続くかは未定。
いつだって想定外など想定内ッ!!
第1話『覚醒の鼓動』
“人の為に生きなさい。それがあなたの為になるんだから”
自分の記憶力のなさには自信があるけど、私がまだ赤ちゃん卒業し立ての頃に亡くなったおばあちゃんの、その言葉だけは、今でもちゃんと覚えてる。
お陰様で今や人助けは私の趣味なんじゃないかっていうくらいのものになっている。
迷子の親捜しとか、木に引っ掛かった風船とか。
若干後ろめたいのは、人助けと言っても別にその人が困ってるから助けないと!っていうわけじゃなくて
自分の目の前で悲しそうにされていると、堪らなく嫌な気持ちになって
その後の一日が台無しになるからって理由。
結局は自分の為だから、漫画の主人公みたいな自己犠牲の権化ではないんだよね。
ここ、わりと重要。
これから私に何かされる人たちは決して私を過大評価しないこと。
お腹が痛くなりますよ。私の。
...ああ、そろそろ気になりますよね。
このモノローグ何?シリアス?みたいな。
一言で言えば現実逃避です。
その現実が見たい?
仕方ないなー、皆さんにはこちらの映像を、
「聞いてますか星宮さんっ!!」
「ひゃいっ!?」
高校の教室というより、大学のそれに近い大教室に、女性教師の怒号とその対象である女生徒の返事(悲鳴)が響き渡る。
周りの生徒の様子は様々で、またか、と呆れる者。またか、と笑ってしまう者。そしてまたか、とおどおどする者である。
「貴女という人は何度目ですか!?通学時間20分の道で一体何がどうなって1週間連続で遅刻するんですかぁ!!」
「先生、1週間は2日休みがあるので5回です。」
「知ってます!ちゃんと数えてますぅ!」
「いやぁ、今日は財布を落としちゃったお婆さんがいて。」
「三日前も同じ理由でしたよね!?」
「三日前はお婆さんじゃなくておばさんです。」
「一緒です!!年齢の差なんて関係ありませんっ!!」
「自分に言い聞かせたい言葉ランキング一位ですか?」
「気にする年じゃないから!まだ婚期逃してませんからぁ!!」
これがこのクラスの日課である。ミッドチルダ魔法学院。
魔法都市ミッドチルダの中で最も大きい高等学校である。
この世界は一般的な魔法のない世界と同じ科目の他、魔法教育のカリキュラムが存在する。
特にこの学院は魔法教育が充実しており、優秀な魔導師を毎年輩出している。
ちなみにこちらは女学校の分校であり、その学院の生徒と言えばいかにもお嬢様なイメージで、教員もそのイメージに違わぬ清廉潔癖とした者ばかりである。はずなのだが。
「流石に毎日これはお腹が痛くなるなぁ...。」
机に突っ伏す私。それを隣にいる女生徒三人が見て、思わずと言ったように笑う。
「まこちーは持ってるよね、うんうん。もう先生すら面白く見えてくるもん。」
「人助けで遅刻は主人公にのみ許される特権...つまり真はこれからこの学院をハーレムに!?」
「しません。」
皆楽しそうだね。私は楽しくないけど。
「学校、辞めたくないなぁ。」
ただでさえ成績悪いし、魔法の才能もないし。何で受かったのか分からないよ、私自身。
「流石にまだ退学はないでしょ。まだ。」
「大事なとこを二回言ったよね。まだってことはwillだよね。」
「英語勉強したんだ?未来形修得おめおめ。」
「中学英語の範囲なんですが...!」
「星宮さん、頼まれていた雑誌をお持ち」
「ありがとう!大好き!」
「切り替えが早い。そこに痺れないし憧れない。」
ネットスラングを無視して、私は雑誌を受け取る。
「フェイトさんのインタビュー記事!持つべきものは本屋でバイトしてる友達だよぉ!」
「喜んで頂けて嬉しいですわ。」
