ラスボスはお母さん 作:ラスボスはゴッドウソップ
「ばがら゙、ル゙ダな゙ん゙でや゙づ、お゙で゙ばじら゙ね゙え゙っ゙で!!!」
「ふざけんじゃないわよ!アンタもゾロもチョッパーまで!特にアンタは……子供が親に知らないって言われるのがどれだけ辛い事か分かってんの!!!」
カイドウとの激闘から直ぐのこと。
セルセルで直前に治療を受けた為、また何故かカイドウが能力を使えない、そして復活したルフィと数度言葉を交わした後――ガチギレして覇気が乱れまくっていた事もあり、比較的軽傷で勝利した筈のルフィは風船のように顔を腫れ上がらせていた。
「あー、そのルタってやつがルフィの娘ってのは本当なのか?」
「本当も、どうも何も!それを教えてくれたのはアンタでしょ!?」
セルセルで治療を受けた為、また軽傷であったゾロ。
ルタに関する記憶のない彼であるが、何気にとんでもない事を仕出かしていたようで、ルフィ、チョッパーを除く残りの麦わらの一味は彼経由でルタがルフィの娘であることを知ったらしい。
「覚えてねぇけど確かに、おれのカルテに名前がある。重い精神疾患を抱えていて、過度のストレスからか痛覚を上手く感じ取れないらしい。あと………胃に悪性の腫瘍がありだって。
三時間前にローと一緒に手術したことになってる」
まさかおれがこんな大切な事を忘れるなんて……と、チョッパーは酷くショックを受けているような様子であった。
「もう!どうしたのよアンタ達!そんだけの事があって!何でッ!」
「あー、待った。その事についてなんだけど僕に心当たりがあるんだ」
荒ぶるナミを宥めるように、声を上げたヤマト。
「ルタに関して君たちに共通するのは一つ。ルタが失踪する前に、直接ルタから治療を受けているということ。そしてルタが抱えていた妙な鳥を頭に押し付けられたということなんだ」
「はて?妙な鳥とは……ルタさんのセルセルの能力は非常に強力なものですが、記憶に干渉するような物ではなかった筈。文脈から読み取って、それが今回の事件のカギとなるということでしょうか?」
ブルックの憶測を混ぜた質問に、首を縦に振る。
「あぁ、恐らくね。それで君たちが一番気になっている事だろうけど………………ルタは生きてる。カイドウはあぁ見えて身内にはとことん甘い。きっと本人は殺すつもりだったとしても無意識に力を抜いていたんだろう。これがその証明さ」
そしてナミ達、記憶を失っていない麦わらの一味が一番気にしていたルタの生死の行方である。
あのカイドウが自ら手に掛けて殺したと宣言したのだ。死体を確認した訳ではないが、ならばこそ今日この時まで、とても勝利を祝うような気分ではなかった。
ヤマトが取り出したルタのビブルカード。
本人の精神があれな為かなり縮んでこそいるが、燃え尽きる様子はない。
「……良かった。本当に良かった」
最初に声に出したのは、ずっと荒い海流の中で「せめて亡骸だけでも」と、ルタを探し続けていたジンベエであった。
「……やっと落ち着いて一服出来るぜ」
「ふはー!良かった~!」
「おう!迎えの船が必要なら任せろ!エネルギーのコーラは急ピッチで製造中だ!」
「……しかし、何故ルタさんは我々の元を黙って去ったのでしょうか?ルフィさん達の記憶を消すような真似までして」
「生きてるなら、取り敢えず会って話さなきゃ。例えあの子なりの理由があったんだとしても、ちゃんと言葉を交わして理由をきかないと」
「ふふ、そうね」
どうやら記憶保持組は満場一致でルタを迎えに行くために動くらしい。
「勿論おれも行くぞ!」
「……俺は船長の決定に従う」
チョッパーもそれに続き、ゾロはルフィの顔を立てる為、あえて賛成の声を飲み込んだ。
麦わらの一味の視線がルフィに集まる。
「う~ん……分かった!俺はワノ国で待つ。ルタってやつとの話しはお前らでつけてきてくれ」
「「「は?」」」
皆が耳を疑った。
「だって、ルタってやつは俺たちに忘れてほしくて離れたんだろ?だったら記憶を消された俺が迎えに行くのはおかしな話じゃねぇか」
「あんた……それ、本気で言ってるの?」
「勿論」
「そうか。なら俺も行かね」
「え、あ、ぁぁ……でも!」
そこにゾロまで同意したものだからチョッパーはしもうもどろする。
この時ナミは心の底からルフィを軽蔑したと後に語った。
「ふざけんな……このバカ男!!!!」
「ぶっっっ!!!!」
ビンタし、胸ぐらを掴んで引き寄せる。
「あの子はね。確かに何かを抱え込んでいる様子で最後まで自分があんたの娘であることは打ち明けなかった。
道中でもあんたが娘であることを言おうとすると必死になって妨害してきた。
……ずっと苦しそうだった。でもそれはあんたが嫌いだったんじゃない。相手が誰かも分からないあんたにとって自分が迷惑だからって分かってたからよ」
ナミは思い出す。一緒に釣りをして笑い合う二人、いつの間にか寝ていると思ったら同じ寝相だった二人、ルフィが褒めるとあからさまに機嫌が良くなっていたルタ。
