魔法少女リリカルなのはS.G.   作:月想

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場面転換とか表現難しいですね。技術なし丸分かりですな...。


第13話『希望の光』

「ハァ...ハァ...」

 

まだ日が昇りきっていない早朝。

真は学園のジャージを着て、街中を走っていた。

 

『ねむ...』

 

クラレントは一体化しているが、まだ眠い様子。

 

『レンちゃんも走らなきゃダメなのに。』

『...Zz』

『...聞いてないし。』

 

小学生なんだから元気に走らないと。などと思いつつ、真は自分が走っている理由を反芻する。

 

強くならないといけない。じゃなきゃ何も守れない。

真がまず思い立ったのが体力作りである。

唯一運動神経には自信がある真だが、所詮は学生レベル。

プロの訓練を受けたわけではない。

地道な体力と筋力トレーニングは、多少効果があるだろうと思った。

...本番が二週間後でなければ。

決行は二週間後。

昨日リーゼから聞いた真相。

一緒にいる為には、パワーアップが必要だ。

超短期間で強くなる必要がある。

ただランニングするだけでは、少し健康になるだけかも。

決め手にかける。何か、きつくても現状を変えられるだけの何かが欲しい。

そう考えながら他に方法もなく、結局ランニングをしているわけだが。

 

「?」

 

真が走るその後ろから、一人の少女が同じく走ってくる。

勿論追っ手というわけではない。

同じくランニング中といった感じだ。

少女は真より幼く(丁度13、14歳くらいだろうか)長い茶色の髪をポニーテールにまとめ、活発そうな翡翠色の目をしている。

服装はジャージ姿で、どこかで見たようなロゴが入っている。

少女はスピードを上げると、真に少し会釈をし、追い越していってしまった。

 

『あ、すごい。部活とかやってる子なのかな?』

 

なかなかのスピードだが、少女は息を切らした様子もない。

年長者の意地ではないが、何とか付いて行ってみよう。

今はとにかく、限界に挑んで地力を上げなくては。

真もスピードを上げる。

少女は真が付いてきていることに気付いたのか、少し振り返った後、挑戦的な目をして

更にスピードを上げた。

真も必死に食らいつく。

そうしていつの間にか、暗かった街も陽射しを浴び、目を覚まし出す。

時間を意識する間もなく、二人はランニングという名の意地の張り合いを続けた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「はぁ、はぁっ...」

 

道端にある自動販売機の辺りで真がへたり込む。

流石に飛ばし過ぎた。朝のジョギングと言えば無理をしないのが鉄則だが

限界を意識した結果息が出来ないレベルで疲れてしまった。

 

「いい根性でした。」

 

少女が真にペットボトルを差し出す。

 

「あ、ありがとう...」

「後ろからくっつかれとるんわ不快かもしれんと思って、追い越したんですが...逆に失礼だったなら謝ります。」

 

少女は独特な言葉遣いで真に謝罪する。

息がまったく乱れていない辺り凄まじい練度のようだ。

真は何とか息を整え誤解を解く。

 

「ううん、違うんだ。無理をしてでもすぐに体力付けないといけなくて...こっちこそごめんね。君がすごく速いから、付いて行けたら成長するかもって思ったの。」

「そうですか。何かスポーツでもしとるんですか?」

「スポーツはしてないけど、ちょっとね。君は何かやってるの?すごい体力だし、趣味で走ってるだけじゃないよね?」

「あ、はい。ワシは...」

 

少女は真から体をずらし、空間に向かって右拳を打ち放つ。

 

「!」

 

風が唸る。

少女が軽く腕を振るっただけで、凄まじい衝撃を感じた。

 

「格闘技をやっとります。」

「格、闘技...」

「押忍。先輩方にはまだ及ばん、若輩者ですが。」

 

少女は遠慮がちに笑い、真に頭を下げる。

 

「それでは、ワシはこれで。お姉さんも目標があるようですが、お互い頑張りましょう。」

 

そう言って少女はまた走り出そうとする。

 

「ま、待って...!」

「?」

 

これだ、と思った。

真は少女を呼び止め、頭を下げる。

 

「私にそれ、教えてくださいっ!」

「え...?」

 

真は再び思い出す。昨日語られた真相を。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「そっかぁ。りーちゃんには魔導師の才能があって、しかもあのエースオブエースの弟子なんだ。羨ましー!!」