「その執務官の人本当に好きだよね。そんなに有名だったっけ?」
「執務官志望なら誰でも知ってる超敏腕執務官だよ!小学生の頃からロストロギア関係の事件を何回も解決して、今も沢山の大事件を捜査してるらしいんだよね!おまけに超美人!」
「結局世の中顔なんだ...!」
「あら、板場さんは素敵な女性ですわよ。」
「貴女が女神か。私だ結婚してくれぇ!」
「はいはいコントしてないで。まこちーはそのフェイトさんを目指してるんだ?」
「まあ、今の成績じゃ執務官どころか管理局にも入れなさそうだけどね。あはは...。」
私の魔法適正はDランク。エリートの執務官に、この適正でなれた人はほとんどいないらしい。
でもまあ、ほとんどってことは可能性は0じゃないってことで。
日々頑張ることに変わりはないんだけどね。
「じゃあ、また明日!」
皆と別れて、私はバイト先のレストランに向かう。
ちなみに私、星宮真は一人暮らしである。
バイト代を稼がないことには、退学する前に餓死する可能性があるのだ。
幸いバイトに関しては今まで無遅刻無欠席、超優良バイト戦士として名を轟かせ、
「あ...。」
フラグ達成乙というやつだろうか。
道端に綺麗な銀髪の、小学生くらいの小さい女の子が座っていた。
所謂途方座りである。これはまた、無視できないなぁ。
「...迷子になっちゃったのかな?それとも、どこか怪我しちゃった?」
目線を合わせて、なるべく優しい声で話しかける。
女の子は顔を上げ、こちらを見ると
「...」
何も言わず立ち上がった。
「怪我はないみたいだね。どうしてこんなところで座って」
「おまえ、しぬ覚悟はあるか。」
「へ...?」
子どもとは思えない冷たい目をして、私にそう問い掛けた。
「...見つけた。逃がすつもりはねぇ。
おまえに選択権なんてねぇが、仕方なく聞いてやる。くたばる覚悟はあるか。」
「ちょ、いきなりどうしたの?というか口悪っ!?」
「...今夜だ。」
銀髪の少女は振り返って、そのまま歩いていく。
「ま、待って!?本当に、どういう!君は...!?」
車が一台通りすぎると、少女はもういなくなっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「バイト中もぼーっとしちゃった。... 夜、だよね。完全に、今夜。」
あの子が言ってた今夜。本当に何だったんだろう。
今流行りのアニメの真似とか?
あの子すごい美人さんだったし、それだけでなんか信憑性というか、ただのいたずらっぽさがないというか。
「...ばかが考えてもしょうがないか。お腹空いたしごはんごはん!」
空元気を出して、よく通っているカレー屋さんに向かう。きっと何もないって!
そう思ったその時だった。
今日はよくフラグを回収する日だ。私って呪われてるかも。
「...!」
夕方の少女が走っていた。何かから逃げるように。
「っ!よく分からないけど、小学生の出歩いていい時間じゃないでしょーが!!」
幸い住んでいる場所から近く、道をよく知っている私は近道して、少女の逃げた方に向かう。
「こっち!」
「!?おまえ...!」
少女の手を掴み、裏路地を通りひたすら遠くへ走る。
―――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ、はぁ...。だいぶ走ったはずなんだけど。」
周囲を見渡す。怪しい人はいないし、上手く撒けたんだと思う。
「大丈夫?怪我はない?」
「...自分から来るとはな。飛んで火に入る夏のばかってか?」
「今夏じゃないしお姉さんにばか呼ばわりはよくないと思う!