嫌いな相手にあんな笑顔をするわけがない。ただあの子にとって血の繋がりは負い目だったのだ。
「どこであの子があんたの子供だって知ったのかは分からない。母親が誰なのかも知らないけど、あの子はあんたが船に乗せたの。あんたにとっては娘かもしれないけど、私たちにとってはもう大切な仲間なのよ。離れ離れになった仲間を迎えに行くのに船長がいなくてどうするの?親としてダメでもそれぐらい責任を果たしなさいよ」
「……なぁナミ、俺さ……記憶が消えてもルタについて一つだけ分かることがあるんだよ」
「なによ?」
「きっとそいつは、俺の船に乗っちまったせいで自由を奪われた。やりたいことも好きなことも制限されて苦しかったと思うんだ」
ドレスローザからこれまでの旅はお世辞にも愉快だったとは言えない激動の中だった。
いつ死んでもおかしくない。そんな中でのつかの間の幸せが全てを帳消しに出来たとは思えない。
「だからそいつが自分の意思で船を降りたんなら親でも船長でも、迎えに行く資格は俺にはねぇよ」
帽子を深くかぶり直し、ルフィは下を向いて立ち上がった。
「もう一度言う。俺は行けない。ルタに会いたいならお前らだけでいってくれ」
「……おいルフィ」
何かを言おうとするサンジの肩をウソップが掴む。
こうなったら我らが船長は梃子でも動かない。
ナミ達は顔を見せ合って、自分達だけで向かおうか思考を悩ませる。
「え、ルタのビブルカードが」
「「「ッ!?」」」
そんな時だった。
ヤマトの持つルタのビブルカードが燃えて半分の大きさになったのだ。
「ウソ!?どういうこと!?」
「まさか航海士もなしに海に出て嵐にでも巻き込まれたんじゃ!」
「そんな、あの子は能力者なんだぞ!?」
実はこの時、赤髪海賊団の船に定席していて怪鳥に拐われるという事件に巻き込まれていたが、全員が知るよしもない。
「ど、どうしましょう!!?」
「兎に角直ぐに船を出すわよ!」
全員が火が付いたように走り回り、流石のルフィも自分の娘が死ぬかもしれないと知って、動揺を露にしている。
「ヤマト、ビブルカードは!?」
「まだ燃え尽きていない!さっきので一端止まってるよ」
「て、ことは海に落ちた訳じゃなさそうだな。道中で海賊にでも捕まったのか!?」
「な!?」
「おいルフィ!こんな状況になっても行かないって意地張るつもりか!?」
「サンジくん!もうルフィはほっといて準備して!あぁそれにしても、ルタのビブルカードが向かう場所が三つのログと全部逆だなんてついてない。仮に連れ去られたとしたら相手はどこに向かうつもりなの?場所さえ分かってたらクー・ド・バーストで先回りすることも出来るのに!」
「場所はエレジアだ、恐らくそこでルタ屋は自身の血縁に決着をつけるつもりだろう」
そこに映像電伝虫を持ったトラファルガー・ローが現れた。
流れるように彼が起動した映像電伝虫には、あの歌姫ウタが世に名だたる大海賊達をバックに全世界中継ライブを行うというものだった。
「ウタ!?どうして…………まさか!!?」
死んだと思った幼馴染みが生きていた。
それ自体で驚きだがルフィも鈍くない。成長したウタと、
「俺も記憶抜かれたが、どうにもこいつは、お前らの娘になったことに強い罪悪感を覚えているらしい。お前の記憶を消したってことは次に向かうのは母親のところじゃないか?」
「エレジアって、ならどうしてビブルカードがこんなになってるんだ?」
「さぁな。分かることはこの映像をみる限り、歌姫はかなりヤバイ連中と関わりがあるらしい。そいつらにルタが捕まったのか、それとも途中で怪我でもしたのか。分かることはそのビブルカードは真っ直ぐエレジアに向かってるということだけだ」
エレジアと書かれた
何でそんなものを持っているかと聞くとベポが近々開かれると噂されていたライブに行きたいと駄々をこねていたので用意していたらしい。
「この手の患者は何回か診てきたが、死んでも死なない気力に溢れていると思えば、やりきることをやったら驚くほどポックリいきやがる。……まだ今週分の薬を出していなかったそうだからな。俺は行くがお前はどうする?」
「んなの!行くに決まってるだろ!!!お前ら!さっきのは全部なしだ!自分の自由の為に一味を離れたってなら俺もどうこう言うつもりはねぇよ!でも俺たちだけじゃなくて、一人になるために皆の記憶を消すってそんな辛いこと、ルタにさせるわけにはいかねぇ!」
「ふっ」
「もっと早くに言えよバカ船長」
「よっしゃ!ならスーパーにルタを迎えに行くぜ!」
「そうね。こうでなくっちゃ」
「いっくぞー!ルタのもとまで!」
こうして新四皇麦らのルフィとその一味は音楽の島エレジアへと向かうことになった。
これから待ち受ける波乱万丈の一幕でルタを救うことが出来るのか。
それはまだ誰にも分からない。