「...まあ、今はお尋ね者ですが。真もハラオウン執務官とお知り合いになっていたとは。」

「私も重要参考人扱いだけどね、一応。」

 

「「あはは...」」

 

渇いた笑いが重なる。

憧れの人と知り合いになっているのを素直に喜べない現状が辛い。

 

「...こほん。今まではただの昔話。ここからが本題になります。」

 

リーゼが話題を切り換える。

 

「救助隊に配属されて、一月程は平和な日々が続きました。しかしある日。局内の廊下でフラつくクレア先輩を見かけたんです。」

 

――――――――――――――――――――――――

 

「クレア先輩...?」

 

虚ろな目をして、少しよろけながら歩いている。いつもと様子が明らかに違う。

 

「クレア先輩!大丈夫ですか!?」

 

私はすぐに声をかける。しかしクレア先輩は気付いていないのか、そのまま女子トイレへと入っていく。

 

私はすぐに女子トイレに向かう。

そこには膝から崩れ落ちたクレア先輩の姿があった。

 

「先輩!?先輩、大丈夫ですか!?」

「...り、リーゼか...」

 

意識はある。酷く憔悴しているようだが、医務室に連れていかなくては。

 

「どこか体調が悪いのですか?すぐに医務室へ...」

 

クレア先輩は私を引き留める。

 

「待って、くれ...違うんだ...。リーゼ。」

 

先輩は逡巡した後、意を決したように私を見て言う。

 

「話を、聞いてもらえないだろうか...。」

 

――――――――――――――――――――――――

◼️□カフェ◼️□

 

「...それで、話というのは?」

「...ああ。」

 

少し楽になったのか、幾分か瞳に光が戻っている。

 

「私が警備隊に配属されているのは知っているな?特別教導訓練の後昇進の辞令があり、私も一部隊を指揮する身となった。」

 

二等陸尉ともなると、あのヴィータ教官と同じくらいの階級だろうか。

元からクレア先輩はエリートコースだったから、それは納得の人事だが。

 

「一週間程前だ。私の部隊は新兵器の移送警護を担当することになった。ただし兵器の詳細は不明。それ以外に変わったこともなく、移送は無事に終了するはずだった。」

「はずだった?」

 

先輩は眉根を寄せて、吐き出すように続けた。

 

「全滅した。私以外、全員な...。」

「は...?」

「謎の兵器群に襲撃を受けた。見たことのないタイプだった。魔法を無力化するフィールドがあるのか、砲撃は全て効かなかった。部下がやられていくのを、見ているしかなかった。自分の身を守るのが精一杯だった...。」

 

そんな...。魔法を無効化?確かにある程度の対策フィールドは作れるとは聞いたが、完全無効化などあり得るのか。

そんなものがあるなら、現在の魔法技術での発展自体、全て否定されてしまう。

 

「敵は、その新兵器を狙って...?」

「違う。」

 

先輩は笑う。自分自身が間抜けで仕方ないとばかりに。

 

「警護していた新兵器が、それだ。」

「な...!?」

 

何故管理局の兵器が管理局の部隊を襲うのか。それではまるで、先輩の部隊を実験台にしようとしたようにしか...。

 

「実験台、だったのだろうな。機能テストのようなものだ。仮想敵は魔導師。私の部隊はちょうどいい...。」

「先、輩...。」

「...仲間を全て失い、最早魔法なしで私は兵器を斬り殴った。自分も助からない、そう思った時。奴は私の目の前に現れた。」

 

――――――――――――――――――――――――

 

「っ...。ぁぐ...。」

 

腕から力が抜け武器は落ち、立ってもいられなくなる。

足元には何とか砕いた兵器の残骸が何体か。そして大切な仲間たちの...。

 

「まもれ、なかった...。」

優秀な部下たちだった。同期だった。みんな夢があって、家族がいた。

 

「ぅ、ぐっ...。く、そ...。」

 

私ももうダメだ。敵は依然として多勢。魔法も通用しない。

おかしいと思うべきだった。

何の説明もなく移送任務などと。

捨て石だ。こんなことがあるか。人の命を命と思わない外道が、この組織にはいたのか。

私は一体、今まで何の正義を信じていたんだ...。

 

「エレ、ナ...。」

 

私が死んだら、誰がお前を...。

 

『――。』

 

兵器の動きが止まる。

何だ...?電源が切れたように動きが止まった?