小学生がこんな時間に歩いてたらほっとけないでしょ?あなたのお母さん心配しちゃうよ。」
「...あたしに母親なんていねぇ。それに心配するなら自分の方を心配しろ。手遅れなんだからな。」
「え?」
少女は空を見上げる。
瞬間、私は赤い光に包まれた。
「っ...今の...魔法...っ...?」
周りは瓦礫と煙に包まれていた。
直撃はしなかったからか、体に大きな傷はない。そうは言っても、あっちこっち擦りむいたりぶつけたりして
大事な女の子肌はボロボロになってしまっている。
「いっ...つぅ...!」
何とか立ち上がり、あの銀髪の少女がいないことに気づく。
「まさか瓦礫にっ!?」
慌てて周りの石に手を伸ばす。その時、
「瓦礫に潰させるようなへまはしないよ。これだけ苦労したからねぇ。壊れてもらっちゃ困る。」
頭上から声が聞こえた。
赤い髪の女性、バリアジャケットを纏った魔導師がそこにいた。
あの銀髪の少女を乱雑に掴んでいる。
「その子のお母さん...じゃないですよね。誘拐は犯罪ですよっ!」
「法律が恐くてこんな仕事出来るわけないだろ?それに、これが本当に人間に見えるのかい?」
心底可笑しそうに魔導師は笑う。
「どっからどう見ても可愛い女の子です!管理局呼びますからね!」
携帯端末を取り出すが、電波を示すアンテナが見当たらない。
「無駄だよ。人払いに電波阻害もしてある。誰一人邪魔は出来ないのさ。」
そういえば、これだけ派手に町を壊しているのに
悲鳴も何も聞こえない。人払いなんて、そんな便利な魔法あったかな?
「それにしても妙だねぇ。人払いが効かないなんて。よっぽど魔法適正が高いエリートちゃんとか?そんなら、魔法で何とかしてみるかい?」
挑発の笑みを浮かべる魔導師。
「っ...!」
小さい瓦礫を拾って投げる。
「おっと?...まさかあんた、簡単な魔法すら使えないのかい?話にならないねぇ。
久しぶりに魔法戦、てのを楽しめると思ったのに。」
私は、魔法が使えない。まったく使えないわけじゃないけど、こんな戦闘で使えるようなのは一つもない。
「いたぶるのも趣味じゃないが、見逃すわけにもいかないねぇ。」
魔導師は一瞬困り顔をして、
「楽に逝きな。」
そのデバイスから銃弾を放った。
「がふっ...!?ぁ...」
体が勝手に倒れた。腹から血が流れ出す。
見事に命中してしまったらしい。
「お仕事終了ってね。」
視界に翻る魔導師のマントが映る。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛いっ!!
光が弾け、視界がぼやける。真の意識は残酷なほど速く、闇に溶けていく。
「ちっ...起きちまったか。」
意識を取り戻したらしい銀髪の少女がそのまま真の上に落下してくる。
「答えろっ...!!!」
少女の怒声に、真の意識がわずかに戻る。
そんな大きい声、出せるんだ。
答えろって、あれ?しぬ覚悟、だっけ。
覚悟も何も、もうしにそうだよ。
いった。痛い。すごく痛い。しぬのってホント痛い。
それなりに正しく生きてきたと思ってたのに。バチが当たった?迷子に声かけただけなんだけどなぁ...。
親孝行もまだなのに。フェイトさんのサイン、まだゲットしてないのに。
見たい映画の続編、確か来月公開だったなぁ。
あーあ、未練しかないよ。悔いしかないじゃん、私の人生。
寂しいなぁ。一人で逝くの。誰かと一緒ならいいってわけじゃないけど、でもやっぱり
『寂しい、です。』
...あれ?
『おともだち、つくるの...にがて、です。』
『だいすきですっ!』
『わたしも〇〇×だいすきだよ♪』
『ひとりにしないで...!』
『だいじょぶ!また、あえるよ!やくそくしよっ!』
やく、そく。約束。
した。確かに。覚えてる、約束。まだ、守ってない。
守らなきゃ。だって、泣いちゃう。きっと。あの子の、笑顔。キレイだった。とっても、とっても...!キレイだった、だからっ!!
「しね、るかああぁぁぁぁッッッ!!!!!」
『Engage Completed. ARMED.』
―――――――――――――――――――――――――――――
「そう。やっと、見つけたのね。」
どこか知れない一室に、女性の嬉しげな声が響き渡った。
―――――――――――――――――――――――――――――
「なん、だ...?」
銀髪の少女が死にかけの少女に触れた途端、眩しい光が彼女たちを包んだ。
次の瞬間、光の中から現れたのは、
『...』
紅と白の機械的なアーマーに包まれ、マフラーをたなびかせた
緑に輝く瞳を持った何かであった。
第一話 『覚醒の鼓動』
ここでSynchrogazerを流すわけですよ←