら、完璧である。
これでルフィの血縁関係だとは疑われまい。
「でもルフィには君を安全な所へって頼まれたし……う~ん」
どうせルフィ達もボロボロなのだろう。
ならば私のセルセルはこれ以上ないほど必要だと思われる。
大丈夫。絶対に先頭には出ないから。
「…………分かった。戦闘に出るつもりがないなら連れていくよ」
よし、これで道案内役は確保出来た。
本当ならもう少し調教を済ませた後にしようと思っていたが、もうこうなったら仕方ない。
これ以上、私の秘密が広がって……それこそ、『モンキー・D・ルタ 懸賞金一億八千万ベリー』とか取り返しのつかなくなる前に、秘密を知っている人間に接触して、ぼう太の能力で記憶を抹消する。
それで一味との関係を断った後、そのままエレジアに直行して………全てを終わらせる。
もう十分良い夢は見たんだ。これぐらいが潮時というやつである。
「あぁ、そう言えば!大切なことを忘れていた!」
ッゥ!?……まさか、まだ何か!?
「僕の名は光月おでん!君たちの仲間になる男だ!以後宜しく頼む!」
……あ、そですか。
なお、調教の練習台とその成果。