 

「魔法なしにここまで戦うか。見上げた修羅である。気に入ったぞ。」

「!?」

 

一人の老人...というにはあまりに偉丈夫過ぎる、軍服を着た白髪の男が立っている。

 

「使い潰しのモルモットのつもりだったが、意外な拾い物をした。」

「!?き、さま。貴様が...!!」

 

剣を手に男に突撃する。体力など関係ない、怒りと憎しみが私を突き動かす。

しかし。

 

『―。』

「かはっ...!?」

 

兵器が突如動き出し、男を守るように私を蹴り飛ばした。

 

「まだ動くか。躾は必要だが、やはりここで潰すには惜しい。」

「なに、を...!」

 

私を見下しながら、兵器に包囲させる。

完全にあの男の指揮下にあるようだ。

 

「貴様も実験動物を飼っているようだな。」

「っ!?」

「血清を用立てるのは容易くない。相当苦心しているようだな。」

 

なぜエレナのことを...!

 

「取り消せ...!あいつは、エレナは実験動物などではない...!」

「些末なことよ。貴様が知らなくてはいけないのは唯一つ。血清の入手ルートなど赤子の手をひねるより容易いということのみよ。」

 

なん、だと...

 

「エレナを、人質にするつもりか...!!」

「違うな。貴様だけ生かしてやるのだ。慈悲と言う以外にこれを何とするか。」

「き、さまぁ...!!」

 

男は私に告げる。

 

「これよりお前は儂の道具となる。崇高な計画に携わることに喜び、感謝するがいい。クレア・スカーレット。」

 

――――――――――――――――――――――

 

「酷い...そんなのあんまりだよ...!」

「...石動刃凱中将。J.S.事件以降、陸のトップと言える程の権力者です。」

 

リーナがすぐに端末を操作し、データを出す。

 

「ふーん。歳のわりには元気なお爺ちゃんね。」

「ええ...。優秀な指揮官であり、尚且つ出世への野心も強い。凄まじい御仁ですよ。」

 

リーゼは心底嫌そうな顔をして説明を続ける。

 

「彼の目的は自動機動外殻...人の形をしたアーマー兵器ですね。それを次元世界に配備し、平和を実現すること。魔法が効かない力をばら蒔くことで、魔法という技術を衰退させるのが目的です。」

「魔法を、無くす...?」

「確か優秀な魔導師は皆『海』に所属してて、『陸』とのパワーバランスが酷いことになっているんだったかしら?」

 

リーゼは頷く。

 

「はい。加えてあのJ.S.事件により陸への世論からの信頼は失墜。管理局の負の面を背負うような形になっていますから、局内でも肩身が狭い思いをしているのでしょうね。」

「そんな...だからってそんな酷いことしていいわけ...!」

 

そんな理由で武器を作って、それで仲間を傷つけるなんて...。

真には理解出来なかった。

そういう権力だとか、暗い話がどうしてもあるのは分かっていた。

だがこれは酷過ぎる。

命を何だと思っているのか。

 

「そうです。許すわけにはいきません。私はあの男を止めなくてはいけない。」

 

リーゼの手に力が入る。

 

「なるほどな。それでお前は工場を襲ってたわけか。」

 

ずっと聞いているだけだったクラレントが納得したように口を出す。

 

「ええ。機動外殻の工場を潰していけば、いずれ石動中将本人が尻尾を出す。実動はクレア先輩に任せているようですが、私が先日潰した工場で生産ライン自体はほとんど止められたはず。あちらも迂闊に兵器を使うことはできない。上手く利用出来ました。

後は本丸を叩けば、きっと...」

「りーちゃん、やっぱりすごいや。本当に強くなったんだね...。」

「真...?」

 

真はリーゼの手を取り、握る。

 

「一人で大切な先輩と、世界を守ろうとしたんだよね...。きっとすごく怖くて、不安だったよね。」

「...魔法は、私を救ってくれました。管理局は私に強さと、大切な仲間をくれました。だから、許せなかったんです。それを全て壊す、その野望が。」

 

リーゼは照れくさそうに目を反らす。

 

「後は...真の夢見る管理局が、それにふさわしい物であって欲しいと、思って...」

「りーちゃん。」

 

握る力が強くなる。

 

「ありがとう。だから私も、一緒に戦う。」

「真、それは...。」

「分かってる。全部終わった後に犯罪者になっちゃうかもしれない。執務官にも、なれないかも。...だけど、りーちゃんがやってること、私は正しいと思う。私はりーちゃんと一緒にいる。これからも一緒にいる為に、私がりーちゃんを守るよ。」

「まーちゃん...。」

 

「そういうのは、家でやれ...。」

「あら、家でやるとそれはそれで危険な匂いがしちゃうけど♪」

 

二人に生暖かく見られていることに気づいたリーゼは咳払いをし、話をまとめる。

 

「と、とにかく。次は直接本局近くの倉庫を襲撃します。決行は...二週間後。」

「二週間?随分悠長なのね。」

「準備と休息が必要です。それに、真。」

「私?」

 

リーゼがため息を吐く。

 

「強くなって下さい。正直、今のままでは力が強いだけの獣と一緒です。」

「け、けものって...。」

「ぷっ。イノシシばか。」

 

クラレントが吹き出す。

 

「あー!笑った!バカにした!相棒なのにー!?」

「うるせー。お前が下手くそなのは事実だ。」

 

実感している故に言い返せない真。

 

「二週間で最低限の技術を身に付けて下さい。兵器は勿論、クレア先輩の強さは貴女も見たはず。」

「あ...うん。」

 

あの人はやりきれない感情を持ったままなのに、あんなに強いのか。

 

「分かった。ちょっと考えてみる。」

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「お願いします、教えてください!」

 

そんなわけで、真には今何より『師匠』が必要であった。

フェイトたちには頼れない。

あの人たちは説明すれば助けてくれるかもしれない。

だからこそ、巻き込めない。

これからも世界に必要な人なのだから。

 

「...そう簡単に教えて分かるものでもないじゃろうし、何よりワシは若輩者です。人に教えるなんてできません。」

 

少女は申し訳なさそうに告げる。

 

「...無理を言ってしまってごめんなさい。でも、私には急いで強くならなきゃいけない理由があるんです。強くならないと、何も守れないから...。」

 

強くなりたい、守れないという言葉に少女が反応する。

 

「...強くなりたいと言いますが。その強いというんは、何ですか。誰にも負けない、誰にも傷つけられないことですか。」

 

少女の目が鋭くなる。

真も少女の真剣さに応え、考えながら言葉を紡ぐ。

 

「...私が欲しい強さは、みんなを守れるっていうこと。困っている人がいるなら最短で、最速で、真っ直ぐに、一直線に駆けつけたい。何も零さない強さが欲しい。私が弱いせいで大切なモノを失うのは、嫌なんだ...。」

「!...。」

 

少女はその言葉にハッとし、表情を柔らかくする。

 

「リンネより、むしろワシか...。ハルさんに拾ってもらった、そのお返しかもしれんな...。」

「りんね?」

「いや、何でもないです。」

 

真の顔を真っ直ぐ見つめる。

 

「さっきも言うた通り、ワシは若輩者で弟子を取るなんて立場じゃありません。」

「そう、ですよね...。」

「ですが、基礎を教えるくらいなら、コーチや先輩たちも許してくれるでしょう。」

「ほ、本当ですか!?」

 

真の表情がパッと明るくなる。

 

「ただし、やるからには厳しくいきます。覚悟は出来てますか?」

「は、はい!師匠!」

「ししょっ...」

 

少女の頬が少し赤くなる。

 

「師匠ではないですし、年上なんですからそんなに畏まらんでいいです。」

「分かりました!師匠!私、星宮真です!」

「分かっとらんしまた師匠...。」

 

ため息を吐き、改めて少女は名乗りをあげる。

 

「ナカジマジム所属。覇王流、フーカ・レヴェントンです。」

 

第13話『希望の光』




「フーカ師匠!」「フーカ師匠~」「フーカ師匠♪」
「うわぁ!?皆さんやめてください!恥ずかしい~!」
「ではここでフーちゃん師匠の1話冒頭大立ち回りをプレイバック♪」
「やめろぉリンネ!?」

「来週もまた見てくださいね。」「にゃあ♪」